ロックバンドの老舗UK.PROJECTがコロナ禍にデジタル時代の新人向けレーベルを始めた理由

下北沢に拠点を置き、30年以上の歴史を誇るレーベル兼プロダクション=UK.PROJECT。これまで数多くのロックバンドを輩出し、ライブハウス「下北沢CLUB Que」やCDショップ「ハイラインレコーズ」(2008年に閉店)を運営、2011年からは主催イベント「UKFC on the Road」を開催するなど、音楽ファンから長く愛され続ける老舗である。

そんなUK.PROJECTがコロナ禍の2020年9月に新人アーティスト向けの新たなレーベル「highlight」を立ち上げた。「新発見」を合言葉に掲げ、ジャンルや編成にこだわることなくアーティストを募集し、デジタルの時代に即した新たなレーベルのあり方を体現している。これまでにpeanut buttersとLAYRUS LOOPの2組をリリースし、レーベルの発起人である今井貴彦は2021年からWurtSのA&R / マネージャーを務めてもいる。

初めてのオーディション『highlight audition 2022 supported by Eggs』の開催を機に、今井にhighlightの立ち上げから現在に至る歩みを聞き、デジタル時代のレーベルのあり方について語ってもらった。

「UK.PROJECT=ロックバンド」というカラーから離れてスタートしたhighlight

―まずはhighlightの設立に至った経緯を教えてください。

今井:2020年の5月ごろに、うちの社長から「このままコロナ禍が終わるのをただ待ってるだけにはしたくないので、来年や再来年につながるなにか新しいことができないか?」という相談をもらったんです。

なんでぼくだったかというと、ぼくは数年間デジタルに関わってきて、デジタルプロモーションのチームを社内で立ち上げていたので、「いま新しいことをやるとしたら、今井のところかなと思って」みたいな感じで。

―highlightの設立について書かれているnote(*1)に、「2019年春頃より、会社全体のデジタルチームを立ち上げました」とありますが、それ以前からデジタルに深く関わっていたわけですか?

今井:そうなんです。ぼくは2014年の入社以来アーティストの担当をやりつつ、ラジオ周りのアシスタントプロモーターみたいなことも2~3年やり、さらにそれと並行して、2017年からYouTubeやSpotifyのようなDSP(ストリーミングサービス)の担当もやっていたんです。

そのころって数字が右肩上がりなのはストリーミングだけ。つまり、CDやダウンロードの売り上げは右肩下がりで、そこのテコ入れをするのは限界があるから、だったら会社としてもっとデジタルのほうに注力したほうがいいんじゃないかと思い、チームをつくったんです。

―その前提があったからこそ、コロナ禍でなにか新しい動きを始めるにあたって、今井さんに声がかかったと。「新しいレーベルをやろう」というのはすぐに思いついたのでしょうか?

今井:最初はデジタルのディストリビューションがいいのかなと思ったんですよ。TuneCoreをはじめ、FRIENDSHIP.とかBIG UP!とか、いろいろ立ち上がってきてたなかで、話を聞いてみると、クオリティーの高い音源がたくさん送られてきてると。要は、新しいアーティストとの出会いがあるっていうことですよね。だから、ぼくらもデジタルディストリビューションをやるのはどうかと思ったんです。

今井:でも、他の後追いをしてもいいものができる気がしないと思ったときに、やっぱりわれわれはレーベルとして30年以上やってる会社なので、もう一度そこに立ち返って、いまの時代に即したレーベルというものを考え直そうと思い、それでデジタルを中心とした新人向けのレーベルをつくろうと思ったんです。

―いまおっしゃられたように、UK.PROJECTには30年以上の歴史があり、音楽ファンのなかでは確固たるブランド力を持っていると言っていいと思うのですが、そのなかで新しいレーベルを始めるにあたっては、どんなことを意識しましたか?

