海外のチャートをラッパーやR&Bシンガーが制するようになり、「バンドは終わった」といわれ始めてからしばらく経った。その言葉は正しくもあり、間違っているようにも思うが、少なくとも日本においては当てはまらず、ロックフェスの盛況に裏打ちされるように、バンドが高い人気を維持し続けてきた。
それ自体はいまも変わりないが、コロナ禍の2020年から状況は少し変わり始めたといえる。ボカロ出身のクリエイターがJ-POPシーンのど真んなかで活躍するようになり、TikTokで注目を集めたシンガーソングライターがバズを起こす一方、ライブを主戦場としてきたバンドは勢いを失った感も否めない。
そんななかにあって、新たな価値観を持ったうえで、あくまで「バンド」としてシーンに浮上してきたのがNEEとPEOPLE 1だ。メンバー4人の演奏を軸にしつつ、フロントマンのくぅはボカロPとしての顔も持つエキゾチックロックバンドのNEEと、デジタルでの楽曲配信からキャリアをスタートさせ、生演奏と打ち込みを自在に横断するPEOPLE 1。それぞれ現代の音楽シーンに目配せもしつつ、「バンド」を選び取り、熱狂を起こそうとしているように感じられる。NEEのくぅとPEOPLE 1のDeuを迎え、「現代においてバンドで活動することの意味」を語り合ってもらった。
「バンドをやるためにヒッチハイクで広島から上京しました」(NEE・くぅ)
―まずはそれぞれのバンドの結成の経緯についておうかがいしたいです。NEEはいかがですか?
くぅ:ぼくは広島出身で、学生のときから音楽にハマったんですけど、バンドをやろうと思っても地元にはほとんどコピーバンドしかいなくて、つまらないなと思っていて。もっと音楽に詳しい人、演奏が上手い人と一緒にバンドをやりたいと思って、ヒッチハイクで上京したんです。
最初は友達も知り合いも全然いなかったので、ネット掲示板を使ったり、ライブハウスでビラを配ったりしてメンバーを募集したところ、最初にドラムの大樹が連絡をくれて。それから二人でスタジオに入るようになり、その後にかほちゃん(Ba)と夕日(Gt)と出会いました。
―バンドを組むために上京してきたんですね。
くぅ:そうです。メンバーみんな上手かったので、最初は一緒に演奏するだけで楽しくて、2年くらいが過ぎて。でも、「やるならリリースしようよ」という話になり、2019年に“歩く花”のミュージックビデオをつくったあたりから、ちゃんと売れるためにはどうすればいいかを考えながらやっていこうとなりました。
―くぅさんにとって、「音楽をやる=バンドをやる」だったわけですか?
くぅ:そうですね。ぼくが音楽を始めたいと思ったのは、indigo jam unitっていうインストバンドのライブを見て印象的だったことがきっかけなので、バンド以外の選択肢はなかったです。ずっと一番好きなのはRADWIMPSで、やっぱりバンドですね。
「最初から『売れるバンドを組もう』と思って結成しました」(PEOPLE 1・Deu)
―では、PEOPLE 1の結成の経緯について教えてください。
Deu:PEOPLE 1は最初から「売れるバンドを組もう」と思って結成しました。大学の後輩で、歌の上手いItoくん(Vo,Gt)と、大学の同期で、暇そうにしてたTakeuchiくん(Dr)を半ば無理やり誘いました。「お前たちはPEOPLE 1だ」「別にいいけど」みたいな(笑)。
―NEEはもともとライブハウスで活動していたのに対して、PEOPLE 1はデジタルで楽曲を発表することからスタートして、初ライブではメンバー三人に加えて、サポートメンバーを二人迎えていました。
Deu:カテゴライズするなら、「バンドプロジェクト」かもしれないですね。曲はほとんどぼく一人でつくっていて、特に最初の頃はメンバーのこととかライブのことはまったく度外視してました。
「『バンド』と銘打っておいてバンドじゃない」というのが面白いと思って、配信での1stシングル“フロップニク”(2020年)の時点でもう打ち込みですし。むしろそこがアイデンティティーというか、「バンド」という概念で遊ぶ、みたいな。
PEOPLE 1“フロップニク”を聴く(Spotifyを開く)
―たとえば、ケヴィン・パーカーのソロプロジェクトであるTame Impalaもライブではバンド編成になるわけですけど、ああいうのに近いイメージだったわけですか?
