たなかみさき×長田杏奈が語る 自分の価値を信じるための筋トレ

たなかみさき×長田杏奈が語る 自分の価値を信じるための筋トレ

インタビュー・テキスト
松井友里
編集:井戸沼紀美(CINRA.NET編集部)

表面的な価値に流されないために。自分の価値を信じるための「筋トレ」

―「何かをなし遂げた」というとき、SNSのフォロワー数のように数値化できる実績や、社会的な地位があることを指すのかもしれないですが、それだけでは表せない価値や魅力もあると思います。けれども表面的なデータだけでジャッジされるようなことが続くと「なし遂げていない」ことに不安になってしまいますよね。

長田:ライターでいうと、たとえフォロワー数が多くなくても素晴らしい仕事ぶりの人や最高の文章を書いてる人ってたくさんいるんですよね。その人たちはわかりやすくバズったりしないかもしれないけれど、かけがえのないことをやっているし、見ている人はちゃんといるんです。

企業の論理のなかでは通じないこともたくさんあるし、資本主義の社会では難しいかもしれないけれど、価値は数字や成果に現れるとは限らないということを信じたいですね。なんでも数字で計られてたまるか、と。


数値化したものに惑わされすぎない「自分のためのメディア」としてInstagramを保つため、長田はアクセス数が稼げるメイク情報の投稿をあえて義務化せず、自分が夢中になっている花の写真などを気の向くままに投稿しているのだという。

たなか:フォロワー数や知名度だけを見て依頼してくださる仕事って、何となくわかるんです。だから私は、そういう心ないオファーを拒否し続けることをすごく意識しています。

生活のことを考えると、ときにはやりたくない仕事も受けなきゃいけなかったりしますけど、人のことを長い目で見ていないオファーはやっぱり辛いです。


Instagramに投稿されたたなかのイラスト

たなか:あと「やらない」ってことに関連して言うと、面白くない話で笑わないことも最近意識していて。私は結構いつもへらへらしちゃうんですけど、この前、冗談で自分が少しけなされている場面で「今日は笑わないで通してみよう」と思ってやってみたら、その場にいた友達から「ごめん、言いすぎた」って電話がかかってきて。

長田:おお~。

たなか:「やらない」って決めたらちゃんと伝わるんだと思いました。「やらない」練習をしてみたり、安心できる場所でとりとめのないことを話したり、自分の好きなものを肯定してあげたり……それってどれも長田さんがよくおっしゃる「筋トレ」だよなって。私、この言葉がすごく好きで。

長田:わーい、うれしい! 自分では忘れてたけど(笑)、本当にそうだと思う。

長田の著書『美容は自尊心の筋トレ』書影。「モテるためにはこうあるべき」など、凝り固まった固定概念をストレッチするように少しずつほぐしながら、自尊心を鍛えていく「筋トレ」について綴られている。
長田の著書『美容は自尊心の筋トレ』書影。「モテるためにはこうあるべき」など、凝り固まった固定概念をストレッチするように少しずつほぐしながら、自尊心を鍛えていく「筋トレ」について綴られている。

たなか:「筋トレ」を重ねるうちに自分に価値があると思えるようになると、不当な扱いを受けたときにおかしいと思えたり、身の回りにも目を向ける余裕が出てきて、人の繊細な気持ちの機微などいろいろなことに気づけるようになるのかなと思います。

衣が大きい天ぷらよりも、素揚げのほうが素敵だよ

―「筋トレ」をすることで、社会から押し付けられた「こうあるべき」という価値観に振り回されない体幹を鍛えていけたらいいですよね。

たなか:「このよさは私にしかわからない」という自分だけの宝物みたいなものをひとつでも見つけられるといいですよね。たとえば「この人全然モテないけど私はすごく好き」とかね。多数決じゃない自分だけの基準を持っていると心強いなと思います。


「桜だけが春ではないし」というキャプションとともに投稿されたイラスト。たなかは「Instagramは完全に自分のためにやる」と決めているそう。

長田:自分の価値を信じられていないと、わかりやすい実績や数値で認めてほしくなると思うんです。たとえまだまだ努力が必要だとしても、根本のところで自分に対して「オッケーだよ」って思えていたら、それが最後の砦になって、いざというときに自分を売り渡さなくてすむんじゃないかな。

あとこれは雑談ですけど、私はプロフィールがつらつら長い人や名刺の肩書きがオラオラいかめしい人は、自分を大きく見せようとしている感じがして、あまり信用できない(笑)。

たなか:わかります、ちっちゃいならちっちゃいでいいのに! って。天ぷらとかもそんな感じですよね。

長田:天ぷら?

たなか:海老はちっちゃいのに、衣がすごい大きいみたいな(笑)。

長田:ああ~!(笑) 海老そのままの大きさでいいんやでってことですね。

―なんなら素揚げでいいよ、っていう。

長田:私が格好いいと思うのは、素揚げで登場できる人です。ポッドキャストのような奥まった部屋なら、そうやって自分のありのままの姿を肯定できるようになるまでの練習がしやすいのかなと思います。素揚げの筋トレ。

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番組情報

『長田杏奈のなんかなんかコスメ』

「美容は自尊心の筋トレ」をモットーとする美容ライターが、気になるコスメについて、口癖の「なんか」と共に紹介。ポッドキャストと連動したニュースレター「なんかなんか通信」も配信中。

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『MIDNIGHT CHIME』

東京のFMラジオ局J-WAVE(81.3FM)で毎週月曜26:00~放送中のラジオ番組。ゲストと共に恋や仕事、家族、性の話題について語りあうほか、リスナーの皆さんの悩みにたなかがイラストで答える企画も。

プロフィール

長田杏奈(おさだ あんな)

ライター。美容をメインに、フェムケアについての執筆やインタビュー記事も手がける。趣味は植物栽培。著書に『美容は自尊心の筋トレ』(Pヴァイン)、責任編集に『エトセトラ VOL.3 私の私による私のための身体』(エトセトラブックス)。

たなかみさき

1992年生まれフリーランスのイラストレーター。軽やかかつ叙情的な作品が特徴。J-WAVE『MIDNIGHT CHIME』のラジオナビゲーターとしても活動。

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