海外で最も聴かれている日本の楽曲=アニメソング。Spotifyの聴取データから見る実態

2021年12月にSpotifyが発表したデータによると、同年に「海外で最も再生された日本のアーティストの楽曲」のランキングは、『呪術廻戦』のテーマ曲であるEve“廻廻奇譚”や、『鬼滅の刃』のテーマ曲であるLiSA“紅蓮華”をはじめ、その上位をアニメ関連楽曲が独占している。

同じくSpotifyが2021年11月、国内サービス開始から5年を振り返るランキングを発表した際、「過去5年に海外で最も再生された日本のアーティストの楽曲」の1位が『東京喰種』のテーマ曲であるTK from 凛として時雨の“unravel”だったように、この傾向はいまに始まったわけではなく、ストリーミング時代のベーシックとなっている。では、実際どこの国でどんなアーティストの楽曲が聴かれ、そこにはどのような背景があるのだろうか?

1月に開催され、TK from 凛として時雨、FLOW、KANA-BOON、Aimerなど、ランキング上位のアーティストが多数出演した『Sony Music AnimeSongs ONLINE 2022』のイベントプロデューサー・田坂健太と、海外事業推進グループの金山清道を迎え、Spotify Japanの芦澤紀子とともに、世界におけるアニメ楽曲の現状について語ってもらった。

「海外に向けて」を意識して、全世界に配信された『Sony Music AnimeSongs ONLINE 2022』

―『Sony Music AnimeSongs ONLINE』はどのような経緯で始まったのでしょうか?

田坂:まず2020年にコロナが蔓延し始めたなか、アーティストがライブをする場所を提供するために、オンラインワンマンライブを届ける『Dive/Connect』という企画をソニー・ミュージックエンタテインメントとして立ち上げました。当時はまだ有料配信のプラットフォームがあまり整っていないなか、オンラインライブをいかに根づかせるかというチャレンジでもあったんです。

その企画の流れで、日本武道館を舞台に、アニメタイアップの楽曲を歌唱するアーティストを集結させたオンラインイベントをやろうという話になって。2021年に一回目の開催を経て、あらためてオンラインライブの可能性を考えたときに、海外のお客さんにまで届けるチャレンジをもっとしていこうという話になったんです。

なので、「アニメ主題歌のフェス」という形式は保ちながら、今年は特に「海外に向けて」というところも意識しながらイベントをつくっていきました。

2022年1月開催の『Sony Music AnimeSongs ONLINE』に出演したKANA-BOON
同じくFLOW
同じくAimer

―実際昨年は5つの国と地域への配信だったのに対して、今年はその数が一気に増えていますよね。

田坂:そうですね。配信サービスとしてはStagecrowdを使っているんですけど、プラットフォーム側の細かな法整備も進み、配信できる国が着実に増えていて、今年は20の国と地域に配信できるようになりました。

あとは、ライブネーション(カリフォルニアを拠点とする世界最大級のイベント会社)が運営しているVeepsで、中国を除く全世界に向けて配信したことも新たなチャレンジでした。中国への配信はbilibiliと連携して行なったので、全世界をカバーできたかたちです。より広く試聴していただけるチャンスをつくるため、積極的にやっていこうとなりました。

―海外に向けて配信するうえではどんな工夫がありましたか?

田坂:海外からの視聴者のハードルをなるべくなくせるように、たとえば、収録済みのアーティストのMCにはすべて英語の字幕を入れて、生配信のイベントMCのトークにも、同時通訳を入れました。

あとは、チケット価格のことも考えましたね。国内だと1日券が4,400円なんですけど、より気軽に見てもらえるよう、Veepsではエディット版を20ドル(約2,300円)で販売しました。

日本のアニメ主題歌が多く聴かれているのは、アメリカ、東南アジア、中南米

―では、ここからSpotifyのデータを使って、現在世界で日本のアニメソングがどのように聴かれているかを見ていきたいと思います。まず、2021年の「日本のアニメ関連楽曲が最も再生されている海外の国と地域」のトップ10です。

芦澤:日本でSpotifyがローンチしたのが2016年秋で、5年間データを分析してきたなかで、傾向としてはずっと変わらない印象です。

まず一番のアメリカは図抜けて強い。その次に強いのがエリアでいうと東南アジア諸国で、特に最近伸びているのがインドネシアとフィリピン。この2か国は近年マーケットの成長が著しくて、日本のコンテンツに対する親和性も高いので、かなり上がってきています。台湾、マレーシア、シンガポールとか、東南アジア諸国は全体的に強いですね。

