ボカロやソロ全盛のいま、バンドをやる意味とは。NEE×PEOPLE 1

ボカロやソロ全盛のいま、バンドをやる意味とは。NEE×PEOPLE 1

2021/11/30
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:西田香織 編集:金子厚武、CINRA編集部

「単純にメンバー四人で積み上げてきたものを見せるのがかっこいいのかなって」(くぅ)

―ここまで話して、「バンド」と一言でいっても当然それぞれのカラーがあることがわかりますが、でもやっぱり最近は「バンドに元気がない」といわれることが多くなった印象があります。特に2020年以降、ライブ活動が難しくなったなかで、注目を集めたのはボカロ出身のアーティストや、TikTok発のシンガーソングライターだったりする。そんな状況をどのように感じていますか?

くぅ:それは正直めちゃめちゃ感じてて、いまはバンドにとって試練の時期だと思うんですけど、いまは進化の途中だから、これを乗り越えた先で、また新しいことができると思うんですよね。これでバンドが終わるっていうことは絶対にないから、いまの状況に対してぼくたちバンドマンがどう対応して、どう進化するのかが重要だと思います。そこで終わるようならそこまでだと思うし。

くぅ

Deu:印象としては、「売れるか売れないか」の当落線上にいる人たちが、一番困っているんじゃないかと思いますね。でも、実際ライトな音楽リスナーは、「バンドかどうか」ってそんなに気にしてないと思う。ぼくたちに関しては、そもそもコロナ禍のなかで始まったようなバンドでもあるので、あまり影響はないかもしれないです。

―お二人ともDTMで曲をつくるとのことですが、一人でも制作が完結できるようになったなかで、バンドだと制作をするにもライブをするにもいろんな意味でカロリーが高いのは事実だと思います。そのメリットやデメリットに関してはどう感じていますか?

くぅ:ぼくは単純にメンバー四人で積み上げてきたものを見せるのがかっこいいのかなって。もちろん、バンドで活動していると、脱退だったり、メンバーチェンジだったりもあるけど、そういうのも込みで「バンド」だと思っていて。

―ストーリーも含めてバンドというか。

くぅ:ファンの人たちも、曲が好きなのはもちろん、やっぱりメンバー同士の関係性とかも見てると思うんですよね。そういう部分も込みで応援したくなってくれるんじゃないかと思います。

創作の根源でありつつ、暴走させすぎも禁物。自分のなかの「怪獣」との向き合い方

―NEEはメンバー四人のキャラも立っているし、キャリアを重ねるなかで一人ひとりがどう変化して、さらにバンドとしてどう変化するかを見られるのは楽しみです。

くぅ:このなかの誰が欠けてもNEEではなくなる気がします。もし変わるんだったら、改名したほうがいいと思う。もちろん大変なこともあるんですけど、それを楽しめる人間で良かったなって、自分ではそう思ってます。

くぅ

―もともとくぅさんは広島時代に周りに一緒に音を出す人がいなくて、それを求めて東京に来たことからストーリーが始まっていて。人と一緒に音楽を奏でることがいまもエネルギーになってるだろうから、やっぱりバンドであることが必然というか。

くぅ:バンドメンバー四人もそうですけど、ぼくはNEEに関わってくれる人みんなを大事にしたいと思っていて。PAさん、照明さん、イベントを企画してくれる方、そういう人たちをぼくは「スタッフ」とは呼びたくなくて、その人たちのことも「メンバー」と呼びたい。そういう気持ちじゃないとやってて楽しくないと思うから。

だからこそ、横柄な態度をとってみんながどこかに行っちゃうようなことにならないように、マジで気をつけてます(笑)。いつかそうなっちゃうんじゃないかって、どこかに恐怖心があるので。

Deu:わかる。「怪獣」になっちゃうんじゃないかなって。

くぅ:あはは。でも本当に、バンドはそこが一番デリケートというか。

Deu:でも創作の根源はその「怪獣」が牛耳ってたりもして、だから難しいよね。

くぅ:ぼくもDeuさんも曲をつくる中心ではあるから、どれだけ一緒にやってくれる人を大切にできるかが大事だと思います。ぼく一人目立っても、それはNEEではなくなるというか……こう考えてる時点で自分なんなんだ? とも思うけど(笑)。

Deu:いい曲書いて、自分で歌って、そのうえで周りにめっちゃ気を使える人なんてなかなかいないだろうなって思っちゃう(笑)。

「バンドって意外と、いろんなものをシェアしあういまの時代っぽいんじゃないか」(Deu)

