2022年7月に先行で配信され、アルバム『Yonawo House』にも収録されたyonawo初のフィーチャリング楽曲“tokyo(feat.鈴木真海子,Skaai)”。チルなトラックの上で、Skaai、鈴木、荒谷翔大がそれぞれ言葉を紡ぎ、<働く Why you Tokyo life ねえ 今週 報酬は?>と歌うこの曲は、都市生活者のリアルをロマンチックに歌い上げる、新たなアンセムとなっている。
ともに2021年まで福岡に住んでいて、上京直前の2022年1月に出会った同い年の荒谷とSkaai。すでにメジャーデビューをし、東京で4人で共同生活することを決めた荒谷と、『ラップスタア誕生』への出演が話題を呼び、研究者の道からラッパーへと転身したSkaaiは、それぞれが東京での生活で感じていた想いを“tokyo”に詰め込んだ。上京から1年が経過して、いま2人は何を思うのか。“tokyo”誕生のきっかけとなったyonawoの自宅スタジオYonawo Houseで話を聞いた。
バンドマンで感覚派の荒谷とラッパーで理論派のSkaai。違うからこそ生まれるお互いへのリスペクト
―2人はまだ福岡にいたころに知り合ってるんですよね?
Skaai:DJのSHOTA-LOWくんがおもにKIETH FLACKってクラブ / ライブハウスでやってる『lit』っていうイベントがあって、そこに遊びに行ったときに荒ちゃんもいて。もともとインスタ上では知ってたし、「福岡のバンドといえばyonawo」みたいな感じもあったから、そこで挨拶をして。
荒谷:俺も友達から「Skaaiっていうかっこいいラッパーがいる」って教えてもらってて、曲も聴いてたから、「おお、Skaai!」ってなって。で、SHOTA-LOWさんとか共通の友達もおったから、そこでいろいろ話をして……あの日たしか始発で一緒に帰ったよね?
Skaai:「ウエスト」行って帰った(笑)。
―当時のお互いに対する印象を教えてください。
Skaai:当時はまだライブも観たことがなくて、“矜羯羅がる”の印象が強かったんです。
yonawo“矜羯羅がる”を聴く(Spotifyを開く)
Skaai:それから東京に来て、一緒にセッションをしたりして、メンバーそれぞれの良さに気づいて。特に荒ちゃんは独特じゃないですか? 歌声もメロディーセンスもすごくオリジナリティーがあって、しっかり芯がある。そういうアーティストだと認識してます。
荒谷:まず友達がSkaaiの曲を聴かせてくれて、「やば」と思って、しかも地元の九大に行ってるのを知って、「こんなかっこいいやつが福岡におるんか」ってなって。
Skaai“FLOOR IS MINE”を聴く(Spotifyを開く)
荒谷:ケンドリック・ラマーとかめっちゃ好きだから、そのバイブスも感じるし、でもそれを自分のものとして消化してる。メロディーが歌えるのもかっこよくて、ぼくが最初に聴いた曲でも最後の方でメロディーを歌ってて、「マック・ミラー好きなんかな?」とか、いろいろ考えたりしました。
―実際に知り合って、お互いのパーソナリティーについてはどう感じていますか?
荒谷:Skaaiはクレバーな印象があります。自分のスタイルを客観的に見て、セルフプロデュースできる人なんだろうなって。あとはストイックですね。ライブのクオリティーとか、人一倍真剣に向き合っていて、そういうのを見ると、「俺ももっと真剣にやらないと」って思います。
Skaai:荒ちゃんは物腰の柔らかさがあって、人あたりもめちゃくちゃいいし、よく笑うし、ポジティブなオーラがあると思うんです。でも音楽とか仕事に関しては強い芯を感じるんですよね。自分のアイデンティティーは絶対に崩さない。いい意味で固執するところがあって、そこはめちゃめちゃリスペクトしてます。
―ぼくからするとパーソナリティーはわりと真逆な印象もあって。Skaaiくんはもともと法学の研究者志望だったというバックグラウンドもあるように、理論的に考える人で、荒谷くんは一つひとつを細かく分析するというよりは、感覚とか瞬発力を大事にしてる印象がある。そんな2人が仲良くなっているのが面白いなと。
荒谷:それは俺もその認識です。自分にないものを持ってるからこそ、Skaaiには学ぶことがめっちゃあって、吸収できるところはしたいなと思ってます。
Skaai:きっとお互いそうなんだと思う。同じような人とばっかり関わってても面白くないっていうのはあるよね。
―そもそもバンドとラッパーという違いもあるし。
Skaai:それでも仲良くしてるのは……なんだろうね?