タイのエディターが編成しているSpotify公式プレイリスト「Anime Hits」を聴く(Spotifyを開く)。インドネシア、フィリピン、タイ、マレーシアなど、東南アジアメインで聴かれているが、アメリカやドイツなど、世界の各地にリスナーがいる

芦澤:あともうひとつ強いのが中南米諸国で、こちらも日本のアニメの人気が非常に高く、特にメキシコは強いです。あとはアメリカからの影響もあるであろうカナダと、ヨーロッパ諸国も入ってますね。

―国や地域による傾向の違いみたいなものはあるのでしょうか?

芦澤:近年は『呪術廻戦』や『鬼滅の刃』『東京喰種』『進撃の巨人』など、いわゆるダークファンタジー的なアニメの人気が高くて、そのカテゴリーで見ると、比較的ヨーロッパが強い印象を受けます。

プレイリスト「Attack on Titan –進撃の巨人-」を聴く(Spotifyを開く

プレイリスト「呪術廻戦 –Jujutsu Kaisen-」を聴く(Spotifyを開く

芦澤:それに対して、たとえば『NARUTO』とか『僕のヒーローアカデミア』とか、もうちょっと明るいというか、ダークファンタジーではないアニメだと、アメリカ、東南アジア、中南米の方が強いというのはあるかもしれません。

プレイリスト「My Hero Academia-僕のヒーローアカデミア-」を聴く(Spotifyを開く

―ダークファンタジーはヨーロッパのゴシックな世界観と相性がいいのかもしれないですね。

芦澤:そうですね。特に『進撃の巨人』と『東京喰種』はそんな感じがします。

田坂:今回のイベントのホームページへの海外からのアクセスを見ても、このランキングに近いですね。やはりアメリカが非常に強く、その後は台湾、中国、香港、インドネシアと、アジア圏が続いています。

あとこのランキングを見ると、コロナ前までアニメ関連のイベントを多くやっていた地域だなっていう印象ですね。この地域ではアーティストもツアーでよく回りましたし、東南アジアではフェスもたくさん開催されました。もちろん直近の作品のヒットも大きいとは思うんですけど、ここ10年くらい、日本のコンテンツに直接触れる機会を地道につくってきたという下地が、すごく生きてる感じがします。

インドネシアではアニメ主題歌とシティポップが混然一体となって「ジャパンカルチャー」として受け止められている?

―金山さんはこのランキングをどうご覧になりましたか?

金山:「J-POP」を聴いている割合の高さでいうと、台湾、香港、韓国とか、お馴染みの名前が挙がると思うんですけど、「アニメ関連楽曲」となるとまたちょっと違うランキングになるっていうのは面白いですね。

―インドネシアが上位にいるのは、どんな理由が大きいのでしょうか?

金山:インドネシアはFacebookとかInstagramの利用者数ランキングでも上位に入ってきます。デジタルの領域でかなりアクティブな国ですよね。

芦澤:Spotifyの成長率もすごく高いですね。ユーザーの平均年齢が非常に若くて、ソーシャルで話題になっているものを検索したり、アルゴリズムのオススメに従って聴いたりするので、バズっているものがちゃんと再生数に結びついている傾向があると思います。あとは、東南アジアでバズったものがアメリカに波及して、より強い数字が積まれていく印象もあります。

金山:それはまさにそうで、ぼくはアメリカのレーベルともよくやりとりをするんですけど、アメリカのレーベルはまず東南アジアで洋楽のバズをつくって、それをいかにアメリカに持ってくるかという戦略でやってるみたいです。

芦澤:起爆剤としての東南アジアでのバイラルヒットっていうのはあると思います。YouTubeやTikTokからの転化型でバイラルヒットをつくって、それが波及していくということは、ケーススタディーとしてすごく多いですね。

―芦澤さんには昨年シティポップの記事(「2021年、シティポップの海外受容の実態 Spotifyのデータで見る」)にもご参加いただきましたが、インドネシアはシティポップの再生数もとても多いんですよね。

芦澤:そうなんです。アニメとシティポップって、東南アジア圏からすると親和性が高いんだと思います。RainychのようなYouTuberがカバーするのもアニメの曲とシティポップが同居していたり、シティポップのリリックビデオにもアニメーションがついていたり、同じカルチャーとして受け止めている感じもあるというか。アニメとシティポップが混然一体となって、「日本のポップカルチャー」として捉えられているのかもしれないです。

