崎山蒼志と諭吉佳作/men、見つめ合う2つの才能 その特異な実態

崎山蒼志と諭吉佳作/men、見つめ合う2つの才能 その特異な実態

崎山蒼志『並む踊り』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:松永つぐみ: 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

意味、意図、イメージ……歌詞と言葉における2人のスタンス。似ているようで、実はかなり違う

―端から見ても、崎山さんは弾き語りを主軸にしたシンガーソングライター的な側面が強くて、諭吉さんはサンプリング音なども駆使したトラックメイカー的な気質が強い。おふたりの音楽作りに対する向き合い方は、通じる面もありつつ、両極な部分もあるんでしょうね。では、歌詞に関してはどうでしょうか。諭吉さんは、『文學界』(2019年10月号)にエッセイが掲載されるなど、文筆の面でも注目されています。

諭吉:歌詞は、自分が思ったことを書いていたとしても、それに対して聴いた人が勝手に考えたり、考えなかったりしてくれればいいのかなと思っています。なので、これは言うべきかわからないんですけど……歌詞を書き始めた最初の頃は、なんとなく、自分のなかでテーマやイメージを持っていたんですけど、最近はもう完全に、なんの意味もない歌詞を書いている感じなんです。自分が発していて気持ちいい言葉を選んだり、言葉遊びみたいなことばかりやっているような感じです。

諭吉佳作/men“非常口”を聴く(Spotifyを開く

諭吉:なんとなくぼんやりと、通底するイメージや色みたいなものは持っているけど、「どういう気持ちを込めて書きましたか?」って訊かれると、「なにも込めていません」っていう感じで(笑)。書くことが楽しいから書いているだけで、「こういう想いを伝えたい!」みたいなことは、全くないんです。

さっきも言ったように、昔は歌詞が強い音楽を聴いて泣いたりもしていたんですけど(笑)、それだと疲れるときもあるなと思って。サラッと聴いて、それを噛み締めなくてもいいような音楽の聴き方ができてもいいよなって思う。私としては、歌詞においても「音」の部分……考えなくても聴こえる部分のほうが好きだなって思うんですよね。歌詞の内容ってなると、「音」の話ではないなって思ってしまう。もちろん、いろんな考え方があると思うんですけど、私は、押しつけがましくなりたくないんです。

崎山:歌詞に、「イメージ」はあるけど「意味」はないっていうのは、僕もちょっと近いような気がします。歌のなかに、意見は特にないというか。意味がある場合でも、その受け取り方は聴いている方に任せたいんですよね。

左から:諭吉佳作/men、崎山蒼志

崎山蒼志“踊り”を聴く(Spotifyを開く

諭吉:わかります。でもその反面、私は言葉が好きで、文章を書くことが好きな人間でもあって。言葉も音として感じたい部分と、「言葉が好きなんだ」っていう部分がひとつになって、今の歌詞の書き方になっているんだと思います。

普通の文章を書くときも、もちろん「伝える」という観点から言えば、理解できる文章であるほうがいいと思うけど、決して「感動してほしい」とは思わないんですよね。わかりやすく「いい話」を書いて感動させるより、その文章の書かれ方や言葉遣い、比喩みたいな部分に、意識を持っていたい。

諭吉佳作/men

諭吉:書かれている「内容」より、「どういうふうに書くか?」が大事。私は、音楽も文章も、あんまり「人のため」に作れない感じがします。自分が作っていて楽しいから作っているっていうところが、すごく大きいんですよね。

―今話してくださった、諭吉さんの言葉に対するアプローチについて思ったことがあって。これは崎山さんの音楽や歌詞表現に対しても少なからず思うことなんですけど、表現をするうえで、「嘘をつきたくない」という意識はあると思いますか?

崎山:……僕はちょっと、そういう部分はあると思います。

諭吉:あぁ、そうなんだ。

崎山蒼志“泡みたく輝いて”を聴く(Spotifyを開く

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リリース情報

『並む踊り』(CD+DVD)

2019年10月30日(水)発売
価格:2,728円(税抜)

[CD] 1. 踊り 2. 潜水(with 君島大空) 3. むげん・(with 諭吉佳作/men) 4. 柔らかな心地 5. 感丘(with 長谷川白紙) 6. 夢模様、体になって 7. 烈走 8. 泡みたく輝いて 9. Video of Travel [DVD] 1. ドキュメント「崎山蒼志 LIVE 2019 とおとうみの国」 2. 「国」ミュージックビデオ

イベント情報

『崎山蒼志 TOUR 2019 「並む踊りたち」』

2019年10月28日(月)
会場:東京都 渋谷 CLUB QUATTRO

2019年11月3日(日・祝)
会場:香川県 高松 SPEAK LOW

2019年11月4日(月・振休)
会場:大阪府 梅田 TRAD
ゲスト:諭吉佳作/men

2019年11月10日(日)
会場:東京都 神田明神ホール
ゲスト:長谷川白紙

2019年11月16日(土)
会場:福岡県 ROOMS

2019年11月17日(日)
会場:広島県 SECOND CRUTCH

2019年11月30日(土)
会場:愛知県 名古屋 JAMMIN'

2019年12月15日(日)
会場:静岡県 浜松 窓枠

ゲスト:君島大空

2019年12月21日(土)
会場:宮城県 仙台 HooK

2019年12月22日(日)
会場:北海道 札幌 KRAPS HALL

料金:各公演 前売3,700円(ドリンク別)

プロフィール

崎山蒼志
崎山蒼志(さきやま そうし)

2002年生まれ静岡県浜松市在住。母親が聞いていたバンドの影響もあり、4歳でギターを弾き、小6で作曲を始める。2018年5月9日にAbemaTV『日村がゆく』の高校生フォークソングGPに出演。独自の世界観が広がる歌詞と楽曲、また当時15歳とは思えないギタープレイでまたたく間にSNSで話題になる。2018年7月18日に「夏至」と「五月雨」を急きょ配信リリース。その2か月後に新曲「神経」の追加配信、また前述3曲を収録したCDシングルをライヴ会場、オンラインストアにて販売。12月5日には1stアルバム『いつかみた国』をリリース、併せて地元浜松からスタートする全国5公演の単独ツアーも発表し、即日全公演完売となった。2019年3月15日にはフジテレビ連続ドラマ『平成物語』の主題歌「泡みたく輝いて」と明治「R-1」CM楽曲「烈走」を配信リリース。5月6日に自身初となるホール公演「とおとうみの国」を浜松市浜北文化センター大ホールで大成功させた。10月30日に2ndアルバム『並む踊り』をリリースした。

諭吉佳作/men(ゆきちかさくめん)

2003年生まれの音楽家。2018年、中学生の時に「未確認フェスティバル」で審査員特別賞を受賞。その唯一無二の楽曲センスと艶のある伸やかな歌声で注目を集め、インディーズバンド音楽配信サイト「Eggs」では年間ランキング2位を獲得。音楽活動以外にも、執筆活動やイラストレーションなどクリエイティブの幅は多岐にわたる。2019年、でんぱ組.inc「形而上学的、魔法」の楽曲提供を行い話題に。

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