小西遼ソロプロジェクト・象眠舎が探求する、人間が変容する感動

CRCK/LCKSのメンバー、CharaやTENDREらのサポート、狭間美帆とのビッグバンド企画「Com⇔Positions」など、ジャズを起点に、現在はポップスのシーンでも幅広く活躍するサックスプレイヤー / 作編曲家の小西遼。数多くの才能ある音楽家が「個」を打ち出しながらも自由に繋がり、刺激的な作品を生み出してきた2010年代の後半、ステージの上でも楽曲の中でもとりわけ異質にして特別な存在感を放ってきた小西の原点が、ソロプロジェクト「象眠舎」である。

「表現集団」としてスタートした象眠舎を紐解くにあたって、小西がキーワードとして挙げたのは「物語 / 読後感」と、「変容」であった。素晴らしい芸術作品に触れたとき、その前後で物事の見え方が変わるという感覚は、多くの人が(無意識的でも)経験しているものだろう。そして、「変わっていくこと」には一抹の寂しさがつきまとうが、その先で新たな世界が開けたときの喜びの大きさもまた、多くの人が知っているはず。象眠舎とは、そんな人生における刹那的な感動をシェアしようとする試みだと言ってもいいかもしれない。本格的な再始動を機に、これまでの歩みについてじっくりと語ってもらった。

一人でも、「舎」をつればみんなが入れる場所になると思った。勝手に来て勝手に出ていける場所にできたらと思って、「象眠舎」にしました。

小西遼(こにし りょう)
作曲・編曲家。サックス、フルート、鍵盤をはじめ数多くの楽器に精通。表現集団「象眠舎」を主宰し、所属するバンド・CRCK/LCKSは2019年にアルバム『Temporary』『Temporary vol.2』をリリース。狭間美帆とのビッグバンドプロジェクト・Com⇔Positions、CharaやTENDREのサポート、millenium paradeへの参加など、多岐にわたって音楽活動を展開する。

―小西さんが主宰する象眠舎は、バークリー音楽院への留学時に「表現集団」としてスタートしているそうですね。そもそもはどのような始まりだったのでしょうか?

小西:いくつか要素があるんですけど、まず大きいのは演劇の存在です。僕にとっての初期衝動とか原風景に近いものだと思うんですけど、ライブハウスで超感動するよりもちょっと前に、芝居で初めて超感動を経験してるんです。もちろん、小6でピアノを始めて、中学で吹奏楽を始めて、高校でジャズを始めて、それまでにも音楽で高揚する感覚はありました。

でも、野田秀樹さんが劇団「夢の遊眠社」時代に作った『走れメルス』と、解散後に作った『贋作 罪と罰』を観て、映画みたいな壮大なストーリーなのに、それが演劇という小さな枠組みに入っていて、ものすごく想像力を掻き立てられて。しかも、そこに役者の人たちの息遣いやライブ感も伝わってくる。今ならこうやって噛み砕いて理解できますけど、原体験としては、ほぼ鈍器ですよね。

―ガツンと殴られたような衝撃があったと。

小西:終演してお客さんが捌けてなお、席から立てなかった記憶が残ってて。それが象眠舎に至る一番最初の起点ですね。もともと音楽を始めた時点で表現欲求は強くあったんです。「体の中のモヤモヤをどうやって外に出せばいいんだ?」ってずっと思ってて、楽器にハマったときに「これだ!」ってなって。そこに演劇の打撃が加わって、実際に演劇もやったんですよ。で、「これをどう音楽に落とし込んでいこう?」って考えていろんなフォーマットの音楽に挑戦したんですけど、最初はいまいちピンと来なかったんですよね。

―プレイヤーとしては、サックスを突き詰めていたわけですよね?

小西:ジャズをちゃんとやるにあたってベーシックは必要だと思ったので、練習はめっちゃしてました。ただ、ライブに関してはやってもやっても……没入感はあるんだけど、演劇で感じた「読後感」みたいなものは、どうも感じてもらえてない気がして。そんな中で、洗足(学園音楽大学)の3年くらいのときに、他大学のビッグバンドサークルに入ったんです。

大学に入ってからは吹奏楽も演劇も一切やってなくて、大人数で動くことをひさしぶりにやったら、それがめっちゃ楽しかったんですよね。いろんな人と作り上げていく楽しさってやっぱりあるなと思って、僕は作曲や編曲をこういう規模でやるのが好きなんだなって。で、渡米直前に自分でビッグバンドのライブを企画したらやっぱり面白くて、「これかも」と思って。

―観劇後の「読後感」に近いものがあった?