インドネシア出身のシンガー・Rainychによる“unravel”のカバー。“廻廻奇譚”“怪物”“Cry Baby”など、最近のアニメ主題歌も幅広くカバーしている一方、インドネシアにおけるシティポップ人気の立役者としても知られ、シティポップの名曲も多数カバーしている

芦澤:たとえば、YOASOBIにしても、“怪物”はアニメ『BEASTARS』の主題歌ですけど、それ以外の曲でもMVがアニメーションだったりするせいか、アニメっぽいものとして受け止められて、海外で再生されている気もします。

YOASOBI“夜に駆ける”

芦澤:2021年の「海外で最も再生された日本のアーティストの楽曲」のランキングのなかで、アニメ作品と直接結びつきのない曲で一番上位だったのが“夜に駆ける”だったんです。アニメ主題歌じゃないのにこんなに上位に入るっていうのは、結構意外だったんですよね。

金山:ぼくもずっと謎だったんですよ。アニメ作品の力を借りずにここまで海外で聴かれることってめったにないですからね。

芦澤:そうなんです。以前だとcinnamonsとevening cinemaの曲が上位に来たことはあったんですけど、それとも違う新しい現象だったなって。

リアルから配信へ。フランスと東南アジアに見る、アニメ主題歌の受容の変化

―一時期はフランスが日本のアニメと親和性が高い国としてよく取り上げられていたと思うのですが、このランキングで6位なのはどう分析されますか?

田坂:フランスで起きたのは第一次ジャパンカルチャーブームというか、『JAPAN EXPO』(2000年から開催している日本文化イベント)を含め、リアルなイベントでワッと盛り上がった時期があったと思うんです。

ただ、ここ5、6年はアメリカのファニメーションやクランチロールの役割が大きくなって、配信で盛り上がるという流れに変わってきています。

芦澤:フランスは確かにアニメカルチャーや「Kawaii」カルチャーに対する関心が高いマーケットで、実際盛り上がってはいるんですけど、ただフランスではSpotify上で「Anime」のカテゴリーページも展開されていなかったり、ローカルコンテンツを守りたい意識が非常に強い国なんです。

日本のアニメに対するムーブメントも、サブカル的に細分化されたなかのひとつで、それをオーバーグラウンドに取り上げるような動きは薄く、あくまでサブカルチャーとして存在しているイメージ。

それに対して、現在の第二次ブームというか、インドネシアのような若いマーケットの盛り上がりは、ネットで話題になっているものを共有して、それがサブスクリプションで顕在化する流れなので、その違いはあると思いますね。

TK from 凛として時雨の“unravel”はなぜ世界で聴かれ続けているのか?

―2021年11月に発表された、日本でのSpotifyローンチ以降の5年を振り返るランキングのなかでは、「過去5年に海外で最も再生された日本のアーティストの楽曲」の1位が『東京喰種』主題歌の“unravel”(TK from 凛として時雨)でした。この曲のリリースは2014年ですが、2021年の単年ランキングでも4位に入っています。この結果をどう分析されますか?

TK from 凛として時雨“unravel”を聴く(Spotifyを開く

芦澤:“unravel”はもうすぐ2億回再生に迫る勢いなんですけど、2020年と2021年のデータを比較したら、15%伸びてたんですよ。すごく不思議なのが、たとえば、『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』は新しい作品が公開されて、メディアミックスでいろんなことが行われるなかでバズっているわけですけど、『東京喰種』は完結した作品で、新作エピソードが公開されているわけでもないんですよね。

それにもかかわらず、なぜこのような伸び方をしているのかはすごく不思議です。特にアメリカで圧倒的に強いので、アメリカで何が起こってるんだろうなと。

田坂:いわゆる「名曲」が聴かれ続ける傾向はある気がします。KANA-BOONの“シルエット”やいきものがかりの“ブルーバード”のように、リリースがかなり以前の曲がランキング上位に残っているのも特徴といえるかなって。

KANA-BOON“シルエット”を聴く(Spotifyを開く

いきものがかり“ブルーバード”を聴く(Spotifyを開く

芦澤:たしかに、自分のプレイリストやライブラリに楽曲を保存して、そこから聴いてる人が約7割です。知らなかった人がプレイリストで曲に出会って、再生数が伸びているというよりは、すでに知っている人が何回も何回も聴いているという聴かれ方ですね。