Deu:ぼく的にはGorillazとかがもともとのイメージだった気がします。デーモン・アルバーンが中心にいて、曲ごとに雰囲気が変わって、みたいな。趣味でいうと、シンプルなバンド音楽、ロックが好きなんですけどね。
Gorillazは、音楽面を担当するBlurのデーモン・アルバーンと、キャラクターデザインを担当する漫画家のジェイミー・ヒューレットによる覆面音楽ユニット。Gorillazの最新作『Meanwhile EP』を聴く(Spotifyを開く)
―THE BLUE HEARTSとかandymoriがお好きだそうですね。
Deu:そうです。でも、ぼくはPEOPLE 1を始めるまで大学の友達以外で音楽の知り合いが一人もいなかったので、これ以外に術がなかったんですよ。でも、一人でやっても売れないと思った。だからまず歌の上手いItoくんに歌ってもらおうと思って、「二人組」のイメージは湧かなかったからバンドにしたっていうのはありますね。
こむぎこ2000、coalowl……注目を集めるきっかけになったイラストレーターとのコラボレーション
―お互いのバンドに対する印象をおうかがいしたいです。
くぅ:初めて聴いたのが“フロップニク”でした。自分の好きなORANGE RANGEの雰囲気を感じて、いいなと。最初はバンドじゃないと思ったんですけど、「バンド」と書いてあって、「こういう曲をバンドでやる人がいるんだ」って、結構衝撃でした。
そのあとに“常夜燈”を聴いて、「この振り幅なに? やばい」と思いましたね。しかも、対バンをしたら、NEEは同期演奏(打ち込みに重ねて生演奏すること)を多用してるんですけど、PEOPLE 1は生でクオリティー高く演奏してるから、「客席で見てえ」って思いました(笑)。
―ライブでは同期を使わずに人力で演奏する、というのはこだわりですか?
Deu:アナログな感じは好きですね。Red Hot Chili Peppersとかも好きですし。曲は曲、ライブはライブなので、ライブというもののよさにフォーカスして曲を再構築すると、ああなるというか。ライブではその曲の一番わかりやすい部分をブーストしたいので、エモいやつはよりエモく、サイケなのはよりサイケにって考えた結果です。
―DeuさんはNEEにどんな印象を持っていますか?
Deu:“歩く花”が出たときにはリアルタイムで聴いてました。
くぅ:えー!
Deu:そのときはまだNEEという名前をちゃんと認識してたわけではないんですけど、それから少し経って、“不革命前夜”のミュージックビデオが出て。
Deu:ぼくらもそのころcoalowlというイラストレーターとタッグを組んで、“フロップニク”や“常夜燈”のミュージックビデオを一緒につくってたんですけど、こむぎこ2000さん(“不革命前夜”の映像を担当したアニメーター / イラストレーター)のことも気になっていて。
くぅ:ぼくらのミュージックビデオの前には、ルワンの“ジャイアントキリング”とかも出てましたね。
Deu:SNSのフォロワーもすごく多いし、しかも若いらしいと聞いて。“常夜燈”のミュージックビデオは総合芸術のつもりでつくって、いいものができたと思ったんですけど、その次の月にNEEとこむぎこ2000というのは、すごい組み合わせが出てきたなと思いました。
「幼稚園のときから、親の子守歌よりもRADWIMPSを聴いてました」(くぅ)
―NEEの音楽性に関してはどう感じていますか?
