芸人・放送作家、佐藤満春の音楽愛と創作論「有名=正義じゃない」

芸人・放送作家、佐藤満春の音楽愛と創作論「有名=正義じゃない」

2021/11/25
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:鈴木渉 編集:金子厚武、CINRA編集部

ノーギャラでスタートした『ジャマラジ』。「ラジオでかかった曲に救われてきた人生だった」

―『ジャマラジ』では、基本的に週ごとに1アーティストをピックアップして紹介しています。

佐藤:自分が昔カセットテープを使ってやっていた遊びを、いま地上波でやらせてもらっている感覚もあるので、本当にありがたいですね。

―選曲は佐藤さんがお一人で決められているわけですか?

佐藤:そうです。なので、どうしてもぼくが昔から聴いてるような曲が多くなります。たとえば、今年のアタマにはスネオヘアーの特集をしたんですが、反響多かったですね。1時間で9曲とか、かなり多めに曲をかけます。

プレイリスト『This Is スネオヘアー』を聴く(Spotifyを開く)。スネオヘアーは渡辺健二によるソロプロジェクト。2002年メジャーデビュー

佐藤:もちろん、最近のアーティストも取り上げるようにはしてて、ちょっと前に特集をした羊文学とかも大好きです。でも昔のバンドやミュージシャンの曲をあらためて振り返ると、やっぱりめちゃめちゃかっこよくて。

―単純に「自分が好きだから」という理由に加えて、他ではかからなそうなものを意識的に選んでいる部分もある?

佐藤:自分が本当にいいと思ったものを、自分の言葉で伝えることは大事にしています。ぼく自身がラジオでかかっていた曲にすごく救われた人生だったので、そういう出会いの場になってくれたらすごく嬉しいです。

ぼくThee Michelle Gun Elephantの“世界の終わり”がラジオでかかって、イントロを聴いた瞬間にかっこよすぎて、すぐに録音ボタンを押したのをよく覚えてるんですよ。そういうことがこれまでに何度もあって、いいものはいつになってもいいじゃないですか?

Thee Michelle Gun Elephant“世界の終わり”を聴く(Spotifyを開く)。Thee Michelle Gun Elephantは4人組バンド。1996年にデビュー、2003年に解散した。ボーカルのチバユウスケは解散後、ROSSO、The Birthdayなどで活動

佐藤:いまあの曲を聴くことで、それをきっかけに、The Birthdayのファンになる人もいるかもしれないし、The Birthdayの前にはROSSOっていうバンドがあったんだとか興味を持つ人がいるかもしれない。そういう出会いの場所になるとすごくいいなって。

佐藤満春

―そもそも『ジャマラジ』はどのように始まったんですか?

佐藤:『ジャマラジ』が始まる前に5年間BayFMで番組(『ON8+1』)をやっていて、そこでもわりと好きな曲をかけさせてもらってたんです。それが終わっちゃったときに、インターネット上でトークだけ発信できる場所をつくっておこうと思って、それがもともと『ジャマしないラジオ』というタイトルでした。

そうしたら、ちょうどそのタイミングでInterFMで枠の募集があることを作家の友人に教えてもらい。まったくのノーギャラ、しかもディレクターもこっちで探して連れていくという厳しい条件だったんですけど、それでもやるべきなんじゃないかと思って、企画を出したら通って。そこからお金が1円もないなか、ディレクターさんに頭を下げて何か月かノーギャラでやってもらいました。

いまでは提供もついて、関わってくれている人全員の仕事になってるんですけど、InterFMは邦楽のCDが全然ないから、音源は未だに自分で用意してます。なので、必然的にぼくのCDラックにあるものをかけることになるっていう、変な番組ですよね(笑)。

「音楽を聴いて、『もうちょっと生きてみようか』って何度も思った」

―最初はただの枠の開放だったところから、提供がつき、残念ながら延期になってしまいましたが、今年はフェスの開催も予定されたりと、短期間で広がっていったわけですね。

佐藤:ただ、仕事の場としてはそんなに考えてないというか……もちろん、フェスをやるなら赤字にしちゃいけないとか、そういうことは考えるんですけど、でもやっぱり、感覚としては中高時代にカセットテープでつくってたラジオに近いんですよね。

これまでにいろんな先人たちがつくってきた、こんなに心揺さぶられる名曲があるんだよっていうのが伝われば、それが一番嬉しいというか。

佐藤満春

―さきほど「ラジオでかかった曲に救われてきた人生だった」というお話もありましたが、具体的に自分が救われてきた曲を挙げていただくことはできますか?

佐藤:一番大きいのはエレファントカシマシとくるりかなあ。エレカシは単純に宮本浩次さんのパワーがすごくて、自分の家のコンポからもちゃんと宮本さんのメッセージが届いて、「もうちょっと生きてみようか」って、本当に何度も思いました。

エレカシもデビューからいろんな遍歴があって、宮本さんにもいろんなことがあったと思うんです。“ガストロンジャー”を聴いて、勝手にメッセージを受信する側としては、「もうちょっと生きなきゃ」と思いました。

エレファントカシマシ“ガストロンジャー”を聴く(Spotifyを開く)。エレファントカシマシは1988年デビュー。これまでに4つのレコード会社を移籍している。ボーカル・ギターの宮本浩次は現在ソロアーティストとしても活動中

―くるりに関してはいかがですか?

佐藤:くるりはメンバーが何度も変わってて、誰かが入って誰かがやめてがずっとあったけど、それでも岸田さんと佐藤さんが曲をつくり続けて、アルバムごとにそのときのお二人の音があって。それを聴くたびにワクワクして、「次のくるりの新譜が出るまで頑張って生きよう」と思えたんですよね。

くるり“ロックンロール”を聴く(Spotifyを開く)。くるりは岸田繁(ボーカル、ギター)と佐藤征史(ベース)によるバンド。1998年メジャーデビュー。これまでに6名の元メンバーがいる

―文字どおり、音楽が生きる糧になったと。

佐藤:本当に支えられてますね。最近だと、サニーデイ・サービスにドラマーとして大工原幹雄さんが入られて、“春の風”という新曲を出しました。それが高校生のバンドみたいな音で、サニーデイはもう一回青春をやるんだって、それにすごく感動して。ライブも観に行ったんですけど、本当に年齢じゃないというか、曽我部恵一さんがもう一回バンドをやってるんだなってことがすごく伝わってきたんですよね。

そうやって好きな人の生きざまを見て、あらためてぼく自身を見つめ直すことにもなり、もう一回青春してもいいんだなって思えたりして。“春の風”のミュージックビデオは何度も見ましたね。


サニーデイ・サービス“春の風”ミュージックビデオ。サニーデイ・サービスは1994年にデビュー、2000年の解散を経て、2008年に再結成。フロントマンは曽我部恵一。2018年に元ドラムスの丸山晴茂が急逝して以降ライブ活動を休止していたが、2020年の大工原幹雄の加入により再開した

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プロフィール

佐藤満春(さとう みつはる)

1978年2月17日生まれ。東京都町田市出身・町田市在住。2001年どきどきキャンプとして活動をスタート。現在は放送作家・脚本家・トイレ博士・掃除専門家などさまざまな顔を持ちながら活動中。

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