崎山蒼志と長谷川白紙のメール問答 交感する戯れのような言葉たち

崎山蒼志と長谷川白紙のメール問答 交感する戯れのような言葉たち

編集
山元翔一(CINRA.NET編集部)

s.h.i.から長谷川白紙に宛てた個別の質問――「いたずら心やエンターテインメント精神のようなものを明確に意識されていますか?」

s.h.i.:母音や子音のうち、日本語のそれに限らず特に好きなものはありますか?

長谷川:特に好きなものと言われるとないです。

s.h.i.:長谷川さんは間奏において管楽器の音を模した声のソロを披露されることがありますが、その際は特定の発音(または特定の楽器の音色)を想定されていますか? 音程が素早く変化するフレーズでも、いわゆるスキャットにならない理由があればお教えくださると幸いです。

長谷川:あれは一応トランペットっぽい音かな? と思いながら出していますが、自由にスライドさせることができるのでゼフュロス(スライドとピストンバルブを併せ持つトランペット)に近いのかもしれないです。

わたしはVOCALOIDからも多大な影響を受けており、ひとつのフレーズやセクションの間に膨大な文字情報が存在している、という状態にそもそも快楽を感じているのだと思います。趣味的なレベルでなく音楽的な考察をするとすれば、エネルギーの齟齬が生まれるのを避けるためという理由が大きいです。

長谷川白紙“風邪山羊”を聴く(Spotifyを開く

長谷川:歌詞の文字情報は文字単体で伝わるのではなく常に音と共に伝わり、わたしもそれを意識しながら作詞をしていますが、スキャットは言うなれば(歌詞があるときと比べれば)音に対して文字情報が非常に少なく、エネルギーの流れが停滞している状態に感じられます。わたしが素早いパッセージを書くときはエネルギーを増幅させたいときがほとんどで、そこに対して文字情報だけ停滞してしまうのが見合わないのだと思います。

s.h.i.:いたずら心やエンターテインメント精神のようなものを明確に意識されていますか? 長谷川さんの音楽は巧まざるユーモア感覚に満ちており、そうした在り方がアカデミックな音楽由来の緻密な構造と融合することにより、複雑だが小賢しくない、チャーミングでポップな聴き味、間口の広さが生まれていると感じます。

長谷川:わたしは——意外だと言われることが多いのですが——おそらく本質的には人を楽しませることが非常に好きなタイプなのだと思います。ただ音楽やTwitterにおいてもそうかと言われると難しく、わたしが自作においてポップスの感覚やある種のエンターテインメント性を取り入れるのは、そうした方がより多くの、より複雑な要素を取り込めるからという理由に他なりません。

Twitterも最低限の分別は弁えられるようになってきましたが、依然言いたいことを言っているだけなので、わたしの音楽やツイートにわたしの本質的なエンターテインメント精神が現れているかと言われれば、それは当たらずも遠からずくらいなのかなと思います。いたずら心はいつでも何においてもめちゃくちゃあります。わたしは21歳になっても未だに自分がいたずら好きの子どもであり続けていることに驚愕しています。

s.h.i.から崎山蒼志に宛てた個別の質問。君島大空との対談の意味深な発言の奥にあるものを探る

s.h.i.:君島大空さんとの対談記事で「自分が本当に心から『いい曲だ』と思える曲が書けたら、『もうやめてもいいかな』って思うのかもしれないです。そうしたら、急にハードメタルとかをやり出すかもしれない」「本当は、今からでもやりたいんですけど」というお話がありました。別の記事ではハードコア的なものが好きだというお話もされていますが、いわゆるメタルやハードコアパンクでお好きなバンドやプレイヤーなどはいらっしゃいますでしょうか。

崎山:ザック・ヒルさん(Death Gripsのドラマーとして知られる)がとても好きです。

s.h.i.:では実際に、ご自身がそうした音楽をやるとしたら、どういったスタイルのものをやりたいとお考えになりますか。これまでほとんど音源化されてこなかったギターソロについてのお考えもあわせてご回答いただきたいです。

崎山:King Gizzard & The Lizard Wizardみたいにバンドで、あんまりジャンルには囚われすぎずも基本激しい音楽で、半端ないリリースペースでやりたいです。

King Gizzard & The Lizard Wizardを聴く(Spotifyを開く

崎山:ギターソロについて、実を云うと僕あんまり運指が得意じゃないんです……速弾きとか、弾けない……練習してバリバリ弾けるようになったら音源でもバリバリ弾いていきたいです。

s.h.i.:“Video of Travel”の逆回転再生について、お話いただけますか? 私はライブで2回観た上で音源も聴かせていただきました。いずれも素晴らしく、他の音源では前面に出ていない衝動的な表現がとてもよいかたちで映えていると感じました。

崎山:あれは本当に直感的に出てきた言葉で(録音を回してほぼ即興でして)、それが後に恥ずかしくなったから逆再生にしてみたんです。そしたら意外にもしっくり来て、採用しました。もしかしたらその「即興感」が衝動性を秘めているのかもですね……。

崎山蒼志と長谷川白紙が相互に質問を交わす。戯れのような言葉の奥には何がある?