プレイリスト『UK.PROJECT New Release』を聴く

今井:UK.PROJECTの強みはロックバンドで、それがレーベルのカラーになってると思うんです。レーベルなりマネジメントにそういうカラーがあるのはすごく大事なことだと思うんですけど、でもこういうコロナ禍の状況で新しく始めるのであれば、一旦その強みすらも脇に置いて、「UK.PROJECTってこうだよね」というイメージがある方にも、「いや、一からやります」と言っていこうと思ったんです。

シンプルに面白いアーティスト、素晴らしい楽曲を一番に考えて、「誰でもどうぞ」と言いたかったんですよね。そうやって「これは新しい取り組みなんです」ということを言葉にしていけば、会社の外に対してはもちろん、社内に対しても、「highlightは新しい動きをするんだな」っていう理解が生まれて、やりやすくなるんじゃないかというのもあって。なので、最初は本当になにもないところから、「とりあえずやります」みたいな感じでしたね(笑)。

デジタルの時代に重要なのは「打席に立ち続けること」

―今井さんは「いまの時代に即したレーベルのあり方」をどのようにお考えですか?

今井:まずコロナ禍でライブが一旦できなくなり、その後もやりづらい状況が続くなかで、ライブを前提にしなくてもいいんじゃないかと思いました。いままではまずデモ音源を聴いて、「いい曲だな。ライブ観に行ってみよう」という流れだったんですけど、とにかく曲さえよければ、そこから始めていいんじゃないかなって。

今井:デジタルって、打席に立ち続けることがすごく重要だと思うんです。これまではリリースの前後1か月くらいに集中させるプロモーションのやり方だったと思うんですけど、ストリーミングサービスが浸透してからは1か月集中ではなく、365日何かをやるかたちになったと思うんですね。

―それが「打席に立ち続ける」ということですね。

今井:そうです。まずリリースの頻度を上げることがひとつのポイントでした。いまはライブをやらなくてもSNSとかで自己発信ができて、いつどこでどういうきっかけで曲がヒットするかもわからないし、だからこそ、頻度を上げることが大事だと思うんです。

あとは、新譜と旧譜の概念がなくなってきたっていうのもありますよね。自動的にレコメンデーションされて知ったり、プレイリストで知ったり、いつどこで楽曲と出会うかわからないから、打席にたくさん立っていれば、出会う確率が単純に上がるわけで。なので、一点集中ではなく、中長期的なプランでやっていくということも、レーベルの基本的な考え方として必要なことだと思っています。

―highlightの他のレーベルにはない強みはどんな部分だとお考えですか?

今井:highlightは社内の超党派というか(笑)、A&Rもいればマネージャーもいるし、デジタルプロモーションもデスクもいて、普段の担当業務はバラバラなんです。それによって、アーティストごとにサポートの仕方を変えられるのはひとつの強みだと思います。

今井:A&Rの役割もすごく広くなって、もうただ音源をつくって、メディアプロモーションを考えてっていうだけじゃないと思うんですよね。だから、いまはいろんな役割の仕事内容を幅広く知っている人の方が役立つと思っていて。

ぼく自身は幸いにもこれまでいろんな仕事をやらせてもらってきたんですけど、それでもhighlightには自分にない知識を持っている人がたくさんいるので、「このアーティスト、どうしよう?」となったときに、いろんな知恵を集めて、そのアーティストに合わせた考え方ができる。それはすごくいいことなんじゃないかなって。

―レーベルのnoteには今井さん以外の方たちも投稿していて、チーム感が伝わってきます。

今井:ある新人のアーティストがいて、誰かが「これはいい」となったときに、基本的には最初に声をかけた人が9割方業務を背負うんです。それはどこのレーベルも大体同じだと思います。でもぼくらは「このアーティストをリリースしよう」ってなったときに、コアスタッフを3人つけるんですよ。そうすれば、そのなかの一人が他の業務に追われてるときでも、止まらずに回し続けることができる。highlightは社内の座組み的にも「最初から一人に任せない」というやり方をしてるんです。

レーベル第一弾アーティスト、peanut buttersとの幸福な出会い

―ここからはhighlightから楽曲がリリースされたアーティストについてお伺いします。highlightの第一弾アーティストとなったpeanut buttersとはどのように出会ったのでしょうか?

今井:peanut buttersはコロナの前から月一でやっていた、そのとき気になるアーティストをブッキングするUK.PROJECT主催のイベントに一回出てくれてたんです。ライブをやってもらったのは結構前で、そのときはもちろんまだ新しいレーベルの話は全然なくて。

でもhighlightのチームを集めたときに、あるスタッフから「peanut buttersどうですか?」という提案があって、もちろんぼく含めて社内のみんなよく知ってたから、「いいじゃん!」って。highlightにもすごく合うと思ったんですよね。

peanut butters『peanut butters』を聴く

―それはどういう部分で?

