どんな音楽を、どんなふうに聴いているのか。プレイリストから、その人の素顔が垣間見えることがある。Spotifyの「メイド・フォー・ユー」コーナーには、リスナーの再生履歴やリスニング傾向、好みの似ている他のリスナーの再生履歴をもとにして、その人だけにパーソナライズされたさまざまなプレイリストが並びます。データから導かれるプレイリストだけに、そこには思いがけない発見もある。
今回、シンガーソングライターの柴田聡子とダンサー / 映像作家の吉開菜央が、お互いの「メイド・フォー・ユー」をチェックしながら対談を行った。東京芸術大学の大学院で知り合ったふたりは、それぞれ別の分野で活躍しながら、コラボレートもしてきた古くからの友人だ。柴田のK-POPアイドルへの熱い想い、吉開がダンスを始めたきっかけなど、プレイリストを通じて音楽話に花が咲いた。
じつは、Spotifyを使い始めたばかりのふたり。細やかな心遣いがお気に入り
―柴田さんも吉開さんもSpotifyを始められたばかりだとか。何かきっかけがあったんですか?
柴田:すごく現実的な話なんですけど、Spotifyでプレイリストをつくるという仕事があったんです。それで必要に駆られて(笑)。それまでは別の配信サービスを使ってたんですけど、Spotifyを試してみたらめっちゃ使いやすくて、そのまま乗り換えちゃいました。
―どういうところがよかったんですか?
柴田:曲を止めたり、変えたりするときにブツッと切れずにフェードアウトしてくれるのが気持ちよくて。
吉開:あー! わかる。
柴田:その細やかな心遣いがいいよね。あと、アーティストによっては、曲を再生しているときに背景に8秒くらいの映像(Canvas)が出てて、あれが最高! 見てて楽しいんですよ。
―ちょっとした気配りが響いたわけですね。吉開さんはどういう経緯でSpotifyを?
吉開:私は旦那さんに「めちゃくちゃいいから!」ってすすめられたんです。特におすすめ機能がかなりよいからと言われて、始めてみました。
―使ってみていかがでした?
吉開:音楽と向き合う時間が増えましたね。初めてプレイリストをつくってみたんですけど、すごく簡単にできたし、楽しかったです。
―人生初のプレイリスト! テーマは?
吉開:ゆったりした気持ちになるやつ(笑)。
柴田:いいねー!(笑)。
―ここで拝見してもいいですか?
吉開:はい。(プレイリストをみんなで見ながら)……なんか恥ずかしいですね、こうやって自分に好みを見られるのって(笑)。
柴田:プレイリストのタイトルに「ゆったり」って書いてある(笑)。
吉開が作成したプレイリスト「ゆったり」を聴く(Spotifyを開く)
吉開:私、いま、オラファー・アーナルズがすごく好きで、ここ3か月くらいずっと聴いてるんです。
柴田:どんな人?
吉開:「コンテポラリークラシック」みたいな感じ。でも、もともとはハードコアのドラムをやってた人らしいけど。
柴田:へー。
吉開:手嶌葵さんとかもよく聴くよ。「夜中にあの声を聴くと、肩こりがとれるね」って旦那さんとふたりで話してる。
柴田:めっちゃいいじゃん! フワ~ってなるもんね。
吉開:なるね! 声が好きな人が結構多い。あと弦楽器系がすごく好き。
―オラファー・アーナルズ、ビョーク、ジェイムズ・ブレイクなど、アーティスティックで洗練されたサウンドのミュージシャンが多いですね。なかでも、FKAツイッグスの曲がいちばん多い。
吉開:FKAツイッグス、大好きなんです。『cellophone』(2019年)とか『home with you』(2019年)あたりはかなり浸れますね。
―あまり知られていないアーティストもよく聴かれていますが、アーティスト情報はどこから仕入れるんですか?
