どうしたら自分を愛せるか? マカロニえんぴつ『ハッピーエンドへの期待は』が描き出した答え

どうしたら自分を愛せるか? マカロニえんぴつ『ハッピーエンドへの期待は』が描き出した答え

2022/01/12
インタビュー・テキスト
金子厚武
編集:原里実(CINRA編集部)

今年最初にして、最大級の話題を集めるであろう作品、マカロニえんぴつのメジャー1stアルバム『ハッピーエンドへの期待は』がリリースされた。昨年11月にデジタルで発表された“なんでもないよ、”が配信チャートを席巻し、年末には「日本レコード大賞」の最優秀新人賞を受賞と、結成10周年イヤーとなる2022年をこれ以上ないかたちで迎え、いよいよこの国の音楽シーンのトップへと踊り出る——そんな予感と手応えを確かに感じさせる作品だ。

今回筆者はSpotifyのオリジナルプレイリスト「Liner Voice+」ではっとりのインタビューを実施。そのなかから主にバンドの精神性に関する発言を抜粋し、なぜ彼らがいま多くのリスナーから支持されているのかを考察した。現代において、「ともに強く生きるために、何もない自分を愛する」ということがいかに重要か。そんな時代性を強く映し出した作品であるように思う。

<b>マカロニえんぴつ<br>左から:高野賢也(Ba / Cho)、はっとり(Vo / Gt)、長谷川大喜(Key / Cho)、田辺由明(Gt / Cho)</b><br>2012年、はっとりを中心に神奈川県で結成。メンバー全員音大出身の次世代ロックバンド。はっとりのエモーショナルな歌声と、キーボードの多彩な音色を組み合わせた壮大なバンドサウンドを武器に圧倒的なステージングを繰り広げる。
マカロニえんぴつ
左から:高野賢也(Ba / Cho)、はっとり(Vo / Gt)、長谷川大喜(Key / Cho)、田辺由明(Gt / Cho)

2012年、はっとりを中心に神奈川県で結成。メンバー全員音大出身の次世代ロックバンド。はっとりのエモーショナルな歌声と、キーボードの多彩な音色を組み合わせた壮大なバンドサウンドを武器に圧倒的なステージングを繰り広げる。

マカロニえんぴつ「Liner Voice+」を聴く(Spotifyを開く

「みんないまの世の中で、どこか疑いながらもハッピーエンドを望んでるんじゃないか」

マカロニえんぴつのメジャー1stアルバムは、現在公開中の映画『明け方の若者たち』の主題歌として書き下ろされた“ハッピーエンドへの期待は”の多声コーラスで幕を開ける。

映画の原作小説の作者・カツセマサヒコが、以前、「『明け方の若者たち』にエンドロールや主題歌があるなら、マカロニえんぴつの“ヤングアダルト”一択。この曲が発表されたとき、強くそう思いました」とツイートしていた。たしかに、大学生から社会人へという「人生のマジックアワー」における絶望と、その先のわずかな希望を描いた『明け方の若者たち』の物語は、“ヤングアダルト”の<ハロー、絶望 こんなはずじゃなかったかい? でもね そんなもんなのかもしれない>という歌詞と見事にリンクしている。

そして、プログレッシブな展開で季節の移ろいを描きながら、<愛してるよ、ぜんぶ足りなかった毎日>と歌う“ハッピーエンドへの期待は”は、“ヤングアダルト”のその後を描いているかのようだ。


マカロニえんぴつ“ハッピーエンドへの期待は”ミュージックビデオ

はっとり:このタイトルは作中に出てくる「ハッピーエンドは望めねえよ」っていう台詞がインスピレーション源になっていて、アルバムタイトルにした理由は、何となく文字で見たときにしっくり来たっていうのが率直な理由ではあります。ただ、きっといまのバンドの状況的にも、世間の状況的にも、どこかで疑いながらも、ハッピーエンドを望んでるんじゃないかと思ったんです。

僕らとしても「メジャー一年目」っていう不安のなかで、思うようにものごとが転がらない瞬間も多々あったんですよ。それでも負ける気はしてなかったというか、メンバーそれぞれがハッピーエンドを信じてたからこそ、上手く一年転がった気がするんです。来年(2022年)はこのアルバムがスタートになるので、さらにいい一年にしたいっていう望みも込めて、このタイトルはすごく合うんじゃないかなって。

マカロニえんぴつ『ハッピーエンドへの期待は』を聴く(Spotifyを開く

絶望と表裏一体の希望を歌う“ヤングアダルト”を収録したアルバム『hope』は、2020年4月にリリースされた。まさにコロナ禍に突入するタイミングであり、何もかもが混乱し、ライブ活動も制限されたなかにあって、それでも『hope』はジワジワと聴かれ続け、Spotiyが2021年に発表した「国内で最も再生されたアルバム」の10位にランクインするロングセラーとなった。それは文字通り『hope』という作品が多くの人にとっての希望となった証であり、それはバンド自身にとっても同じだったはずだ。

マカロニえんぴつ『hope』を聴く(Spotifyを開く

早くから「ネクストブレイク候補」と呼ばれながらも、なかなかブレイクし切れなかった季節を経て、結成10周年目で迎えた現在の状況。<どんな夜のことを思い出してしまってもね 悲しくはないのだ>という“ハッピーエンドへの期待は”の終盤のラインは、この10年で越えてきたいくつもの夜や、いくつもの絶望に想いを馳せながら、ここからまた物語が始まることを示しているように感じられる。

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リリース情報

マカロニえんぴつ『ハッピーエンドへの期待は』
マカロニえんぴつ
『ハッピーエンドへの期待は』通常版(CD)

2022年1月12日(水)発売
価格:3,300円(税込)
TFCC-86799

1. ハッピーエンドへの期待は(映画『明け方の若者たち』主題歌)
2. 生きるをする(テレビアニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』オープニング主題歌)
3. 八月の陽炎(大正製薬「コパトーン」CMソング)
4. 好きだった(はずだった)(TBS系『王様のブランチ』2021年4月~9月テーマソング)
5. メレンゲ(JR SKISKI 2020-2021 キャンペーンテーマソング)
6. はしりがき (『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』主題歌)
7. キスをしよう
8. トマソン(ブルボン「濃厚チョコブラウニー」CMソング)
9. 裸の旅人(ColemanウェブCM「灯そう」テーマソング)
10. TONTTU
11. ワルツのレター(TBS系『news23』新エンディングテーマ)
12. なんでもないよ、
13. 僕らが強く。
14. mother(テレビアニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』エンディング主題歌)

プロフィール

マカロニえんぴつ
マカロニえんぴつ

2012年はっとり(Vo / Gt)を中心に神奈川県で結成。メンバー全員音大出身の次世代ロックバンド。はっとりのエモーショナルな歌声と、キーボードの多彩な音色を組み合わせた壮大なバンドサウンドを武器に圧倒的なステージングを繰り広げる。

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