Spotifyが、今年躍進を期待する国内の次世代アーティスト10組を選出する『RADAR:Early Noise 2023』を発表した。そのなかの1組、ヤングスキニーはビクターエンタテインメント/SPEEDSTAR RECORDSからメジャーデビューを果たした平均年齢20歳の4ピースギターロックバンド。フロントマンかやゆーによる日常を切り取ったリアルな思いを描く等身大の歌詞で、10代を中心に熱い支持を得ている。
今年の『RADAR:Early Noise 2023』で紹介されたロックバンドはヤングスキニーのみ。コロナ禍でバンド活動が思うように立ち行かないなか、SNSを巧みに活用し共感を広げるタイプのバンドが増えているシーンを象徴する存在として、彼らに光が当たったと思われる。
そこで今回Kompassでは、同じくTikTokなどで頭角を現し、現在は国内有数のフェスに多数参加するなどライブバンドとしても確実にファンベースを広げている「神はサイコロを振らない」の柳田周作と、かやゆーによる対談を実施。いわゆる「男らしさ」とは対照的な歌声や、等身大の男性の「弱さ」を赤裸々に綴っている二人に、コロナ禍でバンドを続けるモチベーションや、お互いの音楽性、歌詞世界について語り合ってもらった。
「Twitterでメンバー募集したとき、音楽の技術とか方向性より人としっくりくる相手かどうかを重視したんです」(かやゆー)
─お二人は、お互いのことをご存知でしたか?
柳田:ぼく、SNSでエゴサをめっちゃするんですけど、邦ロックが好きな若いリスナーの投稿に絶対入っているのが「ヤングスキニー」というワードなんですよね。特に女の子が多いのかな。なんか、有名なタグがあって……。
かやゆー:「日タグ」ですよね。「#日曜日だし邦ロック好きと繋がりたい」というやつ。
柳田:そうそう! それにほとんどヤンスキが入ってる。それでまず名前を知りました。
かやゆー:ぼくはバンドを始めてまだ2年半で、バンド自体に興味を持ったのも高三くらいの頃なんですよ。その頃にはもう「神はサイコロを振らない」の名前はすごく目にしていました。
ぼくはTikTokをやっているので、“夜永唄”がバズったのも知っています。その曲も好きですが、友だちの女の子から教えてもらった“パーフェクト・ルーキーズ”を聴いたら、また全然違う雰囲気で。そのギャップに感銘を受けましたね。
柳田:ヤンスキの歌詞って、例えば「昔の彼女について」とか「バンドマンの日常」とか、若い世代の子たちに刺さりやすいテーマが多いじゃないですか。聴いていると、自分がまだ神サイを始める前……シンガーソングライターとして福岡から東京に出てきて高円寺の商店街で路上ライブしていた頃のこととか、その頃に付き合っていた彼女のこととかも思い出して、すごく懐かしい気持ちになるんです。
ヤングスキニー“らしく”を聴く(Spotifyを開く)
柳田:でも、やっている音楽はすごく幅広い。最近ヤンスキのライブ映像を見たんですけど、そこに上がっていた3曲がそれぞれまったく違うアレンジで。そこは神サイとも共通する部分なのかなと思いました。今年、21歳になるの?
かやゆー:3月で21歳になります。
柳田:そっか、じゃあ7つ離れているんだね。そうするとミュージシャンで共通の知り合いとかいるのかな。
かやゆー:そもそもぼく、友だちがあまりいないので……。
柳田:わかる(笑)。これ、ボーカルあるあるなんですよね。わりとギターとかベースは飲みの場へ行って交流を広めているのに、ボーカルってあんまりそういうことしないですよね。本当に限られた2、3人の友だちと、深い付き合いをするだけ、みたいな。
かやゆー:いやもう、ほんとそうです(笑)。片手で数えられるくらいしかぼくもいないです。そういえば、今回ぼくと同じく『RADAR:Early Noise 2023』に選ばれたシンガーソングライターのれんさんのことは、柳田さんご存知なんですよね?
