Vaundy、破格の快進撃を続けた3年半。5億再生越えの“怪獣の花唄”など『replica』収録曲でたどる

Vaundyの2ndアルバム『replica』の収録曲はなんと全35曲。CDでは2枚組で、15曲入りのDisc 1と、これまで配信で発表してきた20曲を収録したDisc 2とに分かれている。前作『strobo』からの3年半というインターバルは新人としては異例であり、35曲というボリュームも規格外。そこには、ストリーミング時代への移行とともに颯爽と現れ、さまざまな価値観を更新し続けるVaundyという特異なクリエイターのあり方がそのまま表れていると言えるだろう。

コロナ禍を経てライブシーンが再び活気を取り戻し、「アニソン」というカルチャーの重要度がさらに増し、グローバルな展開を見据えるアーティストが増えてきた現在(※)。前作から3年半で起きた音楽シーンの変遷ともリンクし、時代を体現している『replica』の重要曲をピックアップしながら、Vaundyの現在地に迫った。

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トータル再生数は44億回以上、再生数億越えの楽曲は13曲。Vaundyの破格の快進撃をたどる

2019年6月にYouTubeで楽曲を初めて公開し、9月のミュージックビデオ公開に続いて、11月にデジタルリリースされた“東京フラッシュ”で急速に話題を集めたVaundy。

翌2020年の年明けには藤井風らとともに「Spotify RADAR:Early Noise 2020」の10組に選出されると、5月に発表した1stアルバム『strobo』によって、インターネット発の次世代クリエイターにして、ネクストブレイクの最右翼であることを印象づけ、実際にその後の3年半で次々と記録を打ち立ててきた。

Vaundy“東京フラッシュ”のミュージックビデオ 収録アルバム『strobo』を聴く(Spotifyを開く

Spotify PremiumのCMソングに起用された“不可幸力”で2021年5月に初めてストリーミング総再生数1億回を突破すると、7月には“napori”、2022年1月には“怪獣の花唄”も1億回を突破。2023年6月の“裸の勇者”で早くも10曲目の1億回再生を記録している。

2023年5月には“不可幸力”が3億回、8月には“napori”が3億回を超え、10月には“怪獣の花唄”が5億回再生を達成したのも記憶に新しい。

Vaundy“不可幸力”を聴く(Spotifyを開く

11月現在ではストリーミング1億回再生突破曲数は13曲に達し、YouTubeとストリーミングのトータル再生数は44億回再生以上で、これは国内の男性ソロアーティストでは日本1位。

“不可幸力”、“怪獣の花唄”と並ぶ人気曲、小松菜奈が出演するミュージックビデオも話題を呼んだ“踊り子”がYouTube PremiumのCMソングであったことも含め、やはりインターネット/ストリーミング時代の寵児であることは間違いない。

Vaundy“踊り子”を聴く(Spotifyを開く

活気を取り戻したライブシーンを象徴するアンセム“怪獣の花唄”

VaundyがYouTubeやストリーミングで人気を博した背景にはコロナ禍も大きく関係し、2020年からしばらくは家で音楽を楽しむライフスタイルが定着していたわけだが、徐々に規制が緩和され、ライブハウスやフェスが活気を取り戻すと、Vaundyもライブ活動を本格化させた。

2021年に初めての全国ツアーを行ない、2022年には早くも日本武道館2デイズ公演を成功させ、今年も昨年に続いて20本以上におよぶツアーを開催。イベントやフェスにも多数出演することにより、ライブアーティストとしての存在感を確立したことは間違いない。

この3年半のあいだで代表曲がシティポップ・リバイバル以降のトレンドを吸収した“東京フラッシュ”や“不可幸力”から、ロックナンバーの“怪獣の花唄”になったことは、時代の変化を象徴しているといえるだろう。

Vaundy“怪獣の花唄”を聴く(Spotifyを開く

『strobo』に収録された“怪獣の花唄”はもともとライブを意識した楽曲であり、オーディエンスとのコール&レスポンスを想定して書かれていたが、アルバムリリース後に行なわれた2020年8月の1stワンマンは無観客での開催に。その後有観客になってもオーディエンスが声を出せない時期が続き、<思い出すのは君の歌/歌い笑う顔が鮮明だ><もう一度/また聞かせてくれよ/聞きたいんだ>と歌われるこの曲をライブで披露する際には複雑な想いもあったかもしれない。

