Hi-STANDARD、ストリーミングサービス解放。闘争と軌跡を辿る

Hi-STANDARD、ストリーミングサービス解放。闘争と軌跡を辿る

2020/04/23
テキスト・編集
矢島大地(CINRA.NET編集部)

本当の意味で、誰もが自由になれる場所として開かれたHi-STANDARD

『THE GIFT』とそのリリースツアーを観て感じた大きな変化とは、「ハイスタはみんなのものである」と受け入れた3人の姿だった。かつては3人だけの聖域だったハイスタが、マイノリティパワーでもなく拒絶でもなく、自分たちを愛してくれる人たちへの寛容さを持って突き進む姿がくっきりと音楽に刻まれていた。具体的に言えば、スピードよりも歌心が前面に出た『THE GIFT』の楽曲と、その楽曲によって世代を超えた合唱を生み出すライブに「新たなハイスタ」を見たのである。3人の爆走と爆撃のようなサウンドがバチっとハマっていく快感は変わらないまま、しかし“All Generations”“We’re All Grown Up”と歌った通り、自分たちが作り上げてきたハイスタ像ではなく、歴史を重ねてきた上で今の自分たちを真っ向から表現することこそがハイスタになるのだと。ノスタルジーなど入り込む隙もなく、あくまで今と未来だけを見据えて音を鳴らす点にこそ、ハイスタを感じたのだった。

Hi-STANDARD

『THE GIFT』のツアーでは、ハイスタとして初めてアリーナでのライブを行った。それは、より多くの人に観てもらうためであると同時に、かつて自分たちが拒み続けた柵や制限があったとしても、今は大きな歌によって心の距離を縮められるのだという確信の表れだったのだろう。そうした変化があった上での、ツアーファイナルのさいたまスーパーアリーナ公演は心底感動的だった。終演後、アリーナの観客が3分の1くらいになった頃に突如“My Heart Feels So Free”を鳴らしてサプライズアンコールがスタート。急に始まったアンコールに半狂乱となった観客は、ブロック分けも柵も無視して最前へ駆けていく。その姿は、ピースな暴動というか、凶暴すぎる多幸感というか、ハイスタが追い求め続けた本当の自由を感じさせるものだった。

Hi-STANDARD“My Heart Feels So Free”を聴く(Spotifyを開く

そのツアーに続いて2018年に開催された『THE GIFT EXTRA TOUR』は、前年のツアーで回ることのできなかった土地を回るという趣旨だったが、ここでもハイスタのさらなるビルドアップを見ることとなった。このツアーの前に『SOUNDS LIKE SHIT』が公開されたことが大きかったのだろう。バンドの中だけに秘められていたストーリーを個々が曝け出したことによって、本当の意味で3人がイーブンになったと感じさせるアンサンブルが鳴っていた(参考記事:Hi-STANDARDは更なる「自由」を手にした。横浜アリーナにて )。3音が寄り添うのではなく、ただただ同じスピードで前に向かって猛進し、ぐんぐん昇り続けていく様の快感ったら。この模様は、ストリーミングサービスで全楽曲が解禁されたのと同時にサプライズリリースされた『Live at YOKOHAMA ARENA 20181222』(ハイスタにとって初となるライブアルバムだ)でぜひとも体感してほしい。

Hi-STANDARD

Hi-STANDARD『Live at YOKOHAMA ARENA 20181222』(2020年)を聴く(Spotifyを開く

この原稿を書いている今、世界はコロナウイルス禍の真っ只中だ。それでも「闇にいるなら光を探せ。光がねえなら自分が輝け」という短い言葉から雪崩れ込む“Stay Gold”には、やはり問答無用の勇気をもらう。かつてPIZZA OF DEATH内のコラムに横山が「音楽で世界を変えることはできないが、音楽にケツを蹴り上げられたヤツが世界を変えていくんだ」という旨の言葉を綴っていたのが今も忘れられない。恒岡が「3人でHi-STANDARDですから。ふたり(難波と横山)のことも愛していますし、みんなのことも愛しています」と叫んだように、難波が「みんなにも仲間と友達がいると思うんだ。その友達が落ち込んでいたら、助けてあげてね。俺も、仲間に救われてここに立っているから」と語ったように、そして何よりHi-STANDARDが体現してきたように、隣にいる仲間を愛して手を差し伸べることから笑顔が生まれて、自分の目の前の世界が変わっていくのだと、信じたくなる。

<I know no one can stop you / No one really can / Stay free>(“Free”)

そんな綺麗事じゃ済まない世界だとはわかっている。わかっているけど、それでもどうにか掴みたい綺麗事に手を伸ばす気持ちをもたらしてくれるのが、Hi-STANDARDなのだ。

Hi-STANDARD

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リリース情報

Hi-STANDARD『SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD / ATTACK FROM THE Far East 3』
Hi-STANDARD
『SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD / ATTACK FROM THE Far East 3』(2DVD)

2020年4月22日(水)発売
価格:4,950円(税込)
PZBA-12/13

Hi-STANDARD
『SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD』(DVD)

2020年4月22日(水)発売
価格:3,850円(税込)
PZBA-14

プロフィール

Hi-STANDARD(はい すたんだーど)

1991年結成。恒岡章(Dr)、難波章浩(Vo,Ba)、横山健(Gt,Cho)からなるパンクバンド。1994年に『LAST OF SUNNY DAY』をリリースしてデビュー。フルアルバム『GROWING UP』『ANGRY FIST』『MAKING THE ROAD』は海外でもリリースされ、『MAKING THE ROAD』はインディーズ流通では異例となる国内外合計100万枚のセールスを記録した。1999年からはPIZZA OF DEATH RECORDSを独立させ、完全DIYでの活動を展開。『AIR JAM 2000』以降は長期の活動休止に入るも、『AIR JAM 2011』にて活動を再開。2016年にはシングル『ANOTHER STARTING LINE』を、2017年にはアルバム『THE GIFT』をリリースし、全国ツアーも展開。2018年に公開されたドキュメンタリー映画『SOUNDS LIKE SHIT the story of Hi-STANDARD』のパッケージ作品が4月22日にリリースされ、同日に、ストリーミングサービスにて全曲を解放した。

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