柳田:そう。めっちゃ友だちで。彼とかやゆーくんは歳も近いし話が合うんじゃないかな。仲良くなってほしいです。かやゆーくん、元サッカー部なんだよね? れんもずっとサッカーやっていたし、結構共通点も多い気がする。ちょっと雰囲気も似ているしね。
─曲づくりの面で、お互いに気になったところはありますか?
柳田:ぼくは、ヤンスキの“本当はね、”がすごく好きです。こういうアレンジ、ぼくがかやゆーくんくらいの年齢の頃だったら絶対にたどり着かなかっただろうなと思うんですよ。当時のぼくは、とにかくポストロック一辺倒で「それしか好きじゃない」「それ以外の要素は入れたくない」みたいに、こだわっていたところがあったので。
ヤンスキは本当にいろんな音楽の要素を取り入れて、そのなかの一つとしてこういう“本当はね、”みたいなアレンジもできてしまうのがすごいなあと思いますね。きっといろんな音楽をどんどん聴いて、インプットとアウトプットを繰り返しているんだろうなと。
ヤングスキニー“本当はね、”を聴く(Spotifyを開く)
かやゆー:それはきっと、アレンジをバンドメンバー全員でやっているからだと思うんです。ぼくら、Twitterでメンバー募集をかけて結成されたバンドなんですけど、そのときに音楽の技術とか方向性よりも、とにかく人としっくりくる相手かどうかを重視したんですよ。なので、聴く音楽のジャンルも全然違っていて。
もし、ぼくが作詞作曲だけでなくアレンジまですべてやっていたら、きっと同じような感じの曲ばかりになってしまうところを、メンバーのおかげで面白くしてもらっているところが往々にしてあるんです。
柳田:そこも神サイとめっちゃ似ているな。ぼくらも「好きな音楽が同じだから」とかもちろん、演奏力とかポテンシャルがあると思ったからこそ声をかけたんだけど、「みんなでラーメンを食べに行って楽しい」とかそういうフィーリングの部分をすごく大事にしたんですよね。
「自分とはまったく違う活動の仕方をしてきた人のほうが、より多くの刺激をもらえるんです」(柳田)
─歌詞はどんなふうに書いているのですか?
柳田:基本的に神サイではぼく自身の実体験をもとに書いていくことが多いんですけど、かやゆーくんはどう?
かやゆー:ぼくの場合は8割ノンフィクションで、2割がフィクションという感じです。ヤンスキは女の子目線の曲が多いんですけど、それは「女の子は、こういうときにこうするだろう、こう思うだろう」と想像して書くというより、自分がすること、思っていることをそのまま女性言葉にして書いている曲のほうが多いんですよ。
別に狙ってそうしているわけではなくて、メロディーに乗せたときに「ぼく」よりも「わたし」のほうがハマりがいいからたまたまそうしているだけなんです。思っていることって、じつは女の子も男の子もそんなに変わらない気がします。
─なるほど。ヤンスキの歌詞に登場する女性が、男性にとって「こうあってほしい女性像」になっていないのは、かやゆーさんのそういう手法によるところは大きいのかもしれないですね。神サイの曲にも、女性目線の曲って結構ありますよね。
柳田:ぼくの場合は歌詞のなかに男性と女性を登場させて、一つの出来事に対して両方の目線で描く曲が多いですね。例えば、自分自身に実際に起きたことを描いていても、そこにぼくの目線だけじゃなくて、そのときに女の子はどう思っていたのかを想像して、その目線も入れるようにしているんです。そこは、かやゆーくんの書き方とは違うかもしれない。
かやゆー:ぼくは2年前から歌詞を書き始めたのですが、その頃は「ストレートすぎる」ということへのコンプレックスがあったんですよ。言い回しとかも複雑じゃないし「恥ずかしいな」「ダサいな」と思っていたんです。
最近になって、ようやくそのストレートなところが強みというか、自分らしさなのかなと思えるようになったのですが、そんなぼくからすると神サイの歌詞は、「こんなワード、日常生活のなかからじゃ絶対に出てこないだろ」と思う言い回しが満載で。それが歌詞の世界を豊かにしているように感じるんですよね。
