アイドル内山結愛が、100本以上のアルバムレビューを続けた理由

アイドル内山結愛が、100本以上のアルバムレビューを続けた理由

2021/11/30
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:廣田達也 編集:黒田隆憲、CINRA編集部

目に見えないものにかたちを与えることは、野暮だと批判されることもあるけど、言葉にして残すことには意味がある

―音楽という、言葉では表しきれないものをあえて言語化していくことの意義については、続けてみてどう感じますか?

内山:音楽って目には見えないものじゃないですか。人間って遅かれ早かれ、どんなことでも忘れてしまう生き物だからこそ、目に見えないものを「言葉」というかたちで残したくなるというか……つねに手に取れる状態にしておきたくなるし、そうすることでより大切に感じることもあるんじゃないのかなと思っていて。それに、目に見えるかたちで残しておくことによって、他の人にも伝えやすくなるのがレビューの醍醐味だと思うんですよね。

内山結愛

―とても興味深いです。

内山:目に見えないものにかたちを与えることは、捉え方によっては野暮で無粋な行為だと批判されることもあると思うけど、でも目に見えない心の動きも大事にしつつ、それを言葉にして残しておくことには意味があるのかなと思っています。

―ちなみに、内山さんが定期的に書き続けているモチベーションはどこから来るのですか?

内山:やっぱり、読んでくださった方からの反応が支えになっているのだと思います。何のリアクションもなかったら、書き続けていてもさすがに切ないし、ちょっと孤独を感じてしまうかもしれないんですけど(笑)。私のレビューを通じて音楽に詳しい人や、詳しくない人の間で話が弾んだり、私に対しても「あのレビュー、面白かったよ」とか声をかけてくださったり、おすすめの音楽を教えてもらったり。そういうコミュニケーションが楽しくて自分は続けているんだと思います。

内山結愛

内山:ファンのなかには、私が始めた「一日一アルバム」を一緒にやってくださっている人もいるんですよ。自分が好きで始めたことが、誰かのモチベーションにもなっていることが本当に嬉しくて。「こんな私でも誰かの役に立ったのかな」という気持ちになれましたね。言葉にすると自分の思考が整理されたりもするので、興味のある方は是非やってみてほしいです。

レビューを続けたことで「音楽に真剣に向き合っていきたい」と胸を張って口に出せるようになった

―レビューを続けてきたことで、ご自身の音楽活動にフィードバックされることもありそうですか?

内山:RAYのコンセプトのなかに、「『アイドル×????』による異分野融合」というのがあるんです。シューゲイザーだけでなくIDM(インテリジェント・ダンス・ミュージック)や、「叫ばない激情ハードコア」などを取り入れアイドルのライブとして披露しているのですが、レビューを通じていろんな音楽を聴いて、それなりに知識を蓄えられたことで、自分たちの楽曲をもっと好きになったし、気持ちよく踊れているのかなと思います。

私のレビューがきっかけでRAYのライブを見にきてくださる方も結構いらっしゃるんですよ。自分が好きで始めたことは、できる限りRAYの活動に還元したいと思っているので、それを聞いたときは本当に嬉しかったですね。

RAY『Yellow』を聴く(Spotifyを開く

―11月6日に東京・下北沢シャングリラで開催された、内山さんの生誕祭『Anthology 20160904 - 20211106 -』では、初のソロ曲“Y”が発表されました。この曲の作詞作曲編曲は、諭吉佳作/menさんが手がけていますね。

内山:諭吉さんの曲は以前から聴いていたし、でんぱ組.incさんに提供された曲“形而上学的、魔法”も本当にすごくて……。自分の年下とは思えないような音楽性だし尊敬していたので、引き受けてもらえて嬉しかったですね。最初にデモをいただいたときは、歌うのがめちゃくちゃ難しくて「これ、諭吉さんにしか歌えないんじゃないか?」と思って一瞬怯みましたが、何とかかたちになって良かったです。

―この曲は、RAYが立ち上げたクラウドファンディングサイト「collections」で、資金を募って制作したんですよね。

内山:はい。RAYは「圧倒的ソロ性」というコンセプトも掲げていて。メンバー各々が自分のやりたいことを発表し、それをファンの方たちにクラウドファンディングを通じて応援してもらっているのですが、今回のソロ曲もその活動の一環としてスタートしました。以前は「collections」で「瓦割り」にチャレンジしたこともあるんですよ(笑)。集まったお金で瓦を購入して、それを割るっていう。

―なんですかそれは(笑)。

内山:あははは。しかもそれが、RAYとしての内山結愛をお披露目した直後くらいに提案した企画だったので、「ヤバイやつ」と思われていたかもしれないです(笑)。実際その頃は、自分がどうなりたいのか迷走していたところもあったんですけど、 レビューを通して「やっぱり私は音楽に真剣に向き合っていきたい!」と、ようやく胸を張って口に出せるような、進むべき道が見つかったと思っています。

― レビューを始めたことで、本当に見える景色が変わったのですね。

内山:人生が変わりました! 日記もそうですが、自分がそのときに思っていることを言葉に置き換えてきたからこそ本当に好きなものも、自分がこれからやりたいことも見つかったのだと思います。100枚レビューをしたところでまだまだですが、「継続する」ことが大切だと思うので、これからも書くことを続けながら音楽に関わり続けたいです。

それに、最初に言ったように私は刺激を求め続ける性格なので(笑)、周りの人たちもみんなワクワクできるようなことを考え、それを実行していきたい。やらないと何も変わらないから、恐れず挑戦していきたいですね。

内山結愛

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作品情報

『Yellow』RAY
RAY
『Yellow』(CD)

2021年6月23日(水)発売
価格:1,650円(税込)
LSME2

プロフィール

内山結愛(うちやま ゆうあ)

大学生兼アイドルグループRAYのメンバー。RAYではシューゲイザーをはじめ、IDMから激情ハードコアまで、「マイナー音楽×アイドルソング」に挑戦している。ディスクレビューnoteを週に1度のペースで公開し、Twitterでは“#内山結愛一日一アルバム”で毎日なんらかのアルバムを紹介中。DJとして活動することも。古今東西の名盤を聞きあさりながら日々音楽を楽しむ。

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