アメリカを夢中にさせたBTS なぜK-POPは海を渡れたのか

アメリカを夢中にさせたBTS なぜK-POPは海を渡れたのか

田中絵里菜(Erinam)『K-POPはなぜ世界を熱くするのか』、桑畑優香『BTSとARMY わたしたちは連帯する』
インタビュー・テキスト・編集
黒田隆憲

今年開催された第63回グラミー賞で、「最優秀ポップ・デュオ / グループ・パフォーマンス」にノミネートされていた韓国の男性アイドルグループBTS。惜しくも受賞は逃したが、アジアの男性グループが映えあるグラミーを賑わせたことは大いなる快挙と言えるだろう。

BTSだけでなく、BLACKPINKやTWICEなど個性的なグループを数多く生み出しているK-POPシーン。まるで映画のように作り込まれたミュージックビデオや、ケレン味たっぷりの楽曲、そして圧倒的なスキルを誇るダンス・パフォーマンスが今、世界中を熱狂させている。そうしたムーブメントの背景には何があるのか。韓国ではいったい何が起きているのか。

今回Kompassでは、そんな「今さら聞けないK-POPの魅力」について、『BTSとARMY わたしたちは連帯する』を翻訳した桑畑優香と、『K-POPはなぜ世界を熱くするのか』を出版した田中絵里菜の両名に解説してもらった。

アメリカでBTSは、「ジャスティン・ビーバーを抜いたすごいグループがアジアにいる」ということで注目を集めました(桑畑)

―そもそもお二人がK-POPに魅了されたのは、どのような経緯だったのでしょうか。

田中:まだ私が学生だった頃、Wonder Girlsの“Tell Me”が韓国で流行っていて、ミュージックビデオのYouTubeリンクを友人が送ってくれたんです。その頃の私は「韓国」といえば『冬ソナ(冬のソナタ)』やヨン様(ペ・ヨンジュン)のイメージで止まっていて、それ以降の音楽のことなどまったく知らなかったので「今、こんなのが流行っているんだ」という驚きがありました。

同時期に活動していたSE7ENや2NE1は、Wonder Girlsのレトロなイメージとはまた全然違っていて。今思えばカムバック後(韓国では、アーティストが「充電期間」を経てプロモ活動をすることを「カムバック」という)のイメチェンだったと思うんですけど、曲ごとにまったく違うイメージを打ち出していくやり方なども、観ていて本当に楽しくて。それでいろいろ調べていくうちにハマっていましたね。

田中絵里菜(たなか えりな)<br>1989年生まれ。日本でグラフィックデザイナーとして勤務したのち、K-POPのクリエイティブに感銘を受け、2015年に単身渡韓。最低限の日常会話だけ学び、すぐに韓国の雑誌社にてデザイン / 編集担当として働き始める。並行して日本と韓国のメディアで、撮影コーディネートや執筆を始める。2020年に帰国してから、現在はフリーランスのデザイナーおよびライターとして活動。過去に『GINZA』『an·an』『Quick Japan』『ユリイカ』『TRANSIT』などで韓国カルチャーについてのコラムを執筆。韓国 / 日本に留まらず、現代のミレニアルズを惹きつけるクリエイティブやカルチャーについて制作 / 発信を続けている。
田中絵里菜(たなか えりな)
1989年生まれ。日本でグラフィックデザイナーとして勤務したのち、K-POPのクリエイティブに感銘を受け、2015年に単身渡韓。最低限の日常会話だけ学び、すぐに韓国の雑誌社にてデザイン / 編集担当として働き始める。並行して日本と韓国のメディアで、撮影コーディネートや執筆を始める。2020年に帰国してから、現在はフリーランスのデザイナーおよびライターとして活動。過去に『GINZA』『an·an』『Quick Japan』『ユリイカ』『TRANSIT』などで韓国カルチャーについてのコラムを執筆。韓国 / 日本に留まらず、現代のミレニアルズを惹きつけるクリエイティブやカルチャーについて制作 / 発信を続けている。

―デザイナーでもある田中さんは、K-POPのアートワークについてどんなふうに感じましたか?

