BRING ME THE HORIZON来日インタビュー 彼らが痛みを歌うわけ

BRING ME THE HORIZON来日インタビュー 彼らが痛みを歌うわけ

インタビュー
矢島大地(CINRA.NET編集部)
後藤美波(CINRA.NET編集部)
テキスト・編集:後藤美波(CINRA.NET編集部)

「歌う」っていうのは叫んでいるのとは全然違う表現だから、それも大きな変化だった。(オリヴァー)

―進化するっていうことについては、ジョーダンが加入してリリースされた『Sempiternal』(4thアルバム / 2013年)以降、より意識的になっていったのかなと思うのですがいかがですか?

BRING ME THE HORIZON『Sempiternal』を聴く(Spotifyを開く

ジョーダン:『Sempiternal』とその前作の『There Is a Hell Believe Me I've Seen It. There Is a Heaven Let's Keep It a Secret.』(2010年)の一番の違いは、オリーのボーカルが、叫んでいたのから歌うようになったことだよね。だから変化がすごく大きいように感じるかもしれないけど、でも音楽的にはどのアルバムも安定的に進化している。俺からすれば、(加入前の)3枚のアルバムを聴いても作品ごとにすごく進化を遂げていると思うよ。

―そうですよね。ただ、『Sempiternal』では楽曲の展開やアレンジ、サウンドのキメがより細やかなものになったと思うんですね。

マット・ニコルス:そうだね。ソングライティング面は結構変わったよね。

BRING ME THE HORIZON『There Is a Hell Believe Me I've Seen It. There Is a Heaven Let's Keep It a Secret.』を聴く(Spotifyを開く

―オリヴァーにとっても、ソングライティングを変化させて歌に向き合う必然性があったんですか。

オリヴァー:『Sempiternal』はバンドにとっても自分にとっても、いい意味でリセットみたいな意味があったアルバムなんだ。特に俺はレコーディングの前にリハビリに入っていたし(オリヴァーはドラック中毒の治療のため、リハビリを受けていた)、バンドも行き詰まってた部分があってあまり良い状況じゃなかった。そんななかでもう一枚アルバムが作れるこの機会を生かさなきゃって、それまでと覚悟が違った。

―それはどういう覚悟だったのでしょうか?

オリヴァー:自分もバンドに対して申し訳ないって気持ちがあったから良い曲を書かなきゃって思ってたし、バンドも新しい機会をつかんだから無駄にはできないっていう気持ちで臨んだ作品だった。それまでの逆境をいかにポジティブに跳ね返すかっていう決意。色んな要素があるけど、バンド全員がそういう思いを持って制作したっていうのが大きいかな。

そこですごく進化したっていうのはあると思う。それまではインストを持って行ってスタジオで歌詞を書いてその場で叫んでたんだけど、「歌う」っていうのは全然違う表現だから、それも自分にとっては大きな変化だったし。

オリヴァー・サイクス(Vo) 撮影:Masanori Naruse
オリヴァー・サイクス(Vo) 撮影:Masanori Naruse

自分の悩みとか鬱とかを口に出して人に伝えるのって難しいことだと思う。特に男だと余計に。(オリヴァー)

―そうやって作品ごとに変化も進化もしているなかで、一つだけ変わらないのが、自分の痛みを正直にさらけ出す叫びや歌、メッセージだと思うんです。歌っているオリヴァーはその点についてどう感じていますか?

オリヴァー:俺は自分自身が感じていることを正直に書くことしかできない。そこは絶対に変わらないよ。

―自分の抱えている痛みを表に出すのって簡単なことじゃないですよね。だからこそ歌の中でなら昇華できるっていう想いもあるんですか。

オリヴァー:ああ、自分の悩みとか鬱とかを口に出して人に伝えるのって難しいことだと思う。特に男だと余計にそうで、家族や友達になかなか言えなかったりする。男らしさの刷り込みと固定概念によって苦しんでいる人は、とても多いよね。

オリヴァー・サイクス(Vo) 撮影:Masanori Naruse
オリヴァー・サイクス(Vo) 撮影:Masanori Naruse

オリヴァー:そう考えてみると……最初は自覚的じゃなかったんだけど、『Sempiternal』あたりから俺にとっては歌詞を綴ったり、自分の気持ちや体験を音楽に込めたりするのが癒やしみたいなことだと気づいたんだ。自分に起きてることや考えていること、感じていることは自分にしか書けないし、それを歌詞にすることで乗り越えることができたっていうのがあって。

