堀正輝×George、ボカロ世代にもR&Bシンガーにも求められる理由

堀正輝×George、ボカロ世代にもR&Bシンガーにも求められる理由

2021/12/03
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:豊島望 編集:金子厚武、CINRA編集部

「オリジナルを追いかけ始めたら行き詰まる」。打ち込み音源をライブで表現するときに大事なこと

―Georgeさんから見て、堀さんはどんな部分が他のドラマーと違うと感じていましたか?

George:一番話が早いというか、説明する必要がないんですよね。ドラマーで、同期と演奏する感覚がベーシックにある人って、ほとんどいない気がするんですよ。

:上京していろんなサポートをするなかで、ただ打ち込みの音源を生に置き換えるだけじゃなくて、ライブでやる意味を考えるようになりました。同期と一緒にどういうふうに立ち回るか、そこはもう模索ですよね。現場によって正解が違うから。

「こういう曲はこう演奏したらかっこいい!」っていう自分なりの答えをつねに持ちつつも、そうじゃないといわれたときに「他にこういう感じもかっこいいよね」という幅を持っていようと思っています。そういうなかでGeorgeの存在は貴重なんです。iriちゃんの現場でも「この曲はこうやったらかっこいい」っていう感覚が、なにもしゃべらなくても一緒なんですよ。

堀正輝

George:「どこを生で叩いて、どれぐらいの割合でシーケンスを出す」「この曲はこうなってるから、このシェイカーが鳴ってないとスイングしない」とかって、お互いプレイヤーとして、というよりは、データを見てデスクトップ上で話せてる感覚というか。

:たとえば、ライブのサポートをするときに、一回目のリハ以降はあまりオリジナル音源を聴かないようにしています。リハに入るまではすごく聴くんですけど、リハ後はリハ音源をたくさん聴くようにしてます。そのほうが、リハを重ねるうちにオリジナル音源とはちょっと違う要素が自然と入ってくるんですよね。

George:リハーサルをしていくうちに、アーティストから「こうしたい」っていうのが出てくるんで、だんだんそっちの方向で固まってくると手応えはあるんですけど、終わったあとにオリジナルの音源を聴いて、「こんな感じだったっけ?」みたいになることはよくあります。

でもそれって、最初にちゃんと音源を再現できてるからこその気がするんです。堀さんは最初から音源に近い状態でリハに入れる。でも同期系の音楽って、それができてないと永遠にオリジナルをみんなで追っていくことになると思うんですよ。

George

:オリジナルを追いかけ始めたら行き詰まりますね。まずはオリジナルをたくさん聴いて、自分なりのライブの美学と照らし合わせながら再現込みでトライする。それがうまくいったあと、そこをベーシックにして変化させていくのが好きです。

―オリジナルが再現できてこそのライブアレンジだと。

George:最近はリハに入る前に「この曲、堀さん大変だろうな」っていうのがわかってくるようになりました(笑)。音源のよさを残しつつライブでよくするのが難しい曲ってあるんですよね。この前のiriちゃんのツアーでやった曲でいうと“東へ西へ”とか。音源に追いつくことはできるんですけど、さらによくするための余白が少ないというか。

iri“東へ西へ”を聴く(Spotifyを開く

:たしかにすごく悩んだけど、俺的にはあの曲はドラムで違いを出す必要がないというか、それをやると崩れていくと思ったんです。なので、ドラムは基本再現することに徹して、あとはベースやほかの楽器に熱を加えてもらおう、みたいな発想ですね。

昔はドラマーならドラムでなにか絶対ライブっぽく変えないといけないと思って苦しんでましたけど、それで曲が壊れるのは嫌なので、いまは自分だけじゃなく、全員でどうつくるかを考えられるようになりました。

若手アーティストと堀が世代を超えて共有する「ミックス感」

―お二人ともいまは多くの人の制作やライブをサポートしていて、そこにはやはり時代感も紐づいているように思います。それこそ昔はライブで同期を使うことが一般的ではなかったけど、いまはDTMで曲をつくることが普通になって、同期を使って、生と打ち込みを混ぜてライブをすることが普通になった。そんななかで、お二人の活躍する機会が増えたというのは、必然の結果なのかなって。

