Age Factoryが叫ぶ「殺してみろよ」。優しく生きるための怒号

このインタビュー中、何度も「原風景」「ユニティ」という言葉が出てくる。その言葉が表している通り、4月29日にリリースされた『EVERYNIGHT』の中の多くを満たしているのは、目の前の人と生活、生きてきた過程を大事に包んで自分だけの桃源郷を描こうとする歌の数々だ。そして一方では、<kill me>と叫び、人の醜悪さや優しさを欠いた事象を羅列して「そこには何もない」と断じるハードコアもまた目つきを鋭くしている。

パンク、ポストハードコア、90’s emo、オルタナティブロック――そして今作ではヒップホップやグライムまで――Age Factoryがぶん回してきたものに通底するのは、光が当たることはなくとも懸命に生きる人々が存在表明を果たすために生み出した音楽である点と、だからこそ愛すべき日々の中にいる人々への寛容さを持って生きようとする精神性。数々の優れたラウドミュージックがそうだったように、Age Factoryの轟音・爆音の一番奥にあるのも、驚くほどの凪と静寂だ。つまり、美しいメロディで日々を鼓舞し祝福する歌も、突如暴発するブチギレた獣の咆哮も、背反するものではなく、まったく同じ箱の中にある心の破裂音なのだと思う。圧倒的に日常に近いレベルミュージックとして、キレも温かさもズバ抜けている。

長らく個の時代だ、多様性の時代だと言われてきた昨今だが、むしろこれまで刷り込まれてきた枠や価値観を取っ払った結果として、さらに個の争いと時代の喧騒と混乱は深まるばかりだ。その中にあって、日々の静けさを守るために叫び続けてきた彼らの音楽が時代の何に加担することもなく、誰を傷つけることもなく、自分自身の生きてきた過程と本来的な孤独に向き合う歌を志したのは納得がいく。“1994”や“Everynight”、そして“HIGH WAY BEACH”で歌われているように、何にも流されず、愛するものだけをひたすら愛して生きていくために、深い内省に潜りながら、自分だけの生き様をそのまま桃源郷にしていくための闘争。その核心と確信と革新を、清水エイスケと徹底的に語る。

それぞれバラバラでも、奥深くにあるひとつの感覚によって燃え上がれるロマン。その綺麗さを追い求めるのが自分たちにとってのロックなんですよ。

―『EVERYNIGHT』、素晴らしい作品でした。シンプルに言うと、原点回帰を感じるアルバムだと思って。

清水:うん、そう受け取ってもらえるのは嬉しいっすね。

―それは音楽としての回帰というよりも、生まれ年を冠した“1994”をはじめとして、エイスケさん自身の原風景に還ろうとする歌が多い点に感じたことなんですね。それに伴ってロマンティックな音色と美しいメロディが増えた、深い内省のアルバムだと思ったんです。ご自身ではいかがですか。

清水:俺も、今回はインナーなアルバムになった感覚があって。生活の範囲にある大事なものだけを見つめて曲を作ったので、それが俺自身も「原点やな」って思うポイントなんですけど。でも不思議なのが、俺らとしての原点をテーマにしつつも、音楽的にはパワーアップして未来にいけてる感じがする。俺らの精神的な原点と音楽的な進化がいいバランスで表現できた気がしますね。

Age Factory(えいじ ふぁくとりー)
奈良県にて2010年に結成。清水エイスケ(Vo,Gt)、西口直人(Ba,Cho)、増子央人(Dr,Cho)からなるロックバンド。『LOVE』(2016年)、『GOLD』(2018年)に続くフルアルバム『EVERYNIGHT』を4月29日にリリースした。

―実際、“Easy”はグライムやドリルの影響とハードコアの融合を感じる新境地だし、“Merry go round”でも音の彩りが自由に拡がってますよね。その上で、日常の範囲にある愛や仲間を青臭くストレートに綴った歌が多い点も含めて、自分の原点と原風景がテーマになったのはなぜだったんですか。

