Hi-STANDARD、ストリーミングサービス解放。闘争と軌跡を辿る

Hi-STANDARD、ストリーミングサービス解放。闘争と軌跡を辿る

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矢島大地(CINRA.NET編集部)

1990年代、Hi-STANDARDが起こした革命

Hi-STANDARD<br>1991年結成。恒岡章(Dr)、難波章浩(Vo,Ba)、横山健(Gt,Cho)からなるパンクバンド。1994年に『LAST OF SUNNY DAY』をリリースしてデビュー。フルアルバム『GROWING UP』『ANGRY FIST』『MAKING THE ROAD』は海外でもリリースされ、『MAKING THE ROAD』はインディーズ流通では異例となる国内外合計100万枚のセールスを記録した。1999年からはPIZZA OF DEATH RECORDSを独立させ、完全DIYでの活動を展開。『AIR JAM 2000』以降は長期の活動休止に入るも、『AIR JAM 2011』にて活動を再開。2016年にはシングル『ANOTHER STARTING LINE』を、2017年にはアルバム『THE GIFT』をリリースし、全国ツアーも展開。2018年に公開されたドキュメンタリー映画『SOUNDS LIKE SHIT the story of Hi-STANDARD』のパッケージ作品が4月22日にリリースされ、同日に、ストリーミングサービスにて全曲を解放した。
Hi-STANDARD
1991年結成。恒岡章(Dr)、難波章浩(Vo,Ba)、横山健(Gt,Cho)からなるパンクバンド。1994年に『LAST OF SUNNY DAY』をリリースしてデビュー。フルアルバム『GROWING UP』『ANGRY FIST』『MAKING THE ROAD』は海外でもリリースされ、『MAKING THE ROAD』はインディーズ流通では異例となる国内外合計100万枚のセールスを記録した。1999年からはPIZZA OF DEATH RECORDSを独立させ、完全DIYでの活動を展開。『AIR JAM 2000』以降は長期の活動休止に入るも、『AIR JAM 2011』にて活動を再開。2016年にはシングル『ANOTHER STARTING LINE』を、2017年にはアルバム『THE GIFT』をリリースし、全国ツアーも展開。2018年に公開されたドキュメンタリー映画『SOUNDS LIKE SHIT the story of Hi-STANDARD』のパッケージ作品が4月22日にリリースされ、同日に、ストリーミングサービスにて全曲を解放した。

プレイリスト『This Is Hi-STANDARD』を聴く(Spotifyを開く

Hi-STANDARD(通称:ハイスタ)の全作品が、主要ストリーミングサービスにて一挙に視聴解禁された。

ハイスタが築いたPIZZA OF DEATH RECORDSがTOY’S FACTORYのレーベル内レーベルだった時代の作品ももちろん、FAT WRECK CHORDSからリリースされた海外盤のジャケットが見られるのも嬉しいポイントだ。そして、PIZZA OF DEATH RECORDSの全カタログ(100タイトル・1127曲)も同時に解放。1990年代に日本のメロディックパンク、ひいては2020年まで脈々と連なるラウドミュージックの太い文脈を生み出したバンドの軌跡を総ざらいできる意味でも、1990年代からDIYを実践し誰よりも自由を体現してきたバンドがどのようにして人々のサウンドトラックになってきたのかを改めて知る意味でも、大きな山が動いたと言えるだろう。

Hi-STANDARDは、難波章浩(Vo,Ba / NAMBA69)、恒岡章(Dr / CUBISMO GRAFICO FIVE、summertime)、横山健(Gt,Cho / Ken Yokoyama、BBQ CHICKENS)からなる3ピースバンドだ。1999年に、それまではTOY’S FACTORY傘下のレーベルだったPIZZA OF DEATH RECORDSを完全に自分たちの城として独立させ、3人だけの手でバンドと人生を動かしてきた。人生の結晶としてのハイスタに3人以外の判断が入ることを徹底的に拒み、DIYという言葉と信念を日本の音楽シーンに根付かせた。テレビには出ない。文字媒体での露出も神出鬼没。衣装で着飾ることはなく、着の身着のままステージでロックし続けるだけーー。いわゆるバンドブームの反動によって、管理と商業の象徴として語られるようになったメジャーへの反発が生まれ始めていた1991年に結成された彼らは、ファッションにしろプロモーション方法にしろ、そしてパンクの在り方自体を変えた楽曲たちにしろ、従来の方法論に沿うことの一切を嫌い続けた。FAT MIKE(NOFX)率いるFat Wreck Chordsと契約しての海外進出も含めて何から何まで前代未聞だったし、完全自主のまま数万人を動員するバンドへ駆け上がって天下統一するという、当時の日本で誰も成し遂げたことのない音楽革命を起こしたのがHi-STANDARDだった。