George:もっと早くこうなってほしかったですけどね(笑)。

:昔は曲ができてもメンバーがいなかったらライブはできないと思ってましたよね。「これを弾ける人がメンバーにいない」という音は、そもそも曲に使えないのが普通。ギター、ベース、ドラムがメンバーにいて、その人たちができる範囲で曲をつくってた。でも、いまは家で一人でも曲をつくれる環境があるわけで、だったらライブをするときに同期が増えるのは必然だなって。

左から:堀正輝、George

―現在の日本ではボカロ出身のクリエイターが数多く活躍しているわけですが、堀さんが米津玄師さん、GeorgeさんがYOASOBIのサポートをしているというのも象徴的だなと感じます。

:米津くんのレコーディングに参加させてもらったのは上京してすぐのころだったので、自分も手探りでしたね。クラブミュージックばっかりやってきてたので、歌ものやロック系の曲はすごく新鮮で。自分がそういう人のサポートをできるんだっていうのが面白くて、のめり込んで勉強してました。

米津玄師『ピースサイン』を聴く(Spotifyを開く

―自分のルーツと違うからこそ、面白味と大変さがあったと。

:ただ、ルーツにまったくないわけではなくて、自分もちゃんと知ってる音楽なんですよね。ぼくが関わらせてもらっているアーティストはだいたいぼくよりも世代がちょっと下になるので、影響を受けてきたものは違うんですけど、それでも理解できるというか。どこかでリンクしてるんだろうなっていうのは感じながらやってます。

―その「リンクしてる部分」を言葉にしてもらうことってできますか?

:言葉にするのはなかなか難しいんですよね……iriちゃんとちゃんみなって、たとえですけど、アメリカでいうと西と東くらい違うじゃないですか。ぼくの勝手な解釈ですけど、iriちゃんのベースにはジャズがあって、ちゃんみなのベースにはヒップホップがある。でもiriちゃんの曲にもトラップビートが入っている曲もあるし、ちゃんみなの新しいアルバムにはロックやジャズの要素があったりして、もうどっちがどっちとか関係ない、とにかくミックスされていきますよね。

ちゃんみな『ハレンチ』を聴く(Spotifyを開く

:みんなどんどん次のフェーズに向かっているので、同じところにとどまっていたら、あっという間に置いていかれる。そんな感覚があります。

―ボカロの出身でいうと、初期はロック要素が強かったけど、どんどんR&Bやヒップホップの要素が入ってくるアーティストも多いですよね。でもきっと、そういう現代的なミックス感を堀さんはもともと持っていて、そこがいまの若いつくり手ともリンクする部分なのかもしれない。

:そうなのかもしれないですね。

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プロフィール

堀正輝(ほり まさき)

1981年生まれ。北海道札幌出身。15歳のときにバンドを始め、舘山健二氏、阿部一仁氏に師事。自身のバンドSCAM CIRCLE、ARDBECKの活動を経て、現在は様々なアーティストのライブ、レコーディング、コライトなどを行っている。また2013年よりソロ名義でも制作を開始しており、楽曲提供やリミックスなども手掛けている。

George(ジョージ)

MOP of HEADのメンバー。作曲家 / アレンジャー / キーボーディスト / マニピュレーター / DJとして多岐にわたって活動中。ライブでは鍵盤+独自のマニピュレートシステムを構築し、様々なアーティストのライブに参加。ライブサウンドプロデューサー / マニピュレーターとして、YOASOBI、sumikaを担当。鍵盤+マニピュレーターとして、iri、向井太一、the chef cooks meなどのライブ、ツアーに帯同。作曲、アレンジャー、リミキサーとして、V6、東方神起、澁谷逆太郎(SUPER BEAVER)、Tempalay、SHE IS SUMMERなどの作品を手がける。DJとして『FUJI ROCK FESTIVAL』に出演。SKRILLEX、BOYS NOIZE、Peter Hook(ex NewOrder)のオープニングDJを担当。

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