吉開:最近はYouTubeが多い気がします。気になった映像をクリックしたりして。
柴田:AIの導きで。
吉開:まんまと(笑)。「これ好きだわ」って。
柴田聡子の「On Repeat」プレイリストを公開。「K-POPを聴きながら、毎日腰を振って踊るようになった」
―AI恐るべし(笑)。では、ここでSpotifyのAIがおふたりのためにつくったプレイリスト、最近よく聴いている曲を集めた「On Repeat」をチェックしてみたいと思います。果たしてどんな曲が並んでいるのか気になるところですが、まずは柴田さんから。
柴田聡子の「On Repeat」プレイリストを聴く(Spotifyを開く)
柴田:すごい、いきものがかりとか入ってる。
吉開:TWICE、よく聴くんだね。
柴田:TWICEはつい最近新曲が出てさ。みんな大人になってきたから、曲のコンセプトも大人っぽくなってきたんだけど、新曲はカクテルの名前がいっぱい出てくるの! 時代感覚がわからなくなる(笑)。すごい久しぶりに「ピニャコラーダ」とか聞いたよ。いまの女の子って「ピニャコラーダ」とか「マルガリータ」とかで喜ぶかな?(笑)
吉開:でも歌にはしやすそうだね。「ピニャコラ~ダ~♪」って。
柴田:そう! サルサっぽい振りとかも入っててさ。作詞・作曲が、J.Y. Parkさんだから、ちょっと年齢層が上でロマンのギャップがけっこうあるの。それが面白いんだよね。ミュージックビデオのセットに、でっかいカクテルグラスがあったりして(笑)。ダンスも相変わらず最高だし、音も現代風でいいし、いろんな要素が入ってて楽しいよ。
吉開:TWICEって「~~♪(鼻歌で歌ってみる)」の人だよね?
柴田:それは、BLACKPINKだと思う。
吉開:あー(笑)。
柴田:BLACKPINKはもっとグローバル仕様になってるんだよね。TWICEは個性があって、他のアイドルグループとは一線を画してる。最近はカッコイイのが流行ってるっぽいんだけどさ、TWICEは可愛いしカッコいいんだよね。ダサいとか、歌が下手とか言う人もいるけど、そんなことないし、私は大好き。
―ちょっと聴いてみましょうか?
柴田:そうだ、聴いてみて!(曲をかける)
TWICE“Alcohol-Free”を聴く(Spotifyを開く)
吉開:“Alcohol-Free”っていう曲なんだ!
柴田:私はあなたで酔っ払ってます、っていう曲なの。「あなたは私のピニャコラーダを目で飲んでるんだ」って。すごいよね。
吉開:いいね! 言われたいね(笑)。
柴田:また韓国語っていうのがね。
吉開:思った! 韓国語っていいね。……あ、いま(ボーカルが)違う人に変わったのかな?
柴田:TWICEはメンバーが9人いて、代わる代わる歌ってる。それが合唱団好きの私としては最高なのよ。
―柴田さんはK-POPをいろいろ聴かれているみたいですが、自分の音楽にフィードバックされるものってあります?
柴田:ありますね。最近、TWICEなどを聴いてよく踊ってます。坂本慎太郎さんが「腰を振って~」という曲(“好きっていう気持ち”)を出してから、ちゃんと毎日腰を振って踊ろうと思ってて。
坂本慎太郎“好きっていう気持ち”を聴く(Spotifyを開く)
吉開:えー、ほんと? 素晴らしい! 骨盤から動かすのね?
柴田:そう。そうすると変わるよね、曲づくりとか。なんかつねにノってくる感じになってさ。それが制作によく働いてる感じがして。踊るとグワっと(気持ちが)持ち上げられるんだけど、TWICEとかすごいノれるわけ。TWICEを聴いていると自然に踊れるようになる。
吉開:自分がやったことないようなセクシーな動きとか出てきたりするの?
柴田:(体をくねらせて)こういうのとか(笑)。
―ぜひ、TWICEで吉開さんに踊ってほしいですね。
柴田:ホント! 踊ってほしい!