柳田:嬉しいです。例えば“揺らめいて候”という曲は、それこそ男性目線と女性目線が交差するこじれた物語を描いているんですけど、例えば〈耳朶(じだ)を食(は)まれ〉みたいな、昔っぽい言い回しをところどころに混ぜていて。そのときは官能小説を参考にしていましたね。エッチな表現もいろいろあって、「こういう言い回しだったらめっちゃキレイじゃん」と思った。
かやゆー:へえ!(笑)
柳田:あとは、普段から「これはほかにどういう言い方があるかな」とか「これは、何に喩えられるだろうか」みたいなことはよく考えていますし、そのときに読んでいる本のなかから言葉を見つけてくることも多いです。最近、それもちょっと疲れてきちゃって(笑)。「別にストレートだっていいじゃん!」というモードにもなってきましたけど。
かやゆー:ぼくの場合は何か本を読んで、そこからインスパイアされることはあまりないんですけど、バンドを始めた頃からずっとクリープハイプの尾崎世界観さんが書く歌詞が好きで、言葉を詰め込んでいくような独特のスタイルは結構影響を受けている気がします。
神サイっていろんな方とコラボをしているじゃないですか。ぼくもそれ、すごく興味あるんです。いつもどうやって共作をしているんですか?
柳田:そこは曲によっても、コラボするアーティストによっても違ってきますね。最近はasmiさんと“朝靄に溶ける”という曲をつくったのですが、それはぼくがメロディーを書いて、1コーラス分の歌詞もまるっと書いたものをasmiさんに送って、2番に彼女目線の歌詞をつけてもらうやり方でした。
2年前にヨルシカのn-bunaさんとBiSH/PEDROのアユニ・Dさんとでつくった“初恋”の場合は、メロディーをn-bunaさんに書いてもらい、歌詞はすべてぼくが書いてアユニさんと一緒に歌っています。本当にいろんなやり方がありますね。
神はサイコロを振らない × asmi“朝靄に溶ける”を聴く(Spotifyを開く)
神はサイコロを振らない × アユニ・D(BiSH/PEDRO) × n-buna from ヨルシカ“初恋”を聴く(Spotifyを開く)
かやゆー:なるほど、面白いですね。
柳田:コラボの醍醐味は、自分の引き出しになかったものを曲のなかに加えてもらえることだと思うんですよ。「俺一人だったら絶対にこんな歌詞、書けてないわ」みたいなことが起きるから、かやゆーくんにもおすすめしますよ。
かやゆー:めっちゃやってみたいです。ぼくは「曲をつくろう」と思ってできたためしがなくて、いつも突然ぽっと湧いて出てくる感じだから、なかなかタイアップとかも厳しいんです(笑)。コラボもタイアップも、ぼくにとっては「いつかやってみたいこと」なので、それを両方やられている柳田さんは本当にすごいなと思います。ぼくがコラボをやるとしたらどんな感じがいいんだろう。
柳田:ぼくらは、これまでのコラボは、バンド形態で活動していない人とするのが面白いなというスタンスでやってきたんですよ。自分とはまったく違う活動の仕方をしてきた人のほうが、より多くの刺激をもらえると思って。
例えばn-bunaさんとか、メロディーをつくるときにいつもMIDIに打ち込んでいるみたいで、ぼくみたいにアコギを弾きながら出てくるメロディーとはまったく違う。そういう、誰かが書いてくれた「ぼくらしくないメロディー」を、ぼくらしい歌い方で歌ってみると面白いんです。キタニタツヤとコラボした“愛のけだもの”みたいに、ボカロ界隈から出てきた人が描くメロディを自分なりに歌ってみるのも楽しかったな。
かやゆー:たしかにぼくも、もしコラボをやるならバンドとではなく、まったくジャンルや形態が違う相手のほうが刺激になるだろうし、きっとぼくらのファンも面白がってくれるんじゃないかと思います。
柳田:ぼくらはRin音くんともやっているんですけど、例えばラッパーをゲストに呼んで、ヤンスキの演奏のなかでラップをしてもらうとか。しかもヤンスキだったら男性より女性のラッパーのほうが、さらに化学反応が起こりそう。ぜひやってみてほしいです。
「仕事以外でコミュニケーションを取ることって、じつはすごく大事なんだなとコロナ禍で思い知らされました」(柳田)
─神サイはコロナ禍でメジャーデビュー、ヤングスキニーもコロナ禍でデビューという「試練」を乗り越えてきたと思うのですが、バンド活動がままならない状況だったその期間、バンド存続のためにどんな工夫をしてきましたか?
