コロナ禍を経たRADWIMPS新アルバム。混沌の先に見た希望とは?

コロナ禍を経たRADWIMPS新アルバム。混沌の先に見た希望とは?

2021/11/23
インタビュー・テキスト
三宅正一
編集:タナカヒロシ、CINRA編集部

RADWIMPSにとって3年ぶりのニューアルバム『FOREVER DAZE』が完成した。前作『ANTI ANTI GENERATION』以降にクリエイトし積み重ねてきた全14曲がここに収められている。

先行配信リリースされている5曲——“夏のせい”、“鋼の羽根”、“うたかた歌 feat. 菅田将暉”、“TWILIGHT”、“MAKAFUKA”に加え、YouTubeやSoundCloudで公開されている“SUMMER DAZE 2021”も収録されており、アルバムとしてのボリュームもさることながら、1曲1曲の濃度と密度がとてつもなく高く、やはりこのバンドが創出する音楽像は比類なきものであることをはっきりと実感する。

サウンドプロダクションにおいては、現行のEDMやヒップホップをはじめとするビートミュージック、そしてオーケストレーションなどの方法論をダイナミックに昇華しながら、既成概念的なロックバンドのフォーマットをどんどん超越していくことで、現代的なロックバンドの可能性を拡張するという矜持が揺るぎないものとしてある。

そのうえで野田洋次郎が描く歌から強く伝わってくるのは、ここからいかに新しい世界の様相をイメージできるかという探究心であり、個々人の尊厳が躍動する未来を希求し、手繰り寄せようとする鮮烈な意志としてのリリシズムだ。もちろん、そこに2021年現在の社会情勢が大きく影響していることはあきらかだ。

本稿では『FOREVER DAZE』のリリースにあたり、筆者が担当したSpotifyのプレイリストシリーズ「Liner Voice+」における、野田と武田祐介の二人へのインタビュー音源から抜粋した発言をもとに、個人的に特に印象的だったアルバム曲をピックアップしながら本作の真髄に迫りたいと思う。

RADWIMPS(らっどうぃんぷす)<br>左から武田祐介(Ba)、野田洋次郎(Vo,Gt,Pf)、桑原彰(Gt)。山口智史(Dr)と桑原は活動休止中。<br>2001年結成、2005年メジャーデビュー。既存の枠組みに捉われない音楽性、恋愛から死生観までを哲学的に、ロマンティックに描いた歌詞で、思春期を過ごす世代を中心に大きな支持を受ける。アニメーション映画『君の名は。』『天気の子』では音楽全般を担当し、それぞれの作品において日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞。2021年11月23日に、通算10枚目のフルアルバム『FOREVER DAZE』をリリース。12月4日からは6都市12公演のライブツアーが予定されている。
RADWIMPS(らっどうぃんぷす)
左から武田祐介(Ba)、野田洋次郎(Vo,Gt,Pf)、桑原彰(Gt)。山口智史(Dr)と桑原は活動休止中。
2001年結成、2005年メジャーデビュー。既存の枠組みに捉われない音楽性、恋愛から死生観までを哲学的に、ロマンティックに描いた歌詞で、思春期を過ごす世代を中心に大きな支持を受ける。アニメーション映画『君の名は。』『天気の子』では音楽全般を担当し、それぞれの作品において日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞。2021年11月23日に、通算10枚目のフルアルバム『FOREVER DAZE』をリリース。12月4日からは6都市12公演のライブツアーが予定されている。

RADWIMPS「Liner Voice+」を聴く(Spotifyを開く

「ここからとてつもない物語が始まるんだと感じてもらえる演出を施したいと思いました」(野田)、「一歩を踏み出すための背中を押してくれる言葉たちが詰まっている」(武田)

まず、1曲目を飾る楽曲のタイトルは“海馬”。言葉の意味としては、本能的な行動や記憶に影響する脳の器官のことである。イントロで鳴る荘厳なオルガンから、ブラスセクションを含むさまざまな生楽器とプログラミングが重層的に共振している。総合的なバンドサウンド、あるいは楽団然とした響きというべきか、まさにRADWIMPSの音楽的な現在地を浮き彫りにしている。

「記憶」というキーワードのなかで、マクロとミクロの両方を見つめる視座をもって命や人生の問答と対峙するリリックの筆致からもまた、「RADWIMPSの歌」が提示してきた核心がこれまで以上にシンプルかつ新たな角度で迫ってくる。

