少数派が生きづらい社会で、Doulは音楽を通じて疑問を共有する

少数派が生きづらい社会で、Doulは音楽を通じて疑問を共有する

2021/06/21
インタビュー・テキスト
木津毅
編集:久野剛士、CINRA.NET編集部

言葉では伝え切れないことがある。だから、音楽や映像で表現したい

―プライド月間に関係する話をすると、Doulさんはバイセクシュアルであることを公言して活動していらっしゃいますよね。それはご自身にとって、自然な選択だったのでしょうか。

Doul:そうですね。ただ、バイセクシュアルであることを公言したインタビューが出た前後は周りにいろいろ心配はされましたね。こっちからすると「なんでだろう?」って思うぐらい自然なことなんですけど(笑)。聞かれたときも普通に答えたので。

イシヅカユウがキュレーションした『YU's"CHAOS LOVE"SPACE』を聴く(Spotifyを開く

―それは、Doulさんの音楽表現とご自身のセクシュアリティにつながる部分があるからなのでしょうか。

Doul:そうですね。あと、一番わかりやすいのはファッションやメイクだと思うんですけど、そういったところで男物、女物の区別をまったくしてこなかったので。やっぱりそれを音楽のなかでも表現したいし、「男くさい」と言われるようなサウンドもめちゃくちゃ好きだし。かつ、そうしたジェンダーの区別をしない姿勢は、ミュージックビデオのファッションやメイクのビジュアル表現ともリンクしていて。だから自分のセクシュアリティーに関してはファンにも知ってほしかったですね。

Doulライブ写真 / Shintaro Yamanaka(Qsyum!)
Doulライブ写真 / Shintaro Yamanaka(Qsyum!)

―いま、Doulさんも含めてセクシュアルマイノリティーであることを自然に公言している新しい世代のアーティストが増えてきていて、素直にカッコいいなとぼくなんかはすごく感じるんですね。ただ、海外に比べてまだまだ日本では少ないようにも感じてもいます。いまの日本のセクシュアルマイノリティーを巡る状況について、何か感じていることや考えていることはありますか?

Doul:いまだに生きづらいと感じることはよくあります。何か生きづらいと感じることがある度に、(セクシュアルマイノリティーである)自分の立場から自分はどうすべきだろう、とよく考えますし。まだ理解がない人も世のなかにはたくさんいるし、なんなら自分の周りにもけっこういます。

そういうとき、言葉では伝わらないこともあるけど、だからこそ音楽があると思っていて。たとえば、理解がない人に、自分が男性的な表現をしているものにビデオをつけて「こういう歌詞だよ」って見せると、「いいね」って言ってくれたりするんで。その人の考えを無理に変えようとしたり、押しつけはしないんですけど、でも「こういう考え方もあるよ」っていう音楽をつくろうとはつねに考えています。

DJ korがキュレーションした『DJ kor's SPACE』を聴く(Spotifyを開く

DJ SHIKISAIがキュレーションした『DJ SHIKISAI'S PARTY SPACE』を聴く(Spotifyを開く

―言葉や議論だと反発を招く部分もあるけれど、音楽だと違ったかたちで伝わるものがありますよね。

Doul:そうですね。

―日本で、とくに窮屈に感じるところはありますか?

Doul:うーん、たとえばこの前ニュースを見ていたら、「男と女は子どもをつくらないといけない」という意見があって。海外だと男女関係なく結婚ができる国もあるし、自分の海外の友だちにもゲイカップルで結婚したり指輪を交換したりする人たちがいる。でも、日本だと男女じゃないといけないとか、人間は子どもをつくるために存在するとか、腑に落ちない義務づけがたくさんあるなと思います。自分自身も、「気持ち悪い」って言われたことがたくさんあって。たとえば女性とおつき合いするときに、「(同性とつき合うのは)気持ち悪い、なんでそんな考えになるかわからない」みたいな。

―酷いですね。ぼく自身、経験してきたことでもありますが。

Doul:その人は異性が好きだからそういう考えになるのは仕方ない部分もあると思うんですけど、日本には自分と違うものをすぐ批判したり、除け者にしたりするところがあると感じますね。もちろん日本だけじゃないと思うんですけど、やっぱり日本で18年間暮らしてきたなかで多く実感しました。

DSKE/MAYUDEPTH(MOTORPOOL)がキュレーションした『SPACE LAB MOTORPOOL』を聴く(Spotifyを開く

dj poipoi's(lower case)がキュレーションした『dj poipoi's (lower case) PARTY SPACE』を聴く(Spotifyを開く

―そういった態度って無知や無理解から来ていると思うんですが、Doulさんの表現ってそこに対しても押しつけがましくなく、かつ痛快にメッセージを伝えていますよね。ただ、これはぼくの印象ではあるんですが、Doulさんの音楽には「怒り」があると感じます。そういった、異なるものを排除しようとする態度に対する怒りですね。ご自身では、自分の表現に怒りはあると考えていますか?

Doul:怒りはありますね。全面的に怒りを押し出しているつもりはもちろんないんですけど、伝えるべきことは伝えないといけないと思うし。ラップは怒りを伝えやすい音楽的な要素だと自分は思ってます。

だから本当に世のなかに怒っているときはそういう歌詞を書いたりもするし、自分の不満が爆発しそうになったときはひたすら文章に書くみたいなこともやってるので(笑)。音楽のなかにも、もちろんそうしたものは入っています。

―Doulさんの音楽からはそうした怒りがネガティブなものではなくて、パワフルなものとして伝わってきますよね。これはぼくの勝手な想像なので違っていたら違うと言っていただきたいのですが、格闘技をされている経験も関係しているのかなと。格闘技へのアプローチが、音楽に通じるところはありますか?

Doul:もちろん、めちゃくちゃあります。

―そうなんですね!

Doul:はい、たまに気づいてくれる方が話題を振ってくれるんですけど、それがうれしくて。格闘技をしている人――運動している人でもいいんですけど――って、仮想の敵がいるし、自分が超えなきゃいけない壁や目標があるわけで。そこに向かって自分が必死でがんばらないといけないと自分でわかるんですよ。

それを音楽に変換して考えると、自分のしたい音楽を100%表現するためには、偽りのない自分の気持ちをストレートに出さないと伝わらないと思うので。しかも音楽だったら、どストレートだけじゃなくて、伝えたいことをちょっと違うかたちにして表現したり、さらに面白いこともできるじゃないですか。

DJ Sobrietyがキュレーションした『WAIFU SPACE』を聴く(Spotifyを開く

Amiide & Laura Ribeiroがキュレーションした『Amiide & Laura Ribeiro’s SPACE』を聴く(Spotifyを開く

―なるほど、そうですね。

Doul:でも目標は一緒で。セクシュアリティーのテーマについては(無理解という)敵がいるわけだし、そういうものに立ち向かうという意味では、すごく似ています。

―お話を聞いていると、音楽に対してもすごくストイックなんだなと感じますね。

Doul:そうですね、そんなタイプかもしれないです。

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プロフィール

Doul(ダウル)
Doul(ダウル)

福岡県出身。数々のヒットアーティストを輩出したSpotify「RADAR:Early Noise 2021」に選出された。2020年9月のデビュー曲”16yrs”がいきなり世界90か国以上で再生され、デビュー日に世界的プロデューサーのDiploにフォローされる。最新曲は”We Will Drive Next”。

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