2021年、シティポップの海外受容の実態 Spotifyのデータで見る

2021年、シティポップの海外受容の実態 Spotifyのデータで見る

2021/07/30
テキスト・編集
山元翔一(CINRA.NET編集部)
イラスト:アボット奥谷

竹内まりや“プラスティック・ラブ”、松原みき“真夜中のドア”の数字から見る、海外受容の実態

芦澤:“プラスティック・ラブ”と“真夜中のドア”の上位の再生されている地域について、事前にご質問いただきましたが、こちらがそのランキング結果です(2021年7月時点)。

▼竹内まりや“プラスティック・ラブ”の再生数上位5か国
1位 アメリカ
2位 日本
3位 メキシコ
4位 インドネシア
5位 フィリピン

▼松原みき“真夜中のドア~stay with me”の再生数上位5か国
1位 アメリカ
2位 メキシコ
3位 インドネシア
4位 フィリピン
5位 ブラジル

柴崎:おお。たしかにインドネシアが上位にきている。メキシコが入っているのも興味深いですね! ぼくの好きなフューチャーファンクのプロデューサーに、マクロスMACROSS 82-99という人がいるんですが、そういえば、彼もメキシコ出身。


シティポップの文脈でも人気の高い杏里“Remember Summer Days”(1983年)のマクロスMACROSS 82-99エディットバージョン。原曲よりもBPMを上げたり、ビートが強調されたりといったエディットが施されたこの音源は、2014年10月に公開されている

芦澤:アメリカ、メキシコ、あとどちらの曲でもカナダが6位につけているのですが、これらは北米大陸という括りで見ることもできるとは思います。続いて、アーティスト単位で括って竹内まりやさん、松原みきさんで見た結果がこちらです。

▼竹内まりやの楽曲再生数の上位5か国
1位 日本
2位 アメリカ
3位 インドネシア
4位 メキシコ
5位 フィリピン

▼松原みきの楽曲再生数の上位5か国
1位 アメリカ
2位 メキシコ
3位 インドネシア
4位 フィリピン
5位 ブラジル

柴崎:面白いですね。たしか、以前見せてもらったデータでは、楽曲単位での再生数はインドネシアが上位にきていて、逆にアーティスト単位だと、東南アジアの国は上位5位に入っていなかったですよね。

単曲での再生数が多かったというのは、やっぱりTikTokなどでのバズを経由しているからなんでしょうね。けど、7月の時点ではアーティスト括りでもインドネシアやフィリピンが上位に入ってきた。これは、その地域で単曲の再生がさらに伸びたゆえなのか、それとも、単曲を入り口にいわゆる「アルバム聴き」が促進されたのか、どっちなんでしょう?

芦澤:“プラスティック・ラブ”と“真夜中のドア”の再生数が突出しているのは変わらないのですが、他の楽曲のリスニングデータを見ると、アメリカに次いでインドネシア、フィリピンが上位に入っていることが多くなっているので、その積み重ねなのだと思います。

つまり、単曲を入り口に、そのアーティストの他の楽曲への興味が自然と広がっていったということだと思います。ストリーミングの特性でもありますが、アーティストページから、もしくはアルゴリズムによるおすすめプレイリストから、簡単に掘り下げていくことができるので。

松永:曲を入り口にアーティストやアルバムに興味を持っていくというのは、音楽への入り口として普遍的なものではありますからね。そういうふうに認知が進んでいる傾向は見て取れる気はします。オタクとまではいかなくても、単純に「他にもいい曲あるかもしれない」っていう興味で。

欧米や他の地域で気になるアーティストや曲を見つけたときに深掘りするのが基本姿勢として定着しつつあるのなら、いいことなんじゃないかとも思いますし、そこでガイダンスできるような多言語のテキストやデータも本格的に必要となってくるのではとも感じます。英語のテキストはずいぶん充実してきたとは思う。

竹内まりや、松原みきともに、リスナーのボリュームゾーンは18~22歳

芦澤:竹内まりやさんに関して大前提なんですけど、ソニーから出ていた初期の頃の“September”や“不思議なピーチパイ”などを含むカタログ(1978年から1981年にかけて発表された『BEGINNING』『UNIVERSITY STREET』『LOVE SONGS』『Miss M』『Portrait』)は日本でしか配信されてないんですよ。

ワーナーに移籍して以降の『Expressions』(2008年発表のベストアルバム)のワーナー楽曲と、今配信されているもう一枚のアルバム(2014年発表の『TRAD』)に関しては世界ライツがついているという状態です。

竹内まりや“プラスティック・ラブ”を聴く(Spotifyを開く

芦澤:だから海外リスナーは“プラスティック・ラブ”は『VARIETY』の楽曲としてではなく、『Expressions』の収録曲として聴いているという状況です。そのなかで海外では“プラスティック・ラブ”が突出して聴かれています。

ただ、まりやさんはシティポップ文脈ではないところでの日本のリスナーからの人気もすごいので、全体像として見ると「日本で聴かれている竹内まりや」という数字も加味されて、松原みきさんとは違う結果が出てくる。

柴崎:既存のファン層が分厚いし、その方たちもSpotifyでしっかり聴いてる?

芦澤:そうですね。往年のファンの方が“シングル・アゲイン”とか“純愛ラプソディ”“駅”を聴いてる数字も含まれていて、シティポップ軸だけではないデータになっています。

松原みきさんの場合はやっぱり突出して“真夜中のドア”が聴かれていて、そこに付随して、“愛はエネルギー”や“WASH(ウオッシュ)”など何曲かシティポップの流れで聴かれる曲も最近は上位に入ってきています。

とはいえ、“真夜中のドア”はいま6,500万再生を突破してる(2021年7月時点の数字)ので、圧倒的に強い。

松原みき“真夜中のドア~stay with me”を聴く(Spotifyを開く

芦澤:年齢で見ると、まりやさんの場合は18歳~22歳がいちばん多くて、ついで45歳以上の世代。ここの、いわゆるエルダー層は日本がかなり占めてるんじゃないかと推測します。

松原みきさんの場合は圧倒的に若く、22歳以下が半数を超えています(いずれも2021年7月時点)。

柴崎:これは全世界の数字ですか?

芦澤:はい、全世界です。逆に松原みきさんは45歳以上のリスナーはすごく少ないです。

松永:なるほど。海外中心に聴かれていることがデータ上でもはっきりしてるんですね。

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書籍情報

『シティポップとは何か』

編著者:柴崎祐二
価格:2,475円(税込・予価)
発行:河出書房新社

プロフィール

松永良平(まつなが りょうへい)

1968年、熊本県生まれ。大学時代よりレコード店に勤務し、大学卒業後、友人たちと立ち上げた音楽雑誌『リズム&ペンシル』がきっかけで執筆活動を開始。現在もレコード店勤務のかたわら、雑誌 / ウェブを中心に記事執筆、インタビュー、ライナーノーツ執筆などを行う。

柴崎祐二(しばさき ゆうじ)

1983年埼玉県生まれ。音楽ディレクター、評論家。編共著に『オブスキュア・シティポップ・ディスクガイド』、連載に「MUSIC GOES ON 最新音楽生活考」(『レコード・コレクターズ』)などがある。2021年9月に編著を務めた『シティポップとは何か』(河出書房)の刊行を控えている。

芦澤紀子(あしざわ のりこ)

ソニーミュージックで洋楽・邦楽の制作やマーケティング、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)で「PlayStation Music」の立ち上げに関わった後、2018年にSpotify Japan入社。

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