亀田誠治が語る、松本隆トリビュートという50年間のJ-POP大全

亀田誠治が語る、松本隆トリビュートという50年間のJ-POP大全

2021/07/20
インタビュー・テキスト
柴那典
撮影:丹野雄二 編集:タナカヒロシ、CINRA.NET編集部

「演じる歌」がピュアに伝承された池田エライザ“Woman“Wの悲劇”より”

映画『Wの悲劇』(1984年)の主題歌として、主演をつとめた薬師丸ひろ子が歌った“Woman“Wの悲劇”より”。松本隆とタッグを組みヒット曲の数々を送り出してきた松任谷由実の「呉田軽穂」名義での代表曲の一つだ。先日には『ミュージックステーション』でもこの曲を歌い大きな反響を集めた池田エライザの歌声を、亀田はだいぶ前から知っていたという。

亀田:じつは、7~8年前に、とあるオーディションを通じて池田エライザさんの歌を知ってたんです。そのときにはまだ高校の制服を着てました。ギターを持って、弾き語りで歌を披露してくれた。そのときの歌が素晴らしかったんですね。しかも、そのときから「演じる歌」っていうものをすごく感じていたんです。それでオファーをしたら、エライザさんのほうから“Woman“Wの悲劇”より”がいい、ぜひこの曲を歌わせてほしいという返事をいただきました。

池田エライザ
池田エライザ

俳優として数々の映画に出演してきた池田エライザがこの曲を歌うことにも意味と文脈が込められている。

亀田:“Woman“Wの悲劇”より”は、薬師丸ひろ子さんという役者さんが歌っている曲で。当時もきっと、ユーミンのメロディーに松本さんの歌詞を乗せて、薬師丸ひろ子さんが演じるように歌ったはずで。それを受け継いで、数十年後に池田エライザさんが、エライザさんなりの演じ方で歌ってくれた。こういう表現やパフォーマンスがピュアに伝承されていくことも大事にしたかったんです。


池田エライザ“Woman“Wの悲劇”より”レコーディング映像

池田エライザ“Woman“Wの悲劇”より”を聴く(Spotifyを開く

Woman“Wの悲劇”より / 池田エライザ
作曲:呉田軽穂(オリジナルアーティスト:薬師丸ひろ子 / 1984年リリース)

Produced & Arranged by 亀田誠治
Recording & Mixing Engineer:牧野“Q”英司(Q OFFICE Co.,Ltd)
Assistant Engineer:藤倉裕美
Recording & Mixing at atelier Q

Vocal:池田エライザ
Piano:皆川真人
Bass:亀田誠治
Manipulator:豊田泰孝(誠屋)

音楽の神様はいると実感したB'zによる“セクシャルバイオレットNo.1”

桑名正博のヒット曲“セクシャルバイオレットNo.1”は、松本隆とタッグを組んで数々のヒット曲を生み出してきた筒美京平が作曲を手掛けた一曲。松本隆にとっては初めてオリコンチャートで1位を獲った曲でもある。この曲のカバーをオファーするにあたっては、亀田からB'zの二人に直接手紙を書いたという。

亀田:ぼくとB'zさんには、ここ10年近く重ねてきている関係があって。自分がやっていたラジオ番組にお二人をゲストに呼んだり、B'zさんのアルバムでレコーディングメンバーとしてぼくが呼ばれたりもしていました。音楽に対してピュアなお二人だっていうことを肌で感じていたので、ダメもとでオファーしました。普通はB'zさんぐらいの大物アーティストになると、何曲か候補を出すんです。でもそうはしなかった。「亀田です。お久しぶりです。いま、松本隆さんのトリビュートアルバムをつくっていて、ぜひB'zさんに“セクシャルバイオレットNo.1”一択で、お願いしたいと思います」と、お手紙を書きました。

B'z
B'z

松本孝弘のギターサウンドが前面にフィーチャーされたこの曲。じつは桑名正博と松本孝弘の間には深い縁があったという。

亀田:お手紙を書いた2日後くらいに、マネージャーさんから電話をいただいて「とても前向きですよ。いま、松本も稲葉も一緒にいるんで、もう打ち合わせしちゃいましょう」とお返事をいただいた。それで松本さんと話したら「じつは亀田さん、ぼく、桑名正博さんのバンドで、ツアーでギター弾いてたんですよ。だから“セクシャルバイオレットNo.1”のリードギターのフレーズ、いますぐにでも弾けるんです」と言われた。驚きました。つまり、B'z結成以前、ギタリスト・松本孝弘さんのファーストキャリアのなかでこの曲を演奏していた。稲葉さんも「この曲は大好きな曲なんで、ぼくでよかったらぜひ歌わせてください」と言う。音楽の神様っているんだなと思いました。