清水:うーん……なんでなんやろ? でも間違いなく、俺の生きてきた範囲にあるものが何より一番大事で、それこそが俺のオリジナリティやっていう確信があったんです。生きる中で自分が感じてきたこととか、この時代に生まれた俺の世代にしか見えないエモーショナルな景色をリスナーと共有したいと思ったんですよね。

Age Factory『EVERYNIGHT』(2020年)を聴く(Spotifyを開く

―エイスケさんの世代にしか見えない景色とは何かを伺いたいんですけど、生活の中にあるエモーショナルな景色を音楽にすることは、以前からAge Factoryの歌の特徴のひとつだったと思うんですね。“ロードショー”や“Sunday”も“TONBO”も、日常の中の儚い一瞬を愛でる歌だったわけで。

清水:俺らが音楽で求めてきたものが何かって考えたら、違う人間同士だとしても共通して持っている感覚が重なった時の、想像を超える熱量・無敵感なんですよ。で、それを意識的に叶えようとしたのが『GOLD』だったんです。だけど根本的には、あくまで自分たちが見てきた景色に引き寄せた曲を作って、その上で人が共感できて、生活に持って帰れるものにしたかったはずなんですよ。ある人が体験したことのない景色を歌った曲でも、誰もが一番多感だった頃の原風景に置き換えられるような感覚。それぞれバラバラなはずなのに、奥深くにあるひとつの感覚によって燃え上がれるロマン……その綺麗さを追い求めるのが自分たちにとってのロックなんですよ。

そのテーマを再確認してから圧倒的なスピード感が生まれてきて。周りをまったく気にしなくなったし、周りにいる日本のロックバンドがどうしてるかもどうでもよくなっちゃった。ヒップホップも好きだから聴くけど、そのシーンの動き方とかはどうでもよくて。ひたすら好きなものをいい曲にできるだけのスキルを『GOLD』以降の2年で高めてこられたと思うんです。

Age Factory『GOLD』(2018年)を聴く(Spotifyを開く

―誰もが一番多感だった時期の感覚で通じ合うロマンというのは、言い換えてみると、青春のように儚い時間や、儚いとしても自分を形成してきた一番大事なもので繋がりたいということ?

清水:そう。人なんて最終的には自分の見てる世界がすべてだし、自分の考えてることがすべてなんですよ。SNSとか、見たことのない世界を意識する必要もない。根っから自分たち自身が価値を持ってるはずなんですよね。それは人も一緒で、生きてきた過程が違ったとしても、誰もが自分だけの原風景を持ってる。改めて、その感覚に対してピュアでいたいと思ったんですよ。

―「自分の価値」とは、Age Factoryの音楽の価値であると同時に、人間が存在するだけで価値であるっていう意味でもありますか。

清水:そうそう。その人だけに見える景色を感じながら生きてるだけで価値がある。だからこそ、俺らの生活を歌った曲にそれぞれのロマンを重ねてほしかった。だって、俺が好きなロックバンドはみんなそうだったんですよ。あくまで自分にとってのリアルな世界を歌ってるだけなのに、曲を聴いた自分の生活と感覚を変えてくれてたんです。

しかも、今はSNSだけでもアーティストの情報は得られるような世の中じゃないですか。そんな表層的な情報で同じような発信がされている中だったらなおさら、自分たちの経験して見てきたものが絶対的なオリジナリティになるのは間違いないんですよね。

清水エイスケ

―この作品でも個への回帰が強まっているのは、今おっしゃった時代性とも関係がありますよね。

清水:ああ、今は完全にそうですよね。だから逆に言えば、外側に放つイメージのアルバムを作るのは『GOLD』のタイミングしかなかったんです。バンドとして階段を登ることが必要な時だったし、シンプルにAge Factoryの置かれているステージが物足りなかったから。初めて観る人に対しても、初っ端から殴りかかれる曲が必要だったんです。そこで獲得したステージが自信になって、一切外側を気にしないモードに回帰できたところはあったかもしれないっすね。

