本当は続けたかった? ビートルズ最大の謎、解散の真相に迫る

本当は続けたかった? ビートルズ最大の謎、解散の真相に迫る

2021/10/15
テキスト
黒田隆憲
編集:黒田隆憲、CINRA編集部

『Let It Be』の発売前に、突如ポール・マッカートニーによる解散発表。「空気の読めないポールらしい」

藤本:後期のビートルズは、すでにオノ・ヨーコとの創作活動に夢中になっていたジョン・レノンがどこまで本気になるか、彼がどこまでアルバム制作に関わって「くれる」のか? にかかっていたんですよね。もし彼が「ビートルズはまだ続けるよ」と言っていたら、おそらく『Abbey Road』の先もあったと思っています。

ジョンはとにかく気まぐれで、ドラッグ問題も抱えていたため日によってコンディションにものすごくムラがあった。ジョンが調子良ければみんなハッピーだし、ジョンが沈んでいると他の3人も引っ張られるような、そんな状態だったんですよね。

鈴木:しかも『Abbey Road』レコーディング直前には、ジョンとヨーコ(・オノ)は交通事故に遭っています(1969年7月1日)。それが原因で途中からレコーディングに参加したという経緯もありました。

最終的にビートルズは、ポールが「解散発表」をするというかたちで終焉を迎えたわけですが(1970年4月)、そのときにジョンがものすごく怒ったのは、ポールに対して「話が違うぞ」という気持ちだったんじゃないかと思う。

藤本:おそらくそうでしょう。なぜならその前にジョンは、ポールとリンゴの前で「ビートルズ脱退」を宣言していたのですが(1969年9月)、それを公にしないよう、ビジネス・マネージャーとなったアレン・クラインとポールに口止めされていたんです。その矢先に行われたポールの「解散宣言」。しかも自身のソロアルバム『McCartney』のプロモーションも兼ねていたわけだから、ジョンが激怒するのは当然というか。「これから『Let It Be』のリリースも控えているのに何やってんの?」という感じだし、空気の読めないポールらしいともいえますよね。

ポール・マッカートニー『McCartney』を聴く(Spotifyを開く

黒田:そうやって、3対1の関係性が強化されていってしまったわけですね。

自己評価が低く優柔不断なジョン・レノン。彼とポール・マッカートニーの作曲法の違い

黒田:3対1の関係性ということでは、「剥き出しのバンドサウンドに回帰する」というゲットバックセッションのコンセプトはポールの発案であり、他の3人はそれに渋々従っていたというエピソードもそう。

でもこれ、「ジョンはロックンローラーで、ポールはポップスのマエストロ」というパブリックイメージからすると意外に思う人も多いかもしれないですよね。「ロックンロールへの原点回帰は、ジョンのほうが乗り気になりそうなのに」って。

鈴木:例えば“Strawberry Fields Forever”や“Tomorrow Never Knows”などの実験的なサウンドを聴けば、ジョンがいかに「レコーディングマジック」を信じていたかわかるんですよ。

ゲットバックセッションで、4人は昔のロックンロールをたくさんカバーしているけど、すでにさまざまなスタジオワークを駆使して「最新型のポップミュージック」をたくさん世に出してきた彼らが、そこですっきりと原点回帰できるわけがない。途中から『Abbey Road』で再び目指した構築美のほうへと気持ちが傾いてしまい、剥き出しのバンドサウンドを聞かせる予定だった『Get Back』への気持ちが離れてしまったのは当然の流れです。

The Beatles“Tomorrow Never Knows”を聴く(Spotifyを開く

黒田:たしかに。そう考えると、フィル・スペクターが過剰なオーケストレーションを施し完成させた『Let It Be』をジョンが絶賛し、最後まで「剥き出しのバンドサウンド」にこだわったポールが激怒したのも腑に落ちますね(関連リンク:高橋健太郎と鈴木惣一朗に聞く、フィル・スペクターの光と影)。

藤本:「ビートルズのレコーディングはすべて最初からやり直したい」と言ったのもジョンですからね(笑)。とにかく彼は自己評価が低く優柔不断で、つねにフラストレーションを抱えているんです。それがいいところでもあるし、悪いところでもある。

楽曲のつくり方でも、ポールは最初から確固たる完成形のイメージがあるのに対し、ジョンとジョージはつくりながら方向性を見定めていくタイプです。だから“Strawberry Fields Forever”で2つのテイクを無理やりつなげてみたり(曲の始まりからちょうど1分のところ)、“Revolution”みたいにバージョン違いで出してみたりする。


The Beatles“Strawberry Fields Forever”

黒田:ああ、いわれてみればそうですね!