荒谷:なんやろ?
Skaai:まあ、そもそも人間が好きなんだよね。
荒谷:そこはありますね。人間関係は雰囲気とか佇まいとか感覚的なところがまずは大事で。そこからより知っていくうちに、「こういうこだわりがあるんだ」っていうのがわかって、「ここはリスペクトできる」とか「ここは自分にも取り込みたい」と思う。だから一緒にいて楽しいし、刺激ももらってます。
Skaai:このスパンで2曲書いてるからね。さすがに仲良すぎるだろって(笑)。
研究者の道からラッパーへの転身。23年間の人生に区切りをつけ、上京を決意したSkaai
―Skaaiくんが上京を決めたのはどういうきっかけがあったのでしょうか?
Skaai:大学院をやめる決断をしたときに、福岡からは出ようと思ってました。福岡にいると、「福岡でもやれるよ」と言ってくれる人がいっぱいいたんですけど、ぼくは「環境を変えないと本気になれない」と思ったんです。
もちろん、福岡でかっこいい音楽をつくってる人はいっぱいいるし、キャリアをステップアップさせてる人もいっぱいいるけど、ぼくにとって本格的に音楽をやることはそれまでの23年間の人生に区切りをつけることになるから、全部を変えないとスタートを切れないと思ったんですよね。
Skaai:アメリカに行っちゃおうかなとも思ったんです。ただ、ぼくは日本語が大好きで、国籍は日本人ではないんですけど、日本で長く育ってきた身として、日本語で音楽をつくって、それをもって世界に行くっていうのがしっくり来たので、まずは東京に行こうと思いました。まあ、少し前からよく東京に行くようになってて、移動がめんどくさかったし、いろんな要素がありましたね。
―SkaaiくんのキャリアのスタートはSoundCloudで、そこを通じて知り合ったトラックメーカーのuinくんたちと一緒に曲をつくるようになったり、場所に制限されない活動の良さも十分経験してると思うんですね。それでもやっぱりこのタイミングで上京することに意味を感じた?
Skaai:自分はもともとインドアな方で、滅多に遊びに出ないし、クラブもフェスもほとんど行ったことがなかったから、「環境を変える意味ってあるのかな?」と思ってる部分もたしかにありました。
でもいざ来てみると、先輩のDJのイベントに遊びに行ったりとか、そういうリアルなつながりの大事さをすごく感じて。なので、実際東京に来るまでは、「環境変えてみるか」くらいの感じもあったけど、いざ来てみて、大事さがわかった気がします。
―荒谷くんと出会ったKIETH FLACKにはたまたま行った感じだったんですか?
Skaai:KIETH FLACKだけ行ってたんです(笑)。でもそれも『ラップスタア誕生』に出て、Skaaiとしてやり始めてからなんですよね。
―荒谷くんもすでにメジャーデビューをしていて、上京する前から東京への行き来は増えていたと思うんですけど、実際に上京をしてどんなことを感じていますか?
荒谷:Skaaiの話を聞いてて、ほぼそんな感じの心境だなって(笑)。俺も最初は「出る意味がきっとあるんだろうな」くらいの感じだったけど、実際に出てみてその意味が分かったというか、いろんなクリエイティブをしてる人たちがいて、その人たちと同じ空気を吸うことが大事だなって。
自分は制作も会ってやるのが好きで、リモートでやるのは無理だなって思うから、そういう意味でも、東京に出てきて、いろんな出会いがあって、めちゃくちゃ意味があった。それを上京から一年ちょっと経ったいま感じてます。
「ぼくはYonawo Houseに救われた」。“tokyo”の背景にあるyonawoとSkaaiの物語
―“tokyo(feat.鈴木真海子,Skaai)”はまずyonawoと真海子さんの対バンが決まり、その告知を兼ねたインスタライブをYonawo Houseでやったときに、そこに遊びに来ていたSkaaiくんも交えて、「一曲つくろう」となったのがきっかけでできた曲だそうですね。
yonawo“tokyo(feat.鈴木真海子,Skaai)”を聴く(Spotifyを開く)
荒谷:雄哉(yonawoの斉藤雄哉)がつくってたトラックを聴かせて、最初は「形になったらリリースもアリかもね」くらいのノリで。ただ、フィーチャリングは初めてだし、俺もラップしたことないし、「テーマとかあった方がいいんかな?」と思って、ざっくり「東京」って2人に投げて。そうしたら、Skaaiから速攻返ってきて、真海子さんはSkaaiのヴァースを聴いてから書いたのかな?