柳田:コロナ禍のときは、とにかく楽しんで乗り越えようと思っていましたね。ライブやレコーディングができなくなった期間は、メンバー全員で映像作品をつくったり、きもだめしに行ってメンバーにドッキリを仕掛けたり(笑)、キャンプに行ったりして、それをYouTubeにアップしていましたね。再生数は全然伸びなかったんですけど(笑)。
柳田:音楽をやっているときは、言いたくないことも言わなきゃならないときもあるし、そうするとどうしてもギスギスしてしまうんですよね。バンドってそういうものじゃないですか。でも、そうやって音楽以外のことをみんなでやっているときは、大学時代の友人どうしに戻れるんです。撮影中はずっと笑っていられたし、メンバーとコロナ禍にそういう時間を過ごしたからこそ、何とかここまで乗り切ってこられたのかなとも思っていて。
仕事以外でコミュニケーションを取ることって、じつはすごく大事なんだなと思い知らされましたね。ヤンスキは4人で飲みに行ったり、飯を食いに行ったりしてるの? さすがに旅行に行ったりはしないか。
かやゆー:いや、ぼくらSNSで知り合ったにしては、めっちゃ仲が良いんですよ。友だち付き合いの延長線上で音楽をやっているみたいな感じで、逆に音楽とプライベートの境が全然ないんです。バンドでリハーサルやっているときもめちゃくちゃ会話が盛り上がるし、半年に一度みんなで旅行に行ったりもしていて。
柳田:ええ!?
かやゆー:このあいだもみんなでスノボーをしに行きました。ぼくの地元が山梨なので、キャンプとバーベキューをやったこともありますね。ぼくらもYouTubeで企画動画をやっていて、メンバーにドッキリを仕掛けたりもしましたよ(笑)。
柳田:あははは、やってること一緒だ。でも、そういうイベントは絶対に続けたほうがいいですよ。
─今年、ヤングスキニーはSpotifyの『RADAR:Early Noise 2023』に選出されました。今回、バンド形態で選出されたのはヤングスキニーのみ。実際のところ、コロナ禍を経て現在はストリーミングやSNSを巧みに利用し共感を集めるソロアーティストが増えているように思います。そんななか、もともと弾き語りからスタートしたお二人がいま「バンド」で活動しているモチベーションはどこにあるのかを聞かせてもらえますか?
柳田:じつは、コロナ禍になってすぐくらいに『The First Take』からオファーがあったんですよ。久しぶりに一人で歌う機会が訪れたんですけど……メンバーがいないなかで歌うと「ちゃんと歌わなきゃ」というモードになってしまって、すごくプレッシャーを感じてしまいましたね。
神はサイコロを振らない(柳田周作) “泡沫花火/THE FIRST TAKE”を聴く(Spotifyで開く)
柳田:一人で表現することが、嫌いなわけではないんですよ。酒を飲みながら夜中にインスタライブするのも楽しいですし。でも、それはあくまでも趣味に近いというか。ステージに立ち誰かに何かを伝えること、そしてそれを「職業」としてお金をもらっていることとは全然違うし、それはやっぱり神サイでやりたいことなんですよね。
かやゆー:なるほど。
柳田:いまのメンバーじゃなくなる日が来たら、そのときは音楽を辞めようと思っていますね。もちろん曲づくりも弾き語りもできるし、一人で音楽を続けることはできるかもしれないんですけど、いまと同じくらいのモチベーションを保てる気がしない。ずっと神サイの楽しかった時期を思い出しちゃってバッドに入ると思うんですよ(笑)。だからきっと、いまがいちばん「青春」なんだろうなって。
─かやゆーさんは?
