スチャダラパー×ライムスター対談 最初からズレてるから一貫できる

スチャダラパー×ライムスター対談 最初からズレてるから一貫できる

インタビュー・テキスト
三宅正一
撮影:寺内暁 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

既報の通りスチャダラパーとライムスターのコラボレーションが満を持して実現する。あらためて説明するのもはばかられるが、互いに日本のヒップホップシーンの黎明期からキャリアをスタートさせ、音楽的にも立ち位置的にも独立独歩の道を進んできた同世代の3人組グループである。

しかし、シーンがまだ発展していない時代に登場した2組だからこそ、その関係性はバックグラウンドやコネクションの微妙な相違もあいまって、どこか緊張感を帯びた距離があったと認識しているリスナーは少なくないだろう。それは本人たちも部分的には認めている。

そして、時は経ち2020年。TOKYO FMの50周年アニバーサリー、今年デビュー30周年を迎えるスチャダラパー、昨年結成30周年を迎えたライムスターという3つの要素が絡み合い、待望のコラボレーションが実現した。

楽曲のタイトルはズバリ、“Forever Young”。プロデューサーは、2組とほぼ同期でありキエるマキュウのメンバーとして、あるいは日本のラップミュージックにおける「ヤバい音」を構築するサウンドエンジニアとしても知られるThe Anticipation Illicit Tsuboi。楽曲の情報解禁に併せてサンプリングソースや参加ミュージシャンのクレジットも公表されたが、ヒップホップの原理に則ったサウンドプロダクションとOKAMOTO'Sからハマ・オカモトとオカモトレイジも参加している生音が融合し、強烈かつ解放的なソウルネスとポップネスを誇るトラックが鳴っている。

そして、「まさに!」という喩えが満載のネームドロップが続々と投下され、「ニヤリ」が止まらないこの2組の掛け合いならではの諧謔と説得力、多幸感に満ちたマイクリレーはたまらないものがある。この30年もの間、なぜスチャダラパーとライムスターは栄枯盛衰の激しい音楽シーンの中で自らのヒップホップアティテュードとラップスタイルを貫き通せているのか? 今回のコラボレーションが実現するまでの過程や楽曲の手応えも含めて6人がおおいに語ってくれた。

※この取材は東京都の外出自粛要請が発表される前に実施しました。

10年以上の期間を経た、念願のコラボ実現に向けて

―「スチャダラパーからのライムスター」としては初対談ですか?

Mummy-D:うん。以前、6人で対談したことはあるけど、この企画で取材を受けるのは初めてだね。

―こちらも緊張しますね(笑)。

Mummy-D:話を掘ろうと思えばキリがないからね(笑)。

DJ JIN:いくらでも話が脱線していく可能性もあるし(笑)。

スチャダラパーとライムスター。左から:DJ JIN、ANI、Mummy-D、Bose、SHINCO、宇多丸
スチャダラパーとライムスター。左から:DJ JIN、ANI、Mummy-D、Bose、SHINCO、宇多丸

―まず思い出すのは、宇多丸さんがメインパーソナリティーを務めているTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の前身番組といえる『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』にスチャのみなさんがゲスト出演し、宇多丸さんがスチャへの愛憎入り交じった思いを語る回(2008年2月16日の放送回。「スチャダラパーと振り返る! ポスト・バブルと日本語ラップの20年」)がありましたよね(笑)。

Mummy-D:愛情じゃなくて愛憎なんだ(笑)。

Bose:あれはね、持ちネタだから(笑)。

宇多丸:年季の入ったひがみ芸(笑)。

Bose:僕らもパターンとして乗っかるやつ。

ANI:団体芸的なね。「押すなよ、押すなよ」的な(笑)。

スチャダラパー(左から:Bose、ANI、SHINCO)<br>ANI、Bose、SHINCOの3人からなるラップグループ。1990年にデビューし、1994年『今夜はブギー・バック』が話題となる。以来ヒップホップ最前線で、フレッシュな名曲を日夜作りつづけている。
スチャダラパー(左から:Bose、ANI、SHINCO)
ANI、Bose、SHINCOの3人からなるラップグループ。1990年にデビューし、1994年『今夜はブギー・バック』が話題となる。以来ヒップホップ最前線で、フレッシュな名曲を日夜作りつづけている。

―この曲の解禁時のコメントでも2組の絶妙な関係性と距離感、そしてこのコラボレーションがいかに特別であることがよくわかるんですけど。

Bose:前から一緒にやりたいねとはゴニョゴニョいっていて。

Mummy-D:10年以上前からいってるもんね。でも、なかなかタイミングが合わなくて。そこに世話好きのおばさんのTOKYO FMが「あんたたちそろそろくっ付いてみなさいよ」「あんまり長い春はよくないわよ」みたいな感じで引き寄せてくれて(笑)。ちなみに世話好きのおばさんというのは比喩だよ? 本当におばさんがいるわけじゃなくて。

―TOKYO FMの擬人化という(笑)。実際にコラボレーションの話が動き出したのはいつごろなんですか?