吉開:私がすごく好きなダンサーさんの岩渕貞太さんもTWICEはいいって言ってて。韓国の一流アーティストはものすごく高度な身体の使い方をさらっとやってのけているらしい。
柴田:そうなんだ! 嬉しい。音の取り方とかもすごいんだよね。「えっ、そこ?」みたいな。
吉開:私、小さいころ本当はビヨンセになりたかったの。でも、この身体じゃなれない。
柴田:お尻とかね。
吉開:あのお尻がないと、あの重みのあるダンスはでない!
柴田:ブリンッみたいなね! 最近は録音中も気にせず踊るようになったよ。昔は、こうやって(縮こまって)聴いてたんだけど。「恥ずかしい~」とか思いながら。
吉開:私、柴っちゃんの曲はすごい身体を動かせると思っていて。
―吉開さんが監督をされた“結婚しました”のMVでも、たくさん踊っていますよね。
吉開:そうですね。ライブでもっと動いてもいいのに。
柴田:そうだよね! 私が動いてないからみんな動かないのかもしれない。自分から動かしていくわ。私、多分、50歳くらいでいちばん動けるんじゃないかな。
吉開:本当にそう! いい感じに力が抜けて。ちょっと筋肉が落ちたくらいが、酔狂ないい動きが出るよ。
柴田:歌とかもそうだよ。まだ30代だけど、全身に力を入れるのがもう無理で。抜く方向にいくしか道はないと思う。
インドネシアや南アフリカなど、世界各国のチャートをチェックする柴田
吉開:私もそう。これからは老いていく身体と向き合うしかないからね。(さらにプレイリストを見ながら)宇多田ヒカルの“One Last Kiss”が入ってるね。
柴田:『エヴァンゲリオン』観たからね。
吉開:私もそれでめっちゃ再生しちゃった! 歌詞がよかったよね。
柴田:よかった! <初めてのルーブルは/なんてことはなかったわ/私だけのモナリザ/もうとっくに出会ってたから>って歌詞で、「えーっ!」って思ったよね。
宇多田ヒカル“One Last Kiss”を聴く(Spotifyを開く)
吉開:それをああいう映像で表現できるのはめっちゃいいよね。(柴田さんのプレイリストには)歌姫たちが多いのかな?
柴田:女性ボーカルが本当に好きで。男性ってあんまり聴かないのかも。
―メジャーなアーティストが多いのも特徴ですね。
柴田:昔からそうなんですよ。そんなにマイナーなものは聴いてない。Spotifyではいろんな国のヒットチャートをよくチェックしてるんですよ。
吉開:世界各国のランキングが見れるの?
柴田:見れる見れる。インドネシアとか、南アフリカとか。
吉開:南アフリカ!?
柴田:そうそう。いろんな国のヒット曲を聴いたりすると、局地的な流行りみたいなものが垣間見えて面白い。本当にヒット曲しか聴いてないので、恥ずかしいんですけど……。
―日本のヒット曲は?
柴田:日本はあまり聴いてないです。最近、日本語が重い気がして。
吉開:私もずっとそうなの。柴っちゃんの歌詞は大好きなんだけど。柴っちゃんの曲ってすごく親しみやすいよね。すぐ覚えられるし、すぐ口ずさめる。でも、なんでこの歌詞なのだろう? なぜこの光景? みたいなところがすごくユニークだなって思います。
柴田:ありがとうございます(照)。
柴田聡子『がんばれ!メロディー』を聴く(Spotifyを開く)
吉開:ごめん、偉そうに(照)。でも。人気のある曲を聴いていたらそれに似たものをつくってしまいそうだけど、オリジナルな曲をつくれるっていうのがすごいね。
柴田:譜割りは似てきたりするけどね。
―柴田さんの場合、歌詞に強烈なオリジナリティーがありますが、さすがに歌詞がヒット曲に似てくるっていうことはない?
