Spotify担当者が見た、ミュージシャンがブレイクするまでの動き

Spotify担当者が見た、ミュージシャンがブレイクするまでの動き

インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:大畑陽子 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

リスナーが曲と出会い、ヒットが生まれるまで。その流れがここ数年で一気に変化した。例えばあいみょんやOfficial髭男dismといった新人アーティストが飛躍した背景には、ストリーミングの普及によって、人々のリスニングスタイルが大きく変化したことが関係あるだろう。

ストリーミングサービスSpotifyがその年、躍進を期待するアーティストを選び、「早耳」のリスナーにいち早く紹介するプログラム『Early Noise』が来年で4年目に突入する。これまでに数多くのアーティストを同名のプレイリストや不定期開催のライブイベント『Spotify Early Noise Night』を通じてプッシュ。日本におけるストリーミングの普及とともに、確実に成果を上げてきた。

そこで今回はSpotify JapanのHead of Content、芦澤紀子に、Spotifyと『Early Noise』の3年間を振り返ってもらった。「プレイリストから音楽を知る」という新しいリスニングスタイルは、どのような変化をもたらしたのか。あいみょんやヒゲダン、King Gnuらのヒットはどう生まれたのか。ストリーミングサービスの立場から語ってもらった。

プレイリストによる「音楽との出会い」。この3年で普及した、新たなリスニングスタイル

―まずは『Early Noise』立ち上げの経緯から教えてください。

芦澤:Spotifyが日本でサービスを開始したのは2016年の秋、9月末に招待制という形でまず始まり、11月10日から誰もが参加いただけるようになりました。が、当時はストリーミングが日本に入ってきたばかりで、まだ楽曲を配信していない国内アーティストも多く、いまからすると黎明期だったんですよね。「プレイリストで音楽に出会う」という聴き方も、まだまだ日本に根付いていませんでした。

そこでSpotifyとしては、まずなにに注力していくかを考えたとき、「新しい音楽を、新しいリスニングスタイルで楽しむ」ということを提唱しようと。つまり「Spotifyが注目する若手アーティスト」を『Early Noise』と銘打って選出し、年間を通じてプレイリストで紹介し、アーティストがブレイクするサポートしていこうというのがそもそもの始まりだったんです。

さらにプレイリストで出会ったアーティストのライブを実際に体験することで、よりそのアーティストの世界観に触れ、深く好きになったりしてもらえる機会も提供しようということで始まったのがイベント『Spotify Early Noise Night』でした。

芦澤紀子(あしざわ のりこ)<br>ソニーミュージックで洋楽・邦楽の制作やマーケティング、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)で「PlayStation Music」の立ち上げに関わった後、2018年にSpotify Japan入社。
芦澤紀子(あしざわ のりこ)
ソニーミュージックで洋楽・邦楽の制作やマーケティング、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)で「PlayStation Music」の立ち上げに関わった後、2018年にSpotify Japan入社。

―「プレイリストから音楽を知る」リスニングスタイルは、ほんとこの2年くらいで普及しましたね。

芦澤:ストリーミングにより、人々のリスニングスタイルが大きく変化したと感じます。それまではアルバム単位で聴いたり、曲単位で検索して聴いたりするのが一般的でした。いまはプレイリストを通して聴くことにより、自分の知らなかった音楽に出会う機会がどんどん生まれていっています。

あいみょんの人気の高まり方を、楽曲単位でわかるSpotifyのデータ分析

―『Early Noise』の展開方法としては、まず年初に「今年、飛躍が期待されるアーティスト」を選出しているんですよね。その軸となるコンセプトはどんなものなのでしょうか。

芦澤:Spotifyでプレイリストを作っているエディトリアルチームと、レーベルやアーティストと向き合っているアーティスト&レーベル・マーケティングチームが、日々新しい音楽と向き合う中で注目している楽曲やアーティストをまず選びます。それと並行して行うのがデータの集積と分析ですね。

