ダメな部分に光を当てる、川谷絵音の「女性目線」の詞を語り合う

ダメな部分に光を当てる、川谷絵音の「女性目線」の詞を語り合う

2021/11/10
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:西田香織 編集:金子厚武、CINRA編集部

自ら複数のバンドで活動する一方で、さまざまなアーティストのプロデュースや楽曲提供も行なっている川谷絵音。ポップなメロディーと複雑なアレンジを共存させるソングライティングの能力もさることながら、ほぼすべてのプロジェクトの歌詞を自ら手掛けており、「作詞家」としての才能にも非凡なものがある。そして、プロデュースや楽曲提供しているアーティストの大半が女性であるように、「女性目線」が歌詞の大きな特徴となっている。

そこで今回は川谷がかかわるバンドのなかから、ジェニーハイの中嶋イッキュウとDADARAYのREISという2人の女性シンガーを迎えて、川谷の歌詞について語り合ってもらった。ともに普段は自らも作詞を行なう2人の多角的な視点での考察によって、川谷の作詞家としての魅力をあらためて浮かび上がらせるともに、ジェニーハイとDADARAYそれぞれの個性も伝えるテキストになったように思う。

ジェニーハイとDADARAYは「巻き込まれて」始まった

―それぞれジェニーハイとDADARAYで活動を始められる前から、イッキュウさんはバンドtricot(トリコ)のボーカルとして、REISさんはNIKIIE(ニキー)名義でシンガーソングライターとして活動していらっしゃいますね。

イッキュウ:ジェニーハイはtricotを結成して7年目くらいに突如組まれたバンドでした。tricotを組んだときとは全然違って、ハプニング的な感じで始まったというか。

ここ最近テレビ番組からバンドが生まれるってなかなかなかったと思うんですよ(ジェニーハイはBSスカパー!で放送されていたバラエティー番組『BAZOOKA!!!』のバンドプロジェクトとして始動)。私が覚えてる限りでいうと、ブラックビスケッツとか以来だと思ったので、単純にワクワクしました。ただ、「バンド組むぞ!」というよりは、「巻き込まれた」みたいな感じでしたね(笑)。

中嶋イッキュウ(なかじま いっきゅう)<br>ジェニーハイではボーカル、tricotではボーカルギターを務めるアーティスト。自身のアパレルブランドSUSU by Ikkyu Nakajimaではデザイナーを務める。
中嶋イッキュウ(なかじま いっきゅう)
ジェニーハイではボーカル、tricotではボーカルギターを務めるアーティスト。自身のアパレルブランドSUSU by Ikkyu Nakajimaではデザイナーを務める。

―デビューから3年半が経って、現在ジェニーハイは中嶋さんにとってどんな存在になっていますか?

イッキュウ:tricotは家族より一緒にいるくらいの感じなんですけど、ジェニーハイはお忙しい方たちばかりなので、集まる機会はそんなに多くはなくて。ただ、それぞれ全然違うものとして、いまはどっちにいても癒される感じがあります。

コロナでジェニーハイとして集まる機会がすごく空いたときはめっちゃ寂しくて、それぞれ活躍されてるメンバーの映像とかを見てました。「次に会ったときは自分も成長できてるように頑張ろう」と、いまは自分を奮い立たせてくれる存在にもなっています。

―REISさんにとってのDADARAYはいかがでしょうか?

REIS:「巻き込まれた」っていうのは私も同じです(笑)。突然「こういうバンドをつくりたくて、ボーカルをやってほしい」と連絡をもらって、どんな感じで進めていくのかもまったく見えないなか、とりあえずその船に乗ってみたら、船じゃなくてジェットコースターだった、みたいな(笑)。プリプロだと思ってたら、それが本番だったりもして。

REIS(れいす)<br>休日課長(ゲスの極み乙女。)率いる3人組ユニットDADARAYのボーカリスト。DADARAYは今年9月に2ndフルアルバム『ガーラ』を発売し、2022年2月より東名阪ワンマンツアー「東名阪一番街」を開催。
REIS(れいす)
休日課長(ゲスの極み乙女。)率いる3人組ユニットDADARAYのボーカリスト。DADARAYは今年9月に2ndフルアルバム『ガーラ』を発売し、2022年2月より東名阪ワンマンツアー「東名阪一番街」を開催。

REIS:最初に川谷くんから「こういうのをやろうと思ってる」と聞いたときは、すごく情熱的だったし、信頼できると思いました。それで何も考えずに「私でお役に立てるなら」みたいに答えたんですけど……結成当初は「間違った場所に来ちゃった」と思ってて(笑)。

イッキュウ:あははははは。

REIS:でもそれまではずっとソロでやっていて、みんなで同じ責任感を持って一個の音楽をつくるという経験がなかったんです。だから人間的にも成長させてもらえたし、いまはすごくいい関係だなって思えるようになりました。

「見た目は普通だけど、家ではダラダラしてて、ダイエットに成功したことない」女の子

―今回は川谷さんの歌詞についておうかがいしたいと思うのですが、まずは自分のバンドの歌詞の特徴をどのように感じていますか?