Skaai:そうね。で、レコーディングはここでみんなでやりました。こういうビートでラップをしたことがなかったので、どういう声色で、どうラップをすればいいか考えたんですけど、普段の自分の曲とは全然違うから、これはトラックをもらった瞬間のバイブスで録らないとできないと思って、帰って速攻書いて。だから、リリックの内容は初めてYonawo Houseに来た気持ちをまんま書いてます。
荒谷:ここでもう書いてなかった?
Skaai:ここで書き始めて、続きを自分の家で仕上げた感じ。
―Skaaiくんのラップパートは<もう 悪戯に首をしめる必要もない もう いいかげん君に嘘つく用もない cuz I live in Tokyo>と始まっていて。つまり、yonawoと出会い、Yonawo Houseに来たことで、どこか気持ちが楽になったと感じていたのでしょうか?
Skaai:ぼくはyonawoに救われた部分が大きくて。決定的に救われたと思ったタイミングが、初めてYonawo Houseに来たときなんです。東京で音楽をやるという決断は自分にとってものすごく大きなもので、その分ハードルがかなり上がってしまっていたんですよね。親の期待も裏切って……結果的には、裏切ることにはならなかったんですけど、自分の意志で自分の人生を大きく変えたことが、高いハードルになってしまっていて。
でも東京でYonawo Houseに来て、すごく温かい雰囲気で、ワインを飲みながらみんなとセッションをして、音楽をつくることの純粋な楽しさを感じたし、「東京にも家ができた」みたいな感覚だったんです。なので、最初のワンラインはそのまんまというか、自分でしめてた首をほどいてあげる、そういう安堵のバイブスが出てると思います。
―もともと研究者志望で、クラブにも行ってなかったという話だったから、音楽仲間もあまり多くなかった?
Skaai:そうですね。ぼくは韓国ヒップホップが大好きで、若干オタクなんですけど、周りに同じ熱量で語れる人はずっといなくて。yonawoともそこまで韓国ヒップホップの話をしてるわけではないんですけど、素直に音楽の話ができるのはいいなって。
研究者志望だったときは、音楽の話をすることが時間の無駄だと思ってたんです。音楽は一人で楽しむもので、研究しなきゃと思ってたし、休み時間にすることが本当に自分の好きなことだと思い込んでて、休み時間も研究しないと研究者は務まらないと思ってて(笑)。
―そうやって、自分で自分の首をしめていたと。
Skaai:いまも根本の部分はきっと変わってなくて、音楽に対してはストイックな部分があると思うんですけど、そのストイックさを楽しめるようになりました。
「みんな互いに無関心なように見えて、思ってることは似通ってる」。“tokyo”が東京以外に住む人にも響く理由
―荒谷くんのパートは<時には比べるのもいいけど 比較はお薬 用法用量ちゃんと守って使って 過剰摂取はダメ ほらまた病気>と始まっていて。東京にはたくさんのクリエイターがいて、刺激を受けるのはいいことだけど、ときに自分と比較して落ち込んでしまうこともある。その難しさが描かれていますよね。
荒谷:そこはそのまま「比べること」についてですね。大貫妙子さんの“くすりをたくさん”が好きなので、あの曲をサンプリングして書いてみました。
大貫妙子“くすりをたくさん”を聴く(Spotifyを開く)
―東京で1年暮らして、実際に「比べること」についてどう感じていますか?