Spotifyではプレイリストの中でのリスナーの反応、たとえば「スキップせずに最後まで聴き通しているか?」とか、「リスナーのライブラリにどれくらい保存されているか?」など、いろんな角度からデータを検証できる。そうすると、リスナーからの反応がいい楽曲も見えてくるわけです。

芦澤紀子

―エディターの方々のセンスや、アーティスト&レーベル・マーケティングの方々の現場での実感、そしてSpotifyならではのデータの集積、分析が「三位一体」となってアーティストの選出を行なっているわけですね。

芦澤:判断材料が一つではなく、そのすべての要件を備えたアーティストを選んでいるのがポイントです。中でもデータの集積、分析はストリーミング、とりわけSpotifyの強みです。

これまでヒットの分析といえば、CDの売上が大きな判断基準になっていました。でも、「CDを何万枚売ったアーティスト」ということはわかっても、実際にどう聴かれているかまでは分からない。対してSpotifyは、アーティストが楽曲単位で「どんなリスナーに、どう聴かれているか」が細かく把握できる。つまり楽曲に関する反応を、総合的に分析するのにとても有効なプラットフォームなのです。

『Best of 2019 Early Noise』プレイリストを聴く(Spotifyを開く

多数のアーティストのサインボードが飾られたSpotify Japan
多数のアーティストのサインボードが飾られたSpotify Japan

―実際に、あいみょんが2018年に大ヒットしたのには、ストリーミングの力も大きかったのかなと。

芦澤:2017年の年初に発表した『Early Noise』であいみょんを選出しました。プレイリストと『Early Noise Night』で1年かけて彼女をバックアップしていた当時は、私たちも国内における「ストリーミング」の基盤を作っていた時期でもありました。まず『Early Noise』プレイリストに彼女の曲を入れたことから始まり、『TERRACE HOUSE』の本編に“愛を伝えたいだとか”が使用され、番組のプレイリストに入ったことが、リスナーを増やすきっかけにつながりました。

これはストリーミングの特性の一つですが、なにか世の中で話題になったときに検索され、そこに曲があれば一気にハネる。もちろん、楽曲の評価や支持があってこそですが。あいみょんの場合は『TERRACE HOUSE』の後、『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日)で言及されたり『ミュージックステーション』(テレビ朝日)に本人が出演したりして、そこで話題になった瞬間に一斉に検索されました。その後もタイアップ曲がTVで流れたり、絶え間なくつながった印象があります。「ストリーミングで聴く」という支持基盤となるリスナーを獲得した上で、こうした形で話題になると、その度に再生回数がぐんぐん伸びていくわけです。それが2018年の『NHK紅白歌合戦』まで続いていきました。

『This Is あいみょん』プレイリストを聴く(Spotifyを開く

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イベント情報

『FM802 30PARTY FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2019』

開催日:2019年12月25日(水)、26日(木)、27日(金)
会場:インテックス大阪

「Spotify Early Noise LIVE HOUSE Antenna」ステージ出演アーティスト:
25日出演:
Karin.
サイダーガール
w.o.d.
Novelbright
YAJICO GIRL
ユアネス
26日出演:
Age Factory
オカモトコウキ(OKAMOTO'S)
ズーカラデル
DENIMS
ハンブレッダーズ
みゆな
reGretGirl
27日出演:
おいしくるメロンパン
カネコアヤノ
Kobore
the chef cooks me
The Songbards
Tempalay
ネクライトーキー
料金:1日券9,500円、2日券18,800円、3日通し券28,000円

サービス情報

Spotify

・無料プラン
5000万を超える楽曲と30億以上のプレイリストすべてにアクセス・フル尺再生できます

・プレミアムプラン(月額¥980 / 学割プランは最大50%オフ)
3ヶ月間無料キャンペーン中

プロフィール

芦澤紀子(あしざわ のりこ)

ソニーミュージックで洋楽・邦楽の制作やマーケティング、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)で「PlayStation Music」の立ち上げに関わった後、2018年にSpotify Japan入社。

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