今井:それこそpeanut buttersはライブを中心に考えなくてもいいと思ったんです。peanut buttersはコンポーザーのニシハラくんが全曲の作詞作曲をしてるんですけど、メロディーはとにかくポップで、サウンドは洋楽のインディーロックみたいな感じだけど、ボーカルの声はちょっとボカロっぽいニュアンスもあったり、すごく面白い混ざり方で「ロックバンド的じゃない」と思ったんですよね。highlightの第一弾としてこんなにぴったりなアーティストはいないと思って、満場一致で声をかけさせてもらいました。

―「UK.PROJECT=ロックバンド」のイメージに当てはまらないという意味でも、highlightの第一弾としては相応しかったと。

今井:アーティスト写真もぼくらが出会ったころから自分の写真ではなくて、「俺が俺が」じゃない感じの打ち出し方もいまっぽいし、そういうやり方でもありになってきた時代だからこそ、これはいいなと思って。

―実際に楽曲をリリースしたら、各DSPの主要プレイリストに多数選出されたわけですよね。昨年はASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤さんによるSpotifyのプレイリスト「2021 Favorite Songs」に“ツナマヨネーズ (band ver.)”が入っていたり。

今井:デモを聴かせてもらった時点でこんなにメロディーが書ける人はなかなかいないと思ったし、でも歌詞は暗くて、そのギャップもいいんですよね。メロのポップさに対して歌詞はダウナー、でもその言葉にすごくリアリティーがあって、胸を打つんです。孤独感とか鬱屈した気持ちとか、共感できるなにかがあって、その相反する感じがすごく面白いなって。

しかも、そういう曲がたくさんあって、これはどんどんリリースしていけば、その分好きな人が増えると思ったので、とにかくリリースのペースを細かくしました。レーベルとしてやりたいと思っていたかたちが最初のアーティストからできて、そのやり方がアーティストにちゃんと合ってたと思うし、すごく幸福な出会いでした。peanut buttersはhighlightにとってすごく大事なアーティストです。

―4月にボーカルの紺野メイさんの脱退が発表されましたが、それは第一章の終わりというか、ここからまた新章が始まっていくのかなって。

peanut butters『めちゃポップ / マーチング』を聴く。紺野メイが参加したラストシングル

今井:ニシハラくんのモチベーションはさらに高くなっていて、もっとたくさんの人に聴かれたい気持ちを持っています。新しい曲もどんどんつくってるし、この前ちょうどレコーディングが終わって、2022年の後半はまた攻めていくことになると思いますね。

WurtSの起こしたバズが「決して偶然ではない」ことの理由

―今井さんがA&R / マネージャーとして関わっているWurtSはSpotifyの「RADAR: Early Noise 2022」への選出をはじめ、昨年から大きな話題を呼んでいます。彼はhighlightからではなく、自主レーベルW's Projectからのリリースですが、もともとどのように出会ったのでしょうか?

今井:highlightを立ち上げるぞとなってから、1~2か月後に5曲入りのデモを聴くきっかけがありました。当時、新しいアーティストに出会いたいというモードになっていたこともあり、そのデモ音源にビビッドに反応できたんだと思います。とにかくこれはすごいぞと思って社内で共有したら、みんな「めちゃくちゃいい」となって、社長からも「すごくいいから、できるだけ丁寧かつ迅速に行動に移してください」というレスが来て。

こんなにみんながみんな反応することもなかなかないから、すぐに連絡をしました。それで、実際に会って、さらに20曲くらいデモを聴かせてもらったら、これがまたクオリティーの高いものばっかりで、もうアルバム2枚くらいはつくれる状態だったんです。

WurtS『ワンス・アポン・ア・リバイバル』を聴く

―highlightからのリリースではなく、自主レーベルをつくったのはどんな理由だったのでしょうか?

