『カウボーイビバップ』のサントラと、優れた音楽演出

『カウボーイビバップ』のサントラと、優れた音楽演出

テキスト
小室敬幸
編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

毎週放送のアニメで実現した、奇跡とも言える緻密な音楽演出

巧みな音楽演出と共に最も大事なポイントとなるのが、『カウボーイビバップ』は音楽的要素の強いアニメーションでありながら――いや、音楽を大事にしているからこそ、音楽が流れない場面が非常に多い作品でもあるということ。各話の中で音楽が全編流れっぱなしということは決してなく、メリハリの付け方が手練である。その極致に位置するのが(制作の経緯が特殊とはいえ)第11話の「闇夜のヘヴィ・ロック」である。効果音的な音楽を除けば、まともに音楽が流れるのは終盤の“花のワルツ”(ピョートル・チャイコフスキー作曲)のみ。これは、同じく宇宙空間にワルツ“美しき青きドナウ”(ヨハン・シュトラウス作曲)を流した映画『2001年宇宙の旅』(スタンリー・キューブリック / 1968年)のパロディでもあるのだろう。

そして第1話の中で、既に最終回へとむけた伏線が張られているのも見逃せない。終盤に流れた“ROAD TO THE WEST”は第25話「ザ・リアル・フォークブルース(前編)」において物語の最終局面へと物語が転じる場面でも登場する。こうすることでスパイクにとって、第1話のアシモフが自分の異なる可能性であったことが示される。そして冒頭に流れた“MEMORY”は第25話「ザ・リアル・フォークブルース(前編)」と第26話(最終回)「ザ・リアル・フォークブルース(後編)」を繋ぐ楽曲となる。そしてこの最終話では、エンディングテーマ“THE REAL FOLK BLUES”の歌詞で歌われていたのはスパイク自身であったことが明かされ、最終決戦へとむかうシーンで流されるのだ。

映画と異なり、毎週放映されるドラマやアニメは制作の都合上、ここまで徹底した音楽演出は難しいはずなのだが、渡辺と菅野の密なコラボレーションにより、奇跡的な作品が生まれてしまった。先月末から音楽ストリーミングサービスでサウンドトラックが配信開始されているので、是非音楽を聴き込んだ上で、初見の方も久しぶりという方にも、音楽アニメの最高峰『カウボーイビバップ』を楽しんでいただきたい。

『「COWBOY BEBOP Knockin'on heaven's door」Original Soundtrack FUTURE BLUES』を聴く(Spotifyを開く

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リリース情報

『COWBOY BEBOP-カウボーイビバップ-』プレイリスト

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