小西遼ソロプロジェクト・象眠舎が探求する、人間が変容する感動

小西遼ソロプロジェクト・象眠舎が探求する、人間が変容する感動

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影(写真提供):垂水佳菜 編集:矢島大地(CINRA.NET編集部)

(“Lycoris”は)いろんな展開があって、その後でもう一回ピアノでリプライズが入るじゃないですか? あそこに辿り着いたときは、超感動したんです。「ここに戻ってくる話だったんだ!」って。

―その2年間で、CRCK/LCKSをはじめ、ポップフィールドでの活動が本格化していったわけですよね。

小西:はい。帰国後に自分がコミットしていたものが成果に繋がり始めて、人と人との繋がりがよく見えるようになったし、そっちが面白くなって、作家としてのクリエイティビティは今は溜めておこうと思ったんですよね。いろんな現場で初体験ばっかりでしたから。それこそ、それまではジャズとか現代音楽ばっかりでポップスとかは全然聴いてなかったけど、これは人生がより面白くなるいい機会だと思ったので、シフトしていって。

―では、CRCK/LCKSなどのギアを入れていた時期から、象眠舎の再始動に至ったきっかけは?

小西:今回共同プロデュースで入ってくれてるモリタさん(Seiji Morita / 共同プロデューサー)はCRCK/LCKSのプロデュースもやってくださっていて、すごくアーティスト気質な方なんですけど、その方が「やった方がいい、止まるんじゃない」って、ずっとケツを叩いてくれていたので、それはひとつ大きかったですね。

それで“Lycoris”を形にしようと思って動き始めたのが去年のアタマくらいなんですけど、でも去年はCRCK/LCKSの『Temporary』も作ってて、しかも結果的に2枚作ることになったから、マジ大変で。それでも「『Temporary』終わったら象眠舎!」ってずっと思ってたから、そこからフルスロットルで今に至る感じです(笑)。

小西遼

CRCK/LCKS『Temporary』を聴く(Spotifyを開く

CRCK/LCKS『Temporary vol.2』を聴く(Spotifyを開く

―今回の象眠舎でのリリースやライブは、より音楽に的を絞ったものと言えるかと思いますが、そこには意識の変化があったのでしょうか?

小西:僕、ソロとしては一枚もリリースをしたことがなかったので、まずはそれを作ってみたい気持ちがありました。ジャズの勉強をずっとやって、ニューヨークでの生活があって、ここ4年くらいはポップスやバンドのフィールドでやってきて、それを総括するとどうなるのかなって。ただ、自分的な総括にしちゃうと単なる手記みたいになっちゃうから、それをプロダクトとして面白いものにしたいと思ったときに、自分が作家兼プロデューサーとして作品に関わるっていうのが、いいチャレンジになると思ったんです。

―“Lycoris”に関しては、先ほどおっしゃっていた2017年の録音を基にして、ブラッシュアップしていったわけですか?

小西:そうですね。そもそも『あわれ球体関節ケンタウルス』のコンセプトとして、僕は受け取った言葉に対して無心で音楽をつけていったんです。もともと僕はワーグナーのライトモチーフみたいな、同じモチーフを繰り返して、少しずつ変化していくのが好きなんですよ。主人公が変容していく感じが、それこそ物語っぽいじゃないですか?

でも、このときはそのやり方を壊してみたくて、言葉からインスピレーションを得てメロディーや構成を考えて、だから展開があっちこっち行ってるんですよね。でも、最初に<魔法つかいを見た>から始まって、さんざんいろんな展開があって、その後でもう一回ピアノでリプライズが入るじゃないですか? あそこに辿り着いたときは、超感動したんです。「ここに戻ってくる話だったんだ!」って。

象眠舎『Lycoris feat. 中村佳穂』を聴く(Spotifyを開く

―それもまさに「物語」であり、「変容」に対する感動ですよね。「Lycoris=彼岸花」をモチーフにした歌詞も含め、ここまでの話を聞くと、非常に小西さんらしい一曲であることが伝わってきます。

小西:初期の象眠舎も「一体この曲がどこに連れて行ってくれるんだろう?」っていう感覚があって、台本を書いて、音楽を当てて、「このモチーフはこのために存在してたんだ」って、あとあと自分が気づいていくんですよ。物語が進むにつれて、自分の手を離れていく感覚というか、作曲してる身として、それがすごく楽しいんです。

―“Lycoris”のボーカルに中村佳穂さんを迎えたのは、どんな理由だったんですか?

小西:佳穂ちゃんのことを「歌い手」とか「シンガー」って呼ぶのは僕的にはあんまりしっくり来てなくて。彼女はそもそも生活をする人で、その中に言葉や音楽があって、自分の口を通じてそれを表現してる人だと思っていて。そういう彼女の言葉へのアプローチ、景色の描き方を考えたときに、これくらいどぎつい歌詞をぶつけても、佳穂ちゃんなら応えてくれると思ったし、それを見てみたいなって思ったんです。

器楽的に歌ってくれたり、自分なりの解釈を強烈に入れてくれる人もいると思うけど、そこはいいバランスで、僕の音楽も大事にしてくれると思ったので。実際その通りになったというか、やっぱり何に対しても真摯な人だなって。真摯で、丁寧で、やるとなったら絶対手を抜かずにやってくれる彼女の人柄に期待したっていうのもありますね。

小西遼

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リリース情報

象眠舎『The Way We Were / 追憶』
象眠舎
『The Way We Were / 追憶』

2020年3月25日(水)配信

1. The Way We Were / 追憶

象眠舎『Sunset blvd. feat. Sarah Furukawa』
象眠舎
『Sunset blvd. feat. Sarah Furukawa』

2020年4月15日(水)配信

1. Sunset blvd. feat. Sarah Furukawa

象眠舎『Lycoris feat.中村佳穂』
象眠舎
『Lycoris feat.中村佳穂』

2020年4月15日(水)配信

1. Lycoris feat.中村佳穂

象眠舎『Mirror feat. TENDRE』
象眠舎
『Mirror feat. TENDRE』

2020年5月13日(水)配信

1. Mirror feat. TENDRE

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プロフィール

小西遼(こにし りょう)

作曲・編曲家。サックス、フルート、鍵盤をはじめ数多くの楽器に精通。表現集団「象眠舎」を主宰し、所属するバンド・CRCK/LCKSは2019年にアルバム『Temporary』『Temporary vol.2』をリリース。狭間美帆とのビッグバンドプロジェクト・Com⇔Positions、CharaやTENDREのサポート、millenium paradeへの参加など、多岐にわたって音楽活動を展開する。

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