佐藤千亜妃×幾田りら、声にならない声に寄り添うために

佐藤千亜妃×幾田りら、声にならない声に寄り添うために

2021/09/27
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:垂水佳菜 編集:金子厚武、CINRA.NET編集部

佐藤千亜妃が2枚目のフルアルバム『KOE』を発表した。タイトル通りに「声」をテーマに掲げ、ありのままの自分を楽曲に投影するとともに、コロナ禍を通じて感じた「声にならない声」に寄り添う全12曲。きのこ帝国の活動休止から2年以上のときを経て完成した、ソロとしての最初のマスターピースである。

そんな佐藤の『KOE』をめぐって、幾田りらとの対談が実現。コンポーザーAyaseとのユニットYOASOBIのボーカルikuraとして、現在の日本で最も聴かれている「声」の持ち主といっても過言ではない幾田。お互いの声の魅力を語り合ってもらうとともに、SNS世代の「声にならない声」とどう向き合うかについても、それぞれの考えを話してもらった。

個人的に、ヒリヒリとした痛みや焦燥をポップに昇華する佐藤の歌声や楽曲と、「ネット以降」と呼ばれる女性シンガーの歌声や楽曲には通じるものがあると思っていたのだが、「歌の星に生まれた2人」の真摯な対話からは、その理由の一端が垣間見えたように思う。

アップテンポの曲でも清涼感が失われない幾田りらの声

―まずはお互いの声に対する印象を聞かせてください。

佐藤:りらちゃんの声は清涼感があって、息を吸い込んだり吐き出したりするときの空気の振動の成分みたいなのがすごく好きなので、繰り返し聴いても飽きない、耳馴染みのいい声だと思います。しかも、YOASOBIみたいなアップテンポの曲でもそれが失われずに、アップアップに聴こえないのがすごい。

私はボカロの曲をそんなに聴いてきたわけではないんですけど、生身の人間でも具現化して歌うことが可能なんだっていうのは衝撃で。あのスピード感は体幹がタフじゃないと歌いこなせないだろうなって。

幾田:ありがとうございます。うれしいです。

幾田りら(いくた りら)<br>2000年9月25日生まれ、東京都出身。シンガーソングライターとして活動し、2019年11月16日(土)に発売した2ndミニアルバム『Jukebox』の収録曲“ロマンスの約束”はYouTube400万回再生を突破。2020年8月にはGoogle Pixel 4aの新CMでカーペンターズ“(THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU”を歌唱するなどその歌声に注目が集まっている。2021年3月に配信リリースした“Answer”は、東京海上日動あんしん生命「あんしん就業不能保障保険」CMソングに起用。7月16日に公開となった細田守監督映画『竜とそばかすの姫』では、主人公・すずの親友役で初の声優を務めるなど、多方面で精力的に活動を続けている。
幾田りら(いくた りら)
2000年9月25日生まれ、東京都出身。シンガーソングライターとして活動し、2019年11月16日(土)に発売した2ndミニアルバム『Jukebox』の収録曲“ロマンスの約束”はYouTube400万回再生を突破。2020年8月にはGoogle Pixel 4aの新CMでカーペンターズ“(THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU”を歌唱するなどその歌声に注目が集まっている。2021年3月に配信リリースした“Answer”は、東京海上日動あんしん生命「あんしん就業不能保障保険」CMソングに起用。7月16日に公開となった細田守監督映画『竜とそばかすの姫』では、主人公・すずの親友役で初の声優を務めるなど、多方面で精力的に活動を続けている。

―ソロとYOASOBIで声の使い方を意識的に変えていますか?

幾田:意識的に何かを変えているわけではないんですけど、自分で書く曲とのコンセプトの違いが、声にも表れているのかもしれないです。

自分が書いた曲を歌うときは「ありのままの私」という感じなんですけど、YOASOBIの楽曲は小説などをもとにつくられることが多いので、登場人物の心情に合わせて歌ったりします。それが声にも表れているのかなって。

佐藤:YOASOBIの曲はブレスのタイミングがすごく重要ですよね。「カラオケで真似して歌ってみたら、思ったとおりに歌えなかった」みたいな現象がよく起こってそう。

『紅白歌合戦』も観させていただいたんですけど、音源とも全然遜色なくて、しっかりした基礎があるというか、腹式呼吸が上手なんだろうなって。アスリートみたいでかっこいいと思いました。

―ボイストレーニングは昔からやられていたんですか?

幾田:18歳くらいまでは自己流というか、ただただ歌うことが好きで、一日中ずっと歌ってるような感じで、なにか練習をしていたわけではなくて。ただ、19歳くらいからボイストレーニングに通い始めて、そこから体幹を鍛えたり、喉を鍛えたりしています。

佐藤:意外です。もっと長く、高校生くらいからしっかりトレーニングをしてたのかなと思いました。

幾田:ひとつ理由があるとしたら、小学生のときに3年間くらいミュージカルをやっていたんですけど、それが結構スパルタで(笑)。声が決まってくる12歳くらいのときに、クラシックの発声練習をたくさんやっていたので、その影響はあるのかなと思います。

たどってきた人生がそのまま漏れ出ているような佐藤千亜妃の声

―では逆に、幾田さんは佐藤さんの声にどんな印象をお持ちですか?

