Hi-STANDARD、ストリーミングサービス解放。闘争と軌跡を辿る

Hi-STANDARD、ストリーミングサービス解放。闘争と軌跡を辿る

2020/04/23
テキスト・編集
矢島大地(CINRA.NET編集部)

Hi-STANDARDから連なるPIZZA OF DEATHのイズム。日本のパンクが転がってきた歴史

Hi-STANDARD

プレイリスト『”Punk Japan” PIZZA OF DEATH特集』を聴く(Spotifyを開く

実際、ハイスタが活動をストップしている間にもPIZZA OF DEATH RECORDSからは日本のロックシーンにおける重要なバンドが輩出されていったし、シーンの土壌を両足で踏みしめてきたレーベルのひとつとしてPIZZA OF DEATHがあったからこそ、メロディックパンクやラウドミュージックがカウンターとユナイトを繰り返して発展してきたのは間違いない。もちろん、そこで大事なのはハイスタから連なるPIZZA OF DEATHの歴史だけではなく、20年以上の間ストップせずにインディペンデントな活動を叶えてきたBRAHMANのようなバンドがいたことも超重要だ。どんな時も一切止まらずに進み続けた彼らの歴史には改めて敬服する。さらにTHE MAD CAPSULE MARKETSのように、ハイスタとは出自のシーンも音楽性も異なるバンドが世界へ進出したことも、日本のラウドミュージックの太い文脈を生み出した。「AIR JAM世代」という言葉で語れることではなく、同世代の絆といった言葉でもなく、ハイスタとはまったく違う形で、あるいはハイスタの近くにいたからこそ異なる行動原理を求道し続けてきたバンドたちのプライドによって、シーンは転がってきたのだ。

BRAHMAN『梵唄 -bonbai-』(2018年)を聴く(Spotifyを開く

THE MAD CAPSULE MARKETS『1997-2004』(2004年)を聴く(Spotifyを開く

と、ここまで書いておいてなんだが、PIZZAを「パンクレーベル」という言葉だけで語るのには、少しだけ違和感がある。今回解禁されたPIZZAの全カタログ1127曲を見ればわかる通り、決して「パンクロックであること」にこだわっているレーベルではない。まさに『AIR JAM』の話とも重なるが、先達とは異なる方法論と行動原理でもってインディペンデントな活動を行うバンドと、その精神性に伴った音楽へのリスペクトを表現してきたのがPIZZA OF DEATHだと言えるだろう。関西地下のハードコアシーンを席巻してきたSANDや、ニュースクールハードコアの突然変異のように登場したMEANINGなどもそうだ。自主で海外ツアーを回ったり、すべてのマネジメントを自分たち自身で行ったりする中で他には見ない音楽性とユニティを育んできた、ユニークなバンドがずらりと並んでいる。

MEANING『150』(2014年)を聴く(Spotifyを開く

SAND『DEATH TO SHEEPLE』(2015年)を聴く(Spotifyを開く

メジャーレーベル内にPIZZAがあった頃から、SUPER STUPIDやHUSKING BEE、SHERBETなど、ユニークな歌と国境を無視した音楽性を持つバンドをフックアップし、独立後にはMOGA THE ¥5やCOMEBACK MY DAUGHTERSといった、ポストハードコア~90’s emoの血を色濃く受け継いだオルタナティブロックもリリース。ASPARAGUSの作品を3P3Bと同時にPIZZAからリリースすることもあった。近年で言えば、ストレートなパンクロックのまま全国を巻き込む存在へと駆け上がったWANIMAを輩出したことや、ライブハウスを主戦場にするバンドを多くリリースしてきたことに対してPIZZA自身がカウンターを打つように、ストリートライブで頭角を表したSuspended 4thを最前線へ送り出したことが大きなトピックだろう。

MOGA THE ¥5&NAHT『A Strange Stroke of Fate』(2002年)を聴く(Spotifyを開く

COMEBACK MY DAUGHTERS『Spitting Kisses』(2004年)を聴く(Spotifyを開く

F.I.B『FIGURE』(2009年)を聴く(Spotifyを開く

WANIMA『Are You Coming?』(2015年)を聴く(Spotifyを開く

Suspended 4th『GIANTSTAMP』(2019年)を聴く(Spotifyを開く

COUNTRY YARD『The Roots Evolved』(2020年)を聴く(Spotifyを開く

そして今回解禁された作品の中で、HAWAIIAN6が2002年にリリースした『SOULS』はPIZZA OF DEATHのアティテュードを示す上でも、パンクシーンがどう転がってきたのかを知る上でも改めて重要な作品だ。ハイスタの台頭によって、カラッとした明るさと力強い歌唱が大きな要素だと捉えられたメロディックパンクに対して、マイナーコードと泣きの強い歌と哲学的なリリックを持ち込んだのがHAWAIIAN6だった。ハイスタが活動休止した2000年から間髪入れず、ハイスタの幻想を追うことよりも前時代をひっくり返すことにこそパンクが宿るのだと表現してきたのがPIZZA OF DEATHであり、ハイスタから連なるイズムなのだろう。

