millennium parade常田大希は個を突き詰め、花火を打ち上げる

millennium parade常田大希は個を突き詰め、花火を打ち上げる

2021/03/08
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:西田香織 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

「パレード」を冠したプロジェクトで追求した、ハレ・祝祭の作品

―今回リリースされたmillennium paradeの1stアルバムに関して、常田大希という音楽家にとっては、どんな位置付けの作品ですか?

常田:「名刺を作ろう」っていう感じの1枚ですね。長年、自分がテーマにしてきた「多様性」というものを、音楽的にどうやって表現するのかに向き合った作品でもあるし、King Gnuをやってきたことで得た経験や感覚も入っている。集大成的な1枚だと思います。

―アルバムの全体像が見えたのはいつ頃でしたか?

常田:曲自体は何年もかけて作り溜めてきたものですけど、アルバムとしてのコンセプトを定めたのは2020年ですね。「お祭り」というものをアルバムの1つのキーにしようと思ったんです。死者との接続や、「祈り」が根源にあるものとしての祭りっていうものを、作品の題材にしようと思った。

そもそも、俺自身カジュアルにお祭りが好きっていうのもあるんですけど、そうでなくても、たとえばお葬式だって1種の祭りですよね。そういうものに宿っている空気感に昔から自分は関心があったと思うんですよね。

―実際、曲のタイトルにも「死」を連想させるモチーフが随所に出てきますよね。「死」というものの存在をアルバムの中に色濃く感じさせるのは、今作を作るに当たって必要不可欠な部分でしたか?

常田:うん、俺にとっては重要なことでした。俺はまだ28歳ですけど、年々、死との距離感が近くなってきている自覚があって。周りで亡くなってしまう人がいたりもするし。でも、死があるからこそ「今をどう生きるのか?」ということを考えるし、それによって生き方も変わってくるじゃないですか。生きるって、そういうことに気づいていくことでもあるような気がしていて。

常田大希

―常田さんなりに「祭り」というものを突き詰めていったときに、音楽作品に昇華するのはKing Gnuよりもmillennium paradeだった?

常田:やっぱりmillennium paradeは総合芸術に近い考え方をしているし、よりコンセプチュアルにアートできるのがこのプロジェクトなので。それに、やっぱり「パレード」っていう名前を付けているくらいですからね。

millennium paradeは当初から「百鬼夜行」をテーマにしてきたし、それは『千と千尋の神隠し』(宮崎駿監督 / 2001年)で神々が温泉宿に来るシーンをイメージしてきたから、millennium paradeにとって「祭り」っていうテーマは、すごく自然なもので。

―なるほど。

常田:このアルバムは、1人で、しっとりと祈るものというよりは、大勢の人たちが集まって花火を上げるような、祈るような……そういうものを作りたいなと思ったんです。

ただ、言っておくと、そもそも俺という人間は決して集団的な人間ではないんですよ。すごく個人的な人間だと思う。でも、そういう人間だからこそ、多くの人が集まるっていうことに、人一倍の強い思いを抱いているのかもしれないなと思うんですよね。

―根っこが「1人」だからこそ、誰かと祈りたいと思う?

常田:うん。きっとみんなもそうなんじゃないかなと思うんですけどね。

常田大希

―具体的に、「祭り」というものを作品として血肉化しようとしたとき、常田さんはどのようなアプローチでそれを成そうとしたのでしょうか?

常田:言っても、コンセプトに関しては音楽性よりも精神的なことが大きかったかなと思うんですけどね。でも、たとえば今回のアルバムは葬式の音で始まっているんですよ。1曲目の“Hyakki Yagyō”はよく聴くとお坊さんの声や木魚の音が入っていたり、“Bon Dance”っていう曲では盆踊りの音をイントロでサンプリングしていたりしていて。このアルバムを作るに当たって、盆踊りとか、お経とか、日本で行われてきた祀り方をリサーチしましたね。そういうところから見えてくるコミュニティ意識もあるし。

millennium parade“Hyakki Yagyō”を聴く(Spotifyを開く

millennium parade“Bon Dance”を聴く(Spotifyを開く

常田:あと、“FAMILIA”のミュージックビデオにも死者を弔う様子が出てくると思うんですけど、ああいうのも、実際にある文化から切り取っている。そもそも、黒人音楽におけるドラマーのチョップスとかも、そもそもはゴスペルにルーツがあるし、起源は神へ捧げるためだったりするじゃないですか。形はいろいろだけど、音楽って、ずっとそういう役割を担ってきたんだと思うんですよ。

―いわゆる「セカンドライン」なんかも、ニューオーリンズの伝統的な葬儀で生まれたものだったりしますよね。

常田:そうそう、葬儀のときほどご機嫌なファンクミュージックを奏でて、みんなで踊るような文化だってある。あと個人的なことだけど、18~19歳くらいの頃にインドに行ったときに、ガンジス河のほとりで毎日祭りをやっていたんですよ。そういう風景も、このアルバムを作っている中で思い出しましたね。向こうではガンジス河は聖なる川として存在していて、生まれてすぐに死んじゃった赤ちゃんの死体や牛の死体を流したりしていた。そして、その横ではタブラやシタールの楽団が演奏していたりする。

俺からしたらすごくカオスな光景ではあったんだけど、不思議とその場所に悲しみは感じなかったりして。演奏している人たちがどんな気持ちなのかは俺にはわからなかったけど……そういう自分がかつて見た光景を思い出したりもしました。

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リリース情報

millennium parade
『THE MILLENNIUM PARADE』通常盤(CD)

2021年2月10日(水)発売
価格:3,300円(税込)
BVCL-1136

1. Hyakki Yagyō
2. Fly with me(Netflix Original『攻殻機動隊 SAC_2045』主題歌)
3. Bon Dance
4. Trepanation
5. Deadbody
6. Plankton
7. lost and found(『DIOR and RIMOWA』コレクションムービーテーマ音楽)
8. matsuri no ato
9. 2992(NHKスペシャル『2030 未来への分岐点』テーマ音楽)
10. TOKYO CHAOTIC!!!
11. Philip(『adidas CASUAL Collection 2020 Fall/Winter』)
12. Fireworks and Flying Sparks
13. The Coffin
14. FAMILIA(綾野剛主演映画『ヤクザと家族 The Family』主題歌)

[Blu-ray](完全生産限定盤・初回生産限定盤のみ)
millennium parade Live 2019@新木場Studio CoastからFly with me, Slumberland, Plankton, lost and foundの4曲&ミュージックビデオを収録。

プロフィール

常田大希(つねた だいき)

バンド「King Gnu」のメンバーとして活動するほか、音楽だけでなく映像やビジュアル、空間演出などトータルなクリエイティブを行うコレクティブであるPERIMETRON及び、海外に向けた活動を志向する音楽プロジェクトmillennium paradeとして活動。2021年2月10日、millennium paradeの1stアルバム『THE MILLENNIUM PARADE』をリリースする。

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