―今作はミドルテンポでロマンティックなメロディを聴かせる楽曲が多い一方、“CLOSE EYE”や“Kill Me”のようにブチギレたハードコアも振り切れていて。温かさと一種の暴力性のコントラストが、改めてAge Factoryの音楽の肝だと感じたんです。

清水:今の話で言えば、“HIGH WAY BEACH”と“CLOSE EYE”の内容と音楽性が、特に俺らの唯一無二さを映してる曲やと思ってて。特に大きかったのは、“HIGH WAY BEACH”なんですよ。“HIGH WAY BEACH”っていう、本来は存在しないものを作り出せたことに手応えがあって。俺らの地元(奈良)にはビーチなんてないけど、だけど確かに存在させられたんです。

Age Factory“HIGH WAY BEACH”を聴く(Spotifyを開く

いろんなメディアを自由に使って、どこにでも行ける。だけど、広いところへ行っても自分のアイデンティティを誇れてなかったら自分である意味がないんですよ。

―“HIGH WAY BEACH”で歌われているのは、仲間とともに儚い一瞬を笑い合う情景ですね。

清水:“HIGH WAY BEACH”はRY0N4(ARSKN / 清水エイスケとともに『HEAVEN』というプロジェクトでも活動)と一緒に歌詞を書いたんですけど、自分の周りのヤツらと深いところで共有できる心象風景を「存在」として生み出せたのがデカかったんですよ。朝までスタジオに入って、みんなで車に乗って、ハイウェイを走りながらどうでもいい話をして、笑って……そういう瞬間はフッと過ぎるけど、振り返って「ああいう瞬間の中にいたいな」って思えるのは、そういう一瞬だと思うんです。

―現実に見える・見えないじゃなくて、自分が信じるものと時間をともにできる安心感の象徴として、自分の原風景や、愛する仲間との一時が歌に表れてきたということ?

清水:そう、結局それがいろんな人に通ずるロマンやと思うし、さっき話した「誰にも通ずる原風景」やと思うんですよ。それに、そういう儚くて美しい瞬間を表現できるのが日本語のロックの力やし、俺が好きだったロックバンドの姿なんです。

―以前インタビューした際にルーツとして話してくれたbloodthirsty butchersやeastern youth、LOSTAGEの音楽もまさにそういうものですよね。大事にしてきた心象風景のひとつとして、自分のルーツも思い返したというか。

清水:そうそう。だからね、さっき言ってくれたように俺らは昔から何も変わってないんです。決して難しいことを求めてきたわけじゃなくて、変わらず歌ってきたのは、自分が青くいられる時間へのロマンなんですよね。

西口直人
増子央人

―逆に言えば、青くいられる場所が少ない世の中になっているというか。

清水:それはあるんでしょうね。

―前作の“TONBO”という曲でも、<夕方5時のサイレン もう帰ろうよ / あの日と同じように>と歌われていたじゃないですか。「家に帰る」っていう意味以上に、自分の原風景とは違う外的なものに流されやすくなった人へのアラームとして、手の届く範囲を愛することから自分の心のありかに還ろうっていう意味にも聴こえてきたんですよ。今作は、その本質がクリアに見えやすいアルバムだと思うんですね。

清水:ああ……世の中的に言えば、俺が本当に好きだったロック像が描きにくくなってきてるとは思うんですよ。ストリーミングサービスで海外のアーティストを山ほど聴けるし、SNSでも、自分以外の人の声があまりに多すぎて「自分しか見ていないもの」の価値が流されやすいじゃないですか。「帰ろう」っていうのは、そういう根本に立ち返ることでもあったんでしょうね。そういう時代性に対して、何より自分自身がどうあるのかっていう感覚を、今回のアルバムで研ぎ澄ませたところはあったのかもしれない。