藤本:ポールはポールで、思い描く完成形をかたちにしたいから“She Came In Through The Bathroom Window”や“Maxwell's Silver Hammer”をメンバーに何度も演奏させて、後々まで「あの曲は大嫌いだった」と言われてしまう(笑)。“Oh! Darling”のレコーディングでも、納得のいくボーカルテイクが録れるまで、毎朝スタジオに通って歌い込んだといいます。

黒田:ポールが、ジョンやジョージに「こうやって弾いてほしい」と頼んで煙たがられるのは、曲づくりのタイプの違いによるところもあるのですね。

Page 2
前へ 次へ

書籍情報

『シューゲイザー・ディスク・ガイド revised edition』
『シューゲイザー・ディスク・ガイド revised edition』

2021年8月12日(木)発売
著者:黒田隆憲、佐藤一道(共同監修)
価格:3,080円(税込)
発行:シンコーミュージック
ISBN 978-4-401-64852-8

『365日ビートルズ』
『365日ビートルズ』

2021年11月1日(月)発売予定
著者:藤本国彦
価格:2,750円(税込)
発行:扶桑社

リリース情報

ワールドスタンダード『エデン』
ワールドスタンダード
『エデン』

2021年11月27日(土)発売
価格:3,850円(税込)
SLIP-8510

The Beatles『Let It Be』スペシャル・エディション[スーパー・デラックス]<輸入国内仕様 / 完全生産限定盤>
The Beatles
『Let It Be』スペシャル・エディション[スーパー・デラックス]<輸入国内仕様 / 完全生産限定盤>(5CD+Blu-ray)

2021年10月15日発売
価格:19,800円(税込)
UICY-79760

●CD全57曲収録
●CD1:オリジナル・アルバム ニュー・ステレオ・ミックス:12曲
●CD2&3:未発表アウトテイク、スタジオ・ジャム、リハーサル:27曲
●CD4:未発表1969年『ゲット・バックLP』(グリン・ジョンズ・ミックス)新マスタリング:14曲
●CD5:『レット・イット・ビー』EP:4曲
●ブルーレイ:オリジナル・アルバム ニュー・ステレオ・ミックスのハイレゾ(96kHz/24-bit)、5.1サラウンドDTS、ドルビー・アトモス・ミックスのオーディオ収録
●ダイカット・スリップケース
●本文100ページの豪華ブックレット付

【ディスク1】
レット・イット・ビー ニュー・ステレオ・ミックス

1. トゥ・オブ・アス
2. ディグ・ア・ポニー
3. アクロス・ザ・ユニヴァース
4. アイ・ミー・マイン
5. ディグ・イット
6. レット・イット・ビー
7. マギー・メイ
8. アイヴ・ガッタ・フィーリング
9. ワン・アフター・909
10. ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード
11. フォー・ユー・ブルー
12. ゲット・バック

【ディスク2】
ゲット・バック – アップル・セッションズ

1. モーニング・カメラ(スピーチ – モノ) / トゥ・オブ・アス (テイク4)
2. マギー・メイ / ファンシー・マイ・チャンシズ・ウィズ・ユー (モノ)
3. キャン・ユー・ディグ・イット?
4. アイ・ドント・ノウ・ホワイ・アイム・モーニング(スピーチ – モノ)
5. フォー・ユー・ブルー(テイク4)
6. レット・イット・ビー / プリーズ・プリーズ・ミー / レット・イット・ビー(テイク10)
7. アイヴ・ガッタ・フィーリング(テイク10)
8. ディグ・ア・ポニー(テイク14)
9. ゲット・バック(テイク19)
10. ライク・メイキング・アン・アルバム?(スピーチ)
11. ワン・アフター・909(テイク3)
12. ドント・レット・ミー・ダウン(ファースト・ルーフトップ・パフォーマンス)
13. ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード(テイク19)
14. ウェイク・アップ・リトル・スージー / アイ・ミー・マイン(テイク11)