小西:そうですね。「読後感」っていうのは、一から十まで書き連ねて、それを表現して初めて得られるものなのかなって思ったんです。なので、バークリーではサックス奏者としての底上げもしながら、作編曲の能力を一から勉強し直そうと思って作曲を副科でやり始めたら、ハマっちゃって。ミュージカルのアレンジの授業とか、いろんな国の音楽の授業を取ってーーそういう音楽をまぜこぜにしながら、自分の音楽として作編曲するのが楽しいなって思ったんです。

―「演劇」と「作編曲」を背景とする表現が最初に形になったのはいつだったんですか?

小西:バークリーの卒業試験みたいなのがあって、それは自分でライブを企画して、先生の前で演奏するんですけど、普通はみんなコンボとかでオリジナルの曲をやるんです。でも僕は「僕の一大作品を作り上げる」と思って、まず原稿用紙10枚くらいにエッセイを書いて(笑)。

―まずストーリーからだと。

小西:ニューヨークとボストンを行き来する旅行記だったんですけど、そこに作った楽曲群を当てはめて、時系列で並べて、情景を意識したセットリストにして。編成は管弦、リズムセクション、シンガーもいて、12人くらい。で、エッセイは友達に頼んで全部英訳してもらって、お客さんに配って、それでライブをしたんです。

―最初は「小西遼ラージアンサンブル」名義だったんですよね。

小西:そうです。それをやって、「やっと一個のフォーマットを見つけたかも」って思いました。準備段階からずーっと楽しかったんですよね(笑)。あと、もう一個大きかったのがインスタレーションの要素。ジェームズ・タレルが好きで、彼は光と色をテーマにし続けているアーティストなんですけど、グッゲンハイム美術館に彼の作品を観に行って、それを観に行く前と後で世界の見え方が違う感じが衝撃で、それも「読後感」と繋がったというか。

―小西さんの思う「読後感」とは、自分にとってどういうものなんですか。

小西:観る前と後で、自分という存在が変容してること、ですかね。ジェームズ・タレルの作品を見た後も、自分が変容したことがちゃんとわかったんですよね。なので、自分のライブもインタラクティブなものにしたくて。

小西遼ラージアンサンブル名義で上演された『チョコギートの溶ける頃』(2015年5月)より

大事なのは「読後感」。そういう自分の原体験を、いろんな人たちと共有したい。だから、その根っこにあるものとして「物語」は自分のキーワードなんですよね。

―面白いですね。ジェームズ・タレルのインスタレーションに刺激される形で、自分のライブも参加型にしたと。

小西:そうやっていろんな要素を盛り込むとなると、「小西遼ラージアンサンブル」だと、僕個人や「ラージアンサンブル」に特定されちゃうから、もっと何でもできる名義にしたいなと思って、さっき話した野田秀樹の「遊眠社」と、あと村上春樹も好きで『象の消滅』を読んでいたので、合わせて「象眠舎」にして。一人でも「舎」をつけちゃえば、みんなが入れる場所になると思ったんですよ。「屋根がある場所」って意味だから、勝手に来て、勝手に出ていけるような場所にできたらと思って。

―もともと表現欲求が強くあって、「体の中にあるモヤモヤをどうやって外に出せばいいんだ?」と考えていたそうですが、その「モヤモヤ」は何に起因していたと思いますか?

小西:特別な環境で育ったわけじゃないけど、でも「なんでこんなに寂しいんだろう?」とか、「なんで理由もなく辛いことがあるんだろう?」っていうのはずっと考えてましたね。

もともと本を読むのも大好きで、僕の場合はそれで元気になったり啓蒙されたりするというよりは、「寂しさ」とか「孤独」を考えるきっかけになっていたというか。最初は萩原朔太郎とかだったと思うんですけど、「一人で歩いて行かなきゃいけない」みたいなことに憧れたというか……まあ、中二病みたいなものでもあると思うんですけど。

象眠舎『The Way We Were / 追憶』を聴く(Spotifyを開く

―誰もが通る道なのかもしれないけど、小西さんはより深く、長く、自分と向き合う時間があったんでしょうね。

小西:ミヒャエル・エンデとか、絵本も好きで、3~4歳の頃から一晩で10冊くらい母親に読んでもらってましたね。当時は何かで発散する手段がなくて、自分の中で妄想の世界が発酵してたのが、音楽や演劇との出会いを通じて、それを外に出す気持ちよさを知っていったのかなって。だから、象眠舎では「サックスプレイヤーの小西遼」ではなくて、表現者みたいな立ち位置でいたくて。楽器は好きだけど、それに対する執着みたいなものは全然ないんですよ。

