haruka nakamuraが奏でた、Nujabes「極上の8小節」のゆくさき

haruka nakamuraが奏でた、Nujabes「極上の8小節」のゆくさき

2021/12/16
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:TKC(「Pray for Nujabes」と雲見を除く) 編集:金子厚武、CINRA編集部

「“Reflection Eternal”に出会っていなければ、ぼくの音楽性はいまとは違っていたかもしれません」

―今年の2月26日に、アルバム発売に先駆けて、収録曲の“Reflection Eternal”のミュージックビデオが公開されていました。この曲についての想いを聞かせてください。


“Lamp”撮影時以来に鎌倉のNujabesスタジオと彼の愛した海岸を訪れ、今回もiPhoneで撮影を行った“Reflection Eternal”のミュージックビデオ

haruka:“Reflection Eternal”に出会っていなければ、ぼくの音楽性はいまとは違っていたかもしれません。初めて渋谷HMVの試聴機でこの曲を聴いて、「これは!」と思って、その場で何回もリピートしたんです。自分の頭のなかで鳴っていた理想の音楽が具現化されてそこにあって、「こんな曲がこの世に出たんだ」と思ったんですよね。

美しいピアノのメロディーがあって、ビートがあって、アンビエントがあって、エレクトロニカともヒップホップとも呼べるような、自分がいいと思うもの全部が混ざった最高すぎる8小節があり、そこにケニー・ランキンの歌声が入ってくる。もう衝撃的過ぎて、羨望と、悔しさと、いろんな感情が入り乱れて、ある意味打ちのめされた瞬間でもありました。

でもやっぱり、あの曲が生まれたことで、その先の未来がとても広がったと思うんです。エレクトロニカとかポストクラシカルとか呼び方はいろいろつきましたけど、あの曲が道を切り拓いてくれたおかげで、ぼくらのような音楽家が後に続けたんだと思います。

Nujabes“Reflection Eternal”を聴く(Spotifyを開く

―そんな曲をカバーするというのは、ハードルの高い試みでもありますよね。

haruka:それこそクラムボンさんとか、(青葉)市子とか、いろんな方があの曲をカバーしてきました。それを近くで見たり、一緒にやったりもしてきたけど、ぼくにとっては特別な曲過ぎて、ライブのセットリストに入れることはなかったんです。

ただ、頼まれたときはアンコールでちょっと弾いたりとか、結果的にこの10年間ずっとそばにいてくれた曲でもあります。一番弾いた彼の曲だと思うし、おそらく他の誰よりもぼくがあの曲を弾いてると思う(笑)。なので、この曲はわりと正統派というか、原曲のメロディーをそのまま落とし込んでいくかたちにしたんです。

「作品は賛否両論あってしかるべきだと思ってつくってるんです」

―今回のアルバムはもともとピアノソロの予定が、途中から変わっていったそうですね。

haruka nakamura『Nujabes PRAY Reflections』を聴く(Spotifyを開く

haruka:最初にmaoくんからはピアノソロのアルバムとして頼まれたんです。だから、タイトルも『Nujabes PRAY PIANO』で考えていて、Nujabesが愛した旋律をピアノソロで奏でて、そこにぼくが即興で続きのメロディーを奏でられたらっていうアイデアでした。でも、そのさらに先に行きたくなったんですよね。もっとワクワクするような、新しい音楽にしたいなって。

そこにはorbeの田辺玄と、baobabのMaikaという、この10年で出会った2人の相棒の存在が大きくて、彼らがサポートしてくれることによって、ピアノソロよりもっと面白い角度の作品にできる予感があったんです。もともとorbeはぼくと玄の根底にどちらもNujabesの源流を感じたからこそ組んだユニットで、しかも面白いことに、玄もこの2、3年でフルートを始めてたんですよ。

―Nujabesさんと同じ楽器を始めていたと。

haruka:これは本当に偶然で、まだこのアルバムの話が出る前からだったんですけど、たまたま彼がフルートに興味を持って、吹き始めてたんですよね。本人はまだ録音に参加する段階じゃないといってたけど、でもぐんぐん上達していました。Nujabesさんもライブではよくフルートを吹いていて、自分ではまだまだだと謙遜しながら、すごく味のあるプレイをしてたんです。

その2人のフルートの、新鮮に管楽器に触れて楽しんでる音の感じが、ちょうどリンクすると思ったんですよね。それでmaoくんにお願いして、鎌倉のスタジオから、実際にNujabesさんが使っていたフルートを山梨のレコーディングスタジオに持ってきてもらって、玄に吹いてもらったんです。

―MaikaさんもNujabesがお好きだったんですか?

haruka:もともとヒップホップが好きで、Nujabesも相当聴いてて、彼女の持ってる無国籍感のなかに、トラディショナルからクラブミュージックまで通っているからこその多様な魅力があるのは知っていました。なので、“Final View”をフィドルで弾くとかって、相当面白いんじゃないかなって。

―“Feather”のメロディーがMaikaさんのボーカルとフィドルで奏でられているのもとても新鮮でした。

haruka:今回はある意味、賛否両論あってしかるべきだと思ってつくったんです。ピアノソロで素直にカバーすれば、そんなに大きな問題にはならないと思うんですけど(笑)、でもみんなが想像できるようなアルバムになっちゃいそうだと思ったし、ちょっと懐古的というか、振り返って懐かしむ感じになっちゃうと思ったんです。

そうじゃなくて、もっと音楽的にチャレンジしようっていうのは、一曲目の“Another Reflection”をつくったときに決めました。あの曲も当初はピアノソロで、静かにやろうと思ってたんです。でも元ネタの曲を聴くと、すごくエモーショナルで、どんどんBPMが上がっていく曲だったから、その熱量を出したいと思って、大きく方向転換して。“Another Reflection”をどんなアレンジに仕上げるかが最初の大きな岐路で、このアレンジにしたことによって、アルバム全体の舵が振り切れていったんです。

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リリース情報

haruka nakamura『Nujabes PRAY Reflections』
haruka nakamura
『Nujabes PRAY Reflections』(CD)

2021年12月4日(土)発売
価格:3,300円(税込)
HPD19

1. Another Reflection
2. Horizon
3. Waltz of Reflection Eternal
4. flowers
5. kumomi
6. Feather
7. latitude
8. Light on the land
9. Final View
10. World's end Rhapsody
11. Reflection Eternal
12. Let me go

プロフィール

haruka nakamura(はるか なかむら)

音楽家 / 青森出身。カテドラル聖マリア大聖堂、世界平和記念聖堂、野崎島・野首天主堂を始めとする多くの重要文化財にて演奏会を開催。近年は杉本博司『江之浦測候所』の特別映像、国立新美術館『カルティエ 時の結晶』、安藤忠雄『次世代へ告ぐ』、京都・清水寺よりライブ配信、東京スカイツリーなどプラネタリウム劇伴音楽、早稲田大学交響楽団と大隈記念講堂にて自作曲共演。Nujabesをはじめとする音楽家や、柴田元幸、ミロコマチコ、BEAU PAYSAGEなど多方面とコラボレーション。MVは川内倫子、奥山由之などの写真家が手掛ける。Huluドラマ『息をひそめて』、NHK『ひきこもり先生』などの劇伴、任天堂CM『あつまれどうぶつの森』楽曲提供、カロリーメイト、ポカリスエット、スマートニュース、ロト・ナンバーズ、AC公共広告機構、CITIZENなど多くのCM、ドラマ、ドキュメンタリー番組などの音楽を手掛ける。2021年12月Salyuとのコラボレーションで本格ライブ復帰。

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