Deu:最近“怪獣”っていう曲を出したんですけど、それをつくってるときは……邪魔でした(笑)。
―邪魔?
Deu:すぐNEEみたいになっちゃうんですよ。NEEはかっこいい系に関しては無敵なので、大きな障害物でした。
くぅ:うれしい(笑)。
PEOPLE 1“怪獣”を聴く(Spotifyを開く)
―じゃあ、「どうやってNEEを超えるか」みたいなことも考えた?
Deu:ぼくの基本スタンスとしては、戦わないんです。誰かとバッティングしたら逃げて違うフィールドに行くっていう考え方で、「NEEじゃなさってなんだろう?」と発想しました。でもRADWIMPSが好きだっていうのは超わかる。
くぅ:RADWIMPSは幼稚園のときから親の車で延々と聴いていたので、親の子守歌よりRADWIMPSを聴いてましたね(笑)。
―RADWIMPSもまさにバンドで、生演奏のかっこよさがありつつ、音楽的にはハイブリッドでもありますよね。
くぅ:魅力は無限にありますよね。あの人たちも曲の振り幅がすごくて、みんな技術も高いし見せ方も上手い。それこそレッチリみたいに、ほぼギター、ベース、ドラムだけで聴かせたりもするし、かと思えば同期を駆使した音源も出すし、バラードもいい曲を書くし。
Deu:最近RADWIMPSめっちゃ研究したんだけど、RADWIMPSみたいな曲をつくろうと思ったら、NEEになったもん(笑)。
くぅ:あははははは。RADWIMPSはずっとリスペクトしてますね。
メンバーの勘違いや間違いから、曲が面白い方向に転がるバンドの魅力
―PEOPLE 1はDeuさんがほぼ一人で曲をつくるとのことでしたが、NEEの曲づくりはどうなのでしょうか?
くぅ:ぼくもほとんどDTMで、(音楽制作ソフトの)Logicを使ってデモをフルで完成させて、それをメンバーに投げます。そのときに「このフレーズは絶対弾いてほしい」というのは伝えるんですけど、それ以外はお任せします。やっぱり生演奏になると印象が全然変わるので、それが入ってやっとNEEになるという感じですね。
―PEOPLE 1も他のメンバーがアレンジに関与しているのでしょうか?
Deu:少しずつ他の人のエッセンスも入りつつあるけど、基本的には一人で完パケしちゃうことが多いですね。でも、“常夜燈”のTakeuchiくんはぼくがつくったフレーズどおりに叩いてないです。あの人は耳コピ力が低くて(笑)、“イマジネーションは尽きない”って曲も、デモはスネア2発だったのが、1発になってたりして。
―そうやって勘違いも含めて曲が面白い方向に転がることがバンドの魅力でもありますよね。
Deu:「バンド」を名乗っている以上、完璧にやってくれとは思ってなくて、よかったらそのままにしてます。
くぅ:自分は完璧主義なので、もしスネアが1発抜けてたりしたら、「入ってないんだけど」って言うと思う。でも、自分の「これがかっこいい」と、メンバーの「こうしたほうがいい」がぶつかることもあって、そういうときに試しもしないで進めるのはよくないなって、1stアルバムのレコーディングくらいから思ってきました。
NEE『NEE』を聴く(Spotifyを開く)
くぅ:メンバーがデモとは違うフレーズを弾いているのに対して、自分のほうのギターを変えてみたら、それでかっこよくなったりとかもあって。やっぱりそういうほうが「バンドらしさ」が出るのかなと思いましたね。
「単純にメンバー四人で積み上げてきたものを見せるのがかっこいいのかなって」(くぅ)
―ここまで話して、「バンド」と一言でいっても当然それぞれのカラーがあることがわかりますが、でもやっぱり最近は「バンドに元気がない」といわれることが多くなった印象があります。特に2020年以降、ライブ活動が難しくなったなかで、注目を集めたのはボカロ出身のアーティストや、TikTok発のシンガーソングライターだったりする。そんな状況をどのように感じていますか?