―別のインタビューでも、「音楽はツール」とおっしゃってましたね。

小西:そうですね。「音楽に自分のすべてを捧げたい」みたいなのは正直なくて。やっぱり大事なのは「読後感」で、それに触れて自分の人生が変わった。そういう自分の原体験を、いろんな人たちと共有したい。だから、その根っこにあるものとして、「物語」っていうのは自分のキーワードなんですよね。

それは本だけじゃなくて、音楽、演劇、現代美術、いろんなものの中にあるもので、自分の琴線に触れるものは、寂しさや孤独と接続している。それに触れ続ける限り、その反動としての表現がある。作品を作り続けることの理由はいろいろあるとは思うんですけど、それが一番大きな理由かなって。

―「みんなが出入りできる場所」としての象眠舎を作ったっていうのも、一人の寂しさや孤独が背景にあると言えそうですね。

小西:そうだと思いますね。たまに自分の根っこを探ろうとしてアイデアノートを見返すと、ずっともの悲しさみたいなものがあるんです。でも、それは全然後ろ向きな意味ではなくて。言葉にすると「悲しい」とか「寂しい」になるけど、それが前に進むための原動力でもあるんですよね。

―留学後、帰国してからの象眠舎の活動はどんなものだったのでしょうか?

小西:象眠舎という名前にしてからの展開はすごく速くて。ニューヨークにいるときからひたすら台本を書いて、それにハマる曲を10曲作って、朗読劇にして、インスタレーションを置いて、ライブハウスでやり始めたんです。半年で3作品くらい作ったんですよ。

―YouTubeに上がっていた作品は拝見しました。

小西:ありがとうございます(笑)。で、現状象眠舎としての最後の作品が2016年10月にやった『あわれ球体関節ケンタウルス』っていうやつで、これはCRCK/LCKSの小田(朋美)に「一回音だけに集中してみたら?」って言われて、初めて自分が言葉から離れた作品で。仲良かった榎本櫻湖に丸々詩編を書き下ろしてもらったんです。

彼女は現代詩人なんですけど、「詩で現代音楽を書いてる」って言ってて、すごく面白くて。その中に今回リリースした“Lycoris”も入ってるんですよ。で、その公演から少し経って、バークリー時代のエンジニアの友達が都内で新しいスタジオを始めて、いい環境でテスト録音させてもらえることになったので、『あわれ球体関節ケンタウルス』の譜面を持ってスタジオに入り、大好きなプレーヤーたちを呼んで、録音だけしたのが2017年の6月。これでまた象眠舎を動かせると思って……でも結局、そこから2年の月日が(笑)。

(“Lycoris”は)いろんな展開があって、その後でもう一回ピアノでリプライズが入るじゃないですか? あそこに辿り着いたときは、超感動したんです。「ここに戻ってくる話だったんだ!」って。

―その2年間で、CRCK/LCKSをはじめ、ポップフィールドでの活動が本格化していったわけですよね。

小西:はい。帰国後に自分がコミットしていたものが成果に繋がり始めて、人と人との繋がりがよく見えるようになったし、そっちが面白くなって、作家としてのクリエイティビティは今は溜めておこうと思ったんですよね。いろんな現場で初体験ばっかりでしたから。それこそ、それまではジャズとか現代音楽ばっかりでポップスとかは全然聴いてなかったけど、これは人生がより面白くなるいい機会だと思ったので、シフトしていって。

―では、CRCK/LCKSなどのギアを入れていた時期から、象眠舎の再始動に至ったきっかけは?

小西:今回共同プロデュースで入ってくれてるモリタさん(Seiji Morita / 共同プロデューサー)はCRCK/LCKSのプロデュースもやってくださっていて、すごくアーティスト気質な方なんですけど、その方が「やった方がいい、止まるんじゃない」って、ずっとケツを叩いてくれていたので、それはひとつ大きかったですね。

それで“Lycoris”を形にしようと思って動き始めたのが去年のアタマくらいなんですけど、でも去年はCRCK/LCKSの『Temporary』も作ってて、しかも結果的に2枚作ることになったから、マジ大変で。それでも「『Temporary』終わったら象眠舎!」ってずっと思ってたから、そこからフルスロットルで今に至る感じです(笑)。

CRCK/LCKS『Temporary』を聴く(Spotifyを開く

CRCK/LCKS『Temporary vol.2』を聴く(Spotifyを開く

―今回の象眠舎でのリリースやライブは、より音楽に的を絞ったものと言えるかと思いますが、そこには意識の変化があったのでしょうか?

