Age Factoryが叫ぶ「殺してみろよ」。優しく生きるための怒号

Age Factoryが叫ぶ「殺してみろよ」。優しく生きるための怒号

Age Factory『EVERYNIGHT』
インタビュー・テキスト・編集
矢島大地(CINRA.NET編集部)
撮影:Kazma Kobayashi、Naoki Yamashita、西槇太一
2020/05/07
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このインタビュー中、何度も「原風景」「ユニティ」という言葉が出てくる。その言葉が表している通り、4月29日にリリースされた『EVERYNIGHT』の中の多くを満たしているのは、目の前の人と生活、生きてきた過程を大事に包んで自分だけの桃源郷を描こうとする歌の数々だ。そして一方では、<kill me>と叫び、人の醜悪さや優しさを欠いた事象を羅列して「そこには何もない」と断じるハードコアもまた目つきを鋭くしている。

パンク、ポストハードコア、90’s emo、オルタナティブロック――そして今作ではヒップホップやグライムまで――Age Factoryがぶん回してきたものに通底するのは、光が当たることはなくとも懸命に生きる人々が存在表明を果たすために生み出した音楽である点と、だからこそ愛すべき日々の中にいる人々への寛容さを持って生きようとする精神性。数々の優れたラウドミュージックがそうだったように、Age Factoryの轟音・爆音の一番奥にあるのも、驚くほどの凪と静寂だ。つまり、美しいメロディで日々を鼓舞し祝福する歌も、突如暴発するブチギレた獣の咆哮も、背反するものではなく、まったく同じ箱の中にある心の破裂音なのだと思う。圧倒的に日常に近いレベルミュージックとして、キレも温かさもズバ抜けている。

長らく個の時代だ、多様性の時代だと言われてきた昨今だが、むしろこれまで刷り込まれてきた枠や価値観を取っ払った結果として、さらに個の争いと時代の喧騒と混乱は深まるばかりだ。その中にあって、日々の静けさを守るために叫び続けてきた彼らの音楽が時代の何に加担することもなく、誰を傷つけることもなく、自分自身の生きてきた過程と本来的な孤独に向き合う歌を志したのは納得がいく。“1994”や“Everynight”、そして“HIGH WAY BEACH”で歌われているように、何にも流されず、愛するものだけをひたすら愛して生きていくために、深い内省に潜りながら、自分だけの生き様をそのまま桃源郷にしていくための闘争。その核心と確信と革新を、清水エイスケと徹底的に語る。

それぞれバラバラでも、奥深くにあるひとつの感覚によって燃え上がれるロマン。その綺麗さを追い求めるのが自分たちにとってのロックなんですよ。

―『EVERYNIGHT』、素晴らしい作品でした。シンプルに言うと、原点回帰を感じるアルバムだと思って。

清水:うん、そう受け取ってもらえるのは嬉しいっすね。

―それは音楽としての回帰というよりも、生まれ年を冠した“1994”をはじめとして、エイスケさん自身の原風景に還ろうとするような歌が多い点に感じたことなんですね。それに伴ってロマンティックな音色と美しいメロディが増えた、深い内省のアルバムだと思ったんです。ご自身ではいかがですか。

清水:俺も、今回はインナーなアルバムになった感覚があって。生活の範囲にある大事なものだけを見つめて曲を作ったので、それが俺自身も「原点やな」って思うポイントなんですけど。でも不思議なのが、俺らとしての原点をテーマにしつつも、音楽的にはパワーアップして未来にいけてる感じがする。俺らの精神的な原点と音楽的な進化がいいバランスで表現できた気がしますね。

Age Factory(えいじ ふぁくとりー)<br>奈良県にて2010年に結成。清水エイスケ(Vo,Gt)、西口直人(Ba,Cho)、増子央人(Dr,Cho)からなるロックバンド。『LOVE』(2016年)、『GOLD』(2018年)に続くフルアルバム『EVERYNIGHT』を4月29日にリリースした。
Age Factory(えいじ ふぁくとりー)
奈良県にて2010年に結成。清水エイスケ(Vo,Gt)、西口直人(Ba,Cho)、増子央人(Dr,Cho)からなるロックバンド。『LOVE』(2016年)、『GOLD』(2018年)に続くフルアルバム『EVERYNIGHT』を4月29日にリリースした。

―実際、“Easy”はグライムやドリルの影響とハードコアの融合を感じる新境地だし、“Merry go round”でも音の彩りが自由に拡がってますよね。その上で、日常の範囲にある愛や仲間を青臭くストレートに綴った歌が多い点も含めて、自分の原点や原風景がテーマになったのはなぜだったんですか。

清水:うーん……なんでなんやろ? でも間違いなく、俺の生きてきた範囲にあるものが何より一番大事で、それこそが俺のオリジナリティやっていう確信があったんです。生きる中で自分が感じてきたこととか、この時代に生まれた俺の世代にしか見えないエモーショナルな景色をリスナーと共有したいと思ったんですよね。

