30年後のいま、名盤豊作の1991年をラブリーサマーちゃんと振り返る

30年後のいま、名盤豊作の1991年をラブリーサマーちゃんと振り返る

2021/09/23
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:西村満 編集:黒田隆憲、CINRA.NET編集部

Nirvanaの『Nevermind』誕生と、急速に失速していくグランジブーム。カート・コバーンの死

ラブサマ:じつは私も、最近までちゃんとNirvanaを聴いたことがなかったんです。以前、大好きなThe Vaselinesのカバーを彼らがやっていたのですが、“Molly's Lips”はまだしも“Son Of A Gun”のアレンジがどうも受けつけなくて……(笑)。父がハードロックキッズだったんですけど、その反発で私はアノラック(The VaselinesやThe Pastelsなど、主にグラスゴーの「ヘタウマ」と呼ばれたギターバンドの総称)などを聴いていたので、余計に違和感があったのかもしれないです。でも、今回のお話を機会にちゃんと聴いてみたら、“Lithium”とかめちゃめちゃいい曲だったのでびっくりしました。

Nirvana『Nevermind』を聴く(Spotifyを開く

荒野:1991年はNirvanaを筆頭に、USインディーのアーティストがどんどんメジャーへいくんですよね。Pearl Jamも、Dinosaur Jr.もそう。おそらくそれは、前年にSonic Youthが『Goo』(1990年)でメジャーデビューしたことも大きかったと思うんですけど。

―Sonic Youthのメジャー移籍は当時ちょっとした「事件」でしたよね。ただ、『Nevermind』からはじまったグランジブームもあっという間に収束してしまった。

荒野:結局「グランジ」って、音楽スタイルというよりはファッションワードとして消費されてしまった感はありますよね。同じシアトル出身ということで、NirvanaもPearl JamもSoundgardenも「グランジ」で括られていましたけど、やってることはまったく違っていたし(笑)。

Soundgarden『Badmotorfinger』を聴く(Spotifyを開く

荒野:しかも『Nevermind』の翌年にはキャメロン・クロウ監督が『シングルス』という、シアトルを舞台にした青春映画をつくるんですよ。サントラにはクリス・コーネル(Soundgarden)やMudhoney、Alice In Chainsなんかが参加していて。めちゃめちゃ商業的なプロジェクトにみんな飲みこまれていくのを目の当たりにした気分になりました。

映画『シングルス』のオリジナルサウンドトラックを聴く(Spotifyを開く

ラブサマ:そんな映画があったんですね。ちょっと見てみたいです。

荒野:いま見たら面白いかもしれない。主演のマット・ディロンが、グランジファッションで終始ダラダラしてるだけの映画ですが(笑)。ただ、そういう消費のされ方をすると、文化としてはあっという間に萎んじゃうんだなということを痛感します。

左から:ラブリーサマーちゃん、荒野政寿

―1994年4月5日にカート・コバーン(Vo,G)が亡くなったときはどう思いました?

荒野:立ち直れないくらい落ち込みました。しばらくロックが聴けなくなりましたね。さっき話したように、Nirvanaはぼくもラブサマちゃんと同じで最初ピンとこなかったんですけど、だんだん好きになっていったんです。その頃はもう『Bleach』も聴いていたし、“About A Girl”のようなポップな曲があることも知った。インタビューを読むと、カートは少年ナイフの大ファンだったりするじゃないですか。

ただ、3rdアルバム『In Utero』(1993年)をリリースするちょっと前くらいから、“I Hate Myself And Want To Die”のような自殺をほのめかすような曲も出していて。『In Utero』には“Rape Me”なんて曲もあるし、「この人大丈夫かな」「いよいよヤバイんじゃないか?」と思ってたら本当に死んでしまった。その頃はもう、同世代の代表的なアーティストとなっていたし、亡くなったときの喪失感は本当に大きかったです。

ラブサマ:そうだったんですね。

荒野:当時は海外の音楽メディアがカートに対してめちゃくちゃ意地悪だったんですよ。何かあるたびに彼の言動を叩いたり、コートニー・ラヴとつき合うようになると、今度はセットでバカにしたりして。そういうことがずっとあって、それに対する反感も作品に落とし込んでいて……そんな一連の流れも含めてハラハラしていたんですよね。「早く彼を休ませてあげなきゃ、どうにかなってしまうんじゃないか?」って。だんだん弱っていく過程を雑誌で逐一見ているような感じにもなっていました。

もしNirvanaがGeffinのような大手レコード会社へ行かず、Sub Popに残ったままMudhoneyくらいの規模で続けていたら、おそらくまだ生きていたかもな……とかいろいろ想像してしまいます。

プレイリスト『This Is Nirvana』を聴く(Spotifyを開く

―そろそろお時間になりました。今回、1991年を振り返ってみるという企画でしたが、ラブサマちゃんいかがでしたか?

ラブサマ:こうやって荒野さんのお話をうかがっていくと、1991年はやはり実り多い年だったのだなということがよくわかりました。自分がずっと好きだった作品がいろいろつながっていることもわかったし、いままで知らなかったアルバムや楽曲もたくさん教えてもらえたので、ますますサブスク巡りが楽しめそうです。今日はありがとうございました。

荒野:こちらこそ!

左から:ラブリーサマーちゃん、荒野政寿

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リリース情報

ラブリーサマーちゃん『THE THIRD SUMMER OF LOVE』
ラブリーサマーちゃん
『THE THIRD SUMMER OF LOVE』

2020年9月16日(水)発売
価格:3,630円(税込)
COCP-41239

1. AH!
2. More Light
3. 心ない人
4. I Told You A Lie
5. 豆台風
6. LSC2000
7. ミレニアム
8. アトレーユ
9. サンタクロースにお願い
10. どうしたいの?
11. ヒーローズをうたって

書籍情報

XXX
『シューゲイザー・ディスク・ガイド revised edition』

2021年8月12日(木)発売
著者:黒田隆憲、佐藤一道(共同監修)
価格:3,080円(税込)
発行:シンコーミュージック

プロフィール

荒野政寿(あらの まさとし)

1988年から都内のレコードショップで勤務。1996年、シンコー・ミュージックに入社。『WOOFIN’』『THE DIG』編集部、『CROSSBEAT』編集長を経て、現在は書籍と『Jazz The New Chapter』『AOR AGE』などのムックを担当。著書に『プリンスと日本 4 EVER IN MY LIFE』(共著、小社刊)。今年8月、『シューゲイザー・ディスク・ガイド revised edition』を編集。

ラブリーサマーちゃん

1995年生まれ、東京都在住の26歳女子。2013年夏より自宅での音楽制作を開始し、インターネット上に音源を公開。SoundCloudやTwitterなどで話題を呼んだ。2015年に1stアルバム『#ラブリーミュージック』、2016年11月にはメジャーデビューアルバム『LSC』をリリースし好評を博す。2020年9月には待望の3rdアルバム『THE THIRD SUMMER OF LOVE』を発売。可愛くてかっこいいピチピチロックギャル。

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