崎山蒼志と長谷川白紙のメール問答 交感する戯れのような言葉たち

崎山蒼志と長谷川白紙のメール問答 交感する戯れのような言葉たち

編集
山元翔一(CINRA.NET編集部)

「歪み」「反復」「影響を受けるということ」――二人の才能の秘密を探る3つのキーワード

s.h.i.:ご自身の音楽において、「歪み」は重要な要素でしょうか? 「歪み」という言葉は、サウンドや音響、楽曲構造、歌詞、ひいてはもっと全体的な印象や概念など、いかようにも解釈してくださっても構いません。

崎山:「歪み」は格好よさや美しさ、違和感に直結するものだと思います。そういった意味でも、意味のない感覚的な部分からでも、僕自身「歪み」がとても好きです。僕の音楽において「歪み」は重要な要素です。全体的な音楽の印象としては、僕の音楽は荒く歪んでいるイメージがありますが、長谷川さんの音楽は滑らかに歪んでいるイメージがあります。

長谷川:非常に重要です。歪んでいるところがあるから整然としている部分も認識できるのであり、音楽の根源的な「緊張と弛緩」という概念も含め、「歪み」は非常に広大な範囲の音楽にアクセスできる軸だと思います。自作に関して言うのであれば、異なるものを無理に接着したり融合させたりするときの歪みこそが、わたしの音楽を進行させる最も強い力のひとつだと考えています。

長谷川白紙“怖いところ”を聴く(Spotifyを開く

s.h.i.:「歪み」の話に関連して、ギターというものについてどのように考えていますか?

崎山:ギターは自分が一番好きな楽器であり、一番得意な楽器です。そのギターの面で言うと、コード進行やバッキングを作る際、それらの全体的な印象の「歪み」はある程度意識して作っていたりしますし(無意識にやっている合も多いですが)、単にエレキギターの歪み(この場合は音色が)もとても好きです。

長谷川:崎山さんの音楽におけるギターは、崎山さんがファーストタッチできる遊び場なのではないかと思っています。崎山さんの音楽における強烈な身体性はもちろん歌の担保する部分も大きいですが、それ以上にこの人は恐らく暇さえあればギターを鳴らしている人なのではないかなと思います。ゆえに崎山さんの音楽はギターでの「歪み」——コード進行的な意味合いにおいても、一瞬挿入されるサウンドエフェクト的奏法などにおいても——の語彙で溢れており、それが崎山さんの音楽をより唯一無二性の高いものにしているのだと思います。

より直接的なギターに関しての歪み、つまりディストーションという意味で言えば、“Video of Travel”を初めてライブで観たときに崎山さんが演奏したとんでもない質量のノイズは非常に印象に残っています。“感丘”のレコーディングのときにも同程度の質量を持ったノイズを演奏してくださいました。好きなんですね、すごくいいですね、と思っています。

崎山蒼志“Video of Travel”を聴く(Spotifyを開く

s.h.i.:音楽一般における反復(ミニマル、ループ)についてのお考えをお聞かせください。お二人の楽曲には、単一のフレーズを繰り返すなかで単色の陰翳を描き分けていくというよりも、起伏に富んだ展開のもとで色彩を変化させていくものが多い印象がありますが、こうした傾向は意識的なものでしょうか?

崎山:僕の場合、意識的ではないです。比較的無意識な状態でバーっと浮かんだものを纏めたらそうなったという感じなので……。リスナーとしては、起伏に富んだ展開の曲が好きです。聴いていて楽しいですし。でも単一のフレーズを繰り返す様な音楽も好きです。あの段々熱を帯びて来る感じとかたまらない……と思うことも多々あります。

長谷川:反復は、我々が音楽をどう認識するか、ということを考える上で最も基礎的な要素のひとつだと思います。先述したことと同じになってしまいますが、わたしの音楽を進行させる最も強い力は落差の力だと考えています。なので単一のフレーズを繰り返し続けるという技法を使う機会はあまり多くないです。

ですが楽曲によっては、たとえばモチーフを統一した上で変化させる、全体を支配するひとつの強い構造を設ける、ひとつの音や音形を楽曲に渡って鳴らし続ける、などの手法を取り入れることもあり、そういった場合はいわゆるミニマルミュージックにおける技法をよく参照しています。中学生くらいのときからAOKI takamasaをサカナクション経由で聴いていたのもあり、趣味的にはとても好みです。

長谷川白紙“蕊のパーティ”を聴く(Spotifyを開く

s.h.i.:影響を受けるということについてのお考えをお聞かせください。私の印象では、お二人とも他者の作品(音楽に限らず文章や映像なども含む)から影響を受けるのをあまり恐れておらず、積極的なディグを通してご自身の世界を急速に豊かにし続けているようにみえます。膨大な要素を統合して素晴らしい個性を確立してしまえているのもそうした姿勢があるからなのではないかと思います。こうした印象は適切なものと言えるでしょうか?

