小西遼ソロプロジェクト・象眠舎が探求する、人間が変容する感動

小西遼ソロプロジェクト・象眠舎が探求する、人間が変容する感動

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影(写真提供):垂水佳菜 編集:矢島大地(CINRA.NET編集部)

大事なのは「読後感」。そういう自分の原体験を、いろんな人たちと共有したい。だから、その根っこにあるものとして「物語」は自分のキーワードなんですよね。

―面白いですね。ジェームズ・タレルのインスタレーションに刺激される形で、自分のライブも参加型にしたと。

小西:そうやっていろんな要素を盛り込むとなると、「小西遼ラージアンサンブル」だと、僕個人や「ラージアンサンブル」に特定されちゃうから、もっと何でもできる名義にしたいなと思って、さっき話した野田秀樹の「遊眠社」と、あと村上春樹も好きで『象の消滅』を読んでいたので、合わせて「象眠舎」にして。一人でも「舎」をつけちゃえば、みんなが入れる場所になると思ったんですよ。「屋根がある場所」って意味だから、勝手に来て、勝手に出ていけるような場所にできたらと思って。

―もともと表現欲求が強くあって、「体の中にあるモヤモヤをどうやって外に出せばいいんだ?」と考えていたそうですが、その「モヤモヤ」は何に起因していたと思いますか?

小西:特別な環境で育ったわけじゃないけど、でも「なんでこんなに寂しいんだろう?」とか、「なんで理由もなく辛いことがあるんだろう?」っていうのはずっと考えてましたね。

もともと本を読むのも大好きで、僕の場合はそれで元気になったり啓蒙されたりするというよりは、「寂しさ」とか「孤独」を考えるきっかけになっていたというか。最初は萩原朔太郎とかだったと思うんですけど、「一人で歩いて行かなきゃいけない」みたいなことに憧れたというか……まあ、中二病みたいなものでもあると思うんですけど。

象眠舎『The Way We Were / 追憶』を聴く(Spotifyを開く

―誰もが通る道なのかもしれないけど、小西さんはより深く、長く、自分と向き合う時間があったんでしょうね。

小西:ミヒャエル・エンデとか、絵本も好きで、3~4歳の頃から一晩で10冊くらい母親に読んでもらってましたね。当時は何かで発散する手段がなくて、自分の中で妄想の世界が発酵してたのが、音楽や演劇との出会いを通じて、それを外に出す気持ちよさを知っていったのかなって。だから、象眠舎では「サックスプレイヤーの小西遼」ではなくて、表現者みたいな立ち位置でいたくて。楽器は好きだけど、それに対する執着みたいなものは全然ないんですよ。

―別のインタビューでも、「音楽はツール」とおっしゃってましたね。

小西:そうですね。「音楽に自分のすべてを捧げたい」みたいなのは正直なくて。やっぱり大事なのは「読後感」で、それに触れて自分の人生が変わった。そういう自分の原体験を、いろんな人たちと共有したい。だから、その根っこにあるものとして、「物語」っていうのは自分のキーワードなんですよね。

それは本だけじゃなくて、音楽、演劇、現代美術、いろんなものの中にあるもので、自分の琴線に触れるものは、寂しさや孤独と接続している。それに触れ続ける限り、その反動としての表現がある。作品を作り続けることの理由はいろいろあるとは思うんですけど、それが一番大きな理由かなって。

小西遼

―「みんなが出入りできる場所」としての象眠舎を作ったっていうのも、一人の寂しさや孤独が背景にあると言えそうですね。

小西:そうだと思いますね。たまに自分の根っこを探ろうとしてアイデアノートを見返すと、ずっともの悲しさみたいなものがあるんです。でも、それは全然後ろ向きな意味ではなくて。言葉にすると「悲しい」とか「寂しい」になるけど、それが前に進むための原動力でもあるんですよね。

―留学後、帰国してからの象眠舎の活動はどんなものだったのでしょうか?

小西:象眠舎という名前にしてからの展開はすごく速くて。ニューヨークにいるときからひたすら台本を書いて、それにハマる曲を10曲作って、朗読劇にして、インスタレーションを置いて、ライブハウスでやり始めたんです。半年で3作品くらい作ったんですよ。

―YouTubeに上がっていた作品は拝見しました。

小西:ありがとうございます(笑)。で、現状象眠舎としての最後の作品が2016年10月にやった『あわれ球体関節ケンタウルス』っていうやつで、これはCRCK/LCKSの小田(朋美)に「一回音だけに集中してみたら?」って言われて、初めて自分が言葉から離れた作品で。仲良かった榎本櫻湖に丸々詩編を書き下ろしてもらったんです。

彼女は現代詩人なんですけど、「詩で現代音楽を書いてる」って言ってて、すごく面白くて。その中に今回リリースした“Lycoris”も入ってるんですよ。で、その公演から少し経って、バークリー時代のエンジニアの友達が都内で新しいスタジオを始めて、いい環境でテスト録音させてもらえることになったので、『あわれ球体関節ケンタウルス』の譜面を持ってスタジオに入り、大好きなプレーヤーたちを呼んで、録音だけしたのが2017年の6月。これでまた象眠舎を動かせると思って……でも結局、そこから2年の月日が(笑)。

小西遼

Page 2
前へ 次へ

リリース情報

象眠舎『The Way We Were / 追憶』
象眠舎
『The Way We Were / 追憶』

2020年3月25日(水)配信

1. The Way We Were / 追憶

象眠舎『Sunset blvd. feat. Sarah Furukawa』
象眠舎
『Sunset blvd. feat. Sarah Furukawa』

2020年4月15日(水)配信

1. Sunset blvd. feat. Sarah Furukawa

象眠舎『Lycoris feat.中村佳穂』
象眠舎
『Lycoris feat.中村佳穂』

2020年4月15日(水)配信

1. Lycoris feat.中村佳穂

象眠舎『Mirror feat. TENDRE』
象眠舎
『Mirror feat. TENDRE』

2020年5月13日(水)配信

1. Mirror feat. TENDRE

サービス情報

Spotify

・無料プラン
5000万を超える楽曲と30億以上のプレイリストすべてにアクセス・フル尺再生できます

・プレミアムプラン(月額¥980 / 学割プランは最大50%オフ)
3ヶ月間無料キャンペーン中

プロフィール

小西遼(こにし りょう)

作曲・編曲家。サックス、フルート、鍵盤をはじめ数多くの楽器に精通。表現集団「象眠舎」を主宰し、所属するバンド・CRCK/LCKSは2019年にアルバム『Temporary』『Temporary vol.2』をリリース。狭間美帆とのビッグバンドプロジェクト・Com⇔Positions、CharaやTENDREのサポート、millenium paradeへの参加など、多岐にわたって音楽活動を展開する。

Category カテゴリー

Latest Articles 最新の記事

What's "Kompass" ? コンパスとは

「Kompass」は、ネットメディア黎明期よりカルチャー情報を紹介してきたCINRA.NETと、音楽ストリーミングサービスの代表格Spotifyが共同で立ち上げた音楽ガイドマガジンです。ストリーミングサービスの登場によって、膨大な音楽ライブラリにアクセスできるようになった現代。音楽の大海原に漕ぎだす音楽ファンが、音楽を主体的に楽しみ、人生の1曲に出会うガイドになるようなメディアを目指し、リスニング体験を交えながら音楽の面白さを紹介しています。