荒谷:誰かが何かをやっているのを見ることも大事だと思うんですけど、でも一番大事なのはその先で自分を見つめることで。そこはずっと変わってないと思います。
Skaai:自分を客観視するための比較はすごく大事だと思う。「みんなと違って、自分にはこういう魅力がある」と思えたら、それはすごくいいですよね。でも「俺もこういうふうにならなくちゃ」っていう枷を自分に課すような、ネガティブな方向に進む比較は良くなくて、やっぱり用法用量が大事だなって、そこはフィールするところですね。まあ、東京は本当にいろんなアーティストがいて、比較したらきりがないですしね。どんぐりずとか見ててもさ、あのバイブス欲しいじゃん?(笑)
荒谷:また全然違う立ち位置だよね。
Skaai:俺も森みたいになりてえなって思うときはある。あんなオープンな感じで、「インスタライブで上裸になってみてえな」とか(笑)。
yonawo“Rhodes feat. どんぐりず”を聴く(Spotifyを開く)
荒谷:ないものねだりみたいなのはある。だから、森くんもSkaaiに対して同じ気持ちを持ってるかもしれないし。
Skaai:まあ、自分のプライベートを吐き出すのがアーティストだと思うから、苦手なものを伸ばすよりも、得意なものをレベル10000にした方が健康的だし効果的ですよね。
―“tokyo”はそういったアーティストならではの姿勢や悩みも感じさせつつ、誰に対しても響く開かれたポップソングになっているのが素晴らしいと思います。
荒谷:“tokyo”っていうタイトルですけど、東京に住んでいる人のためだけに歌おうと思ったわけではなくて。ただ自分の心境をここに出せたらいいなと思って歌詞を書いて、歌ったので、それが伝わったらいいなと思います。
Skaai:ぼくのヴァースも自分のことだけを考えて書いたので、変な話、最初は「いろんな人に聴いてほしい」とも思ってなかったんです。東京に来て、その気持ちを書くことに精一杯だったので、それをyonawoに上手くパッケージングしてもらったなって。
逆にリリースをしてみて、自分のリリックにフィールしてくれる人が意外といたというか、みんな互いに無関心なように見えて、思ってることは似通ってるんだなっていうのは発見でした。福岡に帰っても、「“tokyo”好きです」っていう人多いし(笑)。
―東京に住んでて、「“天神”好きです」っていう人も多いでしょうしね(笑)。曲の舞台はそれぞれでも、そこに込められた感情は場所関係なく響くわけですよね。
Skaai:音楽って面白いなと思います。
yonawo“天神”を聴く(Spotifyを開く)
荒谷:俺もリリックを書いたときはSkaaiと全く同じ心境だった。東京出てきてなにもわからんから、とにかく自分の心境を書くしかないっていう。
Skaai:それが正解なんだろうね。流行らせようと思ってつくった曲って、ダサかったりするから。
荒谷:とにかく現状を絞り出す、みたいな。それが結果的によかったのかも。
Skaai:あと、初客演に呼んでもらえたのはすごくうれしかった。しかもノリで(笑)。
荒谷:「Skaaiも入っちゃう?」みたいなノリで決まったもんな。でも最初は絶対仲のいいやつというか、心から好きだと思える人と一緒にやりたかったし、俺らが音楽を始めた動機もそこにあるから、そこはぶれたくないし、ずっと変わらないと思います。
yonawo“tokyo(feat.鈴木真海子,Skaai)”を聴く(Spotifyを開く)
「ラブソング」というテーマが生んだ化学反応。“Love”に見るyonawoとSkaaiそれぞれの現在地
―1月にリリースされた「Love(feat.Skaai)」はどのようにつくられたのでしょうか?
荒谷:これもまず雄哉と阿南さん(※)がトラックをつくって、スタッフさんと一緒に「Love」っていうテーマを考えてくれて。「せっかくならSkaaiがソロでやらないことをやった方が面白い」って。
Skaai:Skaaiにラブソングを提案してくる人はなかなかいないので、いいところついてくるなって(笑)。
※元never young beach/PAELLASの阿南智史。『Yonawo House』からyonawoの楽曲のプロデュースやミックスを手掛けている
yonawo“Love(feat.Skaai)”を聴く(Spotifyを開く)
―実際には、「ラブソング」というお題とどのように向き合ったわけですか?
Skaai:生々しさが大事だと思いました。抽象的な「愛」で終わるラブソングはあんまり好きじゃなくて、「あなたしかいない」みたいな表現ではなく、「なぜあなたしかいないのか」を具体的に説明してくれるラブソングの方が好きなので、そういうイメージ。
慣れないことをしてるので、不器用な感じが出てると思うんですけど、その感じもよかったのかなって。ぼくは人を愛することがそんなに得意じゃないというか、自分のことでいっぱいいっぱいになっちゃう節があるから、そこも正直に言ったりとか。
―<苦手なりに愛しているのさ>というラインもありますね。
Skaai:だから、Skaaiというよりは周礼旻(Skaaiの本名)としての言葉が乗ってると思います。人間として語ってる部分がより大きいかもしれないですね。
―そこもやっぱりこれまでは研究が第一だったから、コミュニケーションには苦手意識がある?