“unravel”以外も上位の曲は同じ傾向で、世界のいろんなマーケットにいるアニメファンの聴き方は、みんなそういう感じなのかなって。

田坂:特定の作品をすごく深く愛してくださってるお客さんが、熱心に聴いてくださってる印象はありますね。その意味では、さっき名前を挙げたKANA-BOONやいきものがかりが主題歌を担当している『NARUTO』はやはり大きなタイトルだと思います。

プレイリスト「NARUTO –ナルト- シリーズ」を聴く(Spotifyを開く

田坂:「和ものテイスト×アニメ」っていう、海外の人が思う日本の要素がギュウギュウに詰まっていて、かつストーリーも重厚、精神的な描写も丁寧で、作品としての強度がすごく高い。評価されるべくして評価されている印象です。『東京喰種』も最近の作品のなかではそういう印象があって、実際TKさんだけでなく、Cö shu Nieの曲とかもすごく聴かれてますし。

Cö shu Nie“asphyxia”を聴く(Spotifyを開く

芦澤:似たような聴かれ方をしている例としては、『進撃の巨人』のLinked Horizonもそうなんですけど、でも『進撃の巨人』は時期ごとに聴かれる曲が変わっているのに対して、“unravel”はずっと聴かれ続けていて。この曲の作品へのハマり具合が『東京喰種』ファンに相当愛されているとしかいえないなって。

田坂:『東京喰種』自体、原作者の石田スイ先生や参加したアーティスト含め、すごく音楽に対して思い入れの強い作品だと聞いているので、それが言語を超えて海外でも受け入れられているというのは、すごく嬉しく思います。

プレイリスト「Tokyo Ghoul –東京喰種 トーキョーグール- Compiled by Sui Ishida」を聴く(Spotifyを開く

芦澤:石田スイ先生は音楽愛が強く、知識も豊富で、主題歌に関して、「こういうアーティストにこういう曲をつくってほしい」っていうところまでコミットされたそうで。それに対して、TKさんが作品の世界観と見事に共鳴する楽曲をつくったことによって、単なるタイアップを超えた楽曲になり、世界中のファンに響いてるのかもしれないですね。

「アニソン」のイメージを拡張して、クールなカルチャーとしてのさらなる枠組みをつくるために

―これからの展開に向けて、現状の課題をどのように感じられていますか?

田坂:アニメ作品自体が浸透して、注目を浴びているのに対して、やっぱり楽曲は「作品の主題歌」っていうところから抜けられていないという印象です。主題歌になった曲はすごく好きだけど、そのアーティストの新譜は聴いていないとか、横に広げていくことはまだできていないんですよね。

たとえば、「アニメ主題歌」をまとめて、海外でもジャンルとして聴くような文化をもっと醸成できれば、その先で広がりが生まれて、アーティスト自体を好きになってくれるかもしれない。『Sony Music AnimeSongs ONLINE』も、そのためのチャレンジのひとつでした。

―なるほど。

芦澤:Spotifyでもステレオタイプな「アニソン」というカテゴライズにとどまらないよう、アニメカルチャーをクールなものとして発信することを心がけています。

日本のエディターが編成するSpotify公式プレイリスト「Anime Now」を聴く(Spotifyを開く)。リスナーの比率は海外が65%

芦澤:実際海外のリスナーやアーティストから日本のアニメはリスペクトされて、愛されているんですよね。なので、意識改革じゃないですけど、「アニメは日本が世界に誇れるポップカルチャーだ」っていう打ち出しは、ここ数年すごく考えているところです。

田坂:今回イベントタイトルに使う言葉を「アニソン」ではなく「AnimeSongs」というワンワードにしたのは、意識的な部分でした。いまのところはちょっと安直ですけど、アニメ主題歌を世界に向けて発信するうえで、より広い視野でジャンルをとらえられるなにか新しい言葉の発明があったらいいねっていうのは、かなり話し合っています。

実際に、1日目は藍井エイルもいれば、TKもいれば、KANA-BOONもいたし、2日目はCö shu Nieもいれば、TrySailもいれば、T.M.Revolutionもいるという、大きな括りで発信したかったんです。

―ちなみに、「アニソン」っていう言葉は海外だと通じないわけですよね?