くぅ:それは正直めちゃめちゃ感じてて、いまはバンドにとって試練の時期だと思うんですけど、いまは進化の途中だから、これを乗り越えた先で、また新しいことができると思うんですよね。これでバンドが終わるっていうことは絶対にないから、いまの状況に対してぼくたちバンドマンがどう対応して、どう進化するのかが重要だと思います。そこで終わるようならそこまでだと思うし。
Deu:印象としては、「売れるか売れないか」の当落線上にいる人たちが、一番困っているんじゃないかと思いますね。でも、実際ライトな音楽リスナーは、「バンドかどうか」ってそんなに気にしてないと思う。ぼくたちに関しては、そもそもコロナ禍のなかで始まったようなバンドでもあるので、あまり影響はないかもしれないです。
―お二人ともDTMで曲をつくるとのことですが、一人でも制作が完結できるようになったなかで、バンドだと制作をするにもライブをするにもいろんな意味でカロリーが高いのは事実だと思います。そのメリットやデメリットに関してはどう感じていますか?
くぅ:ぼくは単純にメンバー四人で積み上げてきたものを見せるのがかっこいいのかなって。もちろん、バンドで活動していると、脱退だったり、メンバーチェンジだったりもあるけど、そういうのも込みで「バンド」だと思っていて。
―ストーリーも含めてバンドというか。
くぅ:ファンの人たちも、曲が好きなのはもちろん、やっぱりメンバー同士の関係性とかも見てると思うんですよね。そういう部分も込みで応援したくなってくれるんじゃないかと思います。
創作の根源でありつつ、暴走させすぎも禁物。自分のなかの「怪獣」との向き合い方
―NEEはメンバー四人のキャラも立っているし、キャリアを重ねるなかで一人ひとりがどう変化して、さらにバンドとしてどう変化するかを見られるのは楽しみです。
くぅ:このなかの誰が欠けてもNEEではなくなる気がします。もし変わるんだったら、改名したほうがいいと思う。もちろん大変なこともあるんですけど、それを楽しめる人間で良かったなって、自分ではそう思ってます。
―もともとくぅさんは広島時代に周りに一緒に音を出す人がいなくて、それを求めて東京に来たことからストーリーが始まっていて。人と一緒に音楽を奏でることがいまもエネルギーになってるだろうから、やっぱりバンドであることが必然というか。
くぅ:バンドメンバー四人もそうですけど、ぼくはNEEに関わってくれる人みんなを大事にしたいと思っていて。PAさん、照明さん、イベントを企画してくれる方、そういう人たちをぼくは「スタッフ」とは呼びたくなくて、その人たちのことも「メンバー」と呼びたい。そういう気持ちじゃないとやってて楽しくないと思うから。
だからこそ、横柄な態度をとってみんながどこかに行っちゃうようなことにならないように、マジで気をつけてます(笑)。いつかそうなっちゃうんじゃないかって、どこかに恐怖心があるので。
Deu:わかる。「怪獣」になっちゃうんじゃないかなって。
くぅ:あはは。でも本当に、バンドはそこが一番デリケートというか。
Deu:でも創作の根源はその「怪獣」が牛耳ってたりもして、だから難しいよね。
