Nulbarich×Vaundy対談 曲作りに秘められた頭脳戦

Nulbarich×Vaundy対談 曲作りに秘められた頭脳戦

インタビュー・テキスト
天野史彬
編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

音楽家は学者。研究を重ねて曲を生むVaundyの頭脳

―データの往復は、どのくらいの回数行われたんですか?

Vaundy:やり取りの回数自体は3回くらい。ただ、鈍器の投げ合いをしたようなエグい3往復でした(笑)。最終的にNulbarichの曲として仕上がったものを聴いて、「かっけえなあ」って思いましたね。「あの歪なものを、どうまとめるんだろう?」と思っていたんですけど、僕が手を入れる余地はないくらいに完成されていて。Nulbarichの「まとめ力」は、ほんとすごいなと思いました。どこまで行ってもNulbarichの色がちゃんと出てくる。僕、新曲の“LUCK”も大好きなんですけど、あの曲って、サウンドも歌い方も、これまでのNulbarichとは違うものだったと思うけど、「Nulbarich」がちゃんと聴こえてくる。そこが、Nulbarichのすごいところだなと思いました。

Nulbarich“LUCK”を聴く(Spotifyを開く

―JQさんは、共同制作を通してVaundyさんの頭の中を覗いてみて、どんなことを感じましたか?

JQ:Vaundyくんは、常にちゃんと物事を捉えてながら曲を作っているから、彼の曲には常に意図があるんです。前に、「“東京フラッシュ”みたいな曲を作ったら流行るだろうと思って作った」といっていたことがあったんですけど、「ほんとに流行っちゃってんじゃん」みたいな。その感じ、ヤベえなって思うんですよ。

Vaundy:僕は、脳みそがミーハーなんです。僕は、ミーハーであることは、アーティストにとって大事なことだと思っていて。流行るということは、いろんな人が共通して「ここがいい」と思える部分があるはずじゃないですか。音楽を作るのなら、その部分をキャッチして、自分の形に変換していけないとダメなのかなって思うんです。それで、“東京フラッシュ”(2019年)は作ったんですよね。

Vaundy“東京フラッシュ”を聴く(Spotifyを開く

Vaundy:「売れるため」の曲を作ろうと思って、日々、流れてくるレコメンドの雰囲気やリズムパターン、コード進行なんかを研究しました。そのときのリファレンスのなかに、Nulbarichもいたんです。Nulbarichの曲は、全体でスッと入ってきて、歌おうと思うといろんなフレーズが出てくるんですよね。しかも、すべてのフレーズが頭の中ですべてちゃんと再生される。そこがすごいなって思うんです。

―今のお話は、Vaundyさんの音楽家としての探求心やストイックさを非常に感じさせますよね。

Vaundy:そうは言っても、口だけなんですけどね(笑)。こうやって口にすると、「自分はこんなことを考えていたんだな」ってわかりますけど、普段からそんなに意識的ではないです。根本的に、「音楽家は学者である」と思っているんですけど、それでも、例えばn-bunaさんみたいな本当にヤバい人には適わない(笑)。

Vaundyのライブ写真 / 撮影:Takeshi Yao
Vaundyのライブ写真 / 撮影:Takeshi Yao

―ヨルシカのn-bunaさんは、今回のシングルではリミキサーとして、カップリングに参加していますね。

JQ:n-bunaくんはすごいよね。Vaundyくんもボカロが好きらしいけど、ボカロ出身の人たちって、メロディーラインをプログラミングするように捉えているじゃん?

Vaundy:そうですよね、僕はボカロはやりたくても使いこなせなかったんですけど、あの人たちって、常に波形を見ていたりするから、メロディーを視覚的に捉えているんですよ。だから、自分の作るメロディーに対する理解がすごくある。米津(玄師)さんだってそうですよね。普通に生活していたら出てこないようなサウンドだと思う。

『This Is ヨルシカ』を聴く(Spotifyを開く

JQ:そういうところで、メロの分析力とかがすごく長けている。感覚じゃなくて、データをちゃんと持ったうえで音楽を作っていて。しかも、そのうえでn-bunaくんはリリシストであり、あれだけの歌詞が出てくるっていう。改めて、相当クレバーだなと思う。

Vaundy:クレバーであり、苦悩している人ですよね。

JQ:Vaundyくんもn-bunaくんも、今回コラボしたふたりに共通して言えるのは、物事の表も裏も見ているし、ちゃんと世の中と自分のことを捉えたうえで発信している人なんだっていうことで。たとえばn-bunaくんの書く歌詞って、すごくネガティブな言葉が、曲の中ではポジティブな意味を持って響くことがある。それは、ちゃんとその言葉の裏側にあるものまで考えて歌詞を書いているからだと思うし、Vaundyくんの『strobo』(2020年)も、あれだけの振り幅のある楽曲たちをああやってパッケージングするのって、やっぱり考えていないとできないことで。今回、そういう人たちの脳みそを覗くことができたのは、僕の人生にとってかなりの財産になったと思っているんです。僕は、ここまでちゃんと物事を捉えながら曲を作ったことがないんですよ。常に「いいじゃん、これ!」っていう感覚でしか曲を作ってこなかったから。

