Spotify創業者のスピーチ「アーティストとファンが繋がる場所に」

Spotify創業者のスピーチ「アーティストとファンが繋がる場所に」

訳・テキスト
染谷和美
編集:Kompass編集部

2月22日深夜、Spotifyのバーチャルカンファレンス『Stream On』が開催された。当日は、アーティストやポッドキャストクリエイターが登場。よりよい音質を実現する「Spotify HiFi」や、新しくサービスを展開する国と地域の発表などが行われた。また、冒頭ではCEO、ダニエル・エクも登壇し、「Spotifyとオーディオのこれから」をテーマにしたスピーチを行った。そのハイライトを記述する。

「つながり」を生み出すプラットフォームを目指す。Spotify CEOの宣言

ダニエル:私は子ども時代を、ここからほど近いローグスベッド(ストックホルム郊外の街)で過ごしました。夜になると、自分の部屋の天井を見つめて遥か遠い場所に思いを馳せ、いつかは世界を旅したいと夢見ていたんです。その日が訪れるまで、私を遠い世界へ連れて行ってくれたのは音楽でした。イギリスに行けるようになる前に、Led Zeppelinの音楽が案内してくれた。アメリカ合衆国に足を踏み入れもしないうちからボブ・ディランの曲が私を連れ回してくれた。ヘッドフォン1つで、音楽が私を行ったことのない場所へと運んでくれたのです。音楽の響きには我々全員を夢中にさせるなにかがある。音声を通じて創造し、繋がり合いたいと願う気持ちは、人間として生きていくための基盤とも言えます。音楽の基本的構成要素であるビートが人間の心臓の鼓動と呼応するのは、偶然とは思えません。Spotifyにとって音声は歴史であり、未来です。

2006年、音楽業界は崩壊しつつありました。不法な「海賊行為」が業界の命を脅かしていたのです。経費や労力を軽視して、音楽はすべて無料で手に入ってしかるべきだという考え方が、多くの現役アーティストのキャリアを台無しにしました。もっとよいやり方がなければいけない、と我々は信じ、Spotifyを創設したのです。

海賊行為を失くし、人々にまた音楽に対価を払ってもらうためには、我々のプラットフォームは革新的でなければならない、ということはわかっていました。Spotifyはよりスピーディーで、より反応が早く、よりパーソナライズされたものでなければいけない。そして音楽を聴く手段として、よりエキサイティングかつ魅力あるものでなければいけない。

ダニエル・エク(Spotify CEO)
ダニエル・エク(Spotify CEO)

ダニエル:それから15年を経て、我々は今まで以上にコミットしています。今も、まず音声ありきだと信じ、みなさんの人生のサウンドトラックでありたいと変わらず願っています。あなたがアーティストもしくはポッドキャスターとして共有したい曲や発表したいアルバムをお持ちなら、あるいは伝えたい物語があるなら、Spotifyがあなたにとってオーディエンスを見つける最善の場であってほしい。実際、そうなのです。なぜなら、我々のプラットフォームでは「つながり」を得られるからです。リスナーを好みの音声とつなぎ、クリエイターをファンと結びつけることができるのです。

しかも、我々はただアーティストやクリエイターのキャリアを追うだけではなく、キャリアが持続することを目指しており、これによって、双方が強化されていくのです。繋がりの強い、熱心なリスナーのコミュニティーは、より多くの需要を生む。すると、アーティストやポッドキャスターが、自らの作品で生活していける可能性が高まります。アーティストの創作が増えれば、ユーザーにとっても発見すべきものが増えるわけですから、そこに循環が生まれて弾みがつく。その結果、Spotifyだけでなくオーディオ業界全体の推進力になるのです。

音源のアクセスの民主化を促した、フィジカルから配信の20年を振り返る

ダニエル:この15年で我々が目の当たりにし、またその促進に一役買ってきたのは「音声ルネサンス」です。私はこの言葉を敢えて用いました。それは間違いなく復興であって、復旧ではなかったと思います。我々は前進しているのであって、時計を巻き戻そうとしているのではありません。音楽業界の人々は好んで20年前を懐かしく振り返ります。レコード店やラジオの時代。海賊行為以前の時代です。懐かしむ気持ちは私も理解できます。子どもの頃は私も地元のレコード店に何時間も入り浸って、箱の中のアルバムをひっくり返してはどれを買おうか選んだものです。

しかし今思うと、なにより驚くのはそれがいかに限られたものであったか、ということ。当時、自分で見つけ出すことができた音楽の量は、棚の広さや店の広さ、音楽関係の会社の物理的な配給能力やラジオDJの個人的な好みによって、そして言うまでもなく住んでいる場所や費やせるお金によって制限されていた。創作者の側にとっても機会が少なかったわけです。棚にも電波にも、乗せて応援できるアーティストの数は限られますし、業界の有力者たちが投資できるアーティストも限られます。1970年代、1980年代、1990年代にも優れた音楽は数多く発表されていましたが、残念なことに、チャンスに恵まれなかったものも多かったんです。

過去20年で、ストリーミングサービスがオーディオの世界のエコシステムを激変させました。参入の敷居が下がり、世界中のリスナーに対し、音源へのアクセスを民主化したのです。かつてない数のクリエイターが創作し、かつ成功を収めています。


一部の国と地域のプレミアムユーザーに、今年後半から音質をアップグレードするサービスを提供する「Spotify HiFi」についての動画

ダニエル:20年前の音楽業界は、かなり限定的な会員制クラブのようでした。フィジカルで作品を制作してレコード店に流通し、ラジオで曲をかけてもらうといった物理的なリソースがなければ、売れるのは難しかったのです。たとえば2002年にはアメリカで33000タイトルのアルバムがリリースされましたが、そのうち1000枚以上を売り上げたのは8000タイトルのみで、これら新譜はセールスの98%を占めていました。これに対し、2020年にはアメリカのSpotifyで180万タイトルのアルバムがリリースされ、ストリーミングの98%を構成するのは6倍のアルバムになっています。

つまり、より多くのアーティストが世界のオーディエンスに聴いてもらえる可能性を得たというだけの話ではなく、既により多くのアーティストが聴かれているのです。それは、有意義な収益が以前よりも多くのアーティストに流れていることを意味します。

2008年にスウェーデンでSpotifyがローンチした時点で、フィジカルとデジタルのセールスを合わせた市場はおよそ170億ドルで、内、配信が占めたのは3億ドル、即ち全世界のセールのわずか2%でした。業界が落ち込んだ2014年には統合市場が更に30億ドル減って140億ドルに。そこで我々は、配信によって世界の音楽業界を萎縮から成長へ転じさせる手助けをしたのです。2019年のレコード業界全体の収益は200億ドル強。その収入の半分以上にあたる114憶ドルは配信によるものでした。

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