柴田:私の歌詞には「ルーブル」とかは出てこないですよね。
吉開:「ピニャコラーダ」とかもね(笑)。
吉開菜央の「On Repeat」プレイリストを公開。大学院時代にふたりがやっていた、イントロクイズの思い出も
―次は吉開さんの「On Repeat」を見て見ましょうか。
吉開菜央の「On Repeat」プレイリストを聴く(Spotifyを開く)
柴田:(プレイリストを見ながら)なんか、シャレてますねー。全然知らない人ばっかだよ。あ、柴田さんがいる。
吉開:柴田さんはライクしてるよ!
柴田:すみません、なんかサービスしてもらって(笑)。
吉開:あ、この人、最近見つけて好きなんです。
柴田:オーロラ? 気になる。どういう人? 聴いてもいい?
(曲を再生する)
吉開:オーロラは『アナ雪』の曲でコーラスをやっていて有名になったらしいんだけど、前からずっと音楽活動をしていて、めっちゃ踊れるの。歌いながらすごい手が動くんだよね。阿波踊りみたいに。踊りも好きだし、歌もすごく好き。
柴田:いいね。ケルトっぽいところもある! 可愛いし。
吉開:可愛いよね。多分、オーロラを聴いてた流れでオラファー(・アーナルズ)をすすめられた気がする。
柴田:じゃあ、オラファーも聴いてみよう!
(曲を再生する)
吉開:このMVもすごく好きなの。星がバーン、バーンって上がっていく。こういうのがパソコンのスクリーンセーバーだったら最高だろうなっていう感じの美しい映像で、めちゃくちゃきれい。
柴田:美しい! 吉開ちゃんはいろんなものを聴いてるね。よく見つけるね。
吉開:柴っちゃんもいろいろ聴いてるんじゃないの? ここ(プレイリスト)には出てないものを。私たち、大学院のときに一緒だったんですけど、すごかったんですよ、柴っちゃん。柴っちゃんの携帯にはいろんな曲が超たくさん入ってたんで、みんなでイントロクイズをやったんです。そのなかから私が出題したら、3秒くらいで答えるんです。
―イントロクイズ王!
柴田:そんなことやってたっけ?
吉開:その時かけたのは池田亮司(パリで活動する電子音楽、実験音楽家、現代美術作家)みたいな曲だった。
柴田:あー、私、リッチー・ホゥティン(イギリスのテクノミュージシャン)とかにハマってたから。
吉開:変なリズムで何の音が鳴ってるのかわからないような曲ばかりだけど、聴いたらすぐに「この曲!」って当てて。
柴田:あははは。やばいね。
吉開:柴っちゃんの脳みそ、どうなってるんだろうって。
柴田:当時はミニマルテクノとかサイン波とか聴いてたねえ(笑)。
―芸大! って感じですね。
柴田:そうなんですよ。アートプラットフォームの音の世界は広大なので、いろんな音を耳にして興味が広がるから、ノイズとか聴きたくなるんでしょうね。でも、「ピーピーピピ」とか1年間くらい聴いてたら具合が悪くなるんですよ(苦笑)。
吉開:でも、その頃に「松本隆の詞がいい」とか言ってたし、ユーミンとか松田聖子とかもめっちゃ聴いてたでしょ? (ノイズと歌謡曲という)まったく離れたものを聴いてて、「音楽が超詳しいな」って思ってたよ。
柴田:いやー、お恥ずかしい。
―そういうエクストリームな音楽の聴き方を抜けたところに、ピニャコラーダがあるわけですね。
吉開:そういう時期があるから、(柴田さんの音楽が)面白くなってると私は思うけどね。
柴田:いまは何でもいい感じだよ。何でも好きだもん。
「Only You」コーナーで、ふたりの好みやルーツに迫る
―Spotifyには「Only You」というコーナーもあって、リスナーの再生履歴をもとにAIがリスナーの聴き方の特徴、例えば「あなたほど電子音楽とK-POPを行き来している人はいない」とか、そういう独特の傾向をもとにプレイリストをつくってくれるそうです。今回は、「Only You」コーナーのなかでもリスナーが特徴的に聴いている2000年代の曲を集めたプレイリストを見てみましょうか。
柴田聡子の「2000s Mix」プレイリストを聴く(Spotifyを開く)
柴田:(プレイリストを見ながら)Kiroroが入ってるのは流石だなって思いますね。Kiroroはかなり好きなんですけど、Spotifyでは聴いたことはないので。
―ご主人さまの趣味を見抜いた? 柴田さんがKiroroのファンだっていうのは少し意外な感じもしますね。
柴田:曲がすごくいいんです。よく聴いてたころより、いまのほうが「すごい!」って思いますね。
吉開:『ちゅらさん』の主題歌(“Best Friend”)とか、学校の友達と替え歌を歌ってた。
柴田:そう、児童唱歌みたいな感じでも歌える清廉さがあるのに奥深いところがいいんですよ。
―吉開さんのプレイリストはどうですか?