しかし、ようやく声出しが解禁となった2023年はこれまで溜めに溜め込んだ想いをすべて解放するかのように、全国各地でこの曲で合唱が起こり、コロナ禍の困難を乗り越え、活気を取り戻したライブシーンを象徴するアンセムとして響き渡るようになった。『replica』のDisc 1の終盤にこの曲が“怪獣の花唄 -replica-”としてもう一度再録されていることは、そんな3年半のストーリーを感じさせるものである。

“怪獣の花唄”2023年3月のライブ映像

「ロックスターとしてのVaundy」を体現する“ZERO”

一度でもVaundyのライブを観たことがある人であれば、彼のステージ上におけるロックスターぶりが強烈な印象として残っていることだろう。前述のとおり彼の楽曲が最初に知れ渡ったのはYouTubeやストリーミングを通じてだったが、彼の最大の武器である「歌」の魅力が最大限に伝わってくるのはやはり生のライブだ。

彼はフェスのような大舞台でもスクリーンに自らの姿を映し出すことはしない。そこからは「ライブの現場に来てまでスクリーンを見つめるんじゃなくて、音そのものを、歌そのものを浴びてほしい」という表現者としての矜持を感じさせる。

『replica』にもそんな現在のモードが反映されており、特にDisc 1は『strobo』に比べてライブ映えのするロックナンバーの割合が増えているのが印象的。その象徴がアルバムの実質的なオープニングナンバーである“ZERO”だ。

Vaundy“ZERO”を聴く(Spotifyを開く

この曲はSpotifyブランドのCMソングで、3年前に同じSpotifyのCMソングだった“不可幸力”が(曲の途中までは)ややダウナーな雰囲気だったのに対し、“ZERO”は重厚でスケール感のあるロックナンバー。背景で鳴り続けるノイズが不思議な音像をつくり出していることも含め、時代を体現する表現者としてのVaundyが、ここにも明確に刻まれているといえるだろう。

アニメオタクとしての本領を発揮した“裸の勇者”、“CHAINSAW BLOOD”、“トドメの一撃”

この3年半でVaundyは3曲のアニメ関連楽曲を手がけている。

『王様ランキング』第2クールのオープニングテーマ“裸の勇者”、『チェンソーマン』第1話エンディングテーマ“CHAINSAW BLOOD”、そして『SPY×FAMILY』Season 2エンディングテーマとなっている最新曲“トドメの一撃 feat. Cory Wong”である。

Vaundy“裸の勇者”を聴く(Spotifyを開く

小中時代からアニメやゲームに夢中になり、一時期は声優を志したこともあったりと、「オタク」であることを自称するVaundyにとって、アニメの楽曲を手がけることには大きな意味があり、制作に対する熱量はかなりのものだった模様。あくまでVaundyの楽曲としての独自性を保ちながら、しっかりアニメ作品との融合を果たしていた。

動画プラットフォームの普及なども関連して、「アニメ」というカルチャーはこれまで以上に大きな影響力を持ち、現在「アニソン」は時代のトップアーティストが作品との相乗効果でそのクリエイティビティを発揮する場所としても機能している(※)。

『チェンソーマン』のオープニングである米津玄師の“KICK BACK”も、『SPY×FAMILY』における星野源、Official髭男dism、Adoの各楽曲もそういったもので、Vaundyにとってもこの3曲はこの3年半のなかでも特に大きな意味を持つ楽曲だったといえるはずだ。

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『チェンソーマン』第1話スペシャルエンディング。Vaundy“CHAINSAW BLOOD”を聴く(Spotifyを開く

『SPY×FAMILY』Season 2エンディングのアニメ映像。Vaundy“トドメの一撃 feat. Cory Wong”を聴く(Spotifyを開く

AdoやAimerらとのコラボレーションに見る「歌」の時代、藤井風との特別な関係性

現在、YouTubeやTikTokがヒットの起点となり、単発でのヒットが増えたことによって、アーティスト同士の接点が生まれにくくなり、シーンが生まれにくくなったという話を目にする機会が増えた(※)。