RADWIMPS“海馬”を聴く(Spotifyを開く

野田:曲をつくっていくなかで、どんどん新しいRADWIMPSが開いていったし、いろんな実験も込められました。武田にも「もっとベースを攻めて」って言いまくってね。

武田:そうそう。最初はだいぶおとなしく弾いてしまっていたんですけど、「そんなんじゃダメだ」と指摘されて。

野田:「ベースが一番目立つくらいに弾いて」って。そうしたら相乗効果のようにピアノもブラスセクションもそれぞれの音が不思議なバランスで取っ組み合いをするように重なっていって。これを1曲目にしたいと思ってから、イントロダクションを書き加えて、「ここからとてつもない物語が始まるんだ」と感じてもらえる演出を施したいと思いました。

曲ができたのは1年前以上ですね。コロナ禍もあり、何か月間かスタジオと家だけを往復するような時期で、予定していたワールドツアーが中止になったり、本当に歯がゆい気持ちがありつつも──このアルバムの全曲を通して言えることですけど──自分を奮い立たせるようにしてつくってましたね。

武田:そういう状況だったので、基本的にはデータのやり取りをしながらつくっていったんですけど、本当に毎日データ上でセッションするような濃い時間でした。

野田:この曲では「君」という存在との冒険を描きたかった。昔よりも力まずに歌詞を書けるようになってきたのもあって、今回は素直な言葉が多いなと思います。

昔はもっと言葉を使うことに恐怖心があって、「本当にこれでいいのかな?」って石橋を叩きまくりながら言葉を音に乗せていたんですけど、いまは柔軟に自分で自分の言葉を信じられるようになった。そういう意味での懐の大きさが増したのかなって、曲を聴き返してみても思いますね。いままで書いてきた言葉の上にいまの言葉があるという。

武田:この曲はまさに冒険譚というか。ぼくが感じたのは、一歩を踏み出すための背中を押してくれる言葉たちが詰まっているということで。ぼく自身も最初にデモを聴いたときから「よし! やるぞ!」という強い意志をもらったような気持ちになりました。

同じ出来事を共有し、悔しさを吐き出したAwichとの共作。「この先もたぶん何回もこの曲に励まされることがあるんだろうな」(野田)

続く2曲目は“SHIWAKUCHA feat. Awich”。いまや野田と盟友関係にあるヒップホップクルー、YENTOWN所属のラッパー / シンガーであるAwichを迎えたこの楽曲は、柔らかに鳴るフルートと反復するギターフレーズを導入に、壮大なサウンドスケープが広がっていく。

それと同時に、どこまでもヒューマニスティックで生々しい感触に満ちた、人生の困難に立ち向かうタフネスを掲げる内容になっている。トラップ的に刻まれるハイハットとともに解放されるサビのメロディーは、近年のRADWIMPSの楽曲の特徴の一つと言っていいだろう、まるで合唱曲のようなスケール感をたたえている。

RADWIMPS“SHIWAKUCHA feat. Awich”を聴く(Spotifyを開く

野田:これは他の曲とは違った性質というか、決定的に湧き上がるやり場のない気持ちの渦中につくった曲ですね。この局面をどうやって乗り越えよう、どこにどんな感情をぶつけていいか悩んでるときに──やっぱりミュージシャンというのはズルいもので音楽にするしかないというか。タダでは転ばないというかね。

Awichもたまたまその出来事を知っていて、自分と同じ距離感でその出来事を見ている人だったので、彼女に「この曲をAwichと歌いたい」と話したら、「ぜひやらせてください」と快諾してもらいました。二人のエネルギーが同じ方向を向きながら、悔しさを吐き出すような曲になった。「こっからはもう、這い上がるだけだね」という感じで。その感覚もAwichと共通して持てたので、すごく心強かったし、彼女から上がってきたリリックも含めて、本当にすごいエネルギーだなと思いましたね。

Awich
Awich

武田:大きな悔しいことがあって、そのときの気持ちが最大値のまま楽曲がどんどんできていきました。かなり短時間でつくり上げていった曲なんですけど、そのなかに洋次郎の気持ちとAwichさんの気持ちがギュッと詰まっていて。そのエネルギーをそのまますべて余すところなく込められている楽曲だなと思います。そこには強さもあるし、ちょっとした儚さもある。本当にいろんな感情が入ってできた曲ですね。