Nulbarichのライブ写真 / 撮影:岸田哲平
Nulbarichのライブ写真 / 撮影:岸田哲平

Vaundy:そっちのほうがいいですよ! ……でも、きっと作っている過程は一緒なんじゃないかとも思うんですけどね。作っているときは、きっとみんな動物的であり、感覚的なんじゃないかと思います。僕の説明も、結局は、後付けでしかないんです。僕は後付けで説明できない曲をボツにしちゃうんですけど、それはJQさんのように「いいんじゃん」で判断できるほど、その感性がまだまだ研ぎ澄まされていないということなんですよね。JQさんって、もはや感性が社会の需要とも一致したうえで研ぎ澄まされているんだと思うんですよ。やっぱり、音色やアレンジメントを研ぎ澄ませていくのって、時間が必要じゃないですか?

JQ:そうだね。

Vaundy:作り続けて、経験を踏むことで「これがいいんだ」「これじゃダメなんだ」ということが判断できるようになると思うんですけど、僕はちゃんと編曲をし始めてまだ1~2年なので、そういうところが、まだ全然足りていない。想像することは誰でもできるし、それを形にするには技術と経験が必要だけど、僕はまだまだなんです。なので、今回“ASH“を作りながら、めちゃくちゃ勉強になりました。次は、僕がちゃんと編曲ができるようになったときに、JQさんに歌ってもらいたいです。

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リリース情報

Nulbarich
『ASH feat. Vaundy』

2020年10月28日(水)配信

1. ASH feat. Vaundy
2. ASH feat. Vaundy(n-buna from ヨルシカ Remix)

イベント情報

『Nulbarich Live Streaming 2020 (null)』

2020年12月22日(火)
開場19:30 / 開演20:00

出演:
Nulbarich
Vaundy

料金:3,500円(税込)
視聴券販売期間:11月21日(土)12:00 〜 12月28日(月)19:00

サービス情報

Spotify

・無料プラン
6000万を超える楽曲と40億以上のプレイリストすべてにアクセス・フル尺再生できます

・プレミアムプラン(月額¥980 / 学割プランは最大50%オフ)
3ヶ月間無料キャンペーン中

イベント情報

『Spotify presents Tokyo Super Hits Live 2020』

2020年11月26日(木)20:00からStreaming+で生配信

出演:

Perfume
End of the World
[Alexandros]
ビッケブランカ
Vaundy
マカロニえんぴつ

料金:3,500円

プロフィール

Nulbarich
Nulbarich(なるばりっち)

シンガーソングライターのJQがトータルプロデュースするバンド。ソウル、ファンク、アシッドジャズなどをベースにした音楽性が特徴で、メンバーは固定されず、そのときどきに応じてさまざまな演奏形態に変化する。2016年6月にタワーレコードおよびライブ会場限定の1stシングル「Hometown」、10月には1stフルアルバム「Guess Who?」をリリース。その後は積極的なライブ活動を行いながら、「H.O.T」「Blank Envelope」の2枚のアルバムを発表した。2019年11月にミニアルバム「2ND GALAXY」をリリース。12月にはバンド史上最大キャパとなる埼玉・さいたまスーパーアリーナでワンマンライブ「Nulbarich ONE MAN LIVE -A STORY-」を開催する。2020年10月にはVaundyとのコラボ曲「ASH feat. Vaundy」を配信リリース。カップリングのリミックスは、ヨルシカのn-bunaが手がけた。

Vaundy
Vaundy(ばうんでぃー)

作詞作曲からアレンジまでを自身で担当し、アートワークのデザインや映像もセルフプロデュースする20歳のマルチアーティスト。2019年秋頃からYouTubeに楽曲を投稿し始め、「東京フラッシュ」「不可幸力」のYouTubeでの再生回数が1500万回を突破するなどSNSを中心に話題を集める。2020年5月に、Spotify Premium のテレビCMソング「不可幸力」やFODオリジナルドラマ「東京ラブストーリー」の主題歌「灯火」などを収めた1stアルバム「strobo」を発表。10月には東京・Zepp Haneda(TOKYO)にて自身2度目となるワンマンライブを開催した。そのほかラウヴのグローバルリミックスアルバム「~how I'm feeling~(the extras)」に参加するなど、日本のみならず海外に向けての活動も積極的に行っている。11月3日には初のアナログ盤「strobo+」をリリース。

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