小西:僕、ソロとしては一枚もリリースをしたことがなかったので、まずはそれを作ってみたい気持ちがありました。ジャズの勉強をずっとやって、ニューヨークでの生活があって、ここ4年くらいはポップスやバンドのフィールドでやってきて、それを総括するとどうなるのかなって。ただ、自分的な総括にしちゃうと単なる手記みたいになっちゃうから、それをプロダクトとして面白いものにしたいと思ったときに、自分が作家兼プロデューサーとして作品に関わるっていうのが、いいチャレンジになると思ったんです。

―“Lycoris”に関しては、先ほどおっしゃっていた2017年の録音を基にして、ブラッシュアップしていったわけですか?

小西:そうですね。そもそも『あわれ球体関節ケンタウルス』のコンセプトとして、僕は受け取った言葉に対して無心で音楽をつけていったんです。もともと僕はワーグナーのライトモチーフみたいな、同じモチーフを繰り返して、少しずつ変化していくのが好きなんですよ。主人公が変容していく感じが、それこそ物語っぽいじゃないですか?

でも、このときはそのやり方を壊してみたくて、言葉からインスピレーションを得てメロディーや構成を考えて、だから展開があっちこっち行ってるんですよね。でも、最初に<魔法つかいを見た>から始まって、さんざんいろんな展開があって、その後でもう一回ピアノでリプライズが入るじゃないですか? あそこに辿り着いたときは、超感動したんです。「ここに戻ってくる話だったんだ!」って。

象眠舎『Lycoris feat. 中村佳穂』を聴く(Spotifyを開く

―それもまさに「物語」であり、「変容」に対する感動ですよね。「Lycoris=彼岸花」をモチーフにした歌詞も含め、ここまでの話を聞くと、非常に小西さんらしい一曲であることが伝わってきます。

小西:初期の象眠舎も「一体この曲がどこに連れて行ってくれるんだろう?」っていう感覚があって、台本を書いて、音楽を当てて、「このモチーフはこのために存在してたんだ」って、あとあと自分が気づいていくんですよ。物語が進むにつれて、自分の手を離れていく感覚というか、作曲してる身として、それがすごく楽しいんです。

―“Lycoris”のボーカルに中村佳穂さんを迎えたのは、どんな理由だったんですか?

小西:佳穂ちゃんのことを「歌い手」とか「シンガー」って呼ぶのは僕的にはあんまりしっくり来てなくて。彼女はそもそも生活をする人で、その中に言葉や音楽があって、自分の口を通じてそれを表現してる人だと思っていて。そういう彼女の言葉へのアプローチ、景色の描き方を考えたときに、これくらいどぎつい歌詞をぶつけても、佳穂ちゃんなら応えてくれると思ったし、それを見てみたいなって思ったんです。

器楽的に歌ってくれたり、自分なりの解釈を強烈に入れてくれる人もいると思うけど、そこはいいバランスで、僕の音楽も大事にしてくれると思ったので。実際その通りになったというか、やっぱり何に対しても真摯な人だなって。真摯で、丁寧で、やるとなったら絶対手を抜かずにやってくれる彼女の人柄に期待したっていうのもありますね。

日本に戻ってきて、いろんな人と出会って、巡り巡って、象眠舎のもとに帰ってきた感じがしたんですよね。

―今おっしゃったことは、“Mirror”に参加しているTENDREや、“Sunset”のSarah Furukawaさんにも言えることでしょうね。

小西:そうですね。一回腹割って話した間柄の人たちとまずやってみたかったというか。それってちょっとこっぱずかしい作業ではあるんです。今までは酒の席で「今日も楽しかった。またやろうぜ!」みたいに言ってた人に、「僕はこういう想いでやっていて」っていうことを伝えるわけだから。服を一枚脱ぐみたいな(笑)。でも、それでも一緒にいたい人たちだし、あとは何より歌がいいから呼びました(笑)。超大好き。3人とも一聴して惚れた人たちで、何回聴いても悔しいくらい最高ですからね。