Age Factory“TONBO”を聴く(Spotifyを開く

清水:ただ一方で、俺はこの熱量が一生続くとも思ってなくて。そう思うからこそ「こんな瞬間が永遠に続けばいいのに」って思えるし、純度高く音楽にできるんですよ。維持するでも誇示するでもなく、ただ燃え続けるだけ。その炎を綺麗な色にすることしか考えてないんです。でも、その色を研ぎ澄ますことこそが存在証明じゃないですか。だからもう、ストリーミングで海外の人にも聴かれたほうがいい、アルゴリズムがどうこう、みたいな発想もないんですよね。

―逆に言うと、オリジナリティのある音楽的なトライや自由さは、自分のアイデンティティと立脚点を自覚することから始まるわけで。

清水:そうなんですよね。もちろん、僕の世代は自由にいろんなメディアを使いこなして、どこにでも行けることを知ってる。だけど、広いところへ行っても自分のフィーリングを信じられなければ意味がなくて、それこそ自分のアイデンティティを誇れてなかったら自分である意味がないんですよ。で、俺から見ると、器用にいろんなメディアを使っていても、自分の原風景を信じられていない人が多いように見える。いい顔してうまいこと取り繕ってるだけの、カルチャー面したものが多すぎるんですよ。

―逆に伺うと、エイスケさんにとってのカルチャーって、どういうものを指しますか。

清水:うーん……「新しいもの」ですかね。新しいものと言っても、いろいろあるとは思うんですよ。0から生み出されるものもあるけど、でも2000年代以降は、従来の価値観に対して個人が持っているオリジナリティをミックスさせることで新しさを生むのが前提になってきたし、俺らもそういう世代に生まれて。そもそも今のバンドはみんなミクスチャーじゃないとおかしいくらいじゃないですか。

―まさにそうですね。時代性としてもそれは長年の大きなテーマだし、ミクスチャーであることが前提になってポップミュージックも転がってる。だからこそ混ぜ方や消化の仕方、精神性や必然性が問われるわけですけど。

清水:ただ混ぜるだけなら文脈のないバラバラなものになってしまって、その人自身である意味がなくなるからね。そこでどう文脈を通せるか、自分にしかない消化の仕方を見せられるか。その人だからこその文脈と、個人と個人で受け継がれるものの中で育まれる人の営みこそがカルチャーなんだと思います。

プレイリスト『Listening Together #聴いてつながろう』(Curated by Age Factory)を聴く(Spotifyを開く

―それで言うと、Age Factoryの音楽の中にはパンク、1990年代のエモやオルタナティブロックの匂いが強烈にある。それらの音楽の背景にあるユニティへの意識や、仲間と桃源郷を作ることへの強烈なロマンは歌にもたくさん入ってますよね。

清水:世の中とか世界とか言っても、結局は自分から始まるんです。Age Factoryを好きって言ってくれる人とひとつのユニティを作ることがカルチャーなんですよ。たとえば『HEAVEN』も、俺の思う「自分の場所」って感じ。いいなって思える仲間だけに囲まれたユートピアですよね。昔は「何かを成し遂げる」っていうのは売れたり評価されたりすることだと思ってたけど、それが第一義じゃないから。今までの枠や価値でバンドを測る必要もないし、世の中の価値観だってそうですよね。

昨年奈良NEVERLANDで行われた『HEAVEN pre. 『YEAR END PARTY』』でのライブ。「HEAVEN」は清水エイスケが中心となりRY0N4、Lil Soft Tennisらとともに活動しているプロジェクト。『EVERYNIGHT』のアートワークも「HEAVEN」によるもの。

他のものに一切干渉されずに自分だけを信じられる瞬間に安心感があるし、叫んでる時は、その真ん中に静寂があるんです。

―まさに“CLOSE EYE”は、叩きつけるようなハードコアの中で今おっしゃったことを叫ばれていますよね。「そこには何もない」と断じて、自分だけを見つめろと。

清水:シンプルに、これまでにあった枠が無効化されてる時代やと思うんですよ。アンダーグラウンドとかオーバーグラウンド、マイノリティとマジョリティみたいな線引きも無意味になって。俺らの音楽だって、これまでの音楽がとってきた形をなしてない。

