崎山蒼志と諭吉佳作/men、見つめ合う2つの才能 その特異な実態

崎山蒼志と諭吉佳作/men、見つめ合う2つの才能 その特異な実態

崎山蒼志『並む踊り』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:松永つぐみ: 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

「好きなものは自分で生み出す」が信条の諭吉佳作/men

―そもそもなぜ、諭吉さんはオーディションに出ようと思ったのですか?

諭吉:なんとなく漠然と「音楽やりたいなぁ」と思っていたら、母が「こんなのあるよ」って教えてくれたのが、そのオーディションだったんです。

―「漠然とやりたかった」というのは、ずっとミュージシャンを志していた、というわけではなさそうですよね。

諭吉:作詞作曲は小学校6年生くらいの頃になんとなく始めていたんですけど、オーディションを受ける段階で、音楽をやること自体に大したビジョンがあったわけではなくて。人前で披露するにあたって、「楽器がまともにできないからどうしよう?」ってことで、母親がGarageBandの存在を教えてくれたんです。

諭吉佳作/men

諭吉:ただ、そもそも音楽に限らず、私はなんでも自分でやりたい人間なんですよね。たとえば「アクセサリーが好きだな」と思ったら、自分でアクセサリーを作ってみたり。「自分の好きなものは自分で生み出したい」っていう欲があるんです。

―気になっていたんですけど、今日の服についているその緑のやつは、ご自身で付けたんですか?

諭吉:あ、そうです。シャツ自体は既製品なんですけど、これはペタペタペタっと自分で貼りました。「なんでも自分で作りたい!」っていう気持ちは、小さい頃からずっとあったと思います。

絵を描くのも好きだったし、粘土も好きだったし、図工の授業も好きだったし。すごく偏った考えなんですけど、既製品が嫌だった時期もあるんです。縫い物にハマっていた時期に、ミシンを使うことすら嫌で、長い布をずっと手縫いしていたこともあって(笑)。

―(笑)。

諭吉:だからって自分の服を全部、自分で作ることはできないし、今はもう、既製品も嫌じゃないんですけど。音楽も同じ感覚で、「自分のもの」と言える音楽を、自分の手で作りたいなと思ったんです。

―最初は、どんな音楽を好きだと思い、それを自分の手で生み出したいと思ったのでしょうか?

諭吉:「音楽を作りたい」と思った頃、Corneliusを聴き始めたんです。ちょうど『Mellow Waves』(2017年)が出た時期だったんですけど、あれを聴いて、「私が耳を使って得たい情報はこれだ!」って気持ちになったんですよね。

Cornelius『Mellow Waves』を聴く(Spotifyを開く

諭吉:それまでは言葉が強い音楽を聴いていたんですけど、それよりも、「音」として入ってくる音楽の心地よさを感じたし、「こういう、心地いいものを作れたらいいな」って思いました。今でも、私はコードとかもわからずに音楽を作っているから、「心地いいかどうか?」を頼りにしながら音楽を作っているなと思います。自分が心地いいと思える和音や展開を探っていくことでしか、音楽が作れないんですよね。

崎山:諭吉さんのこういう部分は、自分とは違うなと思います。

「諭吉さんは、すごく『新しい人』っていうイメージがあります」(崎山)

崎山:僕の場合、ギターを弾いているときに「ここ、ムズいでしょ?」みたいな意識が少なからずあるんです。理論的な部分に寄っちゃう、というか。でも、諭吉さんの場合はそういうのがなさそうで、より純粋な感じがします。出会った頃から、「諭吉さんは、音楽だけの人じゃない」っていうのも感じていたし。

左から:諭吉佳作/men、崎山蒼志

諭吉:ギターをやっている人って、だいたいコードから入るじゃないですか。だから崎山さんは、そういう部分もわかってやっているんですよね?

崎山:そう、基本的なことはわかってます。でも、諭吉さんはそうじゃないからこそ、みんなが見落としていたものを含ませることができている感じがする。人が見ていないものを見ているっていうことは前提で、そこをポーンって飛び越えた、「そこかよ!?」っていうようなものを捉えている、というか。

諭吉佳作/menをSoundCloudで聴く
諭吉佳作/menをSoundCloudで聴く(SoundCloudを開く

諭吉:私も弾けないけど、多少ピアノを習っていた時期があったんです。でも、楽譜を見るのがめちゃくちゃ嫌いで。「そのとおり」にやるのが得意じゃないんです。たまに、ピアノを弾きながら曲を作るときもあるんですけど、基本的に、メロディーを作るのがあまり得意ではないんですよね。まず、土台に歌詞があって、それを読み上げるようにしないとメロディーが作れないんです。

―「詞先」と呼ばれる作り方ですかね。

諭吉:私は、メロディーだけをゼロから生み出すことは無理なんです。ゼロから1を生み出すときに詞がないと、メロディーが浮かんでこないことが多い。なので、ピアノを弾いて曲を作ろうとしても、たどたどしくなってしまうんです。「音」が好きだけど、苦手というか……。たまに、なにも考えずにメロディーが急に出てくるときもあるんですけど、基本的にはそんなにスラスラ出てくるタイプではなくて。

なので、「もし、ピアノを弾けたら違ったのかなぁ」って思ったりもするんです。崎山さんはギターを弾きながら歌っているし、そのための技術を持っているし、尊敬します。前に話を聞いたら、「ギターを弾きながら歌も同時に作っている」って言っていたじゃないですか?