吉開菜央の「2000s Mix」プレイリストを聴く(Spotifyを開く)
柴田:お、B'z入ってるじゃん!
吉開:本当だ。“イチブトゼンブ”が入ってる。私、いちばん最初に好きになったミュージシャンがB'zなんですよ。それも超メジャーな金と銀のアルバム(1998年発売のベスト盤『Pleasure』『Treasure』)から。
柴田:みんな持ってるやつね。
吉開:あれが好きすぎて。あれを聴いて踊り始めたんだよ。
柴田: B'zで!? すごいね。
吉開:最初は歌いたかったのよ、稲葉さんみたいにカッコよく。でも、歌ってみたら超下手くそで、マジで才能ないわって思って、歌うかわりに稲葉さんがライブでやるみたいに踊り始めたら、それはうまくできるかもって思ったんだよね。
―何歳くらいのときですか?
吉開:小学5年生くらいです。それでクラシックバレエを始めたんですけど、ちょっと遅かったですね。やってる子は3歳くらいで始めてますから。それに私、体がずんぐりしてて。
柴田:ずんぐりしてないよ!
吉開:当時、当時(笑)。でも、稲葉さんの声を初めてヘッドフォンで聴いたときは打ち震えましたね。(お腹を押さえて)ここに「きたーっ!」て感じがありました。ヘッドフォンで稲葉さんの声を聴く、ということを覚えたときは、この辺(お腹)で聴いてた気がします。欲情させられたみたいな(笑)。
柴田:あー、若いときはそういう感覚も混じるもんね。
「これからはガンガン、お気に入りを押して、Spotifyを育てよう!」(柴田)
―Spotifyは、吉開さんがB'zを好きって知ってるんですね。
吉開:『Pleasure』と『Treasure』にお気に入りをつけたんですけど、ちょっと新しいものをすすめてくれるんですね、リストの並び方も面白い。
冒頭のほうは本当によく聴いてるものが並んでいるけど、後半から「こういうのもどう?」っていう並びになってる。Tommy february6が入ってきてるのは嬉しいですね。そういえばすごく好きだったし。お気に入りをいろいろ押したから、私のことわかってきたのかもしれない。
―お気に入りはマメに押されているんですか?
吉開:電車に乗っているときとか時間があるときに、自分が好きなアーティストを思い出しては押してます。そのほうが自分の好きなものに巡り会えるんじゃないかと思って。ライクを押すことでSpotifyを育てるというか。
―「Spotifyを育てる」。たまごっちみたいでいいですね(笑)
柴田:それ、いい心がけだよ。
吉開:あと、そのアーティストに対しても「好きだよ」って言える感がちょっとあって。ただの数字にしかならないけど、お気に入りを押すことで気持ちも伝えられるのかなって。
―お気に入りで愛の告白、いいですね。柴田さんは、押してます?