田中:最初は見た目の奇抜さに驚いたのですが、SHINeeがリリースしたミニアルバム『ROMEO』(2009年)のアートワークを見ると、メンバーが半目の写真やブレている写真を使っていたり、タイポグラフィが手書きだったり、アートフォームとしてクオリティの高いブックレットが付属していたんです。そのアートワークは最近HYBE(BTSが所属する芸能プロダクション。3月にBig Hit Entertainmentから改名)に移動したミン・ヒジンというビジュアル&アートディレクターが、おそらくまだ20代の時に手掛けていたと思うのですが、『ROMEO』のクレジットを確認したら、若い女性が先導して活躍していてそれも素敵だなと。そこからクリエイターさんのことも調べるようになりました。

Wonder Girls“Tell Me”を聴く(Spotifyを開く

―桑畑さんは?

桑畑:私が学生だった1990年代初頭は、日本にはまだ韓国の文化などほとんど入ってこなかったのですが、留学先のアメリカで韓国人の留学生たちに出会い、彼らから韓国のポップカルチャーを色々と教えてもらいました。

当時はカン・スージーさんという歌手が人気で、あとはドラマ『101回目のプロポーズ』の韓国版リメイクや、『東京ラブストーリー』にインスパイアされたドラマなんかもあって。「これがオシャレなんだよ」と言って見せてくれるのですが、私はピンとこなかったのですよね(笑)。でも、すごくユニークな文化を持った人たちが隣の国にいるのだなと思って。それで韓国へ留学したんです。

桑畑優香(くわはた ゆか)<br>ライター・翻訳家。1994年に『101回目のプロポーズ』の韓国リメイク版を見て、似て非なる隣国に興味を持ち、韓国へ。延世大学語学堂・ソウル大学政治学科で学ぶ。「ニュースステーション」ディレクターを経てフリーに。ドラマ・映画のレビューを中心に『韓国TVドラマガイド』『韓国テレビドラマコレクション』『韓流旋風』『AERA』『FRaU』『Yahoo! ニュース』などに寄稿。訳書に『韓国映画俳優辞典』(ダイヤモンド社・共訳)、『韓国・ソルビママ式 子どもを英語好きにする秘密のメソッド』(小学館)、『韓国映画100選』(クオン)、『BTSを読む』(柏書房)、『BTSとARMY わたしたちは連帯する』(イースト・プレス)、『家にいるのに家に帰りたい』(辰巳出版)など。
桑畑優香(くわはた ゆか)
ライター・翻訳家。1994年に『101回目のプロポーズ』の韓国リメイク版を見て、似て非なる隣国に興味を持ち、韓国へ。延世大学語学堂・ソウル大学政治学科で学ぶ。「ニュースステーション」ディレクターを経てフリーに。ドラマ・映画のレビューを中心に『韓国TVドラマガイド』『韓国テレビドラマコレクション』『韓流旋風』『AERA』『FRaU』『Yahoo! ニュース』などに寄稿。訳書に『韓国映画俳優辞典』(ダイヤモンド社・共訳)、『韓国・ソルビママ式 子どもを英語好きにする秘密のメソッド』(小学館)、『韓国映画100選』(クオン)、『BTSを読む』(柏書房)、『BTSとARMY わたしたちは連帯する』(イースト・プレス)、『家にいるのに家に帰りたい』(辰巳出版)など。

桑畑:それまでの私の韓国のイメージというと、ソウルオリンピック(1988年)があった国だなということと、チョー・ヨンピルさんが“釜山港へ帰れ”(1982年)を歌っていた記憶くらいしかなかったのですが、留学した頃はちょうどソテジワアイドゥル(Seo Taiji and Boys)や、NiziUの生みの親、パク・ジニョン(J. Y. Park)さんがデビューしたばかりで、私の持っていたイメージを覆すようなダンスをしていたんです。「儒教の教えが浸透していて保守的で……」みたいな人たちかと思っていたら、メッシュの服を着て腰を激しく振って踊っていたりして(笑)。あ、面白いな、まだ日本人はほとんど知らないけど、新しい芽がたくさん出てきているんだなと感じましたね。

SHINee『ROMEO』を聴く(Spotifyを開く

―その頃と比べて今のK-POPは、どんなふうに変化したと思いますか?