Skaai:研究してても音楽してても自分はそこまで変わらなくて……ひどい男なんですよ(笑)。
荒谷:あははははは(笑)。
Skaai:「人のために尽くす」みたいなことができなくて……でも、そういう自分も客観視できるようになって、ラブソングを書けるくらいまでにはなったというか。
―これまではつねに自分のアイデンティティーと向き合って、「自分とは何者か?」を考え続けてきたのかなと思います。でも、いまは目線が少しずつ外に開かれていて、自分と他者との関係性に視点が向くようになり、“Love”にも結果的にそこが表れてるのかなって。
Skaai:まさに、そうだと思います。ずっとアイデンティティーに苦しんでる時間が長くて、「自分らしい音楽とは何だろう?」っていうのが先行してたんですけど、もっと根本的な、瞬発的な感情みたいなものにもちゃんと目を向けることも大事だなって、この曲を書いたことで気づかされたなって。だから、関係性について歌ってるけど、同時に自分の内面も見つめてる。yonawoには毎回自分を見つめ直すいい機会をもらっていて、すごくありがたいです。
―荒谷くんは「ラブソング」というテーマをどう捉えましたか?
荒谷:「あくまで個人的なことを歌いたい」っていうのは俺もあるんですけど、でも個人的になりすぎたくもなくて、誰が歌っても成り立つラブソングも好きだから、そのバランスはすごく考えました。
―逆にyonawoはこれまでちょっと抽象的だったり、余白のある表現が多かったところから、最近はより具体的な、ストレートな言い回しの表現も増えてきていて、それはSkaaiくんからの影響もあるのかなと。
荒谷:Skaaiもそうだし、ラッパーさんってそうじゃないですか? その人の人生や想いを語ることのかっこよさ。小袋(成彬)さんとかもかっこいいなと思うし、いまの俺の気分として、そっちがしっくり来て、俺もこういう表現がしたいなと思う部分もあります。
Skaai:この曲のビジュアライザーあるじゃん? 俺このあいだ韓国に一週間制作に行ってて、向こうのプロデューサーとかラッパーのスタジオに行ったんですけど、YouTubeで「Skaai」を調べると、いまこの曲が上の方に出てきて、タイトルが“Love”だし、俺と荒ちゃんが雄哉のベッドに座ってるから、みんな「彼氏?」みたいな(笑)。
荒谷:ホームビデオの質感もそれっぽいし、傍から見たらそう見えるかも。
Skaai:結構何回も言われて。
荒谷:全く考えてなかったけど、それもいいな(笑)。
yonawo“Love(feat.Skaai)”を聴く(Spotifyを開く)
日本語が世界でも徐々に聴かれるようになってきた時代、2人が見据える海外へのビジョンとは
―最初にも話してくれたように、Skaaiくんはつねに世界も視野に入れていて、将来的には「『グラミー賞』を獲りたい」ということも過去のインタビューで話していますよね。
Skaai:前よりも『グラミー賞』に固執はしなくなりました。ボーダーレスな時代になってきて、J-POPも世界で聴かれるようになってきたと思うし、自分のアートを軸として、日本発で世界的な現象をつくることができたら、それがグラミーでもそうじゃなくてもいいなって。
Skaai“Mermaid”を聴く(Spotifyを開く)
―yonawoは世界での活動をどう考えていますか?
荒谷:雄哉とかは特に洋楽志向というか、海外のインディーがめっちゃ好きやし、それがトラックにも表れてると思うんですけど、日本でも海外でもどちらかに固執はせずに、あくまで自分たちがやりたいことをやって、それが結果的になにかに繋がったら素敵だなって。日本語を大事にしたいのはぼくも同じで、少しずつ海外でも日本語の曲が聴いてもらえるようになってきたと思うから、それはいいなと思います。
yonawo“Falling”を聴く(Spotifyを開く)
―Skaaiくんは韓国での制作でどんなことを感じましたか?
