亀田誠治が語る、松本隆トリビュートという50年間のJ-POP大全

亀田誠治が語る、松本隆トリビュートという50年間のJ-POP大全

2021/07/20
インタビュー・テキスト
柴那典
撮影:丹野雄二 編集:タナカヒロシ、CINRA.NET編集部

映画の景色とも重なるコロナ禍の社会情勢をDaokoの歌で浄化してほしかった “風の谷のナウシカ”

1984年公開の映画『風の谷のナウシカ』のテーマソングとして、細野晴臣が作曲、安田成美が歌ったこの曲。これまでも数々のアーティストがカバーしてきた“風の谷のナウシカ”の世界を、このアルバムではDaokoの繊細で儚げな歌声で表現している。

亀田:松本隆さんと細野晴臣さんとのタッグによる最強の曲だと思ってますね。この曲の世界観を表現するには、歌によって浄化されるようなボーカリストの方に歌ってもらいたいと思って、今回はDaokoさんに白羽の矢を立てました。

Daokoさんの表現力の幅広さもよく知っていたし、もっともっと規格外の表現に踏み込んでいけるんじゃないかとも思った。いまのコロナ禍の社会情勢とこの『風の谷のナウシカ』という映画のなかで描かれている景色が、とても重なるんですね。そういう一筋縄でいかないことを歌で浄化するエネルギーをDaokoさんに期待して。それでお話をしたら、Daokoさんも『風の谷のナウシカ』が一番好きな映画だと言ってくださったんです。

Daoko
Daoko

打ち込みのビートとストリングスを用いた、広がりのあるアレンジもDaokoのハイトーンのボーカルを際立たせている。

亀田:サウンドメイキングにあたってぼくが大事にしたのは空間ですね。Daokoさんの声を活かす空間、松本先生の書く歌詞の情景を広げていく空間を汚さない、純度の高いサウンドメイキングをしました。Daokoさんも「ここの部分はナウシカのこのシーンを思い浮かべて歌います」と、自分なりのオリジナルに対してのリスペクトの気持ちを込めてくれて歌ってくれた。そういった意味では、Daokoさんの静かなるパッションが詰まった曲になったんじゃないかと思います。

Daoko“風の谷のナウシカ”を聴く(Spotifyを開く

風の谷のナウシカ / Daoko
作曲:細野晴臣(オリジナルアーティスト:安田成美 / 1984年リリース)

Produced & Arranged by 亀田誠治
Recording & Mix Engineer:田中雄司(prime sound studio form)
Assistant Engineer:土井晴香(prime sound studio form)、 國土祐希(Mouri Artworks Studio)
Vocal Recording at Mouri Artworks Studio
Strings Recording & Mixing at prime sound studio form

Vocal:Daoko
Piano:皆川真人
Strings:今野 均ストリングス
Manipulator:豊田泰孝(誠屋)

オリジナルのダンディズムを表現するには横山剣(クレイジーケンバンド)しかいないと思った“ルビーの指環”

1981年のオリコン年間ランキング1位を記録、80年代初頭を代表するヒットになった寺尾聰の「ルビーの指環」。松本隆が綴った洗練された大人の男の詩情を、クレイジーケンバンドの横山剣が色気たっぷりに歌い上げている。

亀田:この曲は松本隆さんの作り出すダンディズムがキーワードですね。都会的で、洗練されていて、ダンディズムという言葉がピッタリのシティポップだと思います。そういったオリジナルの寺尾聰さんの低音の魅力、ダンディズムを表現するにはこの人しかいないということで、クレイジーケンバンドの横山剣さんにオファーをしました。

横山剣(クレイジーケンバンド)
横山剣(クレイジーケンバンド)

オリジナル曲は印象的なホーンセクションのフレーズから始まるが、トリビュートアルバムのアレンジでは、あえて原曲と違うイントロに仕上げられている。

亀田:原曲は井上鑑さんがアレンジされてるんですけど、イントロの「♪ダッダラララーラ、ダダッ」って始まるところが、曲となかなか切り離せないんですよ。最初は「横山剣さんに決まった、バッチリだ!」って嬉々としていたんですけど、いざアレンジ作業を始めてみると、「うわー、これはカバーじゃなくてコピーになっちゃう」みたいな感じになってきて。