柴田:たまに、ですね(笑)。
吉開:じゃあ、けっこうレアだね。本当の「お気に入り」だね。
柴田:押す前にいろいろ考えちゃうんですよ。お気に入りを押しても、向こうが私のこと好きじゃなかったら変な感じするかなとか。だからSNSでも滅多に「いいね」は押せない。でも、Spotifyは名前が出ないから気にしないで押せそう。
―そしたら、これまで以上にいい音楽を教えてくれるかもしれないですね。
吉開:私はオラファーが好きでずっと聴いているんですけど、同じような感じで別のアーティストも聴きたいと思ったとき、これまで使っていた配信サービスだと、どういうふうに探せばいいのかわからなかったんです。
柴田:わかる!
吉開:Spotifyはそういうのをわかりやすく教えてくれるんですよね。私みたいに音楽のこと詳しく知らない人間にも。この前、すすめられたマックス・リヒター(イギリスの作曲家 / ピアニスト)とかも、すごくよかった。「四季」をコンテンポラリー風にアレンジしたやつなんだけど、血湧き肉躍る感じなんだよね。
―Spotifyはおすすめ上手なんですね。インターネットでAIにすすめられる時って、ちょっとトゥーマッチなときもありますが。
吉開:ありますね。なんかゴリゴリ買わせようとするような。
柴田:Spotifyはすすめ方にいやらしさがないよね。無理やり聴かせようとしないというか。
吉開:音楽のことも、音楽家のことも、すごい好きな人がやっているような気がします。じゃなきゃ、こんな面倒な機能をつけないと思うし。昔はAIにすすめられるのって嫌だったけど、最近はそんなに拒否するものではないのかなって思ってきたところもあって。
―ちゃんとつき合えば、いい友達になってくれるかもしれないですね。
柴田:ホント、そうですね。これからはガンガン、お気に入りを押して、私もSpotifyを育てよう!
- リリース情報
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- 柴田聡子
『がんばれ!メロディー』(2LP) -
2021年6月16日発売
価格:4,950円(税込)
PLP-7120[SideA]
1. 結婚しました
2. ラッキーカラー
3. アニマルフィーリング[SideB]
1. 佐野岬
2. 涙
3. いい人[SideC]
1. すこやかさ
2. 心の中の猫
3. ワンコロメーター(ALBUM MIX)
4. 東京メロンウィーク[SideD]
1. ジョイフル・コメリ・ホーマック
2. セパタクローの奥義(ALBUM MIX)
3. 捧げます
- 柴田聡子
- プロフィール
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- 柴田聡子 (しばた さとこ)
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1986年札幌市生まれ。恩師の助言により2010年より音楽活動を開始。最新作『がんばれ!メロディー』まで、5枚のオリジナルアルバムをリリースしている。去る10月にはバンド編成「柴田聡子inFIRE」による、初のバンドライブ盤『SATOKO SHIBATA TOUR 2019 “GANBARE! MELODY” FINAL at LIQUIDROOM』をリリースした。また、2016年に上梓した初の詩集『さばーく』では現代詩の新人賞を受賞。雑誌『文學界』でコラムを連載しており、歌詞にとどまらない独特な言葉の力が注目を集めている。2017年にはNHKのドラマ『許さないという暴力について考えろ』に主人公の姉役として出演するなど、その表現は形態を選ばない。2020年7月3日、4曲入りEP『スロー・イン』をリリース。
- 吉開菜央 (よしがい なお)
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映像作家・ダンサー。生き物ならではの身体的な感覚・現象を素材に、「見て、聴く」ことに集中する時間を映画にしている。2015年に監督した映画『ほったまるびより』が文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門新人賞を受賞。近年の主な作品は『風にのるはなし』『静坐社』『みずのきれいな湖に』。いずれも国内外の映画祭や展覧会で上映されている。MVの監督・振付・出演も行い、至福の健康動画を配信する[White Leotards]のリーダーでもある。