宇多丸:TOKYO FMに集まってミーティングしたのは2019年の10月くらいだった気がする。

Bose:一堂に会して曲の内容を決める時間もなかなかないから、一気にそのタイミングで話して。でも、ややこしいことはなにもなかったよね。

宇多丸:結局、この曲(トラック)になった経緯があって。じつはライムスターが『ダーティーサイエンス』(2013年1月リリースのメジャー8thアルバム)を作ってるときにすでにこの曲をスチャと一緒にやるイメージがあったんです。

ライムスター『ダーティーサイエンス』を聴く(Spotifyを開く

―あ、Tsuboiさんからこのビートをだいぶ前にもらっていたということですか?

Mummy-D:その時点でこの曲をスチャとやったらいいんじゃないかって思ってたの。でも、なんとなく話が流れていっちゃって。「スチャさんは最近どんな感じなんですかね?」って探りを入れると、「ボーちゃん(Bose)は京都精華大学でバリバリ教員もやってるし、モチベーションはそんなに高くないらしい」とか話が入ってきて(笑)。

Bose:あくまで人づてにね(笑)。

Mummy-D:人づてにはいろんな噂が流れてくるから、「そうか、じゃあ今は誘わないほうがいいか」って思ったり。

Bose:間に人が入るとどうしてもそういう感じになっちゃうよね。お互い気遣うし。

Mummy-D:一緒にやりたいとは思うけど、実際やるとなるとちょっと怖いじゃん。失敗できないからさ。

ライムスター(奥から:宇多丸、DJ JIN、Mummy-D)<br>1989年結成。宇多丸(Rap)、Mummy-D(Rap / Total Direction / Produce、作曲家としての名義は「Mr. Drunk」)、DJ JIN(DJ / Produce)からなるヒップホップ・グループ。ライブ力に定評があり自らも「キング・オブ・ステージ」を名乗る。
ライムスター(奥から:宇多丸、DJ JIN、Mummy-D)
1989年結成。宇多丸(Rap)、Mummy-D(Rap / Total Direction / Produce、作曲家としての名義は「Mr. Drunk」)、DJ JIN(DJ / Produce)からなるヒップホップ・グループ。ライブ力に定評があり自らも「キング・オブ・ステージ」を名乗る。

―それは双方のファンも思ってるかもしれないですね。近年の交流でいえば、2015年にライムスター主催の野外フェス『人間交差点』にスチャが出演したり、あと去年の夏も『夏びらき MUSIC FESTIVAL』に2組とも出演しましたよね。

Mummy-D:『夏びらき』はけっこうデカかった。「こういうときに一緒にやれる曲が1曲あったらすげえ盛り上がっちゃうよね」って会話もあって。

Bose:そうなんだよね。

Mummy-D:『人間交差点』のときもすでにモヤモヤしてたから。一緒にやりたいトラックがすでにあったわけで。

―お互い30周年というタイミングも後押しした要因になったのではないかと。

Bose:TOKYO FMもそこを気にしてくれたんじゃないかな。

Mummy-D:TOKYO FMが50周年を迎えるから、50歳くらいのアーティストにお願いしたってポイントもあると思う。そこにお互いの30周年も重なって。

左から:DJ JIN、ANI、Mummy-D、Bose、SHINCO、宇多丸

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リリース情報

スチャダラパーからのライムスター
『Forever Young』

2020年4月1日(水)配信

リリース情報

TBSラジオ「アフターシックスジャンクション」(Podcast)

プロフィール

スチャダラパーからのライムスター
スチャダラパー

ANI、Bose、SHINCOの3人からなるラップグループ。1990年にデビューし、1994年『今夜はブギー・バック』が話題となる。以来ヒップホップ最前線で、フレッシュな名曲を日夜作りつづけている。デビュー25周年となる2015年にアルバム『1212』をリリース。2016年に『スチャダラ2016 〜LB春まつり〜』を開催し、ミニアルバム『あにしんぼう』をリリース。2017年に『ミクロボーイとマクロガール / スチャダラパーとEGO WRAPPINʼ』、『サマージャム2020』の2曲を発売。2018年4月に日比谷野外大音楽堂で『スチャダラパー・シングス』を開催し、ライブ会場限定販売となる4曲入りCD『スチャダラパー・シングス』を発売。2019年11月に『ヨン・ザ・マイク feat. ロボ宙&かせきさいだぁ』を配信リリース。2020年4月8日、デビュー30周年記念アルバム『シン・スチャダラ大作戦』リリース。

ライムスター

1989年結成。宇多丸(Rap)、Mummy-D(Rap / Total Direction / Produce、作曲家としての名義は「Mr. Drunk」)、DJ JIN(DJ / Produce)からなるヒップホップ・グループ。ライブ力に定評があり自らも「キング・オブ・ステージ」を名乗る。グループ結成の80年代末/90年代前半の日本にはまだ、アメリカ文化であるヒップホップ、ラップは定着しておらず、日本語でラップする可能性、方法を模索、試行錯誤を重ねて曲を作り続け、また精力的なライブ活動によって道を開き、今日に至るまでの日本ヒップホップシーンを開拓牽引してきた。近年はグループとしての益々旺盛なリリース、ライブ活動の一方で、メンバーそれぞれがラジオパーソナリティ、役者としてなど多方面に活躍をひろげる。2019年に結成30年を迎えて様々な記念リリースと、47都道府県48公演の記念ツアーなどの企画を成功させる。2019年11月27日「マクガフィン/岡村靖幸さらにライムスター」、2020年4月1日「Forever Young/スチャダラパーからのライムスター」をリリース。

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