くぅ:ぼくもDeuさんも曲をつくる中心ではあるから、どれだけ一緒にやってくれる人を大切にできるかが大事だと思います。ぼく一人目立っても、それはNEEではなくなるというか……こう考えてる時点で自分なんなんだ? とも思うけど(笑)。
Deu:いい曲書いて、自分で歌って、そのうえで周りにめっちゃ気を使える人なんてなかなかいないだろうなって思っちゃう(笑)。
「バンドって意外と、いろんなものをシェアしあういまの時代っぽいんじゃないか」(Deu)
―でもさっきくぅさんが話してくれた「ストーリー」と同じで、ファンの人たちはそうやって自分のなかの怪獣と向き合ったり、そのうえでメンバーとも向き合ったりして生まれてくる創作に魅力を感じて、ついてきてくれる部分もあるでしょうからね。
Deu:ストーリーということでいうと、一人のストーリーだと、心のなかの外からは見えないところでいろんなことが起こる。でも複数人だと、人間関係のなかでそのストーリーが見えやすくなるので、そこはバンドのメリットだといういい方もできるんじゃないかなって。
―たしかに。
Deu:「こうじゃなきゃいけない」みたいな固定観念を取り除くと、バンドは意外とメリットが多いんじゃないかと思います。一人で責任を負わなくてもいいし、別のボーカルを立てることもできるし、ライブとかフィジカルの部分でも勝手のわかった人たちがやってくれるわけで、むしろ、いろんなものをシェアしあういまの時代っぽいんじゃないかとすら思ったりもして。海外だとコライト(共同制作)が増えてるのもそうだし、結局よりグループ的になってるわけじゃないですか?
―ソロアーティストであっても、たくさんの人が関わっているケースが多いですね。
Deu:バンドサウンドさえ保たれていれば、極端な話それはもう「バンド」というか。マシン・ガン・ケリーの曲でヤングブラッドがベースを弾いているのとか、オリヴィア・ロドリゴの“good 4 u”だって、「一時的なバンド」みたいな見方もできるし。
Deu:バンドはみんなで曲をつくらないといけないとか、DTMはやらないとか、なんとなくの「バンドっぽさ」のイメージを一回全部疑ってみると、じつはメリット多いんじゃないかなって。
―「バンド」という言葉をどう捉えるか。その時点でその人の表現が始まっているということかもしれない。
Deu:いい方とか見方の角度の話なのかなって。だから、いったもん勝ちですよ(笑)。
―ちなみに、PEOPLE 1の1stアルバムには、最後に“バンド”という曲が入っていて。音楽的にも一番ストレートに「バンド」の音ですが、この曲を最後に入れた理由を教えてください。
Deu:そうですね……バランスかもしれないです。PEOPLE 1が表現してるものって、めちゃめちゃ「ぼく」なんですよ。ぼくの考えてることとか哲学を全員でやっているっていう、ある意味めっちゃ独りよがりなんです。でも、「バンド」として始めた以上、そこにちゃんと向き合わないと、それこそストーリーとして美しくないと思ったんですよね。こういう曲をつくっておくと、のちのちエモくなりそうだし(笑)。
「『常識』を壊したら『非常識』になる。ぼくは新しいものは『非常識』から生まれると思う」(くぅ)
―そもそもDeuさんがTHE BLUE HEARTSやandymoriのようなシンプルな編成のバンドに惹かれる理由はどんな部分なんですか?
