シティポップの世界的ブームの背景 かれらの日本という国への目線

シティポップの世界的ブームの背景 かれらの日本という国への目線

2021/07/09
テキスト・編集
山元翔一(CINRA.NET編集部)
イラスト:アボット奥谷

編註と参考文献

▼註

1:ヴェイパーウェイヴとは、「1980年代のポップスや店内BGMなどの音源の音質やスピードを落とし、延々とループさせる音楽のジャンルとされている。シティポップの文脈で話題になり、ダンスミュージックとして扱われているFuture Funkもその派生ジャンルと言われている。支離滅裂な日本語や、1990年代のローポリゴンCGを多用したデタラメながら強烈なアートワークも特徴」――著・佐藤秀彦 / 編・New Masterpiece『新蒸気波要点ガイド (ヴェイパーウェイヴ・アーカイブス2009-2019) 』より(サイトで見る

2:『CDジャーナル』2012年11月号上で松永は、cero“わたしのすがた”にある<シティポップが鳴らすこの空虚、 / フィクションの在り方を変えてもいいだろ?>という一節をきっかけに磯部涼と「あたらしいシティ・ポップ」と題した対談を実施している

3:はっぴいえんどは、大滝詠一、細野晴臣、鈴木茂、松本隆からなる日本のロック黎明期のバンドで、1971年に発表した『風街ろまん』は日本のロックの金字塔として名高い

ティン・パン・アレーは荒井由実などの演奏やプロデュースも務めたプロデューサーチーム。はっぴいえんどの解散後に細野晴臣のソロアルバム『HOSONO HOUSE』(1973年)のレコーディングに集った鈴木茂、林立夫、松任谷正隆によってキャラメル・ママを結成、のちに改名してティン・パン・アレーとなった(参照:『ロック画報 14』P.12)

シュガー・ベイブは、『キャラメル・ママ』(1975年)や荒井由実『MISSLIM』(1974年)などでコーラスとコーラスアレンジで才能を発揮していた山下達郎、そして大貫妙子を中心としたバンド。『SONGS』(1975年)という1枚のアルバムを大瀧詠一主宰の「ナイアガラ・レーベル」よりリリースして解散。シングルとして発表された”DOWN TOWN”は1970年代のシティポップを代表する1曲として知られる(参照:萩原健太『70年代シティ・ポップ・クロニクル』)

4:ヨットロックとは、「日本でいうAOR的な音楽のこと。2005年に配信されたインターネットのコメディ・シリーズが口コミで広まり、『ヨットに乗るヤッピーが聴きそうな音楽』という、揶揄的なフレーズだったこの言葉が、アメリカの若い音楽リスナーやDJたちが、あらためてこのジャンルにスポットを当てるきっかけとなった」――『ヨット・ロック AOR、西海岸サウンド黄金時代を支えたミュージシャンたち』書籍説明より(サイトで見る

5:「Light In The Attic」は、質の高いリイシューをリリースすることに重点を置いたアメリカ・シアトルに本拠を置くレーベル。「Japan Archival Series」と銘打ち、1969年~1973年に発表された日本のフォークとロックにフォーカスを当てた『Even A Tree Can Shed Tears: Japanese Folk & Rock 1969-1973』(2017年)、シティポップをテーマにした『Pacific Breeze: Japanese City Pop, AOR & Boogie 1976-1986』(2019年)、アンビエント / ニューエイジを取り上げた『環境音楽 = Kankyō Ongaku (Japanese Ambient, Environmental & New Age Music 1980 - 1990)』(2019年)というコンピレーション作品をリリースしている

6:松永はCINRA.NET掲載の「2020年のYMO評 エキゾ、電子音楽、ポップスの視点から3人が紡ぐ」で、エキゾについて「アメリカで生まれた『エキゾ』という感覚は、『遠い世界の出来事を想像する感覚』から、この日本で『生活を異界化させる感覚』に変化したとぼくは感じている」と書いていた(記事を開く

7:テクノ・オリエンタリズムとは、「日本」という表象がいかにして、ネットワーク、サイバネティクス、ロボット、人工知能、シミュレーションといった未来のテクノロジーと同義語になってしまったかを表現するために、イギリスの学者デビッド・モーリーとケビン・ロビンズによって用いられた造語(参照:『Pitchfork』The Endless Life Cycle of Japanese City Pop)

8:初期ヴェイパーウェイヴを代表するアーティストNew Dreams Ltd.こと、Vektroidはこのように語っている。「この二〇年間で世界はゆっくりリアリティがなくなってきているようで、そのことが私を魅了するのです。この二〇年間で起こってきたあらゆることには、潜在的にシュルレアリスムの要素がかなりあります、特に日本で起きたことには。当時の人々に響いたように、今の人々に響くシュルレアリスムの要素を捕らえたいと思っています。例えば、その当時、人々が広告に費やしていた時間の長さは、私には衝撃的です」――『ユリイカ 2019年12月号 特集=Vaporwave』収録のアダム・ハーパー執筆 / Chocolat Heartnight訳「Vaporaveとヴァーチャルプラザのポップアート」(原文はレビューサイト『DUMMY』にて2012年7月に公開)より

9:『カウボーイビバップ』のEDテーマである“THE REAL FOLK BLUES”を歌う山根麻衣が1980年に発表した1stアルバム『たそがれ』は、シティポップの名作として語られることも多い

▼参考文献

『シティ・ポップ 1973-2019』(2019年、ミュージックマガジン)(サイトで見る

『ユリイカ2019年12月号 特集=Vaporwave』(2019年、青土社)(サイトで見る

『Light Mellow和モノSpecial ~more 160 items~』(2018年、ラトルズ)(サイトで見る

『Pitchfork』The Endless Life Cycle of Japanese City Pop(外部サイトを開く

『VICE』The Guide to Getting Into City Pop, Tokyo’s Lush 80s Nightlife Soundtrack(外部サイトを開く

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プロフィール

松永良平(まつなが りょうへい)

1968年、熊本県生まれ。大学時代よりレコード店に勤務し、大学卒業後、友人たちと立ち上げた音楽雑誌『リズム&ペンシル』がきっかけで執筆活動を開始。現在もレコード店勤務のかたわら、雑誌 / ウェブを中心に記事執筆、インタビュー、ライナーノーツ執筆などを行う。

柴崎祐二(しばさき ゆうじ)

1983年埼玉県生まれ。音楽ディレクター、評論家。編共著に『オブスキュア・シティポップ・ディスクガイド』、連載に「MUSIC GOES ON 最新音楽生活考」(『レコード・コレクターズ』)などがある。2021年9月に編著を務めた『シティポップとは何か』(河出書房)の刊行を控えている。

芦澤紀子(あしざわ のりこ)

ソニーミュージックで洋楽・邦楽の制作やマーケティング、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)で「PlayStation Music」の立ち上げに関わった後、2018年にSpotify Japan入社。

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