崎山:そう言っていただけて恐縮です……。適切なのではないでしょうか……。自分の知らない素晴らしい作品に出会うと、感動と共に自分の世界が開けます。そこから影響を受ける怖さは微塵もなくて、むしろ影響を受けたい。

こんなこと自分から言うのもあれですが、自分には一本、誰からも影響を受けない芯があって、そこがあるからこそ影響を受けることに恐れがないのかも知れません。その一本の芯以外の部分で音楽をもっともっと刺激的なものにするためには、影響を受けることです。未知の音楽に出会うために重宝しているメディアはTwitterですかね……あとYouTubeです。

長谷川:適切です。ランダムに音楽に出会うことは、自分の音楽の拡張において非常に重要なことだと考えています。わたしに限って言えば、音楽の発展的発想は自分の持っている知識や概念の範疇でしか起きないと思います。わたしの中で起こる偶然的で瞬発的なリンクをより想像もつかないものにするためには、常に音楽の聴取領域を広げ続けるしかないと考えています。

TwitterのTLが今のところ最もよくて、時間があるときはTL上で流れてきた音楽で知らないものは全部聴いています。YouTubeのサジェストもよくて、こちらもとにかく全部聴いていくというのが重要です(現代音楽はYouTubeのサジェストでとても良くディグできます。なぜでしょうか)。お店でジャケ買いをするのもよくやっています。

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リリース情報

崎山蒼志『並む踊り』
崎山蒼志
『並む踊り』(CD+DVD)

2019年10月30日(水)発売
価格:3,000円(税込)
SLRL-10046

[CD]
1. 踊り
2. 潜水(with 君島大空)
3. むげん・(with 諭吉佳作/men)
4. 柔らかな心地
5. 感丘(with 長谷川白紙)
6. 夢模様、体になって
7. 烈走
8. 泡みたく輝いて
9. Video of Travel

[DVD]
1. ドキュメント「崎山蒼志 LIVE 2019 とおとうみの国」
2. 「国」ミュージックビデオ

長谷川白紙『エアにに』
長谷川白紙
『エアにに』(CD)

2019年11月13日(水)発売
価格:2,530円(税込)
MMCD20032

1. あなただけ
2. o(__*)
3. 怖いところ
4. 砂漠で
5. 風邪山羊
6. 蕊のパーティ
7. 悪魔
8. いつくしい日々
9. 山が見える
10. ニュートラル

長谷川白紙
『夢の骨が襲いかかる!』

2020年5月29日(金)配信

1. Freeway
2. 旅の中で
3. LOVEずっきゅん
4. 光のロック
5. セントレイ
6. シー・チェンジ
7. ホール・ニュー・ワールド

プロフィール

崎山蒼志
崎山蒼志(さきやま そうし)

2002年生まれ静岡県浜松市在住。母親が聞いていたバンドの影響もあり、4歳でギターを弾き、小6で作曲を始める。2018年5月9日にAbemaTV『日村がゆく』の高校生フォークソングGPに出演。独自の世界観が広がる歌詞と楽曲、また当時15歳とは思えないギタープレイでまたたく間にSNSで話題になる。2018年7月18日に「夏至」と「五月雨」を急きょ配信リリース。その2か月後に新曲「神経」の追加配信、また前述3曲を収録したCDシングルをライヴ会場、オンラインストアにて販売。12月5日には1stアルバム『いつかみた国』をリリース、併せて地元浜松からスタートする全国5公演の単独ツアーも発表し、即日全公演完売となった。2019年3月15日にはフジテレビ連続ドラマ『平成物語』の主題歌「泡みたく輝いて」と明治「R-1」CM楽曲「烈走」を配信リリース。10月30日に2ndアルバム『並む踊り』をリリースした。

長谷川白紙
長谷川白紙(はせがわ はくし)

1998年生まれ、音楽家。2016年頃よりSoundCloudなどで作品を公開し、17年11月インターネット上でフリーEP作品『アイフォーン・シックス・プラス』、18年12月10代最後に初CD作品『草木萌動』、19年11月に1st AL『エアにに』をリリース。知的好奇心に深く作用するエクスペリメンタルな音楽性ながら、ポップ・ミュージックの肉感にも直結した衝撃的なそのサウンドは、新たな時代の幕開けをも感じさせるものに。20年5月歌と鍵盤演奏のみで構成された弾き語りカバー集「夢の骨が襲いかかる!」を発表。

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