TOMOOが「ポップスの誇り」を持って歌う、愛のフィロソフィー。『TWO MOON』とこの先の展望を語る

『Early Noise 2023』にも選出された、話題のシンガーソングタイターTOMOO。

Official髭男dismの藤原聡(Vo,Key)やVaundyら多くのアーティストや著名人が絶賛、その名が注目を集めるきっかけとなった“Ginger”(2021年)をはじめ、メジャーデビュー曲“オセロ”など全13曲を収録した1stアルバム『TWO MOON』がリリースされた。

「ツノを生やすことだけが『強さ』じゃない。いろんな要素が含まれ丸くなっていく『ネオ強さ』にこそ、ポップスの誇りを感じる」

こう話すように、そのユニークな視点を通じてTOMOOは歌のなかでどんなことを描いてきたのだろうか。

ヒゲダン、スカートら「IRORI Records」の先輩とTOMOOが共有する「丸いイメージ」

─まずは、『TWO MOON』というタイトルの由来から教えてもらえますか?

TOMOO:このアルバムに収録されている13曲は、生まれたタイミングや、そこに宿る感情やテンションなどがバラバラなんです。何かテーマを決めて、コンセプチャルにアルバム制作をしていたわけではなく、集まった13曲を前に「どんなタイトルにしよう?」と考えたので、何かしら共通項を探す必要があったんですね。

TOMOO:そこで気づいたのは、「true(本当のこと)が見たい、知りたい」ということを、切り口は違えどどの曲でも歌っていることでした。

ただ、アルバムタイトルとして「TRUE」ではないな、と。それだと実話を集めたアルバムみたいな印象になってしまうじゃないですか。「事実」とか「リアル」とかではなく、もっと抽象的な意味での「本当」としか言い表せないようなことが歌いたかった。かといって、日本語で『本当』とつけるのも違うよなあって。

そうやってしばらく考えあぐねていたのと並行して、以前から私のなかでブームになっていた「丸」を表す言葉と、“オセロ”という曲に象徴されるように1、2年のあいだに自分のなかで顕在化してきた「相反するふたつのことを、切り離さずそのまま同居させる」というテーマが重なったんです。

TOMOO“オセロ”を聴く(Spotifyを開く

─つまりTOMOOさんの頭のなかで、「ほんとう」「丸」「相反するふたつのこと」という3要素がさまよっていたわけですね。「丸」がブームになったのはどうしてですか?

TOMOO:私が所属している「IRORI Records」のスタッフと話していたとき、「うちは丸いイメージのアーティストが、ほかのところより多いと思うんだよね」みたいなことを言われて。

もちろん先輩アーティストたちは、みなさん尖ったこともやっているけど、自分でつくったツノを頭につけて周りに向かって「これが自分の武器だ」みたいに誇示するわけではなくて。外へのあり方や姿勢が強ければ、わざわざ「強いんだぞ」と言わなくていいじゃないですか。内側に凛としたものをすでに持っていれば、外側にツノを生やす必要もない。そういう「強さ」をイメージしたんですよね。

TOMOO:ポップスという表現スタイルもそう。耳心地がマイルドに感じるのも、じつはいろんな要素が混じっているからともいえるわけじゃないですか。

削ぎ落として角を取って当たり障りなくするからポップスなのではなくて、いろんな要素が含まれたことによって「丸」に見えるのはカッコいいなと思ったし、そこに「ポップスの誇り」を感じたんですよね。

TOMOOが「ポップスの誇り」を持って歌う「混じっている」サウンドの気持ちよさ

─「ポップスの誇り」ですか。

TOMOO:もちろん、ポップスにもいろんな表現があるから一概には言えないけど、私はそういう強さを、これからも、この場所で、誇りを持って追求していきたい。

いろんな音楽がわーっと溢れているなかへ、自分もメジャーデビューして入っていくけど、そのときに自分が追求したい「強さ」は、丸い「ネオ強さ」なんです。そこから「ネオ強さ≒丸」と考えるようになり、「TOMOOという名前にも『丸』がいっぱい入っているし!」みたいな感じで自分のアイデンティティになっていきました。

─なるほど。それに「TOMOO」の文字を『TWO MOON』というタイトルに見出すこともできますよね。

TOMOO:はい(笑)。そこが最後の決め手になりました。たまたまだったんですけどね。

─ここ最近の楽曲は、アレンジのみならず歌い方も含めてブラックミュージック的なアプローチが強めですよね?