野田:すごくパーソナルな感情や出来事から生まれた曲だけど、音楽って不思議なもので、この先もたぶん何回もこの曲に励まされることがあるんだろうなと思うし、リスナーもそういうタイミングで聴いて2mmでも5cmでもいいからちょっと背中を押された気持ちになってもらえたら本当にうれしいなと思います。

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リリース情報

RADWIMPS
『FOREVER DAZE』15th Anniversary Box(初回限定盤)(CD+Blu-ray+PHOTOBOOK)

2021年11月23日(火・祝)発売
価格:11,000円(税込)
UPCH-29410

[CD]
1. 海馬
2. SHIWAKUCHA feat. Awich
3. 匿名希望
4. TWILIGHT
5. 桃源郷
6. 夏のせい
7. MAKAFUKA
8. Tokyo feat. iri
9. うたかた歌 feat. 菅田将暉
10. 犬じゃらし
11. グランドエスケープ
12. かたわれ
13. 鋼の羽根
14. SUMMER DAZE 2021

[Blu-ray]
・『「15th Anniversary Special Concert」@横浜アリーナ [2020.11.23]』
1. タユタ
2. グランドエスケープ
3. DARMA GRAND PRIX
4. 新世界
5. シュプレヒコール
6. パーフェクトベイビー
7. NEVER EVER ENDER
8. おしゃかしゃま
9. G行為
10. お風呂あがりの
11. やどかり
12. 棒人間
13. 螢
14. 告白
15. トレモロ
16. 有心論
17. ます。
18. バグッバイ
19. おあいこ(Guest:ハナレグミ)
20. いいんですか?
21. スパークル
22. DADA
・「TWILIGHT」Music Video

RADWIMPS
『FOREVER DAZE』15th Anniversary Box(初回限定盤)(CD+2DVD+PHOTOBOOK)

2021年11月23日(火・祝)発売
価格:11,000円(税込)
UPCH-29411

[CD]
1. 海馬
2. SHIWAKUCHA feat. Awich
3. 匿名希望
4. TWILIGHT
5. 桃源郷
6. 夏のせい
7. MAKAFUKA
8. Tokyo feat. iri
9. うたかた歌 feat. 菅田将暉
10. 犬じゃらし
11. グランドエスケープ
12. かたわれ
13. 鋼の羽根
14. SUMMER DAZE 2021

[DVD]
・『「15th Anniversary Special Concert」@横浜アリーナ [2020.11.23]』
1. タユタ
2. グランドエスケープ
3. DARMA GRAND PRIX
4. 新世界
5. シュプレヒコール
6. パーフェクトベイビー
7. NEVER EVER ENDER
8. おしゃかしゃま
9. G行為
10. お風呂あがりの
11. やどかり
12. 棒人間
13. 螢
14. 告白
15. トレモロ
16. 有心論
17. ます。
18. バグッバイ
19. おあいこ(Guest:ハナレグミ)
20. いいんですか?
21. スパークル
22. DADA
・「TWILIGHT」Music Video

  • Spotifyで聴く
  • Amazonで購入する
  • RADWIMPS
    『FOREVER DAZE』通常盤(CD)

    2021年11月23日(火・祝)発売
    価格:3,300円(税込)
    UPCH-20594

    1. 海馬
    2. SHIWAKUCHA feat. Awich
    3. 匿名希望
    4. TWILIGHT
    5. 桃源郷
    6. 夏のせい
    7. MAKAFUKA
    8. Tokyo feat. iri
    9. うたかた歌 feat. 菅田将暉
    10. 犬じゃらし
    11. グランドエスケープ
    12. かたわれ
    13. 鋼の羽根
    14. SUMMER DAZE 2021

プロフィール

RADWIMPS(らっどうぃんぷす)

左から武田祐介(Ba)、野田洋次郎(Vo, Gt, Pf)、桑原彰(Gt)。山口智史(Dr)と桑原は活動休止中。2001年結成、2005年メジャーデビュー。既存の枠組みに捉われない音楽性、恋愛から死生観までを哲学的に、ロマンティックに描いた歌詞で、思春期を過ごす世代を中心に大きな支持を受ける。アニメーション映画『君の名は。』『天気の子』では音楽全般を担当し、それぞれの作品において日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞。2021年11月23日に、通算10枚目のフルアルバム『FOREVER DAZE』をリリース。12月4日からは6都市12公演のライブツアーを開催予定。2022年春に公開予定の映画『余命10年』(藤井道人監督)で劇伴音楽全般を担当することも決定している。

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