「バイラルチャート」に見る、リスナー主体のヒットの生まれ方

「バイラルチャート」に見る、リスナー主体のヒットの生まれ方

2021/03/25
テキスト
柴那典
編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

バイラルにランクインする、3つのきっかけ

では、どんな楽曲が、どんなタイミングで「バイラルチャート」上位にランクインするのか。ここ最近の推移を見ると、いくつかのキーとなる傾向が浮かび上がってくる。

1つ目は、アーティスト自身の大きなアクションによる話題性だ。最近の例をあげるならば、2月25日付チャートで1位になったDaft Punkの“One More Time”がその代表だろう。2月22日に解散を発表した彼ら。それを受け、多くの人が解散を惜しむ思いとともに曲をSNS上でシェアした。それをきっかけに新たに彼らの音楽に触れた人も多く、結果としてこの週はトップ50のうち18曲がDaft Punkの楽曲という結果となった。

Daft Punk“One More Time”を聴く(Spotifyを開く

また、悲しいことではあるが、アーティストの死を受けて沢山の人が追悼の言葉をSNSに連ねることで、その代表曲がバイラルチャートにランクインしてくることも多い。2月9日に79歳で死去したチック・コリアや、1月30日に不慮の死を遂げたSOPHIEも、その後に代表曲がバイラルチャート上位となった。

チック・コリア“Crystal Silence”を聴く(Spotifyを開く

SOPHIE“Immaterial”を聴く(Spotifyを開く

2つ目は、映画やドラマやCMとのタイアップによる話題性だ。最近の例をあげるならば、Awesome City Club“勿忘”がその代表だろう。映画『花束みたいな恋をした』のインスパイアソングとして制作されたこの曲は、予告編にも多く使用されたことで映画のヒットと共に話題が広がり、2月25日付チャートで2位に。その後も2位、3位と上位をキープしている。また、3月11日付チャートではフレンズ“NIGHT TOWN”やきのこ帝国“クロノスタシス”など、劇中で使用された楽曲もTOP50入りを果たし、SNSで感想を語りたくなる仕掛けが込められたこの映画ならでは影響の広がりを感じさせる。

Awesome City Club“勿忘”を聴く(Spotifyを開く

記録的なヒットとなった映画『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』主題歌として公開されたLiSAの“炎”も昨年11月15日付チャートで1位を獲得。また映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の公開をきっかけに、テーマソングの宇多田ヒカル“One Last Kiss”や、劇中歌でもある水前寺清子の“真実一路のマーチ”など関連楽曲が最大11曲、3月16日付けのチャートでランクインした。 他にも、Momの“あかるいみらい”など、印象的なCMソングが「バイラルチャート」上位にランクインすることもたびたびある。

LiSA“炎”を聴く(Spotifyを開く

宇多田ヒカル“One Last Kiss”を聴く(Spotifyを開く

Mom“あかるいみらい”を聴く(Spotifyを開く

そして3つ目は、TikTokのUGC(ユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツ)による自然発生的なブームだ。これに関しては、いわゆる世間一般の注目とは全く別のきっかけで話題性が発生するので、上記の2つに比べてその経緯が掴みづらい。かつ、ショートムービープラットフォームであるTikTokはいわゆるSNSと違って「どこで話題になっていたのか」が見えづらいのも特徴だ。

TikTokはアルゴリズムによるリコメンドが強力に作用する仕組みを持っている。どのアカウントをフォローしたかだけでなく、どの動画を見たか、それを最後まで見たか、途中で飛ばしたか、お気に入りをタップしたかどうかなど、ユーザーの行動履歴を秒単位で分析することで、そのユーザーへのリコメンデーションが変わってくる。一方、好リアクションを獲得した動画は投稿者のフォロワー数が少なくとも「おすすめ」として多くのユーザーにリコメンドされる。

つまり、インフルエンサーとしての個人の影響力が重視されるInstagramなどのSNSと対称的に、投稿されたショートムービーの興味喚起力や中毒性自体がバズの原動力となるのがTikTokのアルゴリズムの特性だ。瑛人やTani Yuuki、Adoなど、多くのニューカマーが無名な存在から一気にバイラルチャートを駆け上がった現象はこうして生まれたのである。

最近の例では、3月11日付のチャート1位となった和ぬか“寄り酔い”がその代表だ。リリースは昨年11月24日で、すでにTikTokでは様々なタイプの動画に楽曲が用いられている。ダンス動画をきっかけに支持を広げたボカロPのChinozo“グッバイ宣言”、3MCのヒップホップクルーBLOOM VASEの“Bluma to Lunch”も注目曲だろう。

和ぬか“寄り酔い”を聴く(Spotifyを開く

Chinozo“グッバイ宣言”を聴く(Spotifyを開く

BLOOM VASE“Bluma to Lunch”を聴く(Spotifyを開く

こうして見ていくと、今の時代の「バイラル」という言葉には、2つの意味が重なり合っていることがわかる。1つは「口コミによって話題が広がっていく」という従来の意味。そしてもう1つは「アルゴリズムによって駆動された、(いつどこでバズるものが出現するか予測できない)カオス現象的な話題の拡散」という意味だ。これは今までとは異なる、とても興味深いことが起こっていると思う。

『バイラルトップ50 - 日本』を聴く(Spotifyを開く

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