TOMOO:たしかに“Grapefruit Moon”や“Super Ball”など、小西遼さんとつくった最新曲はブラックミュージック色が強いですね。歌い方も、1年半とか1年前に比べると、ちょっと違ってきているかもしれない。

TOMOO“Super Ball”を聴く(Spotifyを開く

TOMOO:“Grapefruit Moon”のベースとドラムの感じとか、「え、こんなの私がやっちゃっていいの?」と思いながらレコーディングしていました(笑)。「このオケの上で私、歌えるかなあ」って。もう慣れましたけどね。

ただ、ブラックミュージックみがどんどん強くなっているかというと、それはそのときに書く曲や、影響を受けている曲にもよるのかなと思います。

たとえばいま、J-POPっぽいバラードを書いたとしたら、歌い方もまたスッと変わると思うし。今後、ブラックミュージックの要素が自分のなかから消えることはないと思えるくらいは、表現として浸透したとは思いますけどね。ブラックミュージックでもJ-POPでも、寄り過ぎるとダメなんですよ私(笑)。やっぱり「混じっている」のが気持ちいいんです。

─逆に、まだ試していないけどいつか試してみたいアプローチってありますか?

TOMOO:それでいうと、UKっぽい曲って私は書けないんですよ。「書きたい」と思うことはあるんですけど、やっぱりUKミュージックはギターと相性がいいというか、ピアノを軸にしてつくると出てこない気がしていて。聴く分には好きだし、私が歌っている情緒やテンション感との相性はいいはずなんですけどね、まだまだポップスの地平は広いです(笑)。

─“Grapefruit Moon”の歌詞も、これまでになかった新境地だと感じました。この曲についてTOMOOさんは、「ストレスフルな状況のなかで拭えない枯渇感や憔悴感をもったまま、どう日々を満たすか、どう自分を癒していくか。良くも悪くも、そうやって苦い経験や事柄も楽しめるようになるのが大人」とコメントしていましたね。

TOMOO:“Grapefruit Moon”は、じつは2段階に分けてつくっています。最初に着手したのは、いまから数年前。その頃の私は10代の頃のような「超ニューカマー」でもなくなり、微妙な年齢に差しかかっていました。周りの友人たちはみな就職していくなか、自分だけがうだつの上がらない、モヤっとした日々を過ごしている気がしていたんです。

しかも、歌いたいことが10代の頃のようにはなくなっている自分に、はたと気づいてしまった。「私の感性はもう、干からびてしまったのでは……?」と思っていたある夜、夏じゃないけど暑くて喉がカラカラだったときに、グレープフルーツジュースを買いにコンビニへ行こうと思ったら、ちょうどその日が満月だったんです。

TOMOO“Grapefruit Moon”を聴く

TOMOO:満月のときって本能が呼び覚まされたり、普段は蓋をしている自分の内側が引っ張り出されたりするっていうじゃないですか。あるいは「Cry for the Moon」というイディオムが英語にあるように、月は手の届かないもの……ないものねだりの象徴でもある。そんなことを考えながら、思いついた言葉をメモに残しておいたんです。

─それは、どんな言葉だったのですか?

TOMOO:「感受性と果実は、どちらも水をやりすぎてはダメで、ある程度の渇きは必要。それならいま、自分の感受性が『乾いている』と実感すること自体は悪いことではないかもしれない」みたいな内容でした。

そこでいったん、考えをストップしていたのですが、あれから5年くらい経ったいまは当時よりもずっと恵まれた環境にあって。それは、これまでずっと地道に音楽活動を続けてきて、たとえば月が新月から満月になっていくように、いろんな意味で自分に恵まれた環境が「回ってきた」ような気がするんです。そこには「ありがたみ」と同時に「恐れ」でもあるなと。

地道に音楽活動が実ったいま抱く「恐れ」と、歌われる「人と人の関係性」の変化

─「恐れ」というのは?