特に俺らは生まれた頃からYouTubeもSNSもあったわけで、俺らにしかない自然な感覚として、どんな音楽も価値観も混ぜられるはずで。だとすれば、従来の価値観や枠には形はないと歌っても、それは生き様として嘘のないことだと思うんです。混ぜることで、自分の居場所を作るしかないんですよ。

―実際、世界をかたどる事象をガーっと羅列する歌になってるんですけど、それが<虐待 差別 レイプ>というラインから始まる点に、エイスケさんの世界に対する衝動と混沌を感じるんです。これはご自身のどんな背景から生まれるんですかね?

清水:俺としては、リアリティを感じられない事象をガーっと書いただけなんです。ニュースを見ていても「なんじゃこのクソみたいなニュースは」って思うけど、それ以上に、自分の中で全然リアリティを感じられないことを“CLOSE EYE”では羅列していて。絶望もしないし、希望もない。ただ、なんのリアルも感じないものが溢れていることにイライラするんですよね。それをサウンドでもぶち撒けたくて。そういう曲になったっすね。

―優しさのないもの、人を傷つけるものに対して自分のイライラが生まれてくるっていうこと?

清水:うん、あまりに想像力のない人が多すぎることへのイライラなんでしょうね。思いやりとか優しさって想像力やから。それが欠落している人間が、いろんな物事を汚くしてるんです。想像力のなさから起こる人と人の争いとか、自分の正しさをアピールするだけのために人を潰そうとする状況――そういうものに対するイライラも昔から変わってなくて。

―“CLOSE EYE”は、MVも、白と黒に分かれた人間たちが暴力のループを繰り返すという内容で。<CLOSE EYE / 何もない>と歌って従来の世界とは別の場所へ行こうとするのは、そのループから抜け出すという感覚でもあるんですか。

清水:そう。傷つけ合うことが一番どうでもいいことやから。もはや、日本を変えるとか世界を変えるとかじゃないんですよ。俺らの音楽が好きな人は絶対イライラしてると思うし、世界に対してイライラしているヤツらが集まれるユニティを作ればいいんです。以前は評価されることや売れることが「成し遂げた」ってことになるのかと思ってたけど……今はそれが第一義じゃない。自分たちだけの生き様を誰かに手渡して繋がれる場所を作ることが、「成し遂げた」ってことなんだと思いますね。

―これは突飛な質問かもしれないけど、心の静けさや安住を守るために、外の世界の喧騒を殺すくらいに怒鳴るしかないっていう感覚はあります?

清水:ああー、それはあるな。シャウトって、出るか出ないかわからないものなんですよ。でも、シャウトが出てしまうような瞬間に挑む自分が綺麗やと思うし、その瞬間に心の中に静けさが生まれるっていうか。ライブって、予定調和な時間や約束されたものが一切ないじゃないですか。自分から出てくるものに従うしかない。それがとても綺麗なんです。他のものに一切干渉されずに自分だけを信じられる瞬間って一番安心感があるし、自分本来の姿がそこにあるってことだから。だから……叫んでる時は、自分の真ん中にはぽっかり静寂がある感じがする。

―よくわかります。なんでこんな質問をしたかと言うと、“HIGH WAY BEACH”や“Nothing Anymore”、“Everynight”で歌われている穏やかな時間を守るために外的な喧騒に向かって叫び続けてきた方だと、音楽そのものから感じたからで。

清水:追い求めている原風景とか青さっていうのも、静けさや優しさを感じられる時間としてのものなんでしょうね。たとえば“Everynight”も、何かと安易に繋がれてしまうせいで逆に孤独感が増大してるような世の中を見て、孤独な時間にブチ上がれるアルバムにしたいと思ったところから出てきたんですよ。孤独の中にある静かな時間を救うというか。そういう、人本来の姿になってから繋がれるのが俺の思うユートピアなんですよね。

―以前も<孤独であれ人よ>と歌ったエイスケさんにとって孤独が大きな要素なのは、そして孤独であることで自分だけの存在表明を果たしたいという執念はどういう背景から生まれてきたんだと思います?

