ジェーン・スー×堀井アナに訊く生きのびる術 戦い方は人それぞれ

ジェーン・スー×堀井アナに訊く生きのびる術 戦い方は人それぞれ

2021/07/20
インタビュー・テキスト
松井友里
撮影:大畑陽子 編集:井戸沼紀美(CINRA.NET編集部)

合言葉は「頂上で会おう」。明日を生き抜くための、それぞれの戦い方

―スーさんは放送のなかで「ストリート」という言葉をよく使われていると思うんです。たとえばエピソード25では「われわれは正論でも核心でもなく、ストリートをどうサバイブしていくかの知恵を話したいわけです」とおっしゃっていて。ここで言うところの「ストリートをサバイブする」って、綺麗ごとだけではままならない現実に対して生きのびていくための術だと解釈しているのですが、この言葉が意味するところについて詳しく伺ってみたいと思っていたんです。

スー:私が言うところの「ストリートワイズ」って、つまりは明日も生きていくために今日の落としどころを見つけることなんですよね。たまに後退することがあっても、基本的には前進していくというモットーで、屈しないでやっていく。『OVER THE SUN』だって、もともとはラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』で、堀井さんとやっていた金曜日の放送がなくなったことがきっかけで始まったんです。

終わってしまうことに対して反旗を翻したり文句を言うつもりは全然なかったけれど、そのまま「はいはい」と言っているだけだったら、私と堀井さんの番組はなくなっていた。けれども、どうやってこの結果をチャンスにできるか考えてポッドキャストを始めたらたまたまうまくいったわけですよね。

 

スー:その時々にどういう対処をするかはその人のキャラクター次第でもあるし、一概にどうしたらいいっていうのはないですけど、違和感のある現状から変化していくために、今日できることがなにかを自分で考えることが大事なんじゃないかと思います。決して不服を持ちながら体制に従順であることをよしとするのではなくて。

堀井:私自身は、真っ向から声を上げるタイプの人間ではなくて。組織のなかにいるということもあるかもしれないですけど、性格的にも直接声を上げるよりも抜け道や代替案を探して生きる人なんです。会社でいろいろなストレスがあったときにも、この場所だけじゃなく、他の場所も自分にはあるということをすごく考えます。

母からは「女は黙ってなさい」というふうに教育されてきたんですけど、一方でつねに自分が主役だと思って生きてきたんです。なにかあっても自分の目からはみんなが脇役で、私を支えてる人みたいに見えてることが多かった。だからそんなにストレスを感じなかったところはあるかもしれない。

スー:堀井さんのすごいところは、「東京は怖いところだから地元に帰ってきなさい」とか「人前で発言しちゃダメだよ」とか言われて育ったのに、東京に出てきてアナウンサーになったってことだよね。

堀井:(笑)。

堀井美香

スー:親の言うことをまったく聞いていないっていう。しかもこの人、今年会社で創設された、チャレンジをした社員のための賞をもらったそうなんです。自分では「体制におもねる昔ながらのアシスタント……」なんて言いながら、賞をもらってる! なぜ堀井さんがそれをできたのかですよね。

堀井:たぶん私は周りから、一歩引くタイプだと思われていると思うんです。たしかに表立って声をあげたりはしないんだけど、目立たないように気づかれないように、ぐぐっと居場所をつくっていく。それが私なりの処世術なんでしょうね。

スー:パブリックで話をするときに「処世」という言葉を使うと、下品とか、勇気がないとか、ずるいと思われることもあると思うんです。だけど、誰かの機嫌を取らないで生きてこられた人なんてほとんどいないんですよね。いまは、これまでそうやって機嫌を取ってきた側の人たちが、そういうことは間違っていたからみんなで正面からノーと言っていこうという機運がすごく高くて。

左から:ジェーン・スー、堀井美香

スー:正面から声をあげること自体は否定しません。でもいまそれをやったら明日クビになって食べていけない人もたくさんいるんですよね。私は、たとえ正しかったとしても、今日明日自分が実践できない正義を声高に言うのをやめようという自分のなかのルールがあって。

堀井:(激しく首を振って頷く)