TOMOO:もう何も言いわけができないところに来ているというか。「これから」だった数年前とは違って逃げられない感じがあるじゃないですか(笑)。そうやって、「満月」の意味合いが新たにひとつ加わることで、この曲のテーマが重奏的になっていったわけです。

─そのことを、<見えてるあれこれは増えて / 翼にも枷にもなる><飲み込めない憂いはもう日々に隠れ / でも“角がないから”丸いわけじゃない>という歌詞に込めたわけですね。

TOMOO:はい。悩みが見えていないからといって、問題がないわけじゃない。角がすり減って、ちゅるちゅるっと丸くなったんじゃなくて、いろいろあるから、見えるものが多いから多面的になっちゃって丸いだけだよっていう。

─映画『君は放課後インソムニア』のために書き下ろした“夜明けの君へ”は、孤独を抱えていたTOMOOさんが音楽を通してファンと深めた「絆」を歌っているようにも聴こえました。それぞれがひとりぼっちで輝く「星」だったTOMOOさんとファンが、暗闇のなかでつながり「星座」となる……というような。

TOMOO:なるほど、それは新しい視点ですね(笑)。“夜明けの君へ”は、モチーフとして「ファンとの関係」があったわけじゃないんですけど、素直にいまの私のファンへの気持ちとか、向き合い方とシームレスにつながっているというか。歌いながら、「演じる」とかではなく、この曲に込めた気持ちをファンに向けることができますね。

TOMOO“夜明けの君へ”を聴く(Spotifyを開く

TOMOO:映画では、主人公たちが天体撮影を通じて心を通わせたり、お互いを見出したりしていくさまが描かれていたので、それを汲み取った歌詞にしようと思っていました。そもそもそういう相補性、「自分という存在は、他者と向き合うことで輪郭が見える」みたいなことに関心があったんです。

思えば“スーパースター”という曲でも、「自分が放った光を誰かが受け止めることで、ようやく自分が存在していることになる」みたいなことを書いていましたし。

私自身も音楽活動をはじめて5、6年くらい経ち、人と関わることがだんだん増えていくなかで、「この人と出会えてよかったな」とか、「心が通ったな」と思ったときの、すごく嬉しかった記憶とかが呼び起こされて、ずっと考えていた「相補性」みたいなことを、ようやく楽曲にすることができたんです。

TOMOO“スーパースター”を聴く(Spotifyを開く

─以前のインタビューで「物事というのは結局、人と人との関係で進んでいく」とおっしゃっていましたが(*1)、このアルバムでもさまざまな関係性を歌っています。活動を続けていくなかで、伝えたいことは変化してきていますか?

TOMOO:曲を書きはじめたばかりの頃は、たとえば「届かない距離」や「言いたいけど言えない」みたいな微妙な関係性や、もう終わってしまった関係性が自分にとってのハイライトだったと思います。でもここ最近は、「安心」や「大切」みたいなキーワードが登場しがちな気がしますね。心と心がバチっと合ったり、手と手をつなげた瞬間だったり。

─<いっせーのでたたいた鍵盤 見てないエンドライン>と歌う、“オセロ”もそういう曲でした。

TOMOO:そうですね。この先増えるのは、「関係性を結べたことが、決してゴールではない」と歌う現実的な曲だと思います。おそらく今後も「スッキリ解決! 無問題〜!」には絶対ならない、しかも「実体」を伴うような関係性の曲を書いていくのだろうなと。

TOMOOが一生をかけて歌う「愛についてのフィロソフィー」。その次なる展望は?

─“夢はさめても”は、それに近いテーマですよね。恋のはじまりの時期に抱いていた相手への「幻想」が、剥がれ落ちてしまったその先にあるかもしれない「希望」について歌っている。

TOMOO:ああ、たしかに。でもあの曲を書いたのって、じつはかなり前なんですよ。「第三の自分」というか、ちょっと斜め上の俯瞰している視点で書けた曲。「実感」ではなく、「この先きっとこうなっていくんだろう」みたいな。

この曲を書いた10代の頃は、それをなんとなく思っていただけで、いまのほうがわかる気がしますし、これから歳を重ねていってもしっくりくる曲になったかなと思っています。そういうふうに、実感があとからついてくる場合もある。きっとそういう曲も、今後また出てくるのでしょうね。

TOMOO“夢はさめても”を聴く(Spotifyで聴く

─TOMOOさんに初めてインタビューをしたとき(*2)、「自分の歌のテーマは結局のところ人と人との『心』のこと」「愛について考えている過程で生まれたフィロソフィーみたいなものを形に残しておきたい」「それって一生かかるかもしれない」とおっしゃっていたのがとても印象に残っています。『TWO MOON』をつくり終えたことで、その考え方に何か変化はありましたか?