―『Sempiternal』以前の歌詞はどうだったんでしょうか。

オリヴァー:1stアルバムの『Count Your Blessings』(2006年)の頃も、痛みを素直に出していくっていうのは核にあったけど、「こんな感じで書いたらかっこいいよね」みたいな、ティーンならではの感じもあったと思う。次の『Suicide Season』(2008年)の時はツアーとかパーティー三昧の日々をそのまま書いた。それが良くない方向に自分に影響を与えるようになっていって、そこから徐々に人間の状態とか、自分の気持ちと向き合うこととか、そういうことを書くようになっていったんだ。

BRING ME THE HORIZON『Suicide Season』を聴く(Spotifyを開く

オリヴァー:それに人って、別に同じ経験をしてなくても共感することはできるだろ? 同じように仕事のことや体重のこと、家族とか人間関係なんかで悩んでいる人はいるはずだし、そのせいで自分を見失ったり、恐怖心を抱いたり、頭がおかしくなりそうだって気持ちになったりするのは結局一緒だから。

オリヴァー・サイクス(Vo) 撮影:Masanori Naruse
オリヴァー・サイクス(Vo) 撮影:Masanori Naruse

俺がボーカルである以上、俺の感情が音楽の核になる。(オリヴァー)

―それは多くの人が普遍的に共感できる感情ですよね。今は特に、不特定多数に向けた歌ではなく、個々が自分の心に向き合って表現することが多くの人の心を震わせる歌になっていく時代だと思うんです。

オリヴァー:俺にとっては、自分のその時の状態をそのまま出すっていうことが何よりも大事なんだ。もし俺自身が怒ってることについて歌うなら、音楽は怒った感じになるし、逆に嬉しいことを歌うならそれを攻撃的な歌や悲しい歌にのせることはできない。

だから『amo』はこんな風に、多くのトライを果たす作品になったんだと思う。この作品を作る以前は人間関係の問題や離婚を経験してすごく辛かったけど、そこから抜け出せた時に刑務所から出てきたみたいな晴れ晴れとした気持ちになった。それで音楽が「怒り」のサウンドにはならなかったんだよね。

―なるほど。

オリヴァー:俺がボーカルである以上、俺の感情が音楽の核になる。この先ヘビーなサウンドになるとか、逆にポップだったりソフトになるとかは約束できないんだよね。結局はその時俺の頭の中に何があるかってことだから、その時になってみないとわからない。


BRING ME THE HORIZON『amo』収録曲“mother tongue”

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リリース情報

BRING ME THE HORIZON『amo : japan tour edition』
BRING ME THE HORIZON
『amo : japan tour edition』(CD)

2019年11月13日(水)
価格:2,530円(税込)
SICP-6224

1. i apologise if you feel something
2. MANTRA
3. nihilist blues (feat. Grimes)
4. in the dark
5. wonderful life (feat. Dani Filth)
6. ouch
7. medicine
8. sugar honey ice & tea
9. why you gotta kick me when i'm down?
10. fresh bruises
11. mother tongue
12. heavy metal
13. i don't know what to say
14. Throne
15. Happy Song
16. Drown
17. Avalanche
18. Shadow Moses
19. Sleepwalking
20. Can You Feel My Heart

BRING ME THE HORIZON『amo』
BRING ME THE HORIZON
『amo』(CD)

2019年1月30日(水)
価格:2,420円(税込)
SICP-5940

1. i apologise if you feel something
2. MANTRA
3. nihilist blues (feat. Grimes)
4. in the dark
5. wonderful life (feat. Dani Filth)
6. ouch
7. medicine
8. sugar honey ice & tea
9. why you gotta kick me when i'm down?
10. fresh bruises
11. mother tongue
12. heavy metal
13. i don't know what to say

プロフィール

BRING ME THE HORIZON
BRING ME THE HORIZON(ぶりんぐ みー ざ ほらいずん)

2004年に結成、イギリス/シェフィールド出身の5人組ロック・バンド。2005年にヴィジブル・ノイズよりデビューし、フル・アルバムを3作リリース。2013年、初期メンバーギタリストのジョナが脱退し、新たにキーボーディストとしてジョーダン・フィッシュが加入。同年にアルバム『センピターナル』でRCA UKからのメジャー・デビューを果たす。2015年、通算5作目『ザッツ・ザ・スピリット』で、過去最高の全米・全英チャート初登場2位を記録。2019年1月、6作目『アモ』を発売し、キャリア史上初の全英チャート1位、そしてグラミー賞ノミネートを獲得。同年8月には約5年振りの来日を果たし<サマーソニック2019>へ出演、また新木場STUDIO COASTでの単独公演をソールドアウトさせた。

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