HAWAIIAN6『SOULS』(2002年)を聴く(Spotifyを開く
HAWAIIAN6の1stフルアルバム。横山健がプロデュースを手掛けている

ハイスタ以降の世代の動向を見ても、先に述べた「カウンターの歴史」によって発展し、繋がってきたものが多くある。たとえばMONGOL800もDragon Ashも、ELLEGARDENも10-FEETもマキシマム ザ ホルモンも、前時代とは異なる行動原理を突き詰めることで革命を起こしてきた。『AIR JAM』がまさにそうだったように、ハードコアやパンク、ヒップホップが背景として持っている「ユニティ」への意識がタテとヨコの強固な繋がりになって、だからこそ反動やカウンターが繰り返されてきたことがそのまま音楽的な面白さになってきたのだと改めて実感する。

『SOUNDS LIKE SHIT』より。ハイスタ最初期のライブ映像
『SOUNDS LIKE SHIT』より。ハイスタ最初期のライブ映像

再びハイスタの話に戻ろう。11年間の活動休止によって失われていたバンドのグルーヴを徐々に取り戻しながらも2012年以降は目立った活動のなかったハイスタだが、2015年にはFAT MIKEが主宰するFAT WRECK CHORDSのアニバーサリーイベント『FAT WRECKED 25 YEARS』、BRAHMANの20周年を飾った『尽未来際 ~尽未来祭~』、そしてSLANGが地元・札幌で主催する『POWER STOCK』と、突如エンジンがかかったかのように盟友のイベントへ立て続けに出演。すると2016年に事前告知なしの完全ゲリラでリリースしたシングル『ANOTHER STARTING LINE』は店頭が大パニックになるほどの狂騒を生み、名実ともに現在進行形のバンドとして完全体となったことを印象付けた。

では、2011年から2016年まで、11年越しの再始動からさらに5年の長い歳月がかかったのはなぜなのかーー『AIR JAM 2011』で横山が「日本のために(3人が)集まったんだよ」と語ったような「日本のためのハイスタ」ではなく、あくまで3人のためのハイスタを取り戻すための人間関係修正と、新たなバンドグルーヴの構築が必要だったからなのだろう。ただ人が集まることがバンドなのではなく人生観と精神性の共有こそがバンドなのだと捉えている3人らしい、ハイスタの人間味がこの5年間には表れている。

さらに、これもゲリラ的に街頭のビルボードを用いてリリースが告知された2017年のアルバム『THE GIFT』もチャート1位を獲得。店頭リリースの際には、それまでVHSでしか視聴できなかった『AIR JAM 2000』でのライブを丸ごとパッケージしたDVDをサプライズで発売し、こちらにも巨大な歓喜の声が上がった。つくづく、誰も果たしていないことを探求し、3人自身がエキサイトできるアイディアを大事にし続けるバンドである。

Hi-STANDARD『THE GIFT』(2017年)を聴く(Spotifyを開く

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リリース情報

Hi-STANDARD『SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD / ATTACK FROM THE Far East 3』
Hi-STANDARD
『SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD / ATTACK FROM THE Far East 3』(2DVD)

2020年4月22日(水)発売
価格:4,950円(税込)
PZBA-12/13

Hi-STANDARD
『SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD』(DVD)

2020年4月22日(水)発売
価格:3,850円(税込)
PZBA-14

プロフィール

Hi-STANDARD(はい すたんだーど)

1991年結成。恒岡章(Dr)、難波章浩(Vo,Ba)、横山健(Gt,Cho)からなるパンクバンド。1994年に『LAST OF SUNNY DAY』をリリースしてデビュー。フルアルバム『GROWING UP』『ANGRY FIST』『MAKING THE ROAD』は海外でもリリースされ、『MAKING THE ROAD』はインディーズ流通では異例となる国内外合計100万枚のセールスを記録した。1999年からはPIZZA OF DEATH RECORDSを独立させ、完全DIYでの活動を展開。『AIR JAM 2000』以降は長期の活動休止に入るも、『AIR JAM 2011』にて活動を再開。2016年にはシングル『ANOTHER STARTING LINE』を、2017年にはアルバム『THE GIFT』をリリースし、全国ツアーも展開。2018年に公開されたドキュメンタリー映画『SOUNDS LIKE SHIT the story of Hi-STANDARD』のパッケージ作品が4月22日にリリースされ、同日に、ストリーミングサービスにて全曲を解放した。

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