Age Factoryが叫ぶ「殺してみろよ」。優しく生きるための怒号

Age Factoryが叫ぶ「殺してみろよ」。優しく生きるための怒号

Age Factory『EVERYNIGHT』
インタビュー・テキスト・編集
矢島大地(CINRA.NET編集部)
撮影:Kazma Kobayashi、Naoki Yamashita、西槇太一
2020/05/07
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他のものに一切干渉されずに自分だけを信じられる瞬間に安心感があるし、叫んでる時は、その真ん中に静寂があるんです。

―まさに“CLOSE EYE”は、叩きつけるようなハードコアの中で今おっしゃったことを叫ばれていますよね。「そこには何もない」と断じて、自分だけを見つめろと。

清水:シンプルに、これまでにあった枠が無効化されてる時代やと思うんですよ。アンダーグラウンドとかオーバーグラウンド、マイノリティとマジョリティみたいな線引きも無意味になって。俺らの音楽だって、これまでの音楽がとってきた形をなしてない。

特に俺らは生まれた頃からYouTubeもSNSもあったわけで、俺らにしかない自然な感覚として、どんな音楽も価値観も混ぜられるはずで。だとすれば、従来の価値観や枠には形はないと歌っても、それは生き様として嘘のないことだと思うんです。混ぜることで、自分の居場所を作るしかないんですよ。

Age Factory

―実際、世界をかたどる事象をガーっと羅列する歌になってるんですけど、それが<虐待 差別 レイプ>というラインから始まる点に、エイスケさんの世界に対する衝動と混沌を感じるんです。これはご自身のどんな背景から生まれるんですかね?

清水:俺としては、リアリティを感じられない事象をガーっと書いただけなんです。ニュースを見ていても「なんじゃこのクソみたいなニュースは」って思うけど、それ以上に、自分の中で全然リアリティを感じられないことを“CLOSE EYE”では羅列していて。絶望もしないし、希望もない。ただ、なんのリアルも感じないものが溢れていることにイライラするんですよね。それをサウンドでもぶち撒けたくて。そういう曲になったっすね。

―優しさのないもの、人を傷つけるものに対して自分のイライラが生まれてくるっていうこと?

清水:うん、あまりに想像力のない人が多すぎることへのイライラなんでしょうね。思いやりとか優しさって想像力やから。それが欠落している人間が、いろんな物事を汚くしてるんです。想像力のなさから起こる人と人の争いとか、自分の正しさをアピールするだけのために人を潰そうとする状況――そういうものに対するイライラも昔から変わってなくて。

―“CLOSE EYE”は、MVも、白と黒に分かれた人間たちが暴力のループを繰り返すという内容で。<CLOSE EYE / 何もない>と歌って従来の世界とは別の場所へ行こうとするのは、そのループから抜け出すという感覚でもあるんですか。

清水:そう。傷つけ合うことが一番どうでもいいことやから。もはや、日本を変えるとか世界を変えるとかじゃないんですよ。俺らの音楽が好きな人は絶対イライラしてると思うし、世界に対してイライラしているヤツらが集まれるユニティを作ればいいんです。以前は評価されることや売れることが「成し遂げた」ってことになるのかと思ってたけど……今はそれが第一義じゃない。自分たちだけの生き様を誰かに手渡して繋がれる場所を作ることが、「成し遂げた」ってことなんだと思いますね。

―これは突飛な質問かもしれないけど、心の静けさや安住を守るために、外の世界の喧騒を殺すくらいに怒鳴るしかないっていう感覚はあります?

清水:ああー、それはあるな。シャウトって、出るか出ないかわからないものなんですよ。でも、シャウトが出てしまうような瞬間に挑む自分が綺麗やと思うし、その瞬間に心の中に静けさが生まれるっていうか。ライブって、予定調和な時間や約束されたものが一切ないじゃないですか。自分から出てくるものに従うしかない。それがとても綺麗なんです。他のものに一切干渉されずに自分だけを信じられる瞬間って一番安心感があるし、自分本来の姿がそこにあるってことだから。だから……叫んでる時は、自分の真ん中にはぽっかり静寂がある感じがする。

―よくわかります。なんでこんな質問をしたかと言うと、“HIGH WAY BEACH”や“Nothing Anymore”、“Everynight”で歌われている穏やかな時間を守るために外的な喧騒に向かって叫び続けてきた方だと、音楽そのものから感じたからで。

清水:追い求めている原風景とか青さっていうのも、静けさや優しさを感じられる時間としてのものなんでしょうね。たとえば“Everynight”も、何かと安易に繋がれてしまうせいで逆に孤独感が増大してるような世の中を見て、孤独な時間にブチ上がれるアルバムにしたいと思ったところから出てきたんですよ。孤独の中にある静かな時間を救うというか。そういう、人本来の姿になってから繋がれるのが俺の思うユートピアなんですよね。

―以前も<孤独であれ人よ>と歌ったエイスケさんにとって孤独が大きな要素なのは、そして孤独であることで自分だけの存在表明を果たしたいという執念はどういう背景から生まれてきたんだと思います?

清水:基本的には、いろんなものに興味がないだけじゃないですかね。でも時代が放つ何かに対してはずっとイラ立ってるし、孤独でいいっていう音楽に俺自身の寂しさが救われてきたから。孤独の中でしか、自分だけに見える景色や生き様は生まれてこないんです。見てみればわかるじゃないですか、SNSの繋がりなんて言っても、一瞬だけ孤独を解消できる表層的な感覚だけが加速した結果、皮肉なもんで全員がどんどんロンリーになっていってるだけで。

あげく人の孤独をコントロールすることで支持を得ようとする人間も出てきて、その様がめちゃくちゃ醜く見えるんです。だけど俺の思う優しさや思いやりっていうのは、人の孤独につけ込むことではなくて。さっきも想像力と話したけど、みんなっていう言葉じゃなくて、一人ひとりが最初から持ってる孤独に向き合って尊重することが優しさなんですよ。

Age Factory“Merry go round”を聴く(Spotifyを開く

―人を勝手に「みんな」で括る態度が新たな同調圧力を生むし、これだけ個々の声が可視化される時代にあって「みんな」っていう言葉はもはや意味を持たないですよね。

清水:俺は「みんな」っていうのが一番イライラするんですよ。たとえば俺らが出るようなロックフェスもそこには含まれますね。理念もなんもなく、個々のバンドに向き合うこともないフェスが、クソおもんない。

―はい。

清水:バンドを呼ぶ主催者のほうが、バンドが大事にしてるカルチャーを理解するのを怠ってる感じ? あれがおもんない。その感じが蔓延して、それこそ「みんなに向けて」みたいなダッセえ「邦ロック」が生まれてるわけでしょ。

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リリース情報

Age Factory『EVERYNIGHT』
Age Factory
『EVERYNIGHT』(CD)

2020年4月29日(水)発売
価格:2,500円(税込)
UKDZ-0208

1. Dance all night my friends
2. HIGH WAY BEACH
3. Merry go round
4. Peace
5. CLOSE EYE
6. Kill Me
7. Easy
8. Everynight
9. 1994
10. nothing anymore

プロフィール

Age Factory
Age Factory(えいじ ふぁくとりー)

奈良県にて2010年に結成。清水エイスケ(Vo,Gt)、西口直人(Ba,Cho)、増子央人(Dr,Cho)からなるロックバンド。『LOVE』(2016年)、『GOLD』(2018年)に続くフルアルバム『EVERYNIGHT』を4月29日にリリースした。

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