NOT WONKの精神。集団でも記号でもない、1人のあなたにむけて

NOT WONKの精神。集団でも記号でもない、1人のあなたにむけて

2021/03/24
インタビュー・テキスト
矢島大地
撮影:佐藤祐紀 編集:柏井万作(CINRA.NET編集部)

男として生きている時点で不公平に加担しているんだけど、その構造から抜け出す方法も思いつかない。

―今おっしゃったことは『dimen』の“in our time”で歌われていることにも繋がると思うんですけど、そういうことを以前よりも考えるようになったのは、きっかけがあったんですか。

加藤:個人的な話なんですけど、僕はパートナーがいた経験がほとんどなくて。それが一昨年くらいに彼女ができたんですね。で、自分とは異なる性の人と生活をともにすると、やっぱり全然違うんですよ。たとえば彼女の帰りが夜遅くなると、当然心配になるわけです。で、夜道は危ないからイヤホンをしないほうがいいよ、とか言うじゃないですか。じゃあ僕が夜の帰り道でそこまで警戒するかっていうと、そんなことはしない。それはなぜかっていうと、僕が男だからなんですよ。逆に言えば、彼女の帰り道が危険なのも男が理由なんですよね。

加藤修平

加藤:つまり、男は男であるだけでとんでもない特権を持ってしまっていると今さら実感してしまって。そのことに喰らって、考えていたのがここ最近なんです。男として生きている時点で不公平に加担しているんだけど、その構造から抜け出す方法も思いつかない。俺が悪いんだけど、どうしたらいいかわからないっていうことにモヤモヤしてしまって……答えがわからないなら「ごめんなさい、教えてください」って聞くしかないんだけど、その聞き方すら難しい。どうしたらいいかわからないけど、この構造を変えていかなければいけないと思っているのが今のところですね。

―たとえば『dimen』のジャケットにも、マニキュアをした加藤さんの手が写っています。これも、わからないことを知るための行為だったんですか。

加藤:知るというよりは、そもそも僕は「男らしい」とされているものがずっと苦手だったんですよ。男だからいっぱい食べなさいとか、男だからしゃんとしなさいとか、今考えたら意味がわからないじゃないですか。

『dimen』ジャケット
『dimen』ジャケット

―そうですね。

加藤:だからマニキュアを塗ってみることも、男性だから女性だからっていう線で語らなくていいもののひとつだと思って始めてみたんです。マニキュアもお化粧も女性のものだっていう刷り込みがあるけど、何がフィットするかなんて個人が決めることで、そもそも性差の問題じゃないんですよ。

―男らしさの刷り込みへの違和感も、それが大きかったのかもしれないですね。性別関係なく、俺のことは俺が決めるよっていう。

加藤:そうだと思います。結局、人を「ひとり」として見るかどうかっていうことに帰結するんです。「男のくせに」みたいなものを決めたのも男側で、それに伴って「女らしさ」を押し付けたのも男なんですよ。それを実感してからは、もう無視できないテーマになっていますね。

加藤修平

―それは『dimen』を作る上でも大きなテーマになっていったと思いますか。

加藤:いや、僕の頭の中とサウンドメイクは別の部屋にあるので、こういうことを歌いたいからこういうサウンドにしよう、っていうことは一切なかったと思います。なので、音を作った上で歌いたいことを合わせてみて、それでどうかっていうことでしかなかったですね。

音としての整合性を全部無視して作ってみたかった。

―では『dimen』の音楽的な面から伺うと、これまでと比べて唐突な展開が多くて、音の色彩の混ぜ方がかなりカオティックだと思うんですね。で、その飛び散り方とサウンドの自由さに快感が詰まっている作品だと思ったんですが、改めてご自身ではどういう作品だと捉えられていますか。