今井:彼は作詞作曲編曲を全部一人でやっていて、音楽性もバンドサウンドからダンスミュージックからラップまでめちゃめちゃ幅広いし、あと映像やアートワークにも明確なイメージがあって、まさにセルフプロデュースの塊みたいな人で。

今井:なので、独立したなにかで打ち出した方がWurtSというアーティストにとってよりいいんじゃないかと思っていたのですが、彼から「WurtSのオリジナルレーベル兼プロジェクトをつくりたい」と相談がありました。それでW's Project(ワーズプロジェクト)をつくりました。ぼくらスタッフは彼が思い描いていることを具現化することが第一で、彼が必要とするサポートはなにかを話し合いつつ、ときに自分たちからも探して、提案して、というやり方です。

―WurtSはビジュアルの打ち出しにしろ、TikTokの使い方にしろ、すごくアイデアマンだと思うし、まさにセルフプロデュース能力が高くて、それは現代のアーティストにとってすごく大事なことですよね。

今井:なにより楽曲そのものがいいというのが第一にあったうえで、なおかつ自分で「この曲はこういう風に打ち出したら面白いんじゃないか」というのを考えて、とにかく試してみることが好きなんですよね。行動に移すのがすごく速くて、なにかかたちにするのもスピード感がある。そこに関しては誰にも負けないんじゃないかな。

―スピード感というのは、「打席に立ち続ける」ためにも重要ですもんね。

今井:そうですね。彼は彼なりの打席の立ち方を実践し続けてると思います。もちろん、やってみたものの、思うように行かなかったこともあると思うけど、とにかくやってみて、検証して、その繰り返しを誰よりもやったのが去年のWurtSだったと思うから、だからこそ、いまここまでの状況になってるんじゃないかと思うんです。

―そのなかで“分かってないよ”のバズも生まれたわけですけど、彼はその後も止まることなく実験と検証を繰り返している印象です。

WurtS“分かってないよ”を聴く

今井:“分かってないよ”でバズが起きたあとに、「バズりすぎないようにしようと思った」と本人が言ってますけど、そんな人ってなかなかいないと思うんですよ。普通は「行けるところまで行け」って思うじゃないですか?

でも彼はバズをコントロールすることを考えて、そこから新しく出す曲のカラーをどんどん変えていって。“BOY MEETS GIRL”なんて、ヒップホップとダンスミュージックが混ざって、管楽器も鳴ってて、「これ何なの?」っていう不思議な曲だったけど、でもやっぱりすごくキャッチーだし、リズム感が最高なんですよね。

WurtS“BOY MEETS GIRL”を聴く
WurtS“ふたり計画”を聴く

―そうやって動き続けることで、簡単に消費されないアーティストとしての強さを少しずつ身に着けていったというか。

今井:いい曲をつくるだけでもすごい才能なのに、ミュージックビデオも考察させるような内容にしたり、一つ一つの打ち出し方を考えて、他の人がやってないことを全力でやろうとする。だから、彼のヒットは決して偶然ではなくて、努力の結果なんです。繰り返しになりますけど、まずは楽曲がすごくいい。それに加えて、制作も宣伝もマーケティングも全部考えて行動しているので、それは誰にでもできることではないと思います。

3ピースバンド、LAYRUS LOOPの「ポップス」としての可能性

―2022年に入ってhighlightの第2弾アーティストとしてLAYRUS LOOPがデビューしました。彼女たちは3ピースのバンドですね。

今井:「ロックバンド以外も広く募集します」という始まりでしたけど、もちろんロックバンドを否定するつもりはまったくなくて、「誰でもどうぞ」と言いたかっただけなので、いいバンドに出会えたら、それはそれでぼくらにとってはとても嬉しいことで。

LAYRUS LOOPに関しては、京都MOJOの店長さんから教えてもらったんですけど、ぼくらにとってちょっと新しかったのは、まず女性ボーカルのバンドがこれまで意外と少なかったこと。あと、いわゆるロックバンドというよりは、ポップス層にも聴いてもらえるようなバンドで、そこにも大きく魅力を感じました。

LAYRUS LOOP『ポップコーン』を聴く

今井:曲をつくってるオオトシ ユリヤはHump BackとかSHISHAMOが好きで、もちろんそういう3ピースの女性ボーカルのバンドと近いニュアンスもあると思うんですけど、メロディーはYUIとかaikoのようなポップスを聴いてる人にも届くものだなって。なおかつ、声にもすごく魅力があるし、大きく化けるポテンシャルを持ってるんじゃないかと思います。