【ディスク3】
ゲット・バック – リハーサル・アンド・アップル・ジャムズ

1. オン・ザ・デイ・シフト・ナウ(スピーチ – モノ)/オール・シングス・マスト・パス(リハーサル – モノ)
2. コンセントレイト・オン・ザ・サウンド (モノ)
3. ギミ・サム・トゥルース(リハーサル – モノ)
4. アイ・ミー・マイン(リハーサル – モノ)
5. シー・ケイム・イン・スルー・ザ・バスルーム・ウィンドー(リハーサル)
6. ポリシーン・パン(リハーサル – モノ)
7. オクトパス・ガーデン(リハーサル - モノ)
8. オー!ダーリン(ジャム)
9. ゲット・バック(テイク8)
10. ザ・ウォーク(ジャム)
11. ウィズアウト・ア・ソング(ジャム) – ビリー・プレストン・ウィズ・ジョン・アンド・リンゴ
12. サムシング(リハーサル - モノ)
13. レット・イット・ビー(テイク28)

【ディスク4】
ゲット・バック LP – 1969グリン・ジョンズ・ミックス

1. ワン・アフター・909
2. メドレー: アイム・レディ(aka ロッカー) / セイヴ・ザ・ラスト・ダンス・フォー・ミー / ドント・レット・ミー・ダウン
3. ドント・レット・ミー・ダウン
4. ディグ・ア・ポニー
5. アイヴ・ガッタ・ア・フィーリング
6. ゲット・バック
7. フォー・ユー・ブルー
8. テディ・ボーイ
9. トゥ・オブ・アス
10. マギー・メイ
11. ディグ・イット
12. レット・イット・ビー
13. ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード
14. ゲット・バック(リプリーズ)

【ディスク5】
レット・イット・ビー EP

1. アクロス・ザ・ユニヴァース(未発表 グリン・ジョンズ 1970ミックス)
2. アイ・ミー・マイン(未発表 グリン・ジョンズ 1970ミックス)
3. ドント・レット・ミー・ダウン(オリジナル・シングル・ヴァージョン ニュー・ミックス)
4. レット・イット・ビー(オリジナル・シングル・ヴァージョン ニュー・ミックス)

【ブルーレイ】
1. トゥ・オブ・アス
2. ディグ・ア・ポニー
3. アクロス・ザ・ユニヴァース
4. アイ・ミー・マイン
5. ディグ・イット
6. レット・イット・ビー
7. マギー・メイ
8. アイヴ・ガッタ・フィーリング
9. ワン・アフター・909
10. ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード
11. フォー・ユー・ブルー
12. ゲット・バック

The Beatles『Let It Be』スペシャル・エディション[2CDデラックス]
The Beatles
『Let It Be』スペシャル・エディション[2CDデラックス](2CD)

2021年10月15日発売
価格:3,960円(税込)
UICY-16030/1

●26曲収録
●CD1:オリジナル・アルバム ニュー・ステレオ・ミックス:12曲
●CD2:未発表アウトテイク、スタジオ・ジャム、リハーサル:13曲
●40ページのブックレット付

The Beatles『Let It Be』スペシャル・エディション[1CD]
The Beatles
『Let It Be』スペシャル・エディション[1CD](CD)

2021年10月15日発売
価格:2,860円(税込)
UICY-16032

●オリジナル・アルバム ニュー・ステレオ・ミックス:12曲

The Beatles『Let It Be』スペシャル・エディション[LPスーパー・デラックス]<直輸入仕様 / 完全生産限定盤>
The Beatles
『Let It Be』スペシャル・エディション[LPスーパー・デラックス]<直輸入仕様 / 完全生産限定盤>(5LP)

2021年10月15日発売
価格:25,300円(税込)
UIJY-75215/9

●全57曲収録(4枚の180g / ハーフスピード・マスタリングLP+45rpm 12インチEP)
●LP1:オリジナル・アルバム ニュー・ステレオ・ミックス:12曲
●LP2&3:未発表アウトテイク、スタジオ・ジャム、リハーサル:27曲
●LP4:未発表1969年『ゲット・バックLP』(グリン・ジョンズ・ミックス)新マスタリング:14曲
●EP:『レット・イット・ビー』EP:4曲
●ダイカット・スリップケース
●本文100ページの豪華ブックレット付

The Beatles『Let It Be』スペシャル・エディション[1LP]<br><直輸入仕様 / 完全生産限定盤>
The Beatles
『Let It Be』スペシャル・エディション[1LP]<直輸入仕様 / 完全生産限定盤>(LP)