清水:基本的には、いろんなものに興味がないだけじゃないですかね。でも時代が放つ何かに対してはずっとイラ立ってるし、孤独でいいっていう音楽に俺自身の寂しさが救われてきたから。孤独の中でしか、自分だけに見える景色や生き様は生まれてこないんです。見てみればわかるじゃないですか、SNSの繋がりなんて言っても、一瞬だけ孤独を解消できる表層的な感覚だけが加速した結果、皮肉なもんで全員がどんどんロンリーになっていってるだけで。

あげく人の孤独をコントロールすることで支持を得ようとする人間も出てきて、その様がめちゃくちゃ醜く見えるんです。だけど俺の思う優しさや思いやりっていうのは、人の孤独につけ込むことではなくて。さっきも想像力と話したけど、みんなっていう言葉じゃなくて、一人ひとりが最初から持ってる孤独に向き合って尊重することが優しさなんですよ。

Age Factory“Merry go round”を聴く(Spotifyを開く

―人を勝手に「みんな」で括る態度が新たな同調圧力を生むし、これだけ個々の声が可視化される時代にあって「みんな」っていう言葉はもはや意味を持たないですよね。

清水:俺は「みんな」っていうのが一番イライラするんですよ。たとえば俺らが出るようなロックフェスもそこには含まれますね。理念もなんもなく、個々のバンドに向き合うこともないフェスが、クソおもんない。

―はい。

清水:バンドを呼ぶ主催者のほうが、バンドが大事にしてるカルチャーを理解するのを怠ってる感じ? あれがおもんない。その感じが蔓延して、それこそ「みんなに向けて」みたいなダッセえ「邦ロック」が生まれてるわけでしょ。

すでに人が傷つけ合いまくってる世の中だから、“Kill You”じゃなくて“Kill Me”って歌うのが、現存するパンクスのあるべき姿勢なんですよ。

―本当の意味で自分の生きてきた過程やアイデンティティに胸を張ることが、尊重し合って生きていくことの一番重要なポイントだし、個々がプリミティブな感覚を取り戻していくことが、結果として時代性をまとって多くの人に響く音楽になっていくと思うんです。それは今、人としても大きなテーマだと思うし。

清水:すでにいろんな人間が溢れすぎていて、誰にでもわかりやすいものを目指した満遍ないものが一番空っぽやって気付いていくんですよね。「みんな」っていうものに向けることがどれだけ雑で、どれだけ何も見えていないのか。で、自分の生きてきた過程こそがオリジナルであるっていう気持ちとか、それを大事にする青さとか、一番奥にある気持ちによって繋がれた瞬間に「孤独じゃない」って思えるはずなんです。

―たとえば“Dance all night my friends”も、みんなで楽しく踊ろうっていう歌じゃなくて、いつか過ぎ去る人生だからこそ目の前の人とともに今を燃やそうっていう歌になりますよね。Funを求めるんじゃなく、孤独が重なる瞬間にこそロマンがあると訴える歌というか。メロディの儚さがめちゃくちゃいいです。

清水:誰かを踊らせるためにバンドを始めたわけじゃないんですよ。「踊る」っていうのも、それぞれが自分の中に夢中で入り込んでいく感じ。やっぱり、全部矢印が自分に向くんです。だから“OPEN EYE”じゃなくて“CLOSE EYE”やし、“Kill You”じゃなくて“Kill Me”なんですよね。

Age Factory“Kill Me”を聴く(Spotifyを開く

―“Kill Me”という言葉が出てきたのはどうしてなんですか。

清水:もう、これは俺にとってのハードコアスピリットの部分ですよね。「殺してみろよ」って。さっき言ってくれたように、俺も時代が放っている何かに対してイライラしてるのは確かで。その外的なものに対して「殺してみろよ」って言うことで俺なりの中指を立ててるんですよ。「殺す」じゃなくて「殺してみろよ」って言うのが一番ケンカ売ってると思うんで。