かやゆー:それこそ高校生の頃は、みんなが友だちとバンドを組んでいるなか、ぼくは一人弾き語りでやっていて。練習も自分のタイミングでできるし「めっちゃ楽だな」と思っていたんですけど、バンドのアレンジをぼく一人でできるわけじゃないし、メンバーがいなかったらヤングスキニーの曲になならない。そういう意味でぼく自身が「一人がいい」とか「バンドがいい」とか関係なく、曲づくりの面でヤングスキニーにはバンドが必要だということなんですよね。
「コロナ前のライブハウスを知らない人たちが、また一から『あの空間』をつくり上げている感じなんです」(かやゆー)
─神サイ躍進の理由の一つとして“夜永唄”がTikTokでバズったことが挙げられると思います。かやゆーさんも、バンドで活動する前はYouTubeやTikTokを積極的に利用していたそうですが、コロナ禍で配信用のツールが進化していったことで、バンド活動のあり方はどう変わってきたと思いますか?
柳田:たしかに“夜永唄”に関しては、まったく顔もわからないひと組のカップルがTikTokで使ってくれて、そこから広まっていったんですけど、それも本当に偶然というか運が良かっただけだと思うんですよね。狙ってそうなったわけでもないし、狙うなら逆にもっとポップな曲で仕掛けようとするだろうし(笑)。
そもそも、なんでこんなに暗い曲が、たくさんの人に聴かれたのかもいまだに不思議なくらい。なので「バズる」とか「バズらない」とかは、あえて意識しないようにしているし、曲をいろんな人に知ってもらうツールの一つとしてTikTokを利用している感じなんですよね。
かやゆー:ぼくも同じです。SNSは、ぼくがバンドを始めたときにはもうすでに普及していたしTikTokもめちゃくちゃ流行っていたので、そこにあるのが当たり前というか。自分がやりたいことを広く知ってもらうためのツールとして最初からごく自然に利用している感じですね。
実際、“本当はね、”がTikTokでバズったときに、「ヤングスキニー、TikTok受けを狙って曲をつくったのかな?」みたいに言われたことがあったんですけど、全然そんなつもりはなかったし、これからもそういう動機で作品をつくることはないと思っています。
ヤングスキニー“世界が僕を嫌いになっても”を聴く(Spotifyを開く)
─SNSはあくまでも「手段」であって「目的」ではないと。
かやゆー:そう思います。うまく活用できたらめちゃめちゃ心強いツールですけど、曲をつくるときには変にSNSなど意識せず、自分のつくりたいものをつくるのがいちばん大事ですね。
─神サイは先日、Zeppツアーのファイナルで「声出し」解禁となったライブを行ないました。そのときの心境を柳田さんにあらためてお聞きしたいです。
柳田:もともと神サイは、お客さんとシンガロングするような曲とか一切なくて、ライブでも下を向いて暗い曲ばかり演奏していたんですよ(笑)。でもフェスとかに出ると、みんなほかのバンドを見ながらめっちゃ盛り上がっていて。そういう光景を見ているうちに、「俺たちも、お客さんが上がる曲をつくろうぜ」という話になり、そこからライブで盛り上がる曲を増やしていったんです。
その矢先にコロナが始まってしまい、それでもいつかみんなで声を出して歌える日が来ることを願いながら、シンガロングができる曲をずっとつくり続けてきたんですね。
柳田:おっしゃったように、先日お客さんがぼくらの曲を聴きながら一緒に歌ってくれている光景を、神サイ結成してから初めて目の当たりにしたときはさすがにグッと来るものがありました。これを楽しみにコロナ禍を耐え抜いてきたというか。無観客ライブでも配信ライブでも、やり続けられたんだなと思いましたね。8年間、もがいてきた意味があったなと。
─かやゆーさんは今年に入ってライブのあり方などに変化を感じていますか?