桑畑:おそらく根っこにあるものは、そんなに変わってないと思うんです。ダンスミュージックを取り入れているのも、メッセージ性のある歌詞を歌っているのもそう。例えばソテジワアイドゥルは、「南北統一」についての歌を歌っていましたから。当時は韓国の軍事政権時代が終わったばかりで、民主化世代がポップカルチャーの表舞台に出始めた頃。それまではデモで拳を振っていた人が、ライブで拳を振るようになったというか(笑)。そういう社会性を持った音楽は、当時も今も変わっていないんじゃないかなと思います。もちろん、K-POPのすべてがそうではないのですが。

Seo Taiji and Boys“Come Back Home”を聴く(Spotifyを開く

―今年、BTSが韓国のポップアーティストとして初めてグラミー賞候補となり、受賞こそ逃しましたが「最優秀ポップ・デュオ / グループ・パフォーマンス賞」ノミネートはアジア初という快挙を成し遂げました。このところのK-POP旋風、とりわけBTSの世界からの注目度の高さは目を見張るものがあります。この現象について、お二人の見解をお聞かせいただけますか?

桑畑:BTSを取り巻く環境が、ここまでの現象になるまでに幾つかの転機がありました。最初は2017年5月、ビルボード・ミュージック・アワードでBTSが「トップ・ソーシャル・アーティスト賞」を受賞したこと。そこで初めてジャスティン・ビーバーを抜いて1位になったことで、メディアに大きく注目されました。

ただ、そのときはまだアメリカ人はBTSについてほとんど何も知らない状況だったんです。とにかく「ジャスティンを抜いたすごいグループがアジアにいる」ということで注目を集めたわけですね。

Page 1
次へ

プロフィール

田中絵里菜(たなか えりな)

1989年生まれ。日本でグラフィックデザイナーとして勤務したのち、K-POPのクリエイティブに感銘を受け、2015年に単身渡韓。最低限の日常会話だけ学び、すぐに韓国の雑誌社にてデザイン / 編集担当として働き始める。並行して日本と韓国のメディアで、撮影コーディネートや執筆を始める。2020年に帰国してから、現在はフリーランスのデザイナーおよびライターとして活動。過去に『GINZA』『an·an』『Quick Japan』『ユリイカ』『TRANSIT』などで韓国カルチャーについてのコラムを執筆。韓国 / 日本に留まらず、現代のミレニアルズを惹きつけるクリエイティブやカルチャーについて制作 / 発信を続けている。

桑畑優香(くわはた ゆか)

ライター・翻訳家。1994年に『101回目のプロポーズ』の韓国リメイク版を見て、似て非なる隣国に興味を持ち、韓国へ。延世大学語学堂・ソウル大学政治学科で学ぶ。「ニュースステーション」ディレクターを経てフリーに。ドラマ・映画のレビューを中心に『韓国TVドラマガイド』『韓国テレビドラマコレクション』『韓流旋風』『AERA』『FRaU』『Yahoo! ニュース』などに寄稿。訳書に『韓国映画俳優辞典』(ダイヤモンド社・共訳)、『韓国・ソルビママ式 子どもを英語好きにする秘密のメソッド』(小学館)、『韓国映画100選』(クオン)、『BTSを読む』(柏書房)、『BTSとARMY わたしたちは連帯する』(イースト・プレス)、『家にいるのに家に帰りたい』(辰巳出版)など。

Category カテゴリー

Latest Articles 最新の記事

What's "Kompass" ? コンパスとは

「Kompass」は、ネットメディア黎明期よりカルチャー情報を紹介してきたCINRA.NETと、音楽ストリーミングサービスの代表格Spotifyが共同で立ち上げた音楽ガイドマガジンです。ストリーミングサービスの登場によって、膨大な音楽ライブラリにアクセスできるようになった現代。音楽の大海原に漕ぎだす音楽ファンが、音楽を主体的に楽しみ、人生の1曲に出会うガイドになるようなメディアを目指し、リスニング体験を交えながら音楽の面白さを紹介しています。