崎山:好きな海の生物のカテゴリーは何ですか?(たとえば、甲殻類など、それらの生物の状態でもよいです)

長谷川:無脊椎動物が好きです。クリオネとか。伸び縮みする貝とかは基本的に好きですね。あと最近マンタが大好きになりました。

崎山:ぽかぽかしていて穏やかで青空で、みたいな光景や時間についてどう思われますか?

長谷川:来てほしい!!!! わたしの短期間輪廻の打刻になります。

崎山:生活の中で起きる現象の何かに自分がなれるとして、何になりたいですか?(例えば湯気など)

長谷川:わたしは基本的には水になりたいので、お風呂のお湯とかは最高だと思います。

崎山:好きな音楽に共通する部分はありますか? あった場合、その共通点は何ですか……?

長谷川:ないと思います。わたしが好きという共通点はあります。

崎山:日常生活ではどのような環境で音楽を聴くことが多いですか?

長谷川:部屋でひとりでが多いです。外とかだとあまり集中できません。

長谷川白紙“ニュートラル”を聴く(Spotifyを開く

長谷川:あなたの身長があと10cm高かったら、作る曲は変わっていたでしょうか?

崎山:曲の変化はあまりないと思うのですが、今ほどギターをじゃかじゃか弾いていないような気がします。

長谷川:最初に買ったギターの音色はどのようなものでしたか?

崎山:優しくて明るい音色でした。子ども用のクラシックギターでした。

長谷川:「全国民はミドルネームとして実在の特定の虫の名前を入れなければならない」(例:長谷川・蚕・白紙)という法律が制定されたとして、どのようなミドルネームを入れますか?(虫の名前でなくてもかまいません)

崎山:崎山・三葉虫・蒼志

長谷川:浜松という住環境は、あなたの音楽に何か影響を与えていると思いますか?

崎山:思います。緑の多い自然からの急な住宅街、新しい道路、コンビニみたいな風景からは(主に作詞に)多大に影響を受けています。

長谷川:遍く行為の中から、作曲に最も近いものを選ぶとしたら何ですか?

崎山:観察。

崎山蒼志『並む踊り』を聴く(Spotifyを開く

長谷川白紙『エアにに』を聴く(Spotifyを開く

同インタビューをもとにした、音楽評論家・s.h.i.が考察を手がけた記事より
同インタビューをもとにした、音楽評論家・s.h.i.が考察を手がけた記事はこちら(記事を読む

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リリース情報

崎山蒼志『並む踊り』
崎山蒼志
『並む踊り』(CD+DVD)

2019年10月30日(水)発売
価格:3,000円(税込)
SLRL-10046

[CD]
1. 踊り
2. 潜水(with 君島大空)
3. むげん・(with 諭吉佳作/men)
4. 柔らかな心地
5. 感丘(with 長谷川白紙)
6. 夢模様、体になって
7. 烈走
8. 泡みたく輝いて
9. Video of Travel

[DVD]
1. ドキュメント「崎山蒼志 LIVE 2019 とおとうみの国」
2. 「国」ミュージックビデオ

長谷川白紙『エアにに』
長谷川白紙
『エアにに』(CD)

2019年11月13日(水)発売
価格:2,530円(税込)
MMCD20032

1. あなただけ
2. o(__*)
3. 怖いところ
4. 砂漠で
5. 風邪山羊
6. 蕊のパーティ
7. 悪魔
8. いつくしい日々
9. 山が見える
10. ニュートラル

長谷川白紙
『夢の骨が襲いかかる!』

2020年5月29日(金)配信

1. Freeway
2. 旅の中で
3. LOVEずっきゅん
4. 光のロック
5. セントレイ
6. シー・チェンジ
7. ホール・ニュー・ワールド

プロフィール

崎山蒼志
崎山蒼志(さきやま そうし)

2002年生まれ静岡県浜松市在住。母親が聞いていたバンドの影響もあり、4歳でギターを弾き、小6で作曲を始める。2018年5月9日にAbemaTV『日村がゆく』の高校生フォークソングGPに出演。独自の世界観が広がる歌詞と楽曲、また当時15歳とは思えないギタープレイでまたたく間にSNSで話題になる。2018年7月18日に「夏至」と「五月雨」を急きょ配信リリース。その2か月後に新曲「神経」の追加配信、また前述3曲を収録したCDシングルをライヴ会場、オンラインストアにて販売。12月5日には1stアルバム『いつかみた国』をリリース、併せて地元浜松からスタートする全国5公演の単独ツアーも発表し、即日全公演完売となった。2019年3月15日にはフジテレビ連続ドラマ『平成物語』の主題歌「泡みたく輝いて」と明治「R-1」CM楽曲「烈走」を配信リリース。10月30日に2ndアルバム『並む踊り』をリリースした。

長谷川白紙
長谷川白紙(はせがわ はくし)

1998年生まれ、音楽家。2016年頃よりSoundCloudなどで作品を公開し、17年11月インターネット上でフリーEP作品『アイフォーン・シックス・プラス』、18年12月10代最後に初CD作品『草木萌動』、19年11月に1st AL『エアにに』をリリース。知的好奇心に深く作用するエクスペリメンタルな音楽性ながら、ポップ・ミュージックの肉感にも直結した衝撃的なそのサウンドは、新たな時代の幕開けをも感じさせるものに。20年5月歌と鍵盤演奏のみで構成された弾き語りカバー集「夢の骨が襲いかかる!」を発表。

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