崎山:うん。

諭吉:そっちのほうが、音楽が自然に出てきているっていうことのなのかなぁって思うんです。

崎山蒼志“国”を聴く(Spotifyを開く

―先ほど諭吉さんがおっしゃった「自分が好きなものを自分で生み出したい」という欲求は、崎山さんにも通じるものはあると思いますか?

崎山:う~ん……ないです。

諭吉:ほぉぉ。

崎山:もちろん、自分で「これは違うな」って思うようなものは作らないですけど、僕の曲作りは、「自分の好きなものを作る」っていう感じではなくて。特にギターで曲を作るときは、そういうことを意識する以前の話って感じがします。弾いていて、「このフレーズ、いいな」と思うものから引っ張られて曲ができることが多いので。

そもそも、ギターを始めたきっかけが、「自分が好きなものを作りたいから」ってよりは、人の真似とかから入っているので、感覚が違うんだろうなと思います。諭吉さんは、僕からすると、すごく「新しい人」っていうイメージがありますね。

左から:諭吉佳作/men、崎山蒼志

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リリース情報

『並む踊り』(CD+DVD)

2019年10月30日(水)発売
価格:2,728円(税抜)

[CD] 1. 踊り 2. 潜水(with 君島大空) 3. むげん・(with 諭吉佳作/men) 4. 柔らかな心地 5. 感丘(with 長谷川白紙) 6. 夢模様、体になって 7. 烈走 8. 泡みたく輝いて 9. Video of Travel [DVD] 1. ドキュメント「崎山蒼志 LIVE 2019 とおとうみの国」 2. 「国」ミュージックビデオ

イベント情報

『崎山蒼志 TOUR 2019 「並む踊りたち」』

2019年10月28日(月)
会場:東京都 渋谷 CLUB QUATTRO

2019年11月3日(日・祝)
会場:香川県 高松 SPEAK LOW

2019年11月4日(月・振休)
会場:大阪府 梅田 TRAD
ゲスト:諭吉佳作/men

2019年11月10日(日)
会場:東京都 神田明神ホール
ゲスト:長谷川白紙

2019年11月16日(土)
会場:福岡県 ROOMS

2019年11月17日(日)
会場:広島県 SECOND CRUTCH

2019年11月30日(土)
会場:愛知県 名古屋 JAMMIN'

2019年12月15日(日)
会場:静岡県 浜松 窓枠

ゲスト:君島大空

2019年12月21日(土)
会場:宮城県 仙台 HooK

2019年12月22日(日)
会場:北海道 札幌 KRAPS HALL

料金:各公演 前売3,700円(ドリンク別)

プロフィール

崎山蒼志
崎山蒼志(さきやま そうし)

2002年生まれ静岡県浜松市在住。母親が聞いていたバンドの影響もあり、4歳でギターを弾き、小6で作曲を始める。2018年5月9日にAbemaTV『日村がゆく』の高校生フォークソングGPに出演。独自の世界観が広がる歌詞と楽曲、また当時15歳とは思えないギタープレイでまたたく間にSNSで話題になる。2018年7月18日に「夏至」と「五月雨」を急きょ配信リリース。その2か月後に新曲「神経」の追加配信、また前述3曲を収録したCDシングルをライヴ会場、オンラインストアにて販売。12月5日には1stアルバム『いつかみた国』をリリース、併せて地元浜松からスタートする全国5公演の単独ツアーも発表し、即日全公演完売となった。2019年3月15日にはフジテレビ連続ドラマ『平成物語』の主題歌「泡みたく輝いて」と明治「R-1」CM楽曲「烈走」を配信リリース。5月6日に自身初となるホール公演「とおとうみの国」を浜松市浜北文化センター大ホールで大成功させた。10月30日に2ndアルバム『並む踊り』をリリースした。

諭吉佳作/men(ゆきちかさくめん)

2003年生まれの音楽家。2018年、中学生の時に「未確認フェスティバル」で審査員特別賞を受賞。その唯一無二の楽曲センスと艶のある伸やかな歌声で注目を集め、インディーズバンド音楽配信サイト「Eggs」では年間ランキング2位を獲得。音楽活動以外にも、執筆活動やイラストレーションなどクリエイティブの幅は多岐にわたる。2019年、でんぱ組.inc「形而上学的、魔法」の楽曲提供を行い話題に。

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