金山:一部のコアファンだけがわかる感じです。

田坂:世界にこれだけ日本のアニメが広がっていて、日本だと「アニメ」と「アニソン」の距離は非常に近いから、「アニソン」という言葉も海外に普及してるんじゃないかってなんとなく思ってたんですけど、今回あらためて海外の市況についてヒアリングをすると全然そんなことはなくて。

やっぱり、まだ枠組みはできていない、ジャンル化されていない状態なんだと思いました。逆にいえば、そういう枠組みをつくれれば、そこに帰属意識が生まれて、ムーブメントにもつながるんじゃないかと思っていますね。

「アーティスト自身を好きになってもらうために、実像に触れることはとても重要」

―芦澤さんは今後の展開について、どのようにお考えですか?

芦澤:そもそも2000年前後から、ソニーミュージックグループ全体として、所属アーティストがアニメの主題歌を担当するという取り組みを始められたのはすごく新しかったですよね。その前までは、そういうことってなかったと思うんです。

それによって、クールな音楽を志向しているJ-ROCKのバンドとかがアニメ主題歌をやるようになり、実際にヒット曲が出て。「アニメのタイアップをやるのはかっこいい、ベネフィットがあることだ」という意識に変わっていったのは、大きな潮流の変化だったわけです。

そこから今度はストリーミングが普及して、世界のリスナーを獲得する一番の近道がアニメ主題歌だっていうことがわかり、ここ数年でさらに価値観が変化したと思うんです。

なので、もう一歩だと思うんですよね。ここからもう一段階、ひとつのムーブメントとして「アニメカルチャーはすごくクールなんだ」っていう意識を広げていくことが重要なのかなって。

田坂:それでいうと、いま海外事業チームと取り組んでいることのひとつとして「サクラチル(Sakura Chill Beats)」っていう、アニメ主題歌のリミックスをする企画があって。

「Sakura Chill Beats」はアニメテーマ曲のリミックス音源を、公式のアニメ画やオリジナルのアニメ画に載せてアップロードするYouTubeチャンネル

田坂:海外のアーティストにもリミックスをしてもらっているんですけど、ブッキングをするなかで「海外のDJには日本のアニメが好きで、リミックスを前向きに捉えてくれる人が多い」と聞いています。

海外のほうが変なフィルターなく、ストレートに音楽として捉えてくれていると思うので、その捉え方が逆に日本にも入ってくるとすごくいいなって思いますね。

金山:実際にリミックスをやってくれているアメリカのSlushiiくんとかは、普段の曲は思いっきりEDMなんですけど、めちゃくちゃアニメファンで、「ぜひやりたい」って飛びついてくれる感じです。

BLUE ENCOUNT“ポラリス (Slushii Remix)”を聴く(Spotifyを開く

金山:そういうコラボレーションによって、日本国内でのアニメに対する見方ももっと変わってくるんじゃないかなって。

芦澤:K-POPの成功もあって、日本の音楽がもっと世界に広がってほしいと誰もが思っているなか、まだ現実的にあそこまでのレベルには達していない。でもアニメカルチャーがもう一段階広がったら、届く日が来るんじゃないかと思ったりもして。

田坂:いまは種まきの段階だとは思うんです。楽曲に対するニーズはあるけど、まだアーティストに対するニーズにはつながっていないし、ジャンル化もできていない。そのための一歩をどう踏み出すのか、興味を広げる手助けをどうやっていくのか、そこは本当に大きな課題です。

ただ、そんななかでサブスクリプションサービスにはすごく可能性があると思っています。いま“unravel”を聴いている人が、すぐにほかのTKさんの曲も聴けるわけで。そのワンアクションを取らせるためのレールづくりをどうやっていくのか、いまはそこにトライしていくタイミングだと思います。

―『Sony Music AnimeSongs ONLINE 2022』も、そのための一歩になったかと。

田坂:めちゃくちゃ手前味噌ですけど、アーティストのパフォーマンスはどれもすごく素晴らしかったと思うんです。コロナで海外に行くことが難しくなって、「曲は知ってるけど、どんなアーティストなのかは知らない」という人も多いなか、やっぱり「実像」に触れてもらうことはとても重要なことで、そこから一歩目が始まる。

このパフォーマンスを見れば、きっとアーティストにも興味を持ってもらえると思います。今回ブッキングできなかったアーティストももっと紹介していきたいですし、これからも続けて行ければと思っています。



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