Deu:そこはホントに趣味というか、好みというか……音感がないので、きれいすぎる音程のものを聴いても「自分のもの」じゃない感じがするんです。ぼくは楽器も歌も上手くなくて、いまガラガラの声質で歌ってますけど、これは練習して身につけたものだったりして、「歌の上手さ」とかにはあまり惹かれてこなかったんですね。
スポーツもできないから、上手い下手、速い遅いみたいな、そういう価値観がそもそも人より希薄で、エモいかエモくないかとか、そういうほうが好みなんですよ。
―DTMで端正につくろうと思えばつくれるけど、それをバンドで表現する理由として、NEEも近いものがあるかもしれないですね。
くぅ:自分がDTMでつくったデモをバンドで演奏したらどうなるか、いってみれば、ぼくがつくり上げたものを一回バンドで壊して、そこからなにができるかにワクワクするっていうのはあります。もともと小さい頃から物を壊すのが好きで、自分でつくったプラモデルを2階から落としたりしてたんですよ。
Deu:お母さん泣いてるよ(笑)。
くぅ:親からは「破壊神」って呼ばれてました(笑)。そういうもともと持っているものが、いまは音楽に出てるのかもしれないです。壊すことによって、世界にひとつしかないものになるわけじゃないですか? それをNEEでもやりたいのかなって。
―破壊と創造はセットだったりしますからね。そして、それをやるにはバンドが適していると。
くぅ:壊す前は「常識」なんですけど、壊したら「非常識」になる。ぼくは、新しいものが生まれるのは「非常識」からだと思うんです。すでにある概念を壊して、新しいものをつくり出す。ぼくが無意識的にNEEでやりたいと思ってるのは、そういうことかなって。
「PEOPLE 1は1から10までカウンターしか打ってない。現代で『ロック』を突き詰めるとぼくらみたいになる気がします」(Deu)
―最後に来年以降の話もできればと思います。少しずつライブができるようになってきたなか、「ロックフェスのトリを目指す」というような2010年代的な価値観がこの後も継続していくのか、それとも新しいなにかが始まるのか、どんな風に考えていますか?
Deu:「ロックフェスでトリをやりたい」みたいに思って始める人は少なくなりそうですよね。もっとシンプルに、「好きだからやりたい」っていうだけの、ゴーイングマイウェイな人が増えるんじゃないかなって。ただ自分が自分でいたいだけというか、自分の世界観をどう表現するかっていう方向に行く気がしますね。
くぅ:「ロックバンド」に関しては、この先の音楽シーンがどうとかは正直どうでもよくて、この先どうなろうが、俺はただロックをやりたい、それだけだと思います。この先もバンド文化が廃れることはないと思いますしね。
―それぞれバンドとして、達成したい野心はあったりしますか?
くぅ:ぼくは前から「さいたまスーパーアリーナでワンマンをやりたい」って思ってます。
Deu:うーん……ぼくは「好きにやりたい」の筆頭で、制限とか束縛、不自由な状況に非常に弱いタイプなので、特になにも起こらないまま終われと思ってます。
くぅ:ロックだなあ。
Deu:現代において「ロック」を突き詰めると、ぼくらみたいになる気がします。PEOPLE 1は1から10までカウンターしか打ってないです。人と同じことをやりたくない人が、真面目にやるとこうなる。これが最新のロックバンドのかたちです(笑)。
- リリース情報
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- NEE
『NEE』(CD) -
2021年9月1日(水)発売
価格:2,970円(税込)
VICL-65546
- PEOPLE 1
『PEOPLE』(CD) -
2021年11月24日(水)発売
価格:3,080円(税込)
POLY-0006
- NEE
- プロフィール
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- NEE (にー)
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東京のどこかで結成。エキゾチックロックバンド「NEE」。2021年ビクター / Getting Betterよりメジャーデビュー。貴方も理解できない歌をその耳に焼き付けてハロー。
- PEOPLE 1 (ぴーぷるわん)
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東京を拠点に活動する音楽家Deu(Vo, G, B, Other)が、Takeuchi(Dr)、Ito(Vo, G)と共に結成したバンド「PEOPLE 1(ぴーぷるわん)」。2019年12月、1st EP『大衆音楽』の発表と同時に活動を開始。2020年9月には、2nd EP『GANG AGE』を発表。Deuが手掛けるジャンル横断的かつ文学的な楽曲と、独創的な世界観を表現したミュージックビデオ / アートワークは、「中毒性がある / エモい / オシャレでどこか懐かしい」とインターネット上で話題を集め、2021年10月時点でYouTubeで公開されたミュージックビデオの総再生回数は1,600万回、コメント数は10,000件を超えている。2021年4月28日に3rd EP『Something Sweet,Something Excellent』、同年11月24日には1stフルアルバム『PEOPLE』をリリース。