ジェーン・スー×堀井アナに訊く生きのびる術 戦い方は人それぞれ

ジェーン・スー×堀井アナに訊く生きのびる術 戦い方は人それぞれ

2021/07/20
インタビュー・テキスト
松井友里
撮影:大畑陽子 編集:井戸沼紀美(CINRA.NET編集部)

「自分たちで『おばさん』を再定義するまでは、この言葉を人には渡さないぞという意地の悪さがあります」(スー)

―話し手として感じるポッドキャストならではの魅力ってどんな部分にありますか?

スー:ラジオはお肉屋さんの店先でかかっている可能性があるメディアなので、われわれの話を聞きたくもない人をぎょっとさせないように気をつけなければならないんです。けれどポッドキャストの場合は皆さん自ら聞きにいらっしゃるという判断なので、比較的フルスイングができますね。

堀井:その穴、自分ではまったんだからね? っていう(笑)。

左から:ジェーン・スー、堀井美香

スー:はまったほうもはめたほうもニヤニヤする感じね。あと『OVER THE SUN』を始めてみて意外だったのは、男性にも楽しんでくださっている方が結構いて。

今日も高校生の男の子からメールが来たんです。しかもいわゆる「おばさんは笑いものにしていい存在」というようなスタンスで絡んでくるんじゃなくて、同じ目線で楽しんでくれている。これはすごく心強いことだし、こういう人たちの声もたぶんいままで拾われてこなかったんだろうなと思います。

―「おばさんは笑いものにしていい存在」といった感覚で、「おばさん」という言葉が蔑称として使われてきた側面もあると思うのですが、あえてその言葉を使っていくことにはどういう思いがありますか?

堀井:私は「おばさん」と言われてもなんとも思わないタイプの人間なんですね。おばさんであることに誇りがあるし、なんならおばあさんに早くなりたいです。いつも先々の年齢の人を目標として、前を見て生きてきたから「おばさんのなにが悪いの」と思っています。

スー:私は自分たちで「おばさん」を再定義するまでは、この言葉を人には渡さないぞという意地の悪さがあります。仲間内で言い合うのはいいけれど、部外者が理解もせずに乗っかってきたらスルーする気まんまんですね。

でもこの番組にメールをくださる方は、自身が「おばさん」という属性じゃない人も、その呼び方に対してすごく敬意があるんだよね。だから真意が伝わっていることがすごく嬉しいです。

左から:ジェーン・スー、堀井美香

堀井:そうだね。自分の娘と同世代の方も聞いてくれているようなんですけど、「おばさん」というキーワードについては全然気にしていないみたいで。娘を見ていてもそうなんですけど、若い人たちほど世代が違う人と交わるのがすごく上手なんですよね。

スー:若い人たちはどんどん自由になっていってるよね。取り残されないようにしないと。

違う世代とつき合うときの心得「最初から仲間だと思わない」

―私はいま30代なのですが、年齢を重ねるごとに社会のなかで既得権益側になっていく側面があることをじわじわと感じていて。そうしたときに、自分とは異なる人の声に耳を傾けることがこれまで以上に大切になってくると最近切に思います。

スー:逆説的ですけど、最初から他人を仲間だと思わないことはすごく大事だと思いますね。例えば下の世代の人と接するときにも、自分が年上だから向こうは下手に出ておもねってくれるだろうという思いがあるとしたら、捨てたほうがいいと思う。

堀井:若い子たちより年かさは増しているわけじゃないですか。でも私は後輩とも対等だと思っています。それはたぶん、私の知らないことは向こうも知らないし、向こうの知らないことは私も知らないと考えているからだと思うんですよね。

スー:いま堀井さんが言いたかったのって「向こうの知らないことは自分が知っているし、自分の知らないことは向こうが知っている」ってこと? いまのだと誰もなにも知らないことになってるよ(笑)。

堀井:あ、そうそう、そういうこと(笑)。お互いにそう思えるような関係がいいなと思っています。

堀井美香

スー:でも、さっきおっしゃっていた、自分は変わらないでいたのになぜか既得権益側に入っているっていうのはまさにそうで。自分は変わらなくても時代はどんどん変わるし、新しい子たちが来て、新陳代謝が始まっていくわけじゃないですか。

それはいま50代、60代のおじさんおばさんたちも同じで、みんなかつては自分たちの価値観が最先端だったはずなんですよ。けれど、価値観を更新しないままでいればいるほど、それが通用しないのがおかしいと思ってしまうんですよね。

―ああ、かつて自分が最先端だったという感覚を手放せない。

スー:そういう人たちを「昔の考えに固執してる人」と私たちはどうしても見てしまうけれど、どちらかというとその人たちは自分にとっての最先端をキープしているつもりなわけで。

その辺りを考えながら上の世代とはつき合い、下の世代に対しては、自分がいかに価値観をアップデートしているつもりでいても、もしかしたら若いときの最先端をただ維持しているだけなのかもと、自分に対して懐疑的でいたらいいのかもしれないですね。

ジェーン・スー

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サービス情報

『ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」』

ジェーン・スーとTBSアナウンサー・堀井美香による、ポッドキャスト番組。リスナーのみなさんともに語らいながら、「太陽の向こう側」を目指していきます。

『Sound Up』

音声で自身のユニークな考えや発想、ストーリーを世の中に発信するポッドキャストクリエイターを育成し、音声コンテンツの多様化を推進する目的で、ポッドキャスト番組の企画・制作・配信に関するトレーニングやサポートを提供する次世代クリエイター育成プログラム。

応募資格:
女性(性自認が女性の方を含む)
20歳以上の日本居住者
ポッドキャスター志望者(経験不問)
すべてのプログラムに一貫して参加いただける方
応募締切:2021年7月25日23時59分
費用:無料

プロフィール

ジェーン・スー

1973年、東京都出身。作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティー。『ジェーン・スー 生活は踊る』(毎週月~木曜午前11時 TBSラジオ)に出演中。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)で講談社エッセイ賞を受賞。著書に『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)、『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』(文藝春秋)、『生きるとか死ぬとか父親とか』(新潮社)、『これでもいいのだ』(中央公論新社)、『女のお悩み動物園』(小学館)など。コミック原作に『未中年~四十路から先、思い描いたことがなかったもので。~』(漫画:ナナトエリ、バンチコミックス)がある。

堀井美香(ほりい みか)

TBSアナウンサー。1972年3月22日生まれ、秋田県出身。法政大学法学部を卒業、1995年にTBS入社。これまでTBS系列の番組で多くのナレーションを担当。同局のナレーターとして圧倒的な実績を持つ。現在、TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』にレギュラー出演するほか、週1回Podcast番組『OVER THE SUN』も配信中。1男1女の母。小学生の頃からの音読経験を生かし、子育て時に「絵本の読み聞かせ」を実践。現在はTBSアナウンサーによる朗読会『A'LOUNGE(エーラウンジ)』のプロデュースを担当する。

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