かやゆー:ぼくは地元が山梨で、世の中がコロナ禍になる前からなかなかライブに行くこともなくて。初めてライブハウスに足を運んだのも、自分がライブ出演するためだったんです。しかもその時点でコロナ禍も始まっていたし、お客さんがめっちゃ盛り上がっているところとかを肉眼で見たことがなかったんですよ。
最近ようやく声出しもOKのところが増えてきて、いままで映像でしか見たことがないような、お客さんのリアクションを生まれて初めて目の当たりにして本当にはそれを遥かに上回るものなんだなって。
とはいえいまのヤングスキニーも、初期の神サイと同じくお客さんと一緒に盛り上がれる曲が本当に少ないので、もっと増やしていきたいと思っています。というか、ぼくらのライブを観にきてくれているお客さんたちも、コロナ禍になる前のライブハウスに行ったことがない人たちがほとんどなんですよ。
柳田:あ、そうか。例えばいま、17歳くらいの子たちだとコロナ前はまだ14歳とかだもんね。
かやゆー:そうなんです。アーティスト側もオーディエンス側も、コロナ前のライブハウスを知らない人たちが、また一から「あの空間」をつくり上げている感じなんですよね。
─ある意味、一度リセットされた状態からライブシーンを再構築していくような感じですよね。
柳田:本当にそうですね。いざ「声出しOK」と言われても、どのくらいの声を出していいのか、どこで声を出したらいいのか分からないという人もきっとたくさんいると思う。
かやゆー:だからぼくたちも、初めてライブハウスに来るお客さんにいきなり拳とか上げてもらうのも、なんかポーズだけみたいになっちゃったらかっこ悪いなと思っていて(笑)。
柳田:いちばんいいのは、お客さんが自発的に、好きなように演奏に反応してくれること。ノリノリで踊っている人もいれば、泣きながら棒立ちの人もいるっていう。
海外のライブ映像とか見ていると、みんな自分の楽しみ方で自由に楽しんでいるじゃないですか。ああいうのに憧れるというか。もちろん、みんなで一つになって歌ったり踊ったりするのも楽しいし、両方あっていいんじゃないかな。……とか言いつつ、「飛べおら!」って煽ってますけどね。
かやゆー:あははは!
- リリース情報
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ヤングスキニー
『歌にしてしまえば、どんなことでも許されると思っていた』
発売日:2023年03月15日
価格:4,400 円(税込)
商品番号:VIZL-2158
- プロフィール
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- 柳田周作 (やなぎたしゅうさく)
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2015年に吉田喜一(Gt)、桐木岳貢(Ba)、黒川亮介(Dr)とともに神はサイコロを振らないを結成。2020 年“夜永唄”がバイラルヒットし、7月に“泡沫花火”でメジャーデビュー。同年Spotify年間バイラルチャートのTOP10入りを果たす。2021年3月にメジャー1stシングル『エーテルの正体』をリリース。2022年3月にはメジャー1stフルアルバム『事象の地平線』をリリースし、オリコン週間ROCKアルバムランキング1位を獲得。その後、東阪野音Live、全国13都市14公演でのLive Tour『事象の地平線』を経て、2023年1月から全国5都市でのZepp Tour『雪融けを願う飛行船』を開催。
- かやゆー
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2020年8月にSNSでバンドメンバーを呼びかけ、ゴンザレス(Gt)とともにヤングスキニーを結成。のちにりょうと(Ba)、しおん(Dr)が加入し、2021年7月に現体制となる。2021年2月に“世界が僕を嫌いになっても”のMVを公開すると、SNSを中心に反響を呼ぶ。2022年10月5日“本当はね、”をリリースし、各ストリーミングチャートの上位にランクイン。TikTokでは楽曲を使用した投稿が急増し、MVの再生回数は2週間で100万回を突破。2023年3月15日に1stフルアルバム『歌にしてしまえば、どんなことでも許されると思っていた』のリリースが決定。同日に代々木公園野外音楽堂にて『いつか僕は誰もが羨むバンドになってやるフリーライブ』を開催予定。4月からは、全10都市を回る全国ツアーの開催も決定している。