Skaai:毎日セッションをして、向こうのシーンを知って、こっちのシーンを教えて、「音楽で会話する」みたいな、そういうテンションだったんですけど、言語が違うだけで、どの国でもそんなに大きくは違わないんだなと思いました。
海外に行くことだけがすべてじゃないというか、まずは自分の物語とか自分の世界を強固にしていくことの方が大事だなって、そういう学びがありましたね。もちろん、yonawoとのセッションはめちゃめちゃ刺激になってるんですけど、「コラボしなきゃ」とか「誰かのお墨付きをもらわなきゃ」とか、そういうことではないんだなって。
―いまはフィーチャリングで戦略的にヒットさせることが大事になってたりもするけど、偶然の出会いから生まれたコラボにはきっと別の価値がありますよね。
Skaai:戦略は戦略ですごく大事だと思うんです。「Skaai」っていうのはキャラクターだと思っていて、Skaaiのキャリアをどうしていくのか、戦略的に考えることはすごく重要だなって。それこそ、自分で自分の首をしめるような戦略は違うと思うんですけど。
―yonawoはこの先の展望についてはどのように考えていますか?
荒谷:数字や結果を出さないといけない世界ではあるので、そこは戦略的に考えることも大事だと思うんですけど、やっぱり一番大事なのは自分がワクワクを感じられるかどうかだと昔から思っているので、そこが自分の最優先事項なのは変わらないですね。
Skaai:いまはなんでもスピードが速いから、音楽を単体で出して、すごくいい曲だったとしても、なかなか流行らない時代だと思うんです。なので、音楽を含めた物語や世界観にみんなを引き込むことがすごく大事だと思う。例えば、『ハリー・ポッター』をつくるイメージというか、「いい物語をつくる」ということが大事な時代かなって。
―それでいうと、yonawoとSkaaiのこれまでの物語はすごく素敵ですよね。それぞれの道を歩みつつ、この先のコラボレーションも期待しています。
Skaai:……きっとまたあるでしょう(笑)。
- イベント情報
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『YONAWO YAON』
2023年3月18日(土)会場:東京都 日比谷野外大音楽堂
- プロフィール
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- yonawo (よなお)
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荒谷翔大(Vo)、田中慧(Ba)、斉藤雄哉(Gt)、野元喬文(Dr)にて福岡で結成。寝る前に聞きたい「ベッドタイムサウンド」が特徴の新世代バンド。2019年11月にAtlantic Japanよりメジャーデビュー。2023年1月25日(水)にデジタルシングル“Love feat. Skaai”、3月1日(水)にCHILL OUT CM主題歌“Falling”、3月15日(水)に“Rhodes feat. どんぐりず”を立て続けにリリースし、3月18日(土)にデビュー三周年を記念し開催された日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブ『YONAWO YAON』も即完売。また、ストリートブランドのルックにも起用されるなど多方面で活躍。
- Skaai (すかい)
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アメリカ合衆国・ヴァージニア州⽣まれ、⼤分県育ちのアーティスト。⽇本語・英語・韓国語が堪能なトリリンガル。幼少期から、⽇本のみならず韓国、マレーシア、シンガポール、カナダ、アメリカ合衆国での滞在経験を有し、⾃⾝のアイデンティティーは⾳楽そのものであると⾔わしめるほどの多様な⾳楽センスを持ち合わせている。2020年春、⼤学卒業から⼤学院⼊学までの時期がコロナの⾃粛期間となったことでSoundCloud上での楽曲リリースを⽪切りにラッパーとしての活動を開始。AbemaTV『ラップスタア誕⽣2021』ではその実⼒とポテンシャルを⾒込まれ、審査員から⾼い評価を得た。2021年11⽉にリリースした1st Single“Period.”では、新鋭ビートメイカーuinと共に重層的にジャズとヒップホップの要素を取り⼊れ、新鮮なラップとソウルフルな歌唱⼒を世に知らしめる。2022年2⽉、“Period.”の続編的な意味合いを持った楽曲“Nectar.”をリリース、レッドブルのマイクリレー企画「RASEN」に出演しBose(スチャダラパー)、⽥我流、BIMとの共演を果たす。幕張メッセで初開催された国内最⼤規模のヒップホップフェスティバル『POP YOURS』に出演。“FLOOR IS MINE (feat. BIM)” “HOMEWORK”2枚のシングルリリースを経て、9月に待望のEP『BEANIE』を発表。11月には渋谷WWW Xを含む初のツアーを敢行、チケットは即完売となり、ファイナル公演では生配信も行った。