2021年10月15日発売
価格:5,500円(税込)
UIJY-75220

●オリジナル・アルバム ニュー・ステレオ・ミックス:12曲
●180g/ハーフスピード・マスタリングLP

The Beatles『Let It Be』スペシャル・エディション[1LPピクチャー・ディスク]<直輸入仕様 / 完全生産限定盤>
The Beatles
『Let It Be』スペシャル・エディション[1LPピクチャー・ディスク]<直輸入仕様 / 完全生産限定盤>(LP)

2021年10月15日発売
価格:7,150円(税込)
PDJT-1030

●THE BEATLES STORE JAPAN限定商品
●オリジナル・アルバム ニュー・ステレオ・ミックス:12曲
●180g / ハーフスピード・マスタリングLP
●アルバム・アートのピクチャー・ディスク仕様

プロフィール

黒田隆憲(くろだ たかのり)

1990年代後半にロックバンドCOKEBERRYでメジャーデビュー。その後、フリーランスのライター&エディターに転身。世界で唯一のマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン公認カメラマンとして、世界各地で撮影を行なう。2018年にはポール・マッカートニーの日本独占インタビューを務めた。著書に『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインこそはすべて』『メロディがひらめくとき』(ともにDU BOOKS)、共著に『シューゲイザー・ディスク・ガイド revised edition』(シンコーミュージック)『ビートルズの遺伝子ディスク・ガイド』(DU BOOKS)『マッカートニー・ミュージック ~ポール。音楽。そのすべて。』(音楽出版社)など。

藤本国彦(ふじもと くにひこ)

楽情報誌『CDジャーナル』編集部(1991年~2011年)を経て2015年にフリーに。主にビートルズ関連書籍の編集・執筆やイベント・講座などを手掛ける。主な著作は『ビートルズ213曲全ガイド 2021年版』(シーディージャーナル)、『ゲット・バック・ネイキッド』(牛若丸/増補新版は青土社)、『ビートル・アローン』(ミュージック・マガジン)、『ビートルズ語辞典』(誠文堂新光社)、『ビートルズはここで生まれた』(CCCメディアハウス)、『ジョン▪レノン伝 1940-1980』(毎日新聞出版)、『気がつけばビートルズ』(産業編集センター)。最新刊は『365日ビートルズ』(扶桑社)。映画『ジョージ・ハリスン / リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド』『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK』『イエスタデイ』の字幕監修、書籍『ザ・ビートルズ:Get Back』の監修も担当。相撲とカレーと猫好き。

鈴木惣一朗(すずき そういちろう)

1959年、浜松生まれ。音楽家。1983年にインストゥルメンタル主体のポップグループ「ワールドスタンダード」を結成。細野晴臣プロデュースでノン・スタンダード・レーベルよりデビュー。「ディスカヴァー・アメリカ3部作」は、デヴィッド・バーンやヴァン・ダイク・パークスからも絶賛される。近年では、程壁(チェン・ビー)、南壽あさ子、ハナレグミ、ビューティフル・ハミングバード、中納良恵、湯川潮音、羊毛とおはななど、多くのアーティストをプロデュース。2013年、直枝政広(カーネーション)とSoggy Cheeriosを結成。執筆活動や書籍も多数。1995年刊行の『モンド・ミュージック』は、ラウンジ・ブームの火つけ役となった。細野晴臣との共著に『とまっていた時計がまたうごきはじめた』(平凡社)、『細野晴臣 録音術 ぼくらはこうして音を作ってきた』(DU BOOKS)、ビートルズ関係では『マッカートニー・ミュージック~ポール。音楽。そのすべて。』(音楽出版社)、他に『耳鳴りに悩んだ音楽家がつくったCDブック』(DU BOOKS)などがある。最新作は『エデン』ワールドスタンダード(発売日:2021年11月27日)。

感想をお聞かせください

新たな発見や感動を得ることはできましたか?

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
回答を選択してください

ご協力ありがとうございました。

Category カテゴリー

What's "Kompass" ? コンパスとは

「Kompass」は、ネットメディア黎明期よりカルチャー情報を紹介してきたCINRA.NETと、音楽ストリーミングサービスの代表格Spotifyが共同で立ち上げた音楽ガイドマガジンです。ストリーミングサービスの登場によって、膨大な音楽ライブラリにアクセスできるようになった現代。音楽の大海原に漕ぎだす音楽ファンが、音楽を主体的に楽しみ、人生の1曲に出会うガイドになるようなメディアを目指し、リスニング体験を交えながら音楽の面白さを紹介しています。