―てめえには殺されねえよってことだからね。

清水:そうそう。

―“Kill Me”も“CLOSE EYE”も攻撃的ではあるけど攻撃ではない。何かをぶっ潰したり傷つけたりする歌ではないですよね。それがAge Factoryの音楽の核心であり、強さだと思う。

清水:人の傷つけ合いとか、気に食わないものをぶっ壊すとか、それこそ一番どうでもいいものなんですよ。だから“Kill You”って歌うよりも“Kill Me”って歌うほうが気持ちいいんです。すでに人が傷つけ合いまくってる世の中なわけやから、“Kill You”じゃなくて“Kill Me”って歌うのが、現存するパンクスのあるべき姿勢やと思うんですよ。

―それはめちゃくちゃ大事な指摘で。そもそもパンクって、人を傷つけるためじゃなく人に寛容であるための音楽ですよね。

清水:そう。何かを傷つけたりぶっ壊したりすることがパンクではない。自分自身の何かを壊して、自由になっていくことが俺の思うパンクなんです。ゼロの存在を立証したり、ゼロだと思われている人の声に光を当てたりするのがカッコいい。だとすれば、やっぱりパンクは人を傷つけるためのものじゃなくて、どれだけ真っ直ぐに自分を見つめられるかなんですよね。

―心から同意します。目の前の人に優しくあるためにどうしたらいいのかを考え続けるから、人を傷つけるものに対して怒るのがパンクですよね。そういう意味で、今作とAge Factoryの根底にある優しさ、ハードコアの精神性がよくわかる話です。

清水:なんも変わってないですね。個に向き合って一人ひとりを大事にするから、従来のルールとか価値観を取っ払う勇気が生まれると思うんですよ。これが正しいって言われてたことも、人によっては全然違うものなんだから。自分の目の前の人のために何かを取っ払っていく勇気が、一番キラキラしてる。その感覚を与えられるようなアーティストになれたのが、このアルバムのような気がするんですよ。この作品によって、自分の存在の意味もわかったから。

―その存在の意味を、言葉にして教えてもらってもいいですか。

清水:誰よりも青いってことが、俺の存在の意味じゃないですかね。結局は、自分が好きな人しかいない世界が自分の理想じゃないですか。今目の前にある好きな人、好きな世界をどれだけ大事にできるか、その理想を抱きしめる青さをずっと持っていたい。それは自分の世界に閉じこもるってことじゃなくて、強く生きていくために必要なものをちゃんと掴むってことなんですよね。それに、青いものに近づきたい気持ちって、誰もが持ってるんじゃないかって気がします。

―誰もが青いものに近づけたら、どんなことが起こると思います?

清水:それこそがムーブメントだと思います。誰もが青くなれる場所を作ることこそが、俺の思う「0から作り上げる」ってことですね。だって、青くいられる場所が全然ないから。その場所を作ることで、何よりも俺が救われるんですよね。理想や綺麗事なんて簡単に捨てられていく世界の中でも、それは貫きたいっすね。

リリース情報
Age Factory
『EVERYNIGHT』(CD)

2020年4月29日(水)発売
価格:2,500円(税込)
UKDZ-0208

1. Dance all night my friends
2. HIGH WAY BEACH
3. Merry go round
4. Peace
5. CLOSE EYE
6. Kill Me
7. Easy
8. Everynight
9. 1994
10. nothing anymore

プロフィール
Age Factory
Age Factory (えいじ ふぁくとりー)

奈良県にて2010年に結成。清水エイスケ(Vo,Gt)、西口直人(Ba,Cho)、増子央人(Dr,Cho)からなるロックバンド。『LOVE』(2016年)、『GOLD』(2018年)に続くフルアルバム『EVERYNIGHT』を4月29日にリリースした。



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