蜷川実花の生き方と『FOLLOWERS』。ブレずに歩み続ける覚悟

蜷川実花の生き方と『FOLLOWERS』。ブレずに歩み続ける覚悟

2020/03/27
インタビュー・テキスト
後藤美波(CINRA.NET編集部)
久野剛士
撮影:下屋敷和文 編集:矢島大地(CINRA.NET編集部)

どこに行っても風当たりが強いのであれば、どこにフォーカスすれば楽しさを感じられるのか。それを考えて生きてきた。

―本作ではそうした華々しい業界の中で、生き方や幸せの在り方について悩みを抱えた女性たちの人生が描かれています。ご自身にとってもリアリティーがあるとおっしゃいましたが、蜷川さんご自身も、生きづらさを抱えていらっしゃるんでしょうか?

蜷川:そうですね……私はなにかが鈍いのか、生きづらさにフォーカスしていない人間なんですね。むしろ、「やってはいけないことはない」という自由さが自分の特徴だと思っていて。写真だけを仕事にしていた時期から、「人に迷惑をかけないかぎりはなにをしてもいい」と思っていました。だからこそ、いつも世間の風当たりは強かったですね。「あんなの写真じゃない」っていわれた時期もありますし、映画を撮ったら「あんなの映画じゃない」っていわれたりもする。ただ、プレッシャーはあっても、ストレスは感じないんです。

これは東京にかぎらずですけど、女性でも女性でなくても理不尽なことはたくさんあって、しんどいだろうなと思います。でも桃源郷なんてないわけで、自分で思考して自分の力で歩いていかなくてはならない。もちろん、もう少しいい場所はあるのかもしれないけど、どこに行っても人生における大変なことはつきまとうでしょう?

蜷川実花

―今は特に、海外の映画やドラマでも、そこに住む個々の生きづらさがテーマになっていることが多いですね。

蜷川:わかります。そうであれば、私はこれから起きるかもしれない楽しいことにフォーカスして生きていきたいと思うんです。私は変わった一家で育ちましたから、常に風当たりが強いところで生きてきたと自覚していて。写真家としてデビューしたときも風圧は強かったですし、なににチャレンジしてもこの職業にしては風当たりが強かったと思います。

逆に言えば、若いころから強い風圧の中で生きてきたためか、どこにフォーカスすれば楽しさを感じて生きていけるのかを考えてこられたのかな、と。ただし、それは単なるポジティブシンキングではなくて、どこをピックアップしていくかっていう考え方。それが、みんなにも伝わればいいなと思いますね。

『FOLLOWERS』より

『FOLLOWERS』より
『FOLLOWERS』より

―蜷川さんの作品に通底する感覚として、煌びやかな世界に手を伸ばしたり恵まれていたりする人間の姿が描かれている一方で、誰もが持っている苦しみや葛藤も表れてくるものが多いように感じます。そのあたり、ご自身の表現をどう捉えられているんですか。

蜷川:人や生活によって種類は違うけれど、誰しも悩みや葛藤を抱えている。それは今回の作品で伝えたかったポイントのひとつですね。一見、キラキラして見える人や、高いブランドの洋服を着ている人には、切実なつらさはないって思われがちなんですよ。たとえばInstagramで素敵なことを発信している芸能人の方とかも、それはいい面だけを選んでアップしているだけで。みんな、それぞれのつらさを抱えているはずで、大変そうな人も実際にたくさん見てきました。でも、それを原動力に、そうしたつらさをなぎ倒しながら前に進んでほしいし、その背中をちょっとでも押せたらいいなと思います。

ただ、今、女性だけではなくて、若者は全体的に大変だと思うんです。世界の現状を見ても、未来に不安を抱くことがあると思う。だから女性だけが大変なわけではないけど、今作では象徴的にそういう女性たちを描きました。

 

Page 2
前へ 次へ

番組情報

『FOLLOWERS』
Netflixオリジナルシリーズ『FOLLOWERS』

Netflixで世界190カ国独占配信中
監督:蜷川実花
出演:
中谷美紀
池田エライザ
夏木マリ
板谷由夏
コムアイ
中島美嘉
浅野忠信
上杉柊平
金子ノブアキ
眞島秀和
笠松将
ゆうたろう
ほか

プロフィール

蜷川実花(にながわ みか)

写真家、映画監督。木村伊兵衛写真賞ほか数々受賞。映画『さくらん』(2007)、『ヘルタースケルター』(2012)、『Diner ダイナー』(2019)、『人間失格 太宰治と3人の女たち』(2019)監督。映像作品も多く手がける。2008年、「蜷川実花展」が全国の美術館を巡回。2010年、Rizzoli N.Y.から写真集を出版、世界各国で話題に。2016年、台北の現代美術館(MOCA Taipei)にて大規模な個展を開催し、同館の動員記録を大きく更新。2017年、上海で個展「蜷川実花展」を開催し、好評を博した。2018年熊本市現代美術館を皮切りに、個展「蜷川実花展—虚構と現実の間に—」が全国の美術館を巡回中。2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会理事就任。

感想をお聞かせください

新たな発見や感動を得ることはできましたか?

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
回答を選択してください

ご協力ありがとうございました。

Category カテゴリー

What's "Kompass" ? コンパスとは

「Kompass」は、ネットメディア黎明期よりカルチャー情報を紹介してきたCINRA.NETと、音楽ストリーミングサービスの代表格Spotifyが共同で立ち上げた音楽ガイドマガジンです。ストリーミングサービスの登場によって、膨大な音楽ライブラリにアクセスできるようになった現代。音楽の大海原に漕ぎだす音楽ファンが、音楽を主体的に楽しみ、人生の1曲に出会うガイドになるようなメディアを目指し、リスニング体験を交えながら音楽の面白さを紹介しています。