そんななかにあって、Vaundyはこの3年半でさまざまなアーティストとコラボレーションを行ない、新たなシーンを創設してきたことも特筆に値する。

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milet×Aimer×幾田りら“おもかげ”を聴く(Spotifyを開く

milet、Aimer、幾田りらの3人が歌唱し、2022年末の『NHK紅白歌合戦』ではVaundyも参加して披露された“おもかげ”を皮切りに、ミュージッックビデオの監督も務めた菅田将暉の“惑う糸”、『ONE PIECE FILM RED』の劇中歌である「ウタ」名義によるAdoの“逆光”、さらにはyamaの“くびったけ”と、Vaundyは自身の曲を発表するだけでなく、楽曲提供/プロデュースワークも活発に行なってきた。

2023年には再度Adoに“いばら”を提供し、『replica』には“逆光”のセルフカバーも収録。歌声そのものに強烈な個性を持っているシンガーへの提供が多いのは、Vaundy自身が「歌」の人であることの裏返しでもあり、そういった歌い手たちが現代の音楽シーンをリードしていることを強く印象づける。

菅田将暉“惑う糸”を聴く(Spotifyを開く

Vaundy“逆光 - replica -”を聴く(Spotifyを開く

「音楽塾ヴォイス」の同級生で、これまでに最多となる5曲でコラボレーションをしているChilli Beans.も盟友といっていい関係性だが、もう一人触れておきたいのが藤井風の存在だ。

音楽性やキャラクターはそれぞれだが、ともにYouTubeを出自に持ち、同時期に1stアルバムを発表し、2020年代を代表するソロアーティストとなった2人は、2020年9月にライブで共演を果たしているものの、これまで楽曲におけるコラボレーションの実績はない。

しかし、2022年の『RISING SUN ROCK FESTIVAL』でVaundyが新型コロナウィルス感染によって出演キャンセルになった際、急遽ピンチヒッターとして藤井風が出演。Vaundyの“踊り子”、“恋風邪にのせて”、“napori”、“東京フラッシュ”をカバーした。

そして、リベンジ出演を果たした今年のステージでは、Vaundyがお返しに藤井風“何なんw”のカバーを披露。時代のトップランナー2人による、1年越しのリスペクトの交換は今年のハイライトのひとつとなった。

VaundyのX(旧Twitter)より

Vaundyはこの先、どのように海外に打って出るか。『replica』で垣間見せた野心

日本人アーティストとのコラボレーションの一方で、Vaundy自身の楽曲における初のフィーチャリングアーティストになったのが、“トドメの一撃 feat. Cory Wong”に参加しているコリー・ウォン。日本でも人気の高いミニマルファンクバンド、Vulfpeckなどの活動で知られ、今年の『FUJI ROCK FESTIVAL』ではVaundyと同じ日に出演していたギタリストだ。

Vaundy“トドメの一撃 feat. Cory Wong”を聴く(Spotifyを開く

Vaundyは活動初期にLAのシンガーLAUVのリミックスを手がけてもいたが、“トドメの一撃”でのコリー・ウォンの参加、初の英語詞曲である“ZERO”などからは、今後グローバルな展開を視野に入れているであろうことが伝わってくる。

そもそも1stアルバムの『strobo』というタイトルは、海外の人がこの作品を知ったときに、日本人がつくったアルバムであることがわかるように、正しい英語の綴りである「strobe」ではなく、あえて和製英語の「strobo」にしたというエピソードがある。つまり、彼はもともと世界を意識していたのであり、アニソンが「世界で聴かれる日本の音楽」としてのポジションを確立していることも十分に理解しているはず(※)。

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LAUV“Modern Loneliness(Vaundy Remix)”を聴く(Spotifyを開く

“死ぬのがいいわ”が世界でバイラルヒットとなった藤井風は、2023年に海外からDahiやA.G.Cookをプロデューサーに迎えた楽曲を発表。Adoは2022年、アメリカの「Geffen Records」とパートナーシップを締結することを発表して、2024年2月から初のワールドツアーが開催されることも決定している。最新曲にルイス・コールとサム・ゲンデルを迎えた星野源なども含め、日本の音楽シーン全体の変化も、Vaundyのつくる楽曲の変化に影響を与えているだろう。

『replica』収録の“NEO JAPAN”は、Vaundyの「日本と海外」に対する現在の意識がもっとも明確にリリックに表れた1曲。

ループの心地よさと繰り返される転調による違和感が同居したトラックの上でラップをし、日本の置かれた現状を<ディストピア>と表現しながら、<僕らは向かうNEO JAPAN>と、同志たちへと呼びかける。ジャパニーズカルチャーの未来を切り拓く担い手としての意志を強く感じさせるこの曲は、『replica』における最重要曲のひとつである。