―彼女たちの楽曲にはプロデューサーとして真部修一さん(集団行動 / 元・相対性理論)が参加されていますね。

今井:彼女たちのようなダイヤの原石がどうしたらよりよくなって、より多くの人に楽曲が届くのかを考えたときに、音楽の先生というか、家庭教師のような役割の人がいたらいいと思ったんです。もちろん、それを自力でやっていく人もいると思うんですけど、彼女たちは誰かと一緒にやることに喜びを感じるような、愛嬌のあるキャラクターを持っているので、しっかり話を聞いてくれるかなって。

そこでぼくが信頼しているミュージシャンの一人である真部さんにお声掛けをして、気に入ってもらって、プロデュースをお願いしました。社内で全部をやらなきゃいけないわけではなくて、「餅は餅屋」という考え方なので、アーティストとコミュニケーションをとって、誰が必要なのかを考えるということも、ぼくらの大事な仕事だと思っています。

「ありそうでなかった組み合わせと出会いたい」、レーベル初のオーディションで期待すること

―現在highlight初のオーディションを開催中ですが、どんなアーティストに出会いたいとお考えですか?

今井:さっきのLAYRUS LOOPの話にも通じると思うんですけど、ぼくらはディストリビューターと違ってアーティストの数を絞って深く関わるので、しっかりコミュニケーションをして、そのアーティストのいい部分をいろいろ見つけていきたいと思っていて。それもあって、エントリーフォームには「あなたの好きを何でも教えてください」という欄を設けてるんです。

のちに二人三脚でやっていくためにも、できるだけ好きなことを教えてもらって、コミュニケーションの足掛かりにしたい。その好きなことが音楽以外にもたくさんあれば、そこで化学反応が起きて、思わぬ飛躍のヒントになるかもしれない。なので、ぼくはいろんなことに興味のある人がいいなと思っています。

―「ボーダーレス」なのは音楽ジャンルに限った話ではなくて、音楽とそれ以外のカルチャーもいまはボーダーレスになっていますよね。「いつどこでヒットが生まれるかわからない時代」という話もありましたけど、カルチャー同士が結びついたときになにかが起こる可能性が大いにある時代でもあるなって。

今井:そうだと思います。「ジャンルは問いません」というのはみんな言ってると思うし、ぼくらもそうですけど、つまりは好きなことに関して「こうでなくちゃいけない」はないってことで。むしろ「これとこれが好きなの?」みたいな意外性を知りたいというか、そういう方がドキドキするし、新しいものが生まれる気がするんですよね。

いろんなものに簡単にアクセスできる時代だし、それがその人のなかでどう組み合わさってるのかを知りたいし、いまはまだ別々でも、それがいつか組み合わさるかも……みたいなことを考えると、その人にすごく興味がわきますね。

―これからオーディションに応募する方にはぜひ「好き」の欄もしっかり書いてほしいですね。では最後にあらためて、レーベルの今後の展望を聞かせてください。

今井:やっぱりストリーミングの時代なので、日本を飛び出してのヒットも生みたいと思っていて。そこも社内の知識だけだと難しい部分もあるかもしれないけど、外部のPR会社と組んだりしながら、アニメやインスト以外でも海外でヒットする日本の音楽をつくりたいっていうのはあります。

あと、レーベルを立ち上げたときに合言葉として書いたのが、「新発見」だったんですよね。「ありそうでなかった」みたいなものって、予想外の組み合わせから生まれるものだと思うので、そういうアーティストと出会いたいですね。

―highlightというレーベル名も、新しい発見に光を当てるようなイメージですか?

今井:新しい価値観を持った面白いアーティストに光を当てていきたいと思っています。このレーベル自体、会社のなかでまっさらなものをつくりたいと思って始めているので、これからもつねにフラットな状態で、それぞれのアーティストに合うやり方を一から考えるということをやり続けていきたいです。

*1:UK.PROJECTがはじめた、新人アーティスト向けのレーベル「highlight」のこと(外部サイトを開く

プロジェクト情報
『highlight audition 2022 supported by Eggs』

エントリー期間(2次応募受付):2022年6月20日(月)~7月4日(月)
プロフィール
今井貴彦 (いまい たかひこ)

1982年生まれ。2001年タワーレコードに入社。2014年UK.PROJECTに入社。A&R / マネージャーとして、odol、WurtSを担当。2019年4月より社内のデジタルプロモーションチームを発足。2020年9月より新レーベル「highlight」を立ち上げる。



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