Hi-STANDARD

では、なぜ彼らは従来の音楽シーンにカウンターを打ち続けたのか? 言うまでもなく、不純物と管理が一切届かない自由と遊び場を作ること自体が彼らにとってのバンドの意味そのものだったからだろう。前世代のムーブメントも結局は「作られたもの」だと感じた彼らが「じゃあ自分たちだけのユートピアを作ってしまおう」という思想を持つのはごく自然だっただろうし、本当に自由な遊び場がないなら作ればいいというアティテュードが、パンクの精神性やストリートカルチャーに接続していった流れも頷ける。パンクもハードコアもヒップホップも街という遊び場で合流し、メロディックパンクの呼称がまだなかった頃に初期Hi-STANDARDが参加したコンピレーション『SHAKE A MOVE』(1992年)などでは、「ミクスチャー」という呼称と括りが生まれ始めていた。

そうそう、ハイスタが主催してきた『AIR JAM』も一般的にはパンクフェスとして語られるものの、何より重要なのは、音楽としてのパンクロックをプレゼンテーションしていることではなく、パンク、ヒップホップ、オルタナティブロック、スカ、ラップメタル、ハードコアを問わず「存在表明の武器として生まれてきた音楽」を集合させることで自分たちだけの遊び場を広げようという意志だ。前述したバンドシーン全体の閉塞感をぶち抜くような当時のマイノリティパワーがコアのコアまで行ったことによって爆発的な求心力になり、制限のない自由を希求するアティテュードと夢があらゆる人の青春に重なって、巨大なシーンになった。

『SOUNDS LIKE SHIT』より。『AIR JAM 2000』のライブ

『SOUNDS LIKE SHIT』より。『AIR JAM 2000』のライブ

『SOUNDS LIKE SHIT』より。『AIR JAM 2000』のライブ
『SOUNDS LIKE SHIT』より。『AIR JAM 2000』のライブ

もちろん、ハイスタがそれだけの求心力を獲得したのは音楽そのものが革新的だったからこそだ。自分たちだけの場所を作ろうとする意志がパンクロックに共鳴した上で、それまでのパンクが拒んできたラブソングも傷心も、思い切りスウィートなメロディでぶっ放す。ただラウドで直情的なだけではない、ブルースもサーフロックもドゥーワップもごった煮にした芳醇な音楽性が作品ごとに確認できるだろう。その音楽的な背景は、各作品に収録されているオールディーズのカバーからも窺い知れる。1999年にインディーズ流通の作品としては異例となる国内外100万枚のセールスを叩き出した『MAKING THE ROAD』も、音楽性としてのパンクロックを十二分にはみ出したアイディアと遊び心に溢れている作品だ。

Hi-STANDARD『MAKING THE ROAD』(1999年)を聴く(Spotifyを開く

パンクロックをなぞることがパンクロックになるのではなく、従来の価値観とは異なっても、自分たちのリアルを真っ向から表明して歌い鳴らすことこそがパンクなんだと。恋も友情も政治的な主張もバカしてるだけの瞬間も同線上にあって、その全部が自分たちを形成する大事なものなんだと。ただありのままを表明することが、必然的に音楽としても精神性としても既存の枠をはみ出していく。用意された型など関係ない。人生を選ぶのは自分自身でなければ意味がない。そんな姿勢が一切ブレないのが、ハイスタの素晴らしさと輝きだった。


『ANGRY FIST』(1997年)収録


『MAKING THE ROAD』(1999年)収録

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リリース情報

Hi-STANDARD『SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD / ATTACK FROM THE Far East 3』
Hi-STANDARD
『SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD / ATTACK FROM THE Far East 3』(2DVD)

2020年4月22日(水)発売
価格:4,950円(税込)
PZBA-12/13

Hi-STANDARD
『SOUNDS LIKE SHIT : the story of Hi-STANDARD』(DVD)

2020年4月22日(水)発売
価格:3,850円(税込)
PZBA-14

プロフィール

Hi-STANDARD(はい すたんだーど)

1991年結成。恒岡章(Dr)、難波章浩(Vo,Ba)、横山健(Gt,Cho)からなるパンクバンド。1994年に『LAST OF SUNNY DAY』をリリースしてデビュー。フルアルバム『GROWING UP』『ANGRY FIST』『MAKING THE ROAD』は海外でもリリースされ、『MAKING THE ROAD』はインディーズ流通では異例となる国内外合計100万枚のセールスを記録した。1999年からはPIZZA OF DEATH RECORDSを独立させ、完全DIYでの活動を展開。『AIR JAM 2000』以降は長期の活動休止に入るも、『AIR JAM 2011』にて活動を再開。2016年にはシングル『ANOTHER STARTING LINE』を、2017年にはアルバム『THE GIFT』をリリースし、全国ツアーも展開。2018年に公開されたドキュメンタリー映画『SOUNDS LIKE SHIT the story of Hi-STANDARD』のパッケージ作品が4月22日にリリースされ、同日に、ストリーミングサービスにて全曲を解放した。

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