Vaundy“NEO JAPAN”を聴く(Spotifyを開く

アルバムタイトル「replica」に込められたもの

もうひとつの最重要曲が、Disc 1のラストに収録されているタイトルトラックの“replica”。

この曲は、誰かのアクションに対して至るところから心ない冷笑の矢が飛んでくる時代のなかで、自らの創作が過去の集積であり、その再編集であることを自覚しながら、それが決して無駄ではないことを信じ、手を動かし、歌い続けることの誇りを感じさせる。

Vaundy“replica”を聴く(Spotifyを開く

ストリングスを配した雄大なアンサンブルのなかで歌われる<What a terrible news “That’s a replica.” けれども 「嘘じゃない」と言う><そして彼は、模倣を称した。>というリリック。感情的なシャウトもあいまって、ここにVaundyのリアルな心情を読み取ることができるように思う。

Vaundyの歌唱は、特にロックソングにおいて、ときおり元Oasisのリアム・ギャラガーを想起させる部分があり、それを指摘して「模倣」だと眉をひそめる人もいるのかもしれない。しかし、デビュー時から爆発的な人気を獲得したOasisが当時一部から「The Beatlesのパクリ」と散々言われながらも、いまではUKロックのレジェンドとして後続に影響を与え続けていることは歴史が証明している。

Vaundyの創作に対する真摯な姿勢もまた、この国の音楽を、文化を、大きく動かしていくことだろう。そしてきっと彼のつくり出した「replica」は、すでに誰かにとっての創作の源となっているに違いない。

Vaundy『replica』Liner Voice+を聴く(Spotifyを開く

リリース情報
Vaundy
『replica』完全生産限定盤(2CD)


2023年11月15(水)リリース
価格:4,200円(税込)
VVCV 6-8
※スペシャルブリスターパックパッケージ

[Disc 1]
1. Audio 007
2. ZERO
3. 美電球
4. カーニバル
5. 1リッター分の愛をこめて
6. 常熱
7. Audio 006
8. 宮
9. 黒子
10. 逆光 - replica -
11. NEO JAPAN
12. 呼吸のように
13. 怪獣の花唄 - replica -
14. Audio 008
15. replica

[Disc 2]
1. Audio 003
2. 世界の秘密
3. 融解sink
4. しわあわせ
5. benefits
6. 花占い
7. Tokimeki
8. 泣き地蔵
9. 踊り子
10. 裸の勇者
11. 恋風邪にのせて
12. 走馬灯
13. mabataki
14. CHAINSAW BLOOD
15. 瞳惚れ
16. 忘れ物
17. 置き手紙
18. まぶた
19. そんなbitterな話
20. トドメの一撃 feat. Cory Wong
Vaundy
『replica』通常盤(2CD)


2023年11月15(水)リリース
価格:4,000円(税込)
VVCV 9-10
※初回仕様限定特殊スリーブ
イベント情報
『Vaundy New Album “replica” Release Party LIVE』

2023年12月1日(金)
会場:神奈川県 横浜アリーナ
プロフィール
Vaundy (バウンディ)

作詞、作曲、アレンジを全て自分でこなし、デザインや映像のディレクション、セルフプロデュースも手がけるマルチアーティスト。2019年春頃からYouTubeに楽曲を投稿開始。2023年夏現在、YouTube・サブスクリプションのトータル再生数は、46億回以上を突破。リリース配信楽曲は長期にわたりチャートイン。CM、ドラマ、アニメなど各方面で、タイアップ曲に多数起用されている。2022年12月31日、『第73回NHK紅白歌合戦』に初出演。2023年11月15日、前作より約3年半ぶりとなる全35曲入りの2ndアルバム『replica』をリリースする。



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「Kompass」は、ネットメディア黎明期よりカルチャー情報を紹介してきたCINRA.NETと、音楽ストリーミングサービスの代表格Spotifyが共同で立ち上げた音楽ガイドマガジンです。ストリーミングサービスの登場によって、膨大な音楽ライブラリにアクセスできるようになった現代。音楽の大海原に漕ぎだす音楽ファンが、音楽を主体的に楽しみ、人生の1曲に出会うガイドになるようなメディアを目指し、リスニング体験を交えながら音楽の面白さを紹介しています。

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