加藤:まさに、音としての整合性を全部無視して作ってみたかったんですよ。なんなら、ぐちゃぐちゃにしてやろうっていう気持ちだけだった(笑)。

―その衝動が何なのかを訊きたいです。

加藤:『Down The Valley』以前のNOT WONKの作品を振り返ると、ロックバンドとして、パンクバンドとして、地方出身者としてっていう像がどこかでついてしまっていた気がするんです。で、人からそう言われることによって、それが自分のキャラクターだと思い込んでいる節があったんですよ。でも、それこそ『your name』をやった理由と同じように「俺はひとりの人間なんだ」って自覚すればするほど、凝り固まったイメージから逸脱したくなったんです。それが『dimen』の音楽的な面——セオリーを無視してぐちゃぐちゃにした部分に表れている気がしますね。

加藤修平

―今日のお話は、大きく捉えると自己反省と自己問答の数年についてのものだと思うんですね。NOT WONKの理想の活動、男として生きてきたことへの自己反省、パンクとマッチョイズムの関係性への疑問。で、自己反省をすればするほど簡単な答えはないと気づいていくものだし、答えがない中でもトライし続けることがご自身にとってのパンクだとも話していただいて。そういう意味で、まずは音楽としての答えを外してNOT WONKで実験したとも言える作品だと感じたんですけど。

加藤:確かに……作っていて、このアルバムは「結果」というよりも「チュートリアル」みたいだと思いましたね。お試し版って言ったら聴いてくれた人に失礼かもしれないけど、でも、お試し版って感じなんですよね(笑)。

―でも、サウンドとしての完成度と快感は間違いなく高い。

加藤:自分で言うのもアレですけど……僕はいつの間にかカタブツみたいなイメージがついてた気がするんですよ(笑)。それこそインタビューとかでついてきたイメージだと思うんですけど。でも意外と、僕はそんなタイプじゃなくて。なのに、外からのイメージを実感するたびに、ステージで笑えなくなっていった気がして。でもそれってどうなの? って思うところがあったんですよ。

人に「孤独であれ」とか「自分らしくあれ」とか言ってるのに、当の本人が一番そうでもないんじゃねえの? って思い当たる数年だったんですよね。なので、もっと純粋に楽しさも嬉しさも表現すればいいじゃないかと。それを試すっていう意味で、今作は僕にとってチュートリアルだった気がするんです。

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リリース情報

NOT WONK『dimen』
NOT WONK
『dimen』(CD+DVD)

2021年1月27日(水)発売
価格:3,500円(税込)
CTCR-96007B

[CD]
1. spilit in the sun
2. in our time
3. slow burning
4. shell
5. get off the car
6. 200530
7. dimensions
8. interlude
9. the place where nothing’s ever born
10. your name

[DVD]
1. Boycott
2. I Won't Cry
3. Shattered
4. Down the Valley
5. slow burning
6. your name

イベント情報

『LIVE! : dimen_210502_bipolar_dup.wtf』

2021年5月2日(日)
【第一部】14:30開場 / 15:15開演
【第二部】18:00開場 / 18:45開演
会場:東京都 渋谷CLUB QUATTRO
料金:自由席4,000円(税込 / ドリンク代・送料込み) / 当日券未定

プロフィール

NOT WONK(のっと うぉんく)

2010年に結成した、苫小牧を拠点に活動する3ピース。2015年の1st AL『Laughing Nerds And A Wallflower』をリリース、タワーレコメンにピックアップされる。2017年にはRISING SUN ROCK FESTIVALにも出演(その後、18、19年と3年連続での出演を果たす)。2018年にはFUJI ROCK FESTIVAL ルーキー・ア・ゴーゴー、りんご音楽祭、全感覚祭2018に出演。同年11月には札幌ベッシー・ホールでのワンマン、翌年3月東京での初ワンマンを成功させるなど、その卓越したライブパフォーマンスで着実なステップアップを果たす。今年、コロナ禍においても、8月には渋谷WWWXにてワンマンライブ&配信イベントを敢行。9月には、Levi’s「TYPE-1 JEANS」キャンペーン映像の音楽をVo.加藤(SADFRANK)が担当する。さらに、10月27日にKT Zepp Yokohamaで開催された収録ライブに『ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2020 酔杯2 ~The Song of Apple ~』にゲストとして抜擢されるなど、スタイルを崩さずしっかりとした実績を積んでいる。

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