TOMOO:変わってないですね……「一生かかるかもしれない」と変わらず思っています。きっとおばあちゃんになっても考えているんじゃないかなあ(笑)。

おそらく次のアルバムには、この先見つけた新しいフィロソフィーが詰まった作品になると思います。最近も見つけたんですよ、愛についての新しいフィロソフィーを。まだ音源になっていないですけど、ちょうど書いているところです。

─リリースされる日を楽しみにしています。アルバムを携えたツアーが11月からスタートしますが、意気込みはいかがですか?

TOMOO:これまでツアーやワンマンをやらせてもらうなかで、いよいよバンドメンバーとの信頼関係も、お客さんとの信頼関係も、「あ、なんだかあったまってきた〜!」という変化に喜ぶ段階を経て、自分のなかにしっくりきている感じですね。

人って生き生きと話ができるときは、相手を信頼しているからこそ本当に伝わりやすいというか。話すときの表情やトーンだけでも、自分の心をスッと届けられると思うんです。いまは私がナチュラルに思っていることを、そうやってシンプルに素直に、やっと届けられる状況になっているんじゃないかなと思っていて。

─それはやはり、昨年2月のワンマンライブ『YOU YOU』(渋谷WWW X)や、同年8月のワンマンライブ『Estuary』(LINE CUBE SHIBUYA)、そして今年6月からのツアー『Walk on the Keys』などを経験してきたからこそ?

TOMOO:そうですね。作品の世界観をパッケージングして、まるで絵のようにつくり込んだステージも、私がちょっと頑張ってテンションを上げて(笑)、アクティブに「距離縮めようぜ?」みたいなカジュアルかつフレンドリーなステージも、そのどちらも経験したことで、お客さんとの心の距離がどんどん近づいている。いま、こうして話しているのと同じような感じで、ライブもちゃんと「伝わる」気がしていますね。いまからとても楽しみです。

*1:音楽ナタリー「TOMOO『Cinderella』インタビュー|異なる価値観に揺さぶられる感情、ソウルフルなラブバラードで描きたかったもの」参照(外部サイトを開く

*2:Real Sound「TOMOOが音楽を生み出す原動力 活動のルーツから思考への影響まで……独自のクリエイティビティに迫る」参照(外部サイトを開く

リリース情報
TOMOO
『TWO MOON』(CD+Blu-ray)


2023年9月27日(水)リリース
価格:4,950円(税込)
PCCA-06221

[CD]
1. Super Ball
2. オセロ
3. Ginger
4. 酔ひもせす
5. Grapefruit Moon
6. 17
7. ベーコンエピ
8. Cinderella
9. Mellow
10. 夢はさめても
11. HONEY BOY
12. 窓
13. 夜明けの君へ

[Blu-ray]
『TOMOO 1st LIVE TOUR 2022-2023 "BEAT" from 2023.1.15 Zepp DiverCity (TOKYO)』

1.オセロ
2.酔ひもせす
3.What’s Up?
4.らしくもなくたっていいでしょう
5.レモン
6.地下鉄モグラロード
7.Mellow
8.ベーコンエピ
9.夢はさめても
10.17
11.スーパースター
12.Friday
13.Cinderella
14.HONEY BOY
15.POP’N ROLL MUSIC
16.恋する10秒
17.ロマンスをこえよう
18.Ginger
19.グッドラック
20.TOMOO 1st LIVE TOUR 2022-2023 ”BEAT”from 2023.1.15 Zepp DiverCity (TOKYO) Behind The Scenes(Bonus Track)
TOMOO
『TWO MOON』(CD+DVD)


2023年9月27日(水)リリース
価格:4,950円(税込)
PCCA-06222

TOMOO
『TWO MOON』(CD)


2023年9月27日(水)リリース
価格:3,080円(税込)
PCCA-06223

1. Super Ball
2. オセロ
3. Ginger
4. 酔ひもせす
5. Grapefruit Moon
6. 17
7. ベーコンエピ
8. Cinderella
9. Mellow
10. 夢はさめても
11. HONEY BOY
12. 窓
13. 夜明けの君へ
プロフィール
TOMOO
TOMOO (ともお)

6歳よりピアノを始め、のちに聴いたことがない楽曲の歌詞に自分で即興のメロディーをつけて歌って遊んでいたことをきっかけに作曲に興味を持つようになる。中学に入りオリジナル曲の制作を開始。その後、本格的に音楽活動をスタートさせる。PONYCANYON / IRORI Recordsより、2022年8月3日にメジャー1stデジタルシングル“オセロ”をリリース。Spotify が2023年に躍進を期待する次世代アーティスト『RADAR:Early Noise 2023』に選出され、注目を集めている。



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