で、自分のなかでもう一回、ダンディズムとか、都会的とか、洗練性というところにキーワードを絞り込んで。同年代にヒットしていたビリー・ジョエルの“The Stranger”という楽曲や、(同名の)あのアルバムで表現しているダンディズムがピッタリくるんじゃないのかと思って、原曲のイントロの部分を一回ごっそり削除して、ニューヨークの摩天楼が見えるような都会的なサウンドスケープを自分なりにつくって組み立てました。でも、「♪ダッダラララーラ、ダダッ」を入れないと、これはこれで怒られるなと思って、1番のサビが終わってから間奏で出てくるようにしています。

横山剣(クレイジーケンバンド)“ルビーの指環”を聴く(Spotifyを開く

ルビーの指環 / 横山剣(クレイジーケンバンド)
作曲:寺尾聰(オリジナルアーティスト:寺尾聰 / 1981年リリース)

Produced & Arranged by 亀田誠治
Recording & Mixing Engineer:今井邦彦(OORONG-SHA)
Assistant Engineer:國土祐希(Mouri Artworks Studio)
Recording & Mixing at Mouri Artworks Studio

Vocal:横山 剣
Guitar:石成正人
Drums:河村“カースケ”智康
Bass:亀田誠治
Piano:皆川真人
Trumpet:吉澤達彦
Tenor Sax:村瀬和広
Manipulator:豊田泰孝(誠屋)

柴那典

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イベント情報

『松本隆トリビュートを2倍楽しむプレイリスト』

松本隆作詞活動50周年トリビュートアルバム『風街に連れてって!』を、制作総指揮をつとめた亀田誠治が全曲解説!(インタビュアー:柴那典)

松本隆作詞活動50周年トリビュートアルバム
『風街に連れてって!』

初回限定生産盤(CD+LP+豪華特典本)

2021年7月14日(水)発売
価格:11,000円(税込)
COZP-1747-8

1. 夏色のおもいで / 吉岡聖恵
2. 君は天然色 / 川崎鷹也
3. SWEET MEMORIES / 幾田りら
4. SEPTEMBER / 宮本浩次
5. Woman“Wの悲劇”より / 池田エライザ
6. セクシャルバイオレットNo.1 / B'z
7. スローなブギにしてくれ(I want you) / GLIM SPANKY
8. キャンディ / 三浦大知
9. 風の谷のナウシカ / Daoko
10. ルビーの指環 / 横山剣(クレイジーケンバンド)
11. 風をあつめて / MAYU・manaka・アサヒ(Little Glee Monster)

松本隆作詞活動50周年トリビュートアルバム
『風街に連れてって!』

通常盤(CD)

2021年7月14日(水)発売
価格:3,300円(税込)
COCP-41453

プロフィール

亀田誠治(かめだ せいじ)
亀田誠治(かめだ せいじ)

1964年生まれ。音楽プロデューサー・編曲家として数多くのヒット曲を生み出し、ベーシストとしても様々なアーティストのレコーディングやライブに参加。2004年には椎名林檎らと東京事変を結成。2005年からはBank Bandのベーシストとして『ap bank fes』に参加。2007年および2015年には日本レコード大賞で編曲賞、2021年には映画『糸』で日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞。近年はJ-POPの魅力を解説するNHK Eテレの音楽教養番組『亀田音楽専門学校』シリーズへの出演や、親子孫3世代がジャンルを超えて音楽を体験できるフリーイベント『日比谷音楽祭』の実行委員長を務めるなど、さまざまなかたちで音楽の魅力を発信している。

柴那典(しば とものり)

1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。ロッキング・オン社を経て独立。雑誌、WEB、モバイルなど各方面にて編集とライティングを担当し、音楽やサブカルチャー分野を中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手掛ける。著書に『ヒットの崩壊』(講談社)、『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)がある。

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