幾田:声の粒子というか、聴こえてくるものがとっても濃密だと思っていて、どの曲を聴いても、1ミクロンも無駄な音がないというか(笑)。フレーズの入りから、最後にちょっと息が残るところまで、ずっと繊細な、きれいな音が聴こえていて、とても美しいなと思っています。

佐藤:すごくうれしい。

佐藤千亜妃(さとう ちあき)<br>1988年9月20日、岩手県出身。2007年にきのこ帝国を結成し、Vo / Gt / 作詞作曲を担当。2015年に『桜が咲く前に』でメジャーデビュー。2019年にバンドの活動休止を発表。現在はソロとして活動中。2019年にファーストソロアルバム『PLANET』をリリース。2021年4月スタートの連続ドラマ『レンアイ漫画家』(フジテレビ系 木曜22:00~)の主題歌に新曲“カタワレ”が大抜擢された。11月には最新アルバム『KOE』のリリースツアー「かたちないもの」を全国5か所で開催予定。
佐藤千亜妃(さとう ちあき)
1988年9月20日、岩手県出身。2007年にきのこ帝国を結成し、Vo / Gt / 作詞作曲を担当。2015年に『桜が咲く前に』でメジャーデビュー。2019年にバンドの活動休止を発表。現在はソロとして活動中。2019年にファーストソロアルバム『PLANET』をリリース。2021年4月スタートの連続ドラマ『レンアイ漫画家』(フジテレビ系 木曜22:00~)の主題歌に新曲“カタワレ”が大抜擢された。11月には最新アルバム『KOE』のリリースツアー「かたちないもの」を全国5か所で開催予定。

幾田:あと、ご自身で書かれたストーリーを読み聞かせていただいているみたいというか、「歌っている」というよりも、佐藤さんの人生とかストーリーを聴かせてもらっているような感じがして、すごく生身の、温かい声だなっていう印象があります。

佐藤:素敵な言葉選びをしていただいて、照れますね。たしかに、私は自分がいままで経験してきたことをそのまま歌詞に落とし込むタイプです。そうじゃないとどう歌っていいかわからないし、自分のなかのジャッジも揺らいじゃうので、「そういうものを人に聴かせていいのか?」という思いもあって。つくり込まれたものではなく、「漏れ出しちゃった」みたいな歌を歌いたくて、歌詞も自然とそうなっちゃいます。

―そこは幾田さんのソロとも通じる部分かもしれないですね。

幾田:そうですね。私も曲を書くときは自分の日常から出てくるものがとっても多いので、本当にリアルを歌っている感じです。

―ちなみに幾田さんは、カバーセッションユニットのぷらそにかで活動されていた時代に、同じくメンバーだったにしなさんときのこ帝国の“怪獣の腕のなか”をカバーされていますね。なぜあの曲を選ばれたのでしょうか?

幾田:あれは2人でなにか録ろうとなって、やりたい曲のリストをお互いバーッて出し合ったときに、にしなが“怪獣の腕のなか”を出してくれて。聴いた瞬間に「これにしましょう!」と。

佐藤:2人の歌声にすごくぴったりですよね……って、自分の曲に対していうのも変ですけど(笑)。「そうそう、こういう声の人に歌ってほしかった」と思いました。

左から:佐藤千亜妃、幾田りら

幾田:うれしいです。あれがきっかけできのこ帝国が大好きになって、佐藤さんの曲も聴くようになりました。周りのシンガーソングライターの友達もカバーしてたり、高校の同級生も聴いてたり、同世代でも好きな人がたくさんいましたね。

佐藤:自分たちとしてはそれが意外だったんです。きのこ帝国は大学生からアラサーくらいの人が聴いてくれてると勝手に思い込んでいたので、すごくうれしくて。もともと中高生にも聴いてもらいたい気持ちがあったから、最近映画(『花束みたいな恋をした』)の効果もあって、高校生が“クロノスタシス”を聴いてくれたりしているのは「やっときたか」みたいな気持ちです(笑)。

『花束みたいな恋をした』では、主役の2人がカラオケで“クロノスタシス”を歌うシーンがあり、話題となった(Spotifyを開く

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リリース情報

佐藤千亜妃
『KOE』

2021年9月15日(水)発売

幾田りら
『ロマンスの約束』

2021年8月14日(水)配信

プロフィール

佐藤千亜妃(さとう ちあき)

1988年9月20日、岩手県出身。2007年にきのこ帝国を結成し、Vo / Gt / 作詞作曲を担当。2015年に『桜が咲く前に』でメジャーデビュー。2019年にバンドの活動休止を発表。現在はソロとして活動中。2019年にファーストソロアルバム『PLANET』をリリース。2021年4月スタートの連続ドラマ『レンアイ漫画家』(フジテレビ系 木曜22:00~)の主題歌に新曲“カタワレ”が大抜擢された。11月には最新アルバム『KOE』のリリースツアー「かたちないもの」を全国5か所で開催予定。

幾田りら(いくた りら)

2000年9月25日生まれ、東京都出身。シンガーソングライターとして活動し、2019年11月16日(土)に発売した2ndミニアルバム『Jukebox』の収録曲「ロマンスの約束」はYouTube400万回再生を突破。2020年8月にはGoogle Pixel 4aの新CMでカーペンターズ「(THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU」を歌唱するなどその歌声に注目が集まっている。2021年3月に配信リリースした「Answer」は、東京海上日動あんしん生命「あんしん就業不能保障保険」CMソングに起用。7月16日に公開となった細田守監督映画『竜とそばかすの姫』では、主人公・すずの親友役で初の声優を務めるなど、多方面で精力的に活動を続けている。

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