イッキュウ:ジェニーハイはわりと「絵音さん、絶対自分やったら歌わへんやん」みたいな歌詞が多いですね(笑)。もちろん真面目な曲もあるんですけど、絵音さんが自分では歌わないであろうふざけ方をしている曲が多くて。私やからこれを歌わせてくれてるのかなっていううれしさもあるんですけど、最近ふざけ度合いが増してる気がする(笑)。

それに比べると、DADARAYは全然ふざけてないですよね。シリアスというか、ちょっと昭和を感じるいい回しとか、懐かしい感じもある。メロディーもそうですけど、それをちゃんと今風にしてるから、一周回ってオシャレみたいな気持ちよさを感じます。

左から:イッキュウ、REIS

REIS:DADARAYの歌詞は湿度が高いと思っています。情念を感じるというか、主人公の女の子が基本的に——この言葉でいいかわからないけど——ちょっとメンヘラな感じ。なにかに執着したり、依存したり、恨み節をいっていたり、そういうキャラが多いと思ってて。

ジェニーハイの歌詞に出てくる女の子には、嫌なことがあっても客観的に受け止めるポジティブさがあるなと思うから、そのカラッとした感じは全然違うなって。

―たしかに、そのキャラクターの違いが音楽性ともリンクしてる感じがありますよね。イッキュウさんはジェニーハイの歌詞に出てくる女性像をどう感じていますか?

イッキュウ:いろんなキャラクターがいるとは思うんですけど、最初にパッと出てくる女性像は、やっぱりちょっとアホっぽい(笑)。だらしない描写も多いですし。完璧じゃないんだけど、それでもポジティブでいるというイメージです。

―今回事前に歌詞を3曲ずつピックアップしてもらっていて、「ジェニーハイの曲のなかから一曲」に対して、イッキュウさんは“グータラ節”を挙げてくれていますね。

ジェニーハイ“グータラ節”を聴く(Spotifyを開く

イッキュウ:グータラしてる部分って、表に出してないだけで絶対誰にでもあると思うんです。だから、この曲の子も表から見ると普通なんやろうなと思うけど、その普段隠してる部分にスポットを当てて、あえて歌にしてる。

「見た目は普通の女の子だけど、家ではめっちゃダラダラしてて、ダイエット成功したことない」みたいな(笑)、ジェニーハイはそういうキャラクターのイメージですね。“グータラ節”と“ダイエッター典子”が同時期に来たときは、「絵音さんから私どう見えてんのやろ?」って不安になりましたけど(笑)。

イッキュウ

REIS:でもジェニーハイを聴いてると、イッキュウちゃんしか歌えないなと思います。持っているオーラも、表情とか振る舞いも、曲にちゃんと合っているなって。私が歌ったら、「ふざけてるな」とか「狙ってるな」みたいになると思うんですけど、イッキュウちゃんが歌うとスッと入ってくる。「この人にはこの歌詞が合う」とか、逆に「いわなそうだからいわせてみよう」とか、そういう振り分けも川谷くんのセンスなのかなって。

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リリース情報

ジェニーハイ『ジェニースター』
ジェニーハイ
『ジェニースター』(CD)

2021年9月1日(水)発売
価格:3,300円(税込)
WPCL-13323

DADARAY『ガーラ』
DADARAY
『ガーラ』(CD)

2021年9月22日(水)発売
価格:3,300円(税込)
WPCL-13324

プロフィール

中嶋イッキュウ(なかじま いっきゅう)

ジェニーハイではボーカル、tricotではボーカルギターを務めるアーティスト。自身のアパレルブランドSUSU by Ikkyu Nakajimaではデザイナーを務める。

REIS(れいす)

休日課長(ゲスの極み乙女。)率いる3人組ユニットDADARAYのボーカリスト。DADARAYは今年9月に2ndフルアルバム「ガーラ」を発売し、2022年2月より東名阪ワンマンツアー「東名阪一番街」を開催。

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