B'z “セクシャルバイオレットNo.1”を聴く(Spotifyを開く

セクシャルバイオレットNo.1 / B'z
作曲:筒美京平(オリジナルアーティスト:桑名正博 / 1979年リリース)

Produced & Arranged by 亀田誠治
Recording & Mixing Engineer:今井邦彦(OORONG-SHA)
Assistant Engineer:澁谷駿介(prime sound studio form)、國土祐希(Mouri Artworks Studio)
Recording at prime sound studio form
Mixing at Mouri Artworks Studio
Vocal & Guitar Recording Engineer:小林廣行(Being)
Vocal & Guitar Recording at BIRDMAN WEST

Vocal:稲葉浩志
Guitar:松本孝弘
Drums:玉田豊夢
Piano:斎藤有太
Bass:亀田誠治
Trumpet:西村浩二
Sax:山本拓夫
Trombone:村田陽一

松本隆(まつもと たかし)<br>1949年東京都生まれ。1969年に細野晴臣、大滝詠一、鈴木茂とともにロックバンド「はっぴいえんど」を結成し、ドラムと作詞を担当。解散後は作詞および音楽プロデュースを中心に活動し、1975年に太田裕美“木綿のハンカチーフ”のヒットで作詞家としての地位を確立。1979年に桑名正義“セクシャルバイオレットNo.1”で初のオリコン1位を獲得し、1981年には寺尾聰“ルビーの指環”が第23回日本レコード大賞を受賞。松田聖子の24曲連続オリコン1位のうち17曲を手掛けるなど、歌謡界で一時代を築き上げる。これまで400組を超えるアーティストに2000曲以上の詞を提供し、50曲以上がオリコン1位を記録。2017年には紫綬褒章を受章した。
松本隆(まつもと たかし)
1949年東京都生まれ。1969年に細野晴臣、大滝詠一、鈴木茂とともにロックバンド「はっぴいえんど」を結成し、ドラムと作詞を担当。解散後は作詞および音楽プロデュースを中心に活動し、1975年に太田裕美“木綿のハンカチーフ”のヒットで作詞家としての地位を確立。1979年に桑名正義“セクシャルバイオレットNo.1”で初のオリコン1位を獲得し、1981年には寺尾聰“ルビーの指環”が第23回日本レコード大賞を受賞。松田聖子の24曲連続オリコン1位のうち17曲を手掛けるなど、歌謡界で一時代を築き上げる。これまで400組を超えるアーティストに2000曲以上の詞を提供し、50曲以上がオリコン1位を記録。2017年には紫綬褒章を受章した。

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イベント情報

『松本隆トリビュートを2倍楽しむプレイリスト』

松本隆作詞活動50周年トリビュートアルバム『風街に連れてって!』を、制作総指揮をつとめた亀田誠治が全曲解説!(インタビュアー:柴那典)

松本隆作詞活動50周年トリビュートアルバム
『風街に連れてって!』

初回限定生産盤(CD+LP+豪華特典本)

2021年7月14日(水)発売
価格:11,000円(税込)
COZP-1747-8

1. 夏色のおもいで / 吉岡聖恵
2. 君は天然色 / 川崎鷹也
3. SWEET MEMORIES / 幾田りら
4. SEPTEMBER / 宮本浩次
5. Woman“Wの悲劇”より / 池田エライザ
6. セクシャルバイオレットNo.1 / B'z
7. スローなブギにしてくれ(I want you) / GLIM SPANKY
8. キャンディ / 三浦大知
9. 風の谷のナウシカ / Daoko
10. ルビーの指環 / 横山剣(クレイジーケンバンド)
11. 風をあつめて / MAYU・manaka・アサヒ(Little Glee Monster)

松本隆作詞活動50周年トリビュートアルバム
『風街に連れてって!』

通常盤(CD)

2021年7月14日(水)発売
価格:3,300円(税込)
COCP-41453

プロフィール

亀田誠治(かめだ せいじ)
亀田誠治(かめだ せいじ)

1964年生まれ。音楽プロデューサー・編曲家として数多くのヒット曲を生み出し、ベーシストとしても様々なアーティストのレコーディングやライブに参加。2004年には椎名林檎らと東京事変を結成。2005年からはBank Bandのベーシストとして『ap bank fes』に参加。2007年および2015年には日本レコード大賞で編曲賞、2021年には映画『糸』で日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞。近年はJ-POPの魅力を解説するNHK Eテレの音楽教養番組『亀田音楽専門学校』シリーズへの出演や、親子孫3世代がジャンルを超えて音楽を体験できるフリーイベント『日比谷音楽祭』の実行委員長を務めるなど、さまざまなかたちで音楽の魅力を発信している。

柴那典(しば とものり)

1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。ロッキング・オン社を経て独立。雑誌、WEB、モバイルなど各方面にて編集とライティングを担当し、音楽やサブカルチャー分野を中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手掛ける。著書に『ヒットの崩壊』(講談社)、『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)がある。

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