―でもさっきくぅさんが話してくれた「ストーリー」と同じで、ファンの人たちはそうやって自分のなかの怪獣と向き合ったり、そのうえでメンバーとも向き合ったりして生まれてくる創作に魅力を感じて、ついてきてくれる部分もあるでしょうからね。

Deu:ストーリーということでいうと、一人のストーリーだと、心のなかの外からは見えないところでいろんなことが起こる。でも複数人だと、人間関係のなかでそのストーリーが見えやすくなるので、そこはバンドのメリットだといういい方もできるんじゃないかなって。

―たしかに。

Deu:「こうじゃなきゃいけない」みたいな固定観念を取り除くと、バンドは意外とメリットが多いんじゃないかと思います。一人で責任を負わなくてもいいし、別のボーカルを立てることもできるし、ライブとかフィジカルの部分でも勝手のわかった人たちがやってくれるわけで、むしろ、いろんなものをシェアしあういまの時代っぽいんじゃないかとすら思ったりもして。海外だとコライト(共同制作)が増えてるのもそうだし、結局よりグループ的になってるわけじゃないですか?

―ソロアーティストであっても、たくさんの人が関わっているケースが多いですね。

Deu:バンドサウンドさえ保たれていれば、極端な話それはもう「バンド」というか。マシン・ガン・ケリーの曲でヤングブラッドがベースを弾いているのとか、オリヴィア・ロドリゴの“good 4 u”だって、「一時的なバンド」みたいな見方もできるし。


全米1位を獲得したオリヴィア・ロドリゴ“good 4 u”。Paramoreの楽曲との類似性が指摘され、作曲クレジットにParamoreメンバーの名前が追加された

Deu:バンドはみんなで曲をつくらないといけないとか、DTMはやらないとか、なんとなくの「バンドっぽさ」のイメージを一回全部疑ってみると、じつはメリット多いんじゃないかなって。

―「バンド」という言葉をどう捉えるか。その時点でその人の表現が始まっているということかもしれない。

Deu:いい方とか見方の角度の話なのかなって。だから、いったもん勝ちですよ(笑)。

―ちなみに、PEOPLE 1の1stアルバムには、最後に“バンド”という曲が入っていて。音楽的にも一番ストレートに「バンド」の音ですが、この曲を最後に入れた理由を教えてください。

Deu:そうですね……バランスかもしれないです。PEOPLE 1が表現してるものって、めちゃめちゃ「ぼく」なんですよ。ぼくの考えてることとか哲学を全員でやっているっていう、ある意味めっちゃ独りよがりなんです。でも、「バンド」として始めた以上、そこにちゃんと向き合わないと、それこそストーリーとして美しくないと思ったんですよね。こういう曲をつくっておくと、のちのちエモくなりそうだし(笑)。

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リリース情報

NEE『NEE』
NEE
『NEE』(CD)

2021年9月1日(水)発売
価格:2,970円(税込)
VICL-65546

PEOPLE 1『PEOPLE』
PEOPLE 1
『PEOPLE』(CD)

2021年11月24日(水)発売
価格:3,080円(税込)
POLY-0006

プロフィール

NEE
NEE(にー)

東京のどこかで結成。エキゾチックロックバンド「NEE」。2021年ビクター / Getting Betterよりメジャーデビュー。貴方も理解できない歌をその耳に焼き付けてハロー。

PEOPLE 1
PEOPLE 1(ぴーぷるわん)

東京を拠点に活動する音楽家Deu(Vo, G, B, Other)が、Takeuchi(Dr)、Ito(Vo, G)と共に結成したバンド「PEOPLE 1(ぴーぷるわん)」。2019年12月、1st EP『大衆音楽』の発表と同時に活動を開始。2020年9月には、2nd EP『GANG AGE』を発表。Deuが手掛けるジャンル横断的かつ文学的な楽曲と、独創的な世界観を表現したミュージックビデオ / アートワークは、「中毒性がある / エモい / オシャレでどこか懐かしい」とインターネット上で話題を集め、2021年10月時点でYouTubeで公開されたミュージックビデオの総再生回数は1,600万回、コメント数は10,000件を超えている。2021年4月28日に3rd EP『Something Sweet,Something Excellent』、同年11月24日には1stフルアルバム『PEOPLE』をリリース。

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