象眠舎『Sunset blvd feat. Sarah Furukawa』を聴く(Spotifyを開く

象眠舎『Mirror frat. TENDRE』を聴く(Spotifyを開く

―“Lycoris”と同時にもう一曲、Sarah Furukawaさんをフィーチャーした“Sunset”も発表されますが、これは急遽作られた一曲だそうですね。

小西:今回のコロナウイルスの騒動でいろんなスケジュールに変化があった中、「もう一曲作ろう」ってなって、最初はスタジオに集まって、一日でコライトで作る算段だったんです。でも、外に出ることさえできなくなって、「じゃあ、このタイミングでリモートコラボレーションに挑んで、作品作りをしよう」ということになり、僕、モリタさん、Sarah、トラックのプログラミング兼ギタリストのデンダノブヒロの4人で作りました。象眠舎としては初めて歌詞やメロディを4人で作り、トラックそのものはモリタさんとデンダさんの力で完成しました。完成した後に、その完成度にすごく感動したんです。でも、「これを象眠舎として出すことにどんな意味があるんだろう?」っていうのは思ったんですよね。

―「ソロプロジェクト」として考えると、確かに異質ではありますね。

小西:ただ、自分で舵を取って、最終決定は僕が下して、プロデューサー的な立ち位置で作って行くと、自分一人で作ったわけではなくても、間違いなく自分の作品だなって思えたんです。モリタさんにも「小西くんが居なかったら出来てない曲だよ」って言われて。だからね、象眠舎を通じて、自分がどういう人間になりたいのかがクリアになっていく感じもあるんですよね。

―象眠舎のビジョンが具現化されていく?

小西:そうそう。今回は演劇的な要素はなくて、音楽寄りにシフトはしてるけど、屋根の下にいろんな人が入って出るっていう場所にちゃんとなってると思えた。日本に戻ってきて、いろんな人と出会って、巡り巡って、ちゃんと象眠舎っていう名前のもとに帰ってきた感じがしたんです。

―“Sunset”は現在の状況に対する苦悩や怒りも感じられつつ、最後は<then I start to realize>と締め括られていて、確かな「読後感」もあります。

小西:“Sunset”だけ歌詞も英語だし、「海外向き」みたいな意味で、「Ryo Konishi」として出すのもアリじゃない? みたいな話をモリタさんとしたりもしたんですけど、これをはじいてしまうと象眠舎じゃないというか、これを内包してなお象眠舎であれるなっていう感覚が今はあるんです。いろんな人と楽しくものを作っていくことが自分のやりたいことだし、それが「読後感」にも繋がるんだなって、それもやりながらより感じたことですね。

―象眠舎という場所が今後どんな広がりを見せるのか、そこにはどんな変容の感動があるのか、非常に楽しみです。

小西:僕って一番になるようなタイプの人間じゃないんですよね。かけっこで一番になったこともないし、コンクールでもソロで優勝したことなくて、自分が優れてる感覚も持ってない。それでもなんとか自分で全部やらなきゃと思って、日本に戻ってからの2年くらいは必死にやってたんです。最初は「僕こういうことやってるんだ」って言うと、「面白そうだね、頑張って」だったのが、今は「面白そうだから、一緒にやらせてよ」って言ってくれる人が増えて、それに気づけたのが今年の始まりとしてすごく大きくて。だから……動いてみるもんだなって(笑)。

―はははは。

小西:周りにみんながいてくれる今の状況っていうのは、ホントに「やっててよかった」と思うし、だからこそ「もっとやりてえ」とも思う(笑)。前はわりと卑屈な人間で、「どうせ誰も動いてくれないし」みたいに思ってたけど、今は「僕こんな自分のことばっかりに集中してていいの?」みたいな感じで。だったら行けるところまで行ってみたいし、なんにも手放したくないから、全部やっていきたいと思ってます。

プレイリスト『黄昏と静寂』を聴く(Spotifyを開く
リリース情報
象眠舎
『The Way We Were / 追憶』

2020年3月25日(水)配信

1. The Way We Were / 追憶

象眠舎
『Sunset blvd. feat. Sarah Furukawa』

2020年4月15日(水)配信

1. Sunset blvd. feat. Sarah Furukawa

象眠舎
『Lycoris feat.中村佳穂』

2020年4月15日(水)配信

1. Lycoris feat.中村佳穂

象眠舎
『Mirror feat. TENDRE』

2020年5月13日(水)配信

1. Mirror feat. TENDRE

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プロフィール
小西遼 (こにし りょう)

作曲・編曲家。サックス、フルート、鍵盤をはじめ数多くの楽器に精通。表現集団「象眠舎」を主宰し、所属するバンド・CRCK/LCKSは2019年にアルバム『Temporary』『Temporary vol.2』をリリース。狭間美帆とのビッグバンドプロジェクト・Com⇔Positions、CharaやTENDREのサポート、millenium paradeへの参加など、多岐にわたって音楽活動を展開する。



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