スー:……堀井さん頷きすぎ! エクソシストみたいになってるから。

―(笑)。

堀井:でも本当にそう思う。

堀井美香
堀井美香

スー:私も堀井さんもサラリーマン経験が長いので、組織というものがどれだけいびつで気持ち悪いものかもわかっているし、そこでやっていかなきゃいけないときに工夫が必要だということがわかるんです。実際、そういった工夫をすることによって、声を聞いてもらえるようにもなるわけですよ。

私は「頂上で会おう」とよく言うんです。山の登り方は人それぞれだけど、われわれはわれわれで、うまくスニークインしたところでブルーシートを広げて下から人をフックアップしたいなと思いますね。

少なくとも『OVER THE SUN』は正しいことを語る場ではないけれど、みんながゲラゲラ笑って「明日も頑張るか」ってなってくれたら、こんなにありがたいことはないです。こんなかたちで人の役に立てるとは思っていなかったから。

堀井美香

―『OVER THE SUN』を聞いていると声を出して笑ってしまうことがよくあるのですが、声を出すことって単純にすごくパワーがあるなと思います。

スー:声を出すということで言うと、1人喋りでも友達と2人でもいいから、みんなポッドキャストをやったらいいですよ。タダだし、なにが跳ねるかわからないしね。

堀井:人に向けて喋り慣れている人よりも、喋る準備なんてしたことがない人の方がじつは面白いかもしれないですよね。この前息子が山岳部の人たちとリモートで命綱を結ぶ練習をしているのを傍らで聞いてたんですけど、超面白くて。ずっと聞いていたいと思った。

スー:ポッドキャストっていう概念をわかっていない人のほうが絶対に面白いよね。

堀井:両親のポッドキャストとか聞いてみたいですね。私の両親は90歳近いですけど、実家に帰るとテレビ見ながら「これどうなるの?」「オラは知らね」とかずっと言ってて、なんなのこの会話って思うんです(笑)。そういうのをポッドキャストで聞けたら面白いなあと思いますね。

スー:録ってきて出しちゃいましょうよ。

左から:ジェーン・スー、堀井美香

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サービス情報

『ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」』

ジェーン・スーとTBSアナウンサー・堀井美香による、ポッドキャスト番組。リスナーのみなさんともに語らいながら、「太陽の向こう側」を目指していきます。

『Sound Up』

音声で自身のユニークな考えや発想、ストーリーを世の中に発信するポッドキャストクリエイターを育成し、音声コンテンツの多様化を推進する目的で、ポッドキャスト番組の企画・制作・配信に関するトレーニングやサポートを提供する次世代クリエイター育成プログラム。

応募資格:
女性(性自認が女性の方を含む)
20歳以上の日本居住者
ポッドキャスター志望者(経験不問)
すべてのプログラムに一貫して参加いただける方
応募締切:2021年7月25日23時59分
費用:無料

プロフィール

ジェーン・スー

1973年、東京都出身。作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティー。『ジェーン・スー 生活は踊る』(毎週月~木曜午前11時 TBSラジオ)に出演中。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)で講談社エッセイ賞を受賞。著書に『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)、『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』(文藝春秋)、『生きるとか死ぬとか父親とか』(新潮社)、『これでもいいのだ』(中央公論新社)、『女のお悩み動物園』(小学館)など。コミック原作に『未中年~四十路から先、思い描いたことがなかったもので。~』(漫画:ナナトエリ、バンチコミックス)がある。

堀井美香(ほりい みか)

TBSアナウンサー。1972年3月22日生まれ、秋田県出身。法政大学法学部を卒業、1995年にTBS入社。これまでTBS系列の番組で多くのナレーションを担当。同局のナレーターとして圧倒的な実績を持つ。現在、TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』にレギュラー出演するほか、週1回Podcast番組『OVER THE SUN』も配信中。1男1女の母。小学生の頃からの音読経験を生かし、子育て時に「絵本の読み聞かせ」を実践。現在はTBSアナウンサーによる朗読会『A'LOUNGE(エーラウンジ)』のプロデュースを担当する。

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