Age Factory『EVERYNIGHT』(2020年)を聴く(Spotifyを開く

―エイスケさんの世代にしか見えない景色とは何かを伺いたいんですけど、生活の中にあるエモーショナルな景色を音楽にすることは、以前からAge Factoryの歌の特徴のひとつだったと思うんですね。“ロードショー”や“Sunday”も“TONBO”も、日常の中の儚い一瞬を愛でる歌だったわけで。

清水:俺らが音楽で求めてきたものが何かって考えたら、違う人間同士だとしても共通して持っている感覚が重なった時の、想像を超える熱量・無敵感なんですよ。で、それを意識的に叶えようとしたのが『GOLD』だったんです。だけど根本的には、あくまで自分たちが見てきた景色に引き寄せた曲を作って、その上で人が共感できて、生活に持って帰れるものにしたかったはずなんですよ。ある人が体験したことのない景色を歌った曲でも、誰もが一番多感だった頃の原風景に置き換えられるような感覚。それぞれバラバラなはずなのに、奥深くにあるひとつの感覚によって燃え上がれるロマン……その綺麗さを追い求めるのが自分たちにとってのロックなんですよ。

そのテーマを再確認してから圧倒的なスピード感が生まれてきて。周りをまったく気にしなくなったし、周りにいる日本のロックバンドがどうしてるかもどうでもよくなっちゃった。ヒップホップも好きだから聴くけど、そのシーンの動き方とかはどうでもよくて。ひたすら好きなものをいい曲にできるだけのスキルを『GOLD』以降の2年で高めてこられたと思うんです。

Age Factory『GOLD』(2018年)を聴く(Spotifyを開く

―誰もが一番多感だった時期の感覚で通じ合うロマンというのは、言い換えてみると、青春のように儚い時間や、儚いとしても自分を形成している一番大事なもので繋がりたいということ?

清水:そう。人なんて最終的には自分の見てる世界がすべてだし、自分の考えてることがすべてなんですよ。SNSとか、見たことのない世界を意識する必要もない。根っから自分たち自身が価値を持ってるはずなんですよね。それは人も一緒で、生きてきた過程が違ったとしても、誰もが自分だけの原風景を持ってる。改めて、その感覚に対してピュアでいたいと思ったんですよ。

―「自分の価値」とは、Age Factoryの音楽の価値であると同時に、人間が存在するだけで価値であるっていう意味でもありますか。

清水:そうそう。その人だけに見える景色を感じながら生きてるだけで価値がある。だからこそ、俺らの生活を歌った曲にそれぞれのロマンを重ねてほしかった。だって、俺が好きなロックバンドはみんなそうだったんですよ。あくまで自分にとってのリアルな世界を歌ってるだけなのに、曲を聴いた自分の生活と感覚を変えてくれてたんです。

しかも、今はSNSだけでもアーティストの情報は得られるような世の中じゃないですか。そんな表層的な情報で同じような発信がされている中だったらなおさら、自分たちの経験して見てきたものが絶対的なオリジナリティになるのは間違いないんですよね。

清水エイスケ
清水エイスケ

―この作品でも個への回帰が強まっているのは、今おっしゃった時代性とも関係がありますよね。

清水:ああ、今は完全にそうですよね。だから逆に言えば、外側に放つイメージのアルバムを作るのは『GOLD』のタイミングしかなかったんです。バンドとして階段を登ることが必要な時だったし、シンプルにAge Factoryの置かれているステージが物足りなかったから。初めて観る人に対しても、初っ端から殴りかかれる曲が必要だったんです。そこで獲得したステージが自信になって、一切外側を気にしないモードに回帰できたところはあったかもしれないっすね。

―今作はミドルテンポでロマンティックなメロディを聴かせる楽曲が多い一方、“CLOSE EYE”や“Kill Me”のようにブチギレたハードコアも振り切れていて。温かさと一種の暴力性のコントラストが、改めてAge Factoryの音楽の肝だと感じたんです。

清水:今の話で言えば、“HIGH WAY BEACH”と“CLOSE EYE”の内容と音楽性が、特に俺らの唯一無二さを映してる曲やと思ってて。特に大きかったのは、“HIGH WAY BEACH”なんですよ。“HIGH WAY BEACH”っていう、本来は存在しないものを作り出せたことに手応えがあって。俺らの地元(奈良)にはビーチなんてないけど、だけど確かに存在させられたんです。

Age Factory“HIGH WAY BEACH”を聴く(Spotifyを開く

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リリース情報

Age Factory『EVERYNIGHT』
Age Factory
『EVERYNIGHT』(CD)

2020年4月29日(水)発売
価格:2,500円(税込)
UKDZ-0208

1. Dance all night my friends
2. HIGH WAY BEACH
3. Merry go round
4. Peace
5. CLOSE EYE
6. Kill Me
7. Easy
8. Everynight
9. 1994
10. nothing anymore

プロフィール

Age Factory
Age Factory(えいじ ふぁくとりー)

奈良県にて2010年に結成。清水エイスケ(Vo,Gt)、西口直人(Ba,Cho)、増子央人(Dr,Cho)からなるロックバンド。『LOVE』(2016年)、『GOLD』(2018年